イントロダクション
「ァァッ…飲み過ぎた」
聖青薔薇学園
魔法少女と騎士の集団合コンの会場だと、師匠の言葉を借りるならそんな所だが、ともあれ俺、金城羅門(カネシロラモン)はそこへ向かうリニアの中で殆ど液体染みた状態で椅子に座りながら昨夜の痛飲を後悔していた。
「ァァ…ンンー……アァ」
頭を抱えようが地面に座り込もうがこの感覚は薄れそうもない、飲み過ぎた、そうだ、それに尽きる。それなりに世渡りは上手いつもりだったがそう言う過信が逆に良くない結果を招くのか、と言うより酒が飲めるようになってこの方、勧められた酒杯を一度も断った事の無い性分が良くないのか。
「ァァ…ダメだこれ…」
遠い記憶を漁って思い起こせば、確か父親も酷い酒乱だった気がする、いや、あれは酒乱と言うのか?普段は人間より岩や草木に近い様子で必要最低限の事しか話さないのに一度酔い出すとケラケラと、ラジオか子供向けの玩具の様にあれやこれやを喋り出す、しかもそれが面白いものだから家族揃って父に何とかお酒を飲ませようと苦労したものだ。
リニアのアナウンスがまもなく学園に着く事を告げる。
まぁ良いさ、二日酔いの日ぐらいは死人に思いを馳せるのも悪くは無いだろう。ともあれ考えるべきはなんだ、まぁ、本当なら昨日の22時には寮に戻っていなければならなかったのに今は昼の14時だと言う事だろうか?
ダメだ、本当にダメだ、一度飲み始めるとかなり重要な事までどうでも良くなってしまう。楽しさばかりを求めてしまうのだ。
言うことを聞かない身体をシートから起こしリニアを出る、一応手土産には寿司を買ったのだが(本当の所を言うなら隣の席の自称社長のオッサンが買ってくれた)これは、賄賂になるだろうか??
こうして呆け腐ったこの男、ゲームにおける【喜】編の主人公であり、だがしかし、それを知る先生の居ない今、単なる社会不適合者と言う他ない、非常に香り高いキツさの人間であった。
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「ちょっとは落ち着きなはれや?ミリカちゃん?」
そんなんやったら指導する前に倒れてまうよ?隣に立つ親友がそんなことを私に言ってくる、京都出身らしい柔らかな言葉使い、ふわふわとした髪質も合わさりなんとも柔らかな印象を見る人間に与える幼なじみの言葉に私は答える。
「剣舞家の人間として規律を軽んじる人間を許す訳にはいかない、早死にしようがこれは譲れない事なんだ、と言うかだ、どう間違えれば16時間も門限から遅れる事が出来るんだ??分からない、私には理解の範疇を超えているよ鏡子(キョウコ)」
「しようがあらへんがな、遅刻のカレ、例の原始の六人から送られてきた特待生って話やろ?」
「誰であれ特別扱いする理由にはならない、そんな規則は何処にも明記されていない、そうだろう?」
我ながら柔軟性に欠けるとは思う、だが剣舞家の人間として、次期当主である姉上に恥ずかしい振る舞いをする事は出来ない。曖昧に微笑む幼なじみの顔を横目に見ながら私は腕を組み真っ直ぐとリニアを待つ。
リニアが駅に着く、元々乗客の少ない車両から般若の刺繍が施されたスカジャンを着た男がフラフラと出てくる。焼けた肌に短く刈られた髪、ヘラヘラと絶えず浮かべた笑み。何も言うまい、張り倒そうとした右の平手を姿勢を倒し避けられ、腹立たしさのまま蹴り込んだ右足はクルリと一回転して避けられる。
「おう、誰かと待ち合わせか??」
抜剣し魔法を使おうとした所でキョウコに止められる。
「そう怒るなよ、な?風紀委員長?ほら、お寿司買ってきたから、機嫌直せって?な?」
いくら原始の魔法少女に修行をつけて貰ったとは言えコイツらは社会性と言うものが酷く欠けている。伝統や規律と言うものを欠片も重んじる様子がない。
「どうした?委員長?髪切った?前髪、それ自分で切ったの?天才じゃんチョー似合ってるぜ?」
顔色一つ変えずに舐めた様子でこちらに語り掛けてくるその姿にミリカの神経がバリバリと逆撫でされる、特待生ドモめっ!規範など一切気にしない様子で好き勝手に振る舞ってのける、それが酷く腹立たしい。前髪は姉上に切って貰ったのだ、何を貴様ごときが一丁前に評価しているのか。
「セクハラだ愚か者ぉ!!それに貴様ぁ!!買収する気かぁ!!先ずは謝罪だろうがぁ!!」
何処までもふざけ倒したこの男こそが目下学園の風紀を乱す腐った蜜柑、原始の魔法少女六人の一人から推薦されてこの学園に来た五人の内の一人、金城羅門であった。