家族の仇は前世の推しでした   作:来海杏

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あけおめ


メインストーリー【アワセカガミの魔女3】

「…お弁当作ろうかな?」

 

放課後、学園の生徒は基本的に人工島内に建てられた寮にて生活している。当然私、サトウネムリも入学時に割り振られた寮にてルームメイトと二人暮らしをしている訳なのだが。

 

「やっぱり色々聞かれちゃうかなぁ?急に料理とか、最後に料理したのもだいぶ昔だしなぁ?」

 

何時だったかな、最後に料理したの?あー、お母さんが生きてた頃だからもう五年位前?流石に無謀かな?しかしだ、いくら殺すべき相手とは言え男の子と一緒にお昼ご飯である、青春無敵の女子高生としては気合の一つ二つは自然と入れざるをえないのだ。

 

「ごめんね先生」

 

これはこれで乙女の一大事というやつなのである。

 

 

 

「うん、これはしょうがない、しょうがないのでスーパーに行こう。うん、うんうん」

 

 

 

そうと決めたらすぐ行動する、先生は十分な計画こそが重要だと何度か私に対して言っていたが、どうにも性分に合わないというか。お母さんが生きていた時はよく行動するまえに考えなさいとか、そそっかしいとか言われてたから、とりあえず考え過ぎずに食材を買いに行こう。

 

 

人工島を一周するリニアの中、まもなく駅に着くというアナウンスに従って私は寮の最寄り駅より一つ前の駅でリニアから降りた。無人駅、完全に機械化されその結果誰も居なくなったそこに私のスニーカーのしゃりしゃりとした足音だけが響く。

 

 

「なんか、怖い…かもぉ?」

 

 

窓の外で夕暮れが街を覆っている、嫌に大きく作られた壁一面の窓から駅の外の音が薄く飛び込んできてそれがまたいっそう非日常を、暗闇を拡張させた様に感じさせる、眩しい位に夕日が差し込んで来ている筈なのに。普段とは違う駅に降りただけだ、なのに。

 

 

恐怖だ、どうに怖くてたまらない。

 

 

「えへへへ、こ、怖いでゲスねぇ」

 

 

 

周囲を見回しながらふざけてみても結局、夜じゃないからこそ暗闇が拡張されたような、そんな奇妙な感覚に襲われるだけで恐怖が薄れず、私は改札までの道を振り返らず歩き続ける、しゃりしゃりしゃりしゃりと足音だけが響いていた。

 

 

 

島の中央まで行けば物好きな観光客や魔法少女、各学園に併設された防衛庁研究施設の職員をターゲットにした繁華街などもあるがここは島の東側に集中している寮などが集まった地域である。当然、あまり好意的な目で世間に見られていない、というか正直化け物扱いされている私達魔法少女達が多く住む地域には買い物が出来る様な所は限られている。それがこの駅から歩いて5分程の所に建てられているスーパー奇跡館であった。

 

「もうちょっと、こう、何とかならないものなんですかねぇ?」

 

 

皮肉屋の友人いわく都市計画の段階から魔法少女達の檻としての機能と魔法についての研究施設を詰め込む事以上の目的の一切を想定していない、友人の言葉を借りるところの【ガキの粘土細工かバカの積み木遊び】のこの人工島は少しでも人口の集中する様な場所を避けると途端に活気というものがなくなってしまうらしく、インドア派で普段はネット通販と学食だけで大体の食事を済ませてしまい、一つ向こうの駅周辺の立地どころか近所から二つ目のコンビニすらどこにあるかも怪しい私には刺激的というかどうにも恐ろしい景色に感じられてしまう。

 

 

改札に着き鞄から財布代わりの電子化された生徒手帳を出す。夕方は嫌いだ。お母さんが殺されて以来ずっとずっと大嫌いなまま、この時間は何時も嫌な想像に取りつかれたり暗い気持ちになったりする。

 

 

足が自然と早まる、過去や嫌な気持ちに追いつかれない様に生徒手帳から電車賃を払い改札を出てスマホの指示通り南口に向かって真っすぐに歩みを進める。学園の生徒は研究に協力した謝礼金や治安維持活動や戦争に従事した場合の手当が一旦生徒手帳に振り込まれ、そこから引き出して現金化したり手帳のまま魔法的防護処理を加えたサイバネ電子マネーICカードとして利用し生活する事が出来る様に人工島全体でシステムが整えられているのだ。

 

 

 

まぁこれも、友人に言わせれば首輪の一種でしかないそうだが?駅の外に出ると途端に生活の音が実態あるものとして厚みを増して肌に飛び込んでくる様に勢いを増す。この辺りは港湾労働関係者の家族や、魔法少女と連携する都合で作られた海上保安庁施設の関係職員やその家族が多く住んでいる、とかなんとか、食材を買える場所を調べた時にたまたま見ただけの情報ではそうらしい。別におかしな何かがあるような場所じゃない、ただ、そう、時間だけ、夕暮れは嫌いだった。

 

 

少し歩いてスマホから顔を上げ駅を振り返る。なんてことは無い。何もないただの駅。暗闇や、過去や、嫌な気持ちはどこにも見当たらない、ただの機械化無人駅とそれに隣接して続いていくただの住宅街だけ。

 

 

 

 

 

「…スーパーに行かないと」

 

 

 

 

いつも通り寮に引きこもっていた方がマシだったかもしれない、でももう夕暮れは終わった。

 

 

中層アパートの間に夕日が隠れていく、もうすぐ夜が来る。母が自殺したと連絡が来たのは夕方で母は殺されたのだと知れたのが夜。魔法少女として殆ど使い捨ての様な任務をあてがわれたのが夕暮れで、先生が復讐すべき三人を連れてきたのは夜。

 

 

もうすぐ夜になる、夜は私の時間だ。

 

 

安眠と夢の魔法少女、夜は私の味方で私の世界なのだ。やっと全身に生きた心地がしてきて私はスーパーへの道を急いだ。

 

 

 

 

 

 

数分歩き続けると嫌にビカビカとしたネオン輝く建物が見えてくる。奇跡館、一見するとパチンコ屋か怪しい地方の観光名所みたいなデザインだが一応は全国展開しているスーパーで、嘘かホントか紛争地帯にも支店出してるとかいうオカルト染みた、ある意味この人工島にはピッタリのお店である。こう、周辺住民とか不安になるが大丈夫なんだろうか訴訟とかダース単位で起こされそうな光量なんだが。

 

 

 

 

 

「着いた、よね?ここ本当にスーパー?」

 

 

 

 

 

ルームメイトがやっているゲームで似た様な建物を見たことがあるが、ルームメイトは嬉々として爆破していた。正直なんかこう目の前に立ってるだけで目にクるし今なら喜んで彼女の爆破に手を貸すだろう、インドア派にはネオンがサイケ過ぎてもはや敵意すら感じてきた。

 

だれか、ショットガンをくれショットガンを。

 

 

「あー、ダメだ、さっさと買い物済ませて帰ろう」

 

ともかく、何買うかはもうメモにまとめてあるし後は買うだけだ。

 

 

「ヨシッ!行こう!」

 

 

 

 

「気合入れてどったの?ネムっち?」

 

 

 

 

「うっひゃあ!!」

 

後ろから声を掛けられて慌てて私は後を振り返る。ジャージの上着に学園のスカート、ショートでまとめられた髪、なんかこうピカーとかペカーって効果音の付きそうな笑顔。たぁーぶんクラスメイトの??

 

 

「お!?おあー、珍しいところで会うね?」

 

参った、誰だったっけ?クラスメイトの、あの、苗字は何とか出てきそうなんですがなんというか正直下の名前になってくると怪しい位の関係性で…、なんか、あれ。クラスメイトの陽キャで陸上部の子が後ろに立っていた。ん?ていうか、ネムっち?

 

 

「あのー…ネムっちって?」

 

 

「良くない?ネムリちゃんだからネムっち」

 

 

流石陸上部、距離感の詰め方までスピーディー。てか名前覚えられてんの?余計気まずいんだけど。

 

 

「あー、ありがとう…ございます?」

 

「??、なんで敬語?同じクラスじゃん!タメ口でいいよ!」

 

わお、もうちょっとこう、手加減というか。心の時速が速すぎる。

 

「…陸上部のぉ担当?的なのって、もしかして短距離走?」

 

 

「担当って、フフフ、変な言い方!棒高跳びだよー?」

 

なるほど時速が速いんじゃないのかワープ系だ、敵モブキャラで出て来たらルームメイトがブチ切れるタイプ。

 

 

まぁ、とりあえず

 

 

「なんか、目が痛くなってきたんで店内入りませんか?」

 

 

 

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