家族の仇は前世の推しでした   作:来海杏

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メインストーリー【マヨイガの魔女】はこれで終了、次はネムリサン視点メインで学園編やるでぇ。今日はシラフ


メインストーリー【マヨイガの魔女14】

「参ったな」

 

楽しそうに言う相棒の声にジーナスは仮面の下で微笑む、ユリカさん、これは参ったなんて言葉で済ますには多すぎますよ。

 

最早自分達からは端も分からぬ様な人数に包囲されている、それでも何とか今も死なずに居るのは相手が群勢であって軍勢ではないからだと、師匠からの言葉を思い出しそんなことをジーナスは考える。

 

一人一人は驚異的な実力を有している、それは間違い無いが現状の様な360度に渡る包囲の中では全員が実力を出し切れないで居るのだ、それに加えて恐らくは。そんな思考の中、飛び上がって敵対者に槍を突き立て様とする褐色の戦士をユリカさんが吹雪で吹き飛ばし声を掛けてくる。

 

「相棒、相手の魔女、冷静じゃない」

 

 

そうだ、使役型の魔女は使い魔と薄いラインの様なもので繋がっている、ラインを通して感情や動揺が伝わるのだと、そう師匠からは習った。魔女の感情に引き摺られているのだろう、先程までと比べて動きに精細を欠いている。期せずして習った通り対応策を打てたのだろうか?しかし心辺りがない。

 

使役型の魔女に対する対応策、師匠風の言葉で言うのなら。

 

『ビビらせろ、それに尽きる』

 

人型の使い魔は資料の上でも見たことが無いが恐らくそう大きな違いは無いだろう、と言うか師匠、やはり貴女あんまり人を指導するのに向いて無いと言うか、感覚的過ぎると言うか。あとどんなタイプの魔女に対しても基本的にそれしか言いませんよね?

 

本人に届かない筈の愚痴なのに何故か寒気が走って慌てて思考を現実へと切り替える、届かない筈だ、現実的には、しかし師匠は師匠であるからギリギリあり得そうだ。

 

 

「相棒!」

 

「はい!」

 

 

多くを語る必要は無い、それだけの経験を僕達は積んできた。

 

ユリカさんが周囲に冷気を放ち壁を作り出す、壁に作られた足場を駆け上がり魔女に向かって飛び出し使い魔達の頭を足場に進む。殺せば良い、不死鳥の魔法少女は頼れる相棒が守ってくれる、後ろから手のひら大の雪の結晶が6つ、ジーナスを追いかけてきて周囲を飛び回る。

 

ぎゃう、と撃ち込まれた銃弾を雪の結晶が弾く。火焔や、より得体の知れない何かもどんどんと雪の結晶は拒絶していく。素晴らしい魔法、彼女が氷結の魔女と名乗る所以の氷の結晶。

 

 

知るかどうでもいい、なんて僕の恋人はカッコいいんだ。ユリカさん、大好きです。

 

 

ただ、駆ける、ただただ駆ける。殺すのだ、殺せば良いのだ。

 

 

それは僕の一番得意な事だ。

 

 

 

軍勢の頭上を駆け抜け魔女に向かって槍を振りかぶる、投げ込む。氷を纏う取って置きの一撃、食らえば肉の内から凍らせ再生もままならぬまま殺せる。

 

「ヴァァッ!!」

 

言葉を掛ける事もしない、ただ力を出すべく声を出す。決めたのだ殺すと、ならば恨みも憐れみも伝えまい。哀しむ資格も僕には無いのだ、ごうごうと冷気を纏った槍が群勢の端を凍らせ砕きながら魔女へと向かっていく。

 

最初から戦場に居たサムライが槍を弾く、恐ろしい技量だがこれで最早両腕はまともに使えないだろう。刀も凍り付き砕け散った、二擊、再度ランスを生み出し振りかぶる。殺すのだ、師匠の教えの内一番多く繰り返された言葉。

 

 

『必要な攻撃を殺すまで行えば殺せる』

 

 

師匠、沢山のご指導ありがとうございます。だけどやっぱり

 

 

「感覚的過ぎんだよぉぉぉ!!」

 

 

振りかぶった槍がサムライを打ち砕き魔女を貫こうと言うところで。ぱっ、と魔女も後ろの宿も跡形も無く消え去った。

 

 

後を追うように自分達を包囲していた使い魔達も紫煙となって消えて行く、最後に残ったのはサムライで、両腕が砕け胴体に大穴を空けた姿でこちらを睨んだまま紫煙となる。

 

他よりも長くその場で漂う紫煙、なんとも、恨まれた様な気がして気分は良くないが少なくとも生き残った事は間違いがなさそうだ。

 

 

「あっ、相棒ー!!!!」

 

 

ドームを解くと不死鳥の魔法少女が血の泡を吹いてガクガクと震えていた。

 

 

「えっ、あっ、えぇ!?救急車!!救急車ゃー!!」

 

 

不死鳥の魔法少女の再生能力は炎を纏うことによって生まれている、当然氷のドームに囲われた状況ではその力が何時も通りには発揮出来る通理もないし、マスコットであるフェニキアは根本的には生き物である。氷のドームに覆われ冷えきった空気の中、戦闘の強い振動に晒されながら全く衰弱しないと言うのは難しい。

 

 

「参ったなぁ…」

 

ジーナスはただ呆然と呟いた。

 

『勝ちゃあ良いのよ、勝ちゃあ』

 

 

師匠、続ける言葉も出てこずジーナスは不死鳥の魔法少女を抱えて海岸へと駆けていく。感覚的でなんなら少し露悪的、と言うか聖人君子だとは修行中から思っては居なかったがどうにもこんな時までこんな言葉しか出てこないとは。

 

 

「参ったなぁ…」

 

 

もう一度ジーナスは呟いた、海岸には既にパトカーと救急車が来ている。派手な戦闘だったから住民の誰かが通報してくれたのだろう。身分証代わりの学生証は制服の内ポケットに入れっぱなしだった筈。ともあれ助かった。

 

 

 

結論として陽佐木ヒナは死ななかったし相棒としてユリカも余計な事は言わなかった。ただ、ヒナの相棒であるフェニキアだけがたまにジーナスを雑用としてこき使う用になったのであった。

 

 

 

 

 

 




一区切りついたんで章作って並べ替えました
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