「殺した方が早くありません?」
何を思って、何を思って高いところから人の事を見下して。
私のお腹を踏みにじるようにゴリゴリと、お客様だった少女が変身した姿の黒の魔女の靴が動き、内臓の形が分かる程の苦痛が、痛みがお腹の中で走る、人生で見たこともないような冷たい目、両親の誇りだった宿に帰りたい、だけれど妹があいつ等の魔法か何かでいいように操られてからどこか知らない土地に勝手に動くことは無くなって、私はこのどこにあるかも分からない島で必死に、映画の中の軍隊やアスリートの様に必死にトレーニングを受けている。
走ったり、筋トレをさせるられるのはまだいい、でもこの戦闘訓練と称して一方的にユーリと呼ばれる少女から嬲られる時間だけはどうしても好きになれない、痛いのも、苦しいのも大嫌いだった。
最初の内は恨んだ怒りを抱いていたが恨んだところでどうにもならないのだ、コンクリートの打ちっぱなしになった訓練室と呼ばれる広い部屋の中、壁の一面、その上部に設けられたガラスの向こうで得体のしれないスーツの男は何か、機械のモニターをじっと見ている。
その横で妹は絵本を読んでいて、もういい加減分かって来た。
ナナツの、妹の命は得体のしれないあいつ等に握られていて、連中はナナツではなく私が魔女なのだと信じている、そして私が魔女だと連中が信じている以上私はあいつらの期待に応える以外に何も方法が無いのだ、従うしかない、こうして何度も何度も二日に一度魔女に地面に叩きつけられたらいやでもそれ位、理解出来る。
「…私は魔女なんですか?」
スーツの男が私の妹を抱き寄せる様にしてこちらにやっと視線を向ける。何らかのボタンを押したのか、壁に設置されたマイクから声が聞こえる。私の声が聞こえるのか?マイクの様なものは見当たらないが、別に機械に詳しい訳でもない、どうやってか等見当もつかないが、ただ現実を受け入れる他ない
「やっと否定しなくなったねヤヤツちゃん」
うるさい、名前を呼ぶな気持ち悪い。
「先生、殺した方が早くありませんか?」
また、グリグリとお腹の上の靴が動く。勝手に人を殺すだのなんだの、怖かったのは最初の三日だけで、今はもう、殺すだのなんだのと聞いても大して怖いとも思えない、反吐がでる、グリグリグリグリと、人をガムか何かの様にこの、あぁ吐きそうだ調子に乗って昼食を食べすぎなければ良かった、クソ、クソ、糞ォ。
「オボエぇ」
「きたない」
少女が私から足を離してわき腹を蹴り上げる、そしてまたお腹の上の、吐瀉物のかかっていない場所にグリグリと足を置かれて意識が遠のいてくるのを感じる、この三か月程の間にすっかり慣れてしまった感覚だった。あぁ…また気を失うんだ、そう思ったその時だ、なに?あれ、みっともない。そう小さな声でスピーカーの向こうからナナツの声が聞こえてきた。
遠のきかけた意識が急激に怒りでハッキリとしてくるのを感じる、誰の為にこんな目に、誰の為にこんな努力を、誰の為に、誰のためにっ!!
「そうもいかないんだユーリちゃん、君の能力で復元してしまうと魔法の完全な再現は出来ないしそれ以上の発展も望めない、欲望だよ、欲望と衝動が魔女の鍵なんだ」
ふざけんな
死んでしまうから足をどけて、その声にお腹の上から靴がどけられてやっと私は自分がまともに息もできない程強く押さえつけられていたのだと自覚する。ゼーゼーと這いつくばって獣の様に息を必死に吸う。
私の妹を奪って、勝手に私の命をものみたいに扱って、その上なんだ、私が魔女?そんな訳がないだろう?全部、全部妹がやったことなんだ、全部妹の、妹のせいなんだ、それなのに人を巻き込んで、妹だ、何もかも妹のせいなんだ、こんな、なんで私が苦しまなくちゃいけないんだ、くそ、もう嫌だ、家に帰りたい、帰りたいよお母さん、お父さん、暖かいベッドで眠りたい、痛いのはもう嫌だ、もう嫌、嫌、嫌っ!!
「クソォ…もう、嫌だ、こんなの、こんなのもう嫌だぁ…ふっざけんなぁ!!!!」
魔女に掴みかかろうとヨレヨレと腕を突き出すとどこからか私が何時も使っているベッドが現れて魔女を吹き飛ばす、かなり勢いよく現れたそれに魔女は何度か地面をはねて壁へと叩きつけられる。
「おめでとう、ヤヤツさん。そこがスタートラインだ」
パチパチと乾いた拍手の音がスピーカーから響く、そんな中、私はただ茫然と壁に叩きつけられて気を失った魔女を眺めていた、私がやったのか?本当に?私が、私は魔女なのか?
「なんだっけ?…そうだ、私は魔女なんですか?だったかな」
そうだよ、君は魔女だ。
今まで奪った命も君の妹がやったんじゃない、君が無意識の内に発動した、防衛本能とでも言おうか?そういうものによって君が殺したんだ、ヤヤツさん、ヤツザキヤヤツさん。
「君は人殺しなんだ、僕が知る限り君の両親も君が、君の手で、君の魔法によって殺したんだ」
分かって来たかい?訓練の間君は何時も不満そうな目をしていたが、この世にここ以外で君の様な人殺しのバケモノを受け入れる様な場所はどこにも無いのさ。
「私は…、わ、そんな、私は、嫌、そんな、そんあ」
「オボエぇ」
…もう少し時間がかかるか、最後に聞いたのはそんな声で。私は自分の吐しゃ物に倒れ込む様に気を失った。
ゲロ多め。