「先生は甘いんだよ」
酷く天気の良い中庭で黒縄明星(クロナワミョウジョウ)はユーリから送られてきたメッセージを見る。膝には自炊したお弁当が広げられ、器用にそれを食べ進めながら全てが行われていく。
先生と熱海に行って来たと言う事、そこで学園の先輩達と戦闘になった事、言いつけを守らず死霊達を解放し今謹慎中だと言う事、後はダラダラと恋の愚痴。なんて事だ、こうも長文を書いておいて全てが下らないとは大した感性だ。
「捨てちゃえば良いのに」
先生は多くの魔女達を拾ってくる、何時も何時も拾ってくる。目を離したら犬か猫でも餌付けするみたいに、それぐらい何時もそうなのだ、拾って来て多少は使えるように芸を仕込んで、あれやこれやと雑用を言い付けたりする。だけどどうだ?大事にするかと言ったらそうではない、愛着の欠片も抱かずかといって厳しく奴隷や物の様に扱うでもなくこんな風に簡単な処分で我が儘を許したりする。
「僕ならもっと上手くやれた」
先生から頼まれてこの学園に潜り込んで以来、先生は何時も他のヤツに構ってばかりで、僕に関しては大して重要でもない魔女に成りかけの連中の経過観察だとか、学園全体で起きた出来事を定期的に報告書にして出す様にだとか。誰だって出来る仕事ばかりだ、それがどうにも腹立たしい。
きっと先生は分かっていないんだ、僕が先生に命を助けられて以来どれぐらいの覚悟で先生の事を思って生きているのか、僕は先生の為なら神様だって殺して見せるのに。
「だけどまぁ、命令に無い事をしたって先生に迷惑が掛かるだけだし、きっと先生もこんなことを言われたって困るだけだ」
僕は馬鹿じゃない、喜んで伏して待つさ。最後に残していた好物の焼売を口に放り込み弁当箱を片付け始める。大好きなものは一番最後に食べるのが美味しいんだ。
「チッ」
舌打ちが漏れる、クラスメートが遠くで手を振っていて明星は笑顔で手を振りかえす。たまに居るのだ、一人で食べている、その意味を考えず関わってきたり一緒に食べようと誘ってきたり。必要ならこちらから誘うのに、魔女と一緒だ、女の子ってどうしてこんなに下らないんだろう?
「想像力を働かせるって、そんなに難しい話かなぁ?」
三年棟からサトウネムリが出てくるのが見えた、腹立たしい馬鹿ばかりだがまだアイツはマシだ、少なくとも先生の命令は守るし余計な我が儘は言わない。まぁ嫌いだが。
「どうしました?サトウ先輩?」
僕の浮かべた笑顔にサトウは酷く不愉快そうな表情を浮かべる。愚かなヤツ、自分の心を隠そうともしない。
「分かってる事を聞かれると腹立たしいんだけど、考えたら分からない?」
分かってる、仕事だ。
「嫌われる覚え、無いんですけど?僕何かしましたっけ?」
あぁ、鬱陶しい、でもまぁ構わない。どうせこいつも捨てるべきだけの存在なんだ、僕とは違うゴミだ。とりあえず仕事の話を進めよう。
「先生から連絡が来た、魔法少女技能競技会で魔女が生まれるからそれを確保しろとの命令だ」
ハハハ、新しいゴミを拾ってこいとの命令が先生から来た。いいさ、いいとも、先生。貴方がどれだけゴミを拾おうが構わないさ、僕が、僕だけが特別なら何も構わない。
「それじゃあサトウ先輩、今後の打ち合わせを始めましょうか」