『ちさたき』を特等席で見るために   作:セーフハウスの窓

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 今更ながら、この手の話は苦手という人も居るよなぁと思い至ったので、私はこんな話が書きたくてこの物語を書き始めましたよっていう自己紹介的なプロローグを書きました。
 本編前の時間をすっ飛ばして時間軸として本編で言う所の1話以降2話以前のクルミがやってくる前らへんです。


プロローグ:TOYBOX

「錦木千束、買い出し任務より帰還しました〜!」

「たきな、戻りました」

 

 カランカランというドアベルの音を潜って、甘いあんことそれを引き締めるコーヒーの匂いを嗅ぐとリコリコに帰ってきたんだって感じる。

 

「ほら千束もたきなもさっさと着替えて、私だけでこの店が回ると思ってるの!?」

「お帰り千束、たきな」

「看板娘が帰ってきたか、千束ちゃんは今日も可愛いねぇ」

「でへへぇ〜そんな褒めても千束スペシャルしか出ませんよ!」

 

 ミズキが忙しそうにホールを駆けまわっていて、先生がコーヒーと和菓子を作ってて、いつも来てくれる常連さんが居て、最近はたきなも新しい仲間としてやってきた。

 今は本当に毎日が楽しい、本部にいた頃にはできなかった誰かを助けるお仕事が出来て、誰かから感謝されて、沢山の人と繋がっていける。

 本当に私がやりたかったこと。

 でもひとつだけ足りない。

 

「千束、お得意様(DA)から仕事(任務)が入った」

「えぇ〜ついこの前やったばっかり「おもちゃ箱が出たそうだ」たきな、すぐ出るよ」

「えっ、はい!」

 

 通り名はおもちゃ箱(トイボックス)、DAから捕縛指示が出されている裏ではちょっと有名な掃除屋で私が絶対に捕まえなきゃいけない人。

 私の師匠にして元相棒。

 着替えようとしていた手を止めてそのままもう一度ドアを潜り外へ向かう。

 すぐに携帯に位置情報が送られてくる、場所は町外れの廃ビルだった。

 少し距離が離れてるのでたきなと一緒に移動用の車に乗り込む、運転は私。

 

「千束、対象は何ですか」

「トイボックスって呼ばれてる自称掃除屋(スイーパー)で、武装したテロリストとかカチコミかけようとしてる暴力団なんかを始末してる人だよ」

「……それ、普通は殺し屋とかテロリストっていうんじゃないですか?」

「記録上一般人への被害は出てないから……まあ自主活動してるちょっと過激なDAみたいなものだよ。あっ、それとDAからは捕まえなさいって言われてるから今回も殺しちゃダメだからね?」

「……わかりました」

 

 たきなに説明しているうちに届いた座標のビルに着いた。

 外からは変わった様子は見えないけれど、階を上がり内部の調査を進めていくにつれ段々と戦闘の痕跡が増えてくる。

 

「これは5.56mm……こっちは7.62mmだし9mmもある……武器に統一性がない?」

「あー、こりゃ間違いなくトイボックスだわ」

 

 たきなの言う通り、床に散らばる空薬莢は複数の規格のものが散らばっており、幾らか銃その物も落ちている。

 これがトイボックスの暴れた後のいつもの光景。

 多くの銃を持ち運び、弾が尽きたら次の玩具を取り出して戦う、故にトイボックス。

 

「あれ、お早い到着だ、千束ならまだ買い出し中だと思ったんだけどね」

 

 更に踏み込むと体を丸めれば私も入れそうなほど大きなコンテナを背負った女の子が凄惨な現場にも関わらず返り血ひとつ浴びずにそこに立っていた。

 おそらくもう弾が入ってないであろうAKを拾い上げて配達業者のバッグに偽装されたコンテナに格納しつつこちらを振り返る。

 

「最近リコリコに頼もしい相棒がやって来たからねぇ〜、それより相変わらず私の予定把握してるんだね」

「そりゃあ私の最優先ターゲットだからね」

 

 淡い茶髪を肩で切りそろえた髪型、アメジストの切れ長の瞳。

 間違いなく私のかつての相棒、苧環ゆかりだ。

 

「で、今日こそ実弾を持ってきてくれたのかな?」

「ゆかりは捕縛命令が出てるから、そうじゃなくても私はもう誰も殺さないよ」

「それじゃあ今日も捕まるわけには……おっと」

 

 ゆかりはその場でくるりと回って不意打ち気味に撃たれたたきなの弾を避けるとそのまま座り込んだ。

 たきながそのまま発砲を続けるが、ゆかりの背負うコンテナは私達のカバンと同じく防弾仕様になっているので拳銃弾程度じゃ弾かれる。

 

「新しい相棒は随分好戦的だね千束!」

「避けた……?」

「たきな、この距離で撃ったって当たんないよ」

 

 ゆかりは私みたいに射撃前に避けるのではなく射撃を″見てから″避けられる。

 異常なほどの反射神経と身体能力、私とはまた違った闘うための才能、そしてそれ故につきまとう抑え切れない闘争心。

 苧環ゆかりは、相応に強い人と本気の殺し合いがしたいのだ。

 

「それにしても……たきなって言うんだ、警告も容赦もなく撃ってくるしいい眼してるね」

「下がってたきな!」

 

 たきなのリロードタイミングでゆかりがコンテナをその場に残して裏から飛び出してくるのが見える、狙いは私じゃなくてたきな、銃は抜かずにナイフだけ。

 私もたきなの方へ飛び出しながら射撃を繰り返す、当たりはしないけど時間は稼げるのでゆかりとたきなの間に入り込む。

 

「なーに人の相棒にツバ付けようとしてるのかな!」

「まだ殺したりしないよ、ちょっと味見しようとしただけなんだからそんな怒んないでよ千束」

 

 実際拳銃を持たずにナイフだけで飛び出した時点で手加減はしてると思うけど、避けられなきゃ普通に斬りつけるつもりだったでしょ!

 それにしたって最初からコンテナ下ろしてナイフを抜くなんて随分たきなの事を気に入ったか、あるいは何かテンションが上がるようなことがあったか……

 ひとまず牽制射撃を行って一度距離を取る。

 さて、どうやって捕まえようか?

 格闘戦でも射撃戦でも基本的にお互い攻撃が当たらないので普通に戦ってたら全く決着がつかない。

 至近距離での格闘戦ならゆかりが僅かに上、そのリーチの少し外の近距離戦なら私が上、だからお互いに牽制をしながら距離を詰めたり離したり……

 ゆかりとの戦闘はいつもこうだ、私が本気で殺しに行かない限り本気で殺しに来ることはない、全力で殺り来るならもっと簡単に詰められるはずなのに。

 何故ならゆかりは本気の私と殺し合いがしたい、だから私が本気を出さない限り私自身が一番の人質になる。

 もっとたきなとコンビネーションを取れるようになったら行けるかな?

 たきなの射撃の腕なら充分ゆかりと渡り合えると思う。

 でも私もゆかりの本気中の本気を見たことないからわかんないなぁ……文字通りの全力を出すと体が壊れるから─そこで戦いが終わってしまうから─あんまりやりたくないって言ってたけど。

 次の手をどうするか考えてる内にゆかりがスカートの中から手榴弾を転がすのが見えた、多分非殺傷のスモーク。

 

「そろそろ増援が来ちゃう頃かな?殺さずに無力化するのも面倒だし私はそろそろ帰るとするね」

「待ってゆかり!」

 

 すぐに室内にスモークが充満して数メートル先すら見えなくなる。

 足音と窓ガラスを叩き割る音だけが響いて煙が晴れる頃には室内のどこにもゆかりの姿は無くなっていた。

 

「まーた逃げられたか……」

「追跡しますか?」

「もう人混みに紛れてるだろうから難しいかな」

 

 これもいつもの結果だ、私達の目的はゆかりの捕縛、それに対してゆかりはただ逃げきれればそれで良い、根本的にゆかりの方が有利なのでいつも逃げ切られる。

 まあ例え射殺許可が出ていたって多分どうにもならないと思うけど……そんな変な信頼があるくらいには私はゆかりの強さを知っている。

 さてと、次また現れるまでになにか対策を講じておかないと、せっかく私にも新しい相棒ができたんだから。

 


 

 ビルからの降下に使ったグライダーをコンテナに格納しながら事前に用意しておいたバイクの一つに跨り街道へと進む。

 偽装されたコンテナのおかげでもう傍から見れば私は立派な食品配達業者だ、こうなればリコリスの人達はむやみに発砲してこない。

 いやー、それにしてもついに始まったなぁ『リコリコ』の本編!

 千束が子供の頃から可愛かったしわかりきってたことだけど、たきなもクールビューティーって感じでカッコ良かったな。

 先日武器取引現場で機銃掃射事件があったからそろそろだろうといっちょ反社ぶっ潰してみたけど、思った通りたきなを連れて来てくれて嬉しかった。

 まだ始まったばかりの組織の忠犬だった頃のたきなが見れて良かった〜、こっから段々千束に絆されて丸くなったような、むしろ余計尖ったような感じになるのを観察していける。

 それになんでか知らんけど私には捕縛命令が出てるっぽいのに、当然のように命を狙ってきたのもいいね。

 流石に即死の頭じゃなくて腹だったけど、命中後手当しなければ死にかねない場所をしっかり狙って初弾から命中コースだったし、やっぱりたきなの銃の腕は凄い。

 普通に殺気ぶつけて来たのは思わずゾクゾクしちゃったよ。

 でも仮に戦うならもっともっと熟れてからかなぁ……まだどこか機械的というか効率重視な所がある、もっと理不尽さというか人ゆえの突飛なさが欲しいな。

 たきなにそんな人間らしさを芽生えさせるのは千束に任せておくとして、こっからどうやって二人を観察していこうかなぁ、やっぱり二人の日常生活も観察したいし、それはそれとして二人の共闘してる姿ももっと見たいし……

 あぁ、本当に私はどうしょうもない人間だ。

 私は『ちさたき』が成し遂げられる所を見たい、出来ればあの沖縄のシーンやハワイに行くところまで追っかけて行きたいと思う心があるのと同時に、本気になった千束と殺し合いをしたいという思いも未だ私の中で燻っている……どころか日に日に大きくなっていく。

 何故なら私は千束が成人するまで生きられるかどうかなのを知っている。

 アニメなら吉さんが人工心臓を用意してたけど、すでに私というイレギュラーが発生している以上必ず同じように話が進むとも限らない。

 私の心は『ちさたき』を見守りたい。

 私の体は千束と本気で殺し合いをしたい。

 もし仮に千束以上に強い人が居たら殺し合いするのはそっちでもいいんだけど、ずぅっと裏に潜ってても結局そんな人見つからなかったしどうしようかね。

 千束も不殺の誓いを破るつもりはないし、本気でかかってこない千束を殺すなんて勿体無くて出来ないからなかなか思うように戦えないし……千束の殺意を引き出す方法なんて、それこそ目の前でミズキとか先生、あとクルミとかたきなを殺すくらいしか思いつかないんだよなぁ……

 ひとまず『ちさたき』の動向を見守りながらおいおい考えていこう。

 もしかしたら、死ぬ前に本気で戦ってくれたりするかもしれないもんね?




 私は、敵側の視点から描かれるちさたきが見たいので皆も書こう!
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