離島に作られた一企業の為だけの空港、元々は廃棄され荒れていたそれを買い取り整備しなおした私のビジネスパートナーが滑走路上で私を出迎える様に両手を広げて立っているのを視界に収めながら、私は抱き上げた姿勢のまま眠りについたユーリちゃんと隣の座席で私にもたれかかる様にして眠るネムリさんをぎゅうと抱きしめた。
「予定では幹部会の時間だった筈。本当に厄介だな、彼女は」
二人を起こさない様に呟いた言葉、ズルではあった、だが取れる選択肢の少なさから彼女と手を結んだが果たしてこの選択が正解か、あるいわ最も目的に適したものだったかを考えた時、自信が無くなる。
「弱音だな、完全に」
漸く目的の為の魔女を手に入れたのだ、腕の中のこの子を手に入れるには絶対に必要な選択だった。無理やりそう考え自身の中の揺らぎ、の様なものを抑え込む。
緩やかに停止する機体、機械的に笑みを浮かべる添乗員の案内で機外へ出るとサングラスをかけたパンツスーツ姿のビジネスパートナーが私を出迎える。
「あははは、無事で良かったですよ先生!」
簡単にまとめられた髪、垂れ目気味の狸を思わせる容貌は彼女の本性を知らない人間には親しみを抱かせるか、あるいは侮らせるには充分なものなのだろう。しかし私は身体に無理に気力を詰め込み彼女に笑みを返した。
「えぇ、折角ご協力頂いたのに無駄にするわけには行きませんからね」
油断など毛程もしていい相手ではない、本来のストーリーに置いて彼女は魔王軍と手を組みスターゲイザーの封印装置を完成させる売国奴にして破滅主義者の武器商人なのだ。死すらも受け入れた私の同族、生きるこの世が舞台になり下がった畜生の同族に私の復讐を奪わせる訳にはいかない。
「えぇ、用意してくださった諸々の準備のおかげで無事目的の魔法少女を保護する事が出来ました」
「それはなによりです!いやぁ、先生にどうしても必要な情報があると言われその内容を聞いた時は酷く驚きました!まさか革命の悲劇、東欧人質事件の被害者の娘がまだ生きているとは!!」
彼女の手のモノを使ったのだ、知られているとは思って居たがまさか本人が現れるとは、面倒な。
「えぇ、これもなにもかも七星さんのおかげです」
「ふふふふ、そんなまさか、先生の千里眼に等しい知識と視野のなせる事ですよ」
何が楽しいのか、いや違うな、なにもかも楽しくなどない、同族なのだ、その程度は分かる。彼女はこうすれば私が不愉快になると分かった上で私を揺さぶり、少しでも私から金になる情報か私の一端でもいいから掴もうとしているのだ、魍魎め。
「彼女達をベッドで寝かせてあげたいのですが、案内をお願いできますか?」
背負う形に担いだユーリちゃんに寝ぼけ眼で私の肩を借りる形で歩くネムリさん、二人に視線を送れば彼女は大げさに驚いた様な反応をして、これは!私としたことが失礼いたしました!そう言って自身の背後に控えていた黒服の大男たちに指示を出し何処かへ二人を連れて行く。そぉらみろ、流れる様に彼女は人質を二人取った。抗うには手駒となる魔女が少なすぎる。
快晴の青空に刺すような陽射し、ほんの少し前までいた筈の東欧の凍える様な冷たさが幻肢痛の様に身体を覆う、さぁ参った、人間同士のやり取りが一番疲れる。
「先生、彼女達に関しましては何の心配も要りません、ただ、今回協力させて頂いた旨お忘れなく、色々便宜を図っていただければと思う次第でして」
「分かってます、七星さん」
「ふふふ、先生、私の命は先生のお陰であるようなものなんですよ??ぜひ、下の名前で御影と呼んでください」
では、御影さん。商談を始めましょうか?