黒い刺客に成り代わったブルボン推しがデビューを1年ゴネる話 作:ィユウ
ちなみにナタールのキャラ付けは適当です。
ウマ娘たちの頂点を決める年末の祭典「有馬記念」が、12月26日に開催される。これを受けて月刊トゥインクルでは、今年の菊花賞にてレコード勝ちを飾ったビワハヤヒデと、昨年無敗クラシック三冠を成し遂げたミホノブルボン、そして二人と同じく菊花賞覇者であり昨年度の有馬記念の出走者でもあるリオナタールの対談を企画した。
ビワハヤヒデは去年9月、ミホノブルボンは2年前の9月、リオナタールは3年前の12月に、いずれもクラシック三冠を目標に活動を開始。各々ライバルと共に同世代のシーンを盛り上げてきた。ちなみにナタールは引退後ではこれが初めてのメディア露出とのこと。今回ではそんな三人に、自らのキャリアと有馬記念への想いについてそれぞれの視点から語ってもらった。
出会いはジンクスに阻まれた?
──三人が初めて会ったのはいつ頃ですか?
リオナタール どうでしょうね?私としては、面と向かって合うのは初めてだと思うんですけれど。
ミホノブルボン ……私の記憶メモリに、お二方とのマッチング記録のヒットなし。つまり『初対面』だと推測します。
ビワハヤヒデ 同じくだ。全員にとって、別世代のいち強敵として認識していた、というぐらいの関係性だと思うよ。
リオナタール ですよね?デビューは私が一番早かったんですけど、怪我もあって同じ世代以外の人と戦う機会はそんなになかったりしてて。もう本当に最後の最後にやっと、ってくらい。
ミホノブルボン はい。機会が、という部分は同じだったかと。私は今までクラシック級までの方々としか戦っておりませんから。
リオナタール あーそうだった。結構同じ(クラシック級の)タイミングで故障を起こしてたりするんですよね、ここ二人は。
ビワハヤヒデ ああ。私が言うと説得力はないが、妙にそういった流れがあったと感じることはある。菊花賞を獲ると長期休養に入ってしまう例はマックイーン君と……その1年前から合わせて4年も続いたからね。ジンクス、と言えば伝わりやすいだろうか。
リオナタール すごいジンクスですね、それ(笑)。そういえばマックイーンさんとも戦ったことなかった気がするし、菊花賞(を勝った者)同士でぶつかることって結構なかったりするのかなあ……って考えると、今回の有馬って結構貴重だったりするかもしれませんね。
自己主張と、夢と、証明と
──お三方にとって直近のGI勝利であります菊花賞。そこで1着を取ったときの感情などを、改めて振り返っていただければ。
リオナタール 直近といっても、自分にとっては最初で最後の、って感じなんですけれども(笑)。まあいろいろ重なって動揺もあった中というのもあるんですけど、やっぱりそれまで勝ってきたレースとは結構違う味わいだったなというのはあります。
ビワハヤヒデ そうだな。私のときは、その前に3つGIへ挑んでギリギリで跳ね返された、という分が溜まりに溜まっていたからね。それが最高の形で結実してくれたことには喜びが抑えきれなかった。無論想定外がなかった訳ではなかったし、「まだ気を引き締めていなくてはならない」と思えるよい勝ち方をした、させてもらったなという充実感が大きかったかな。
ミホノブルボン 私は……目標『三冠ウマ娘になる』が目の前まで迫っていたという前提がありましたから、お二方とは違うベクトルでの回答になるかもしれません。その上で発言するとすれば……勝利当時に発現・計測したステータス『歓喜』は、想定よりも小さいものであった、と感じざるを得ませんでした。
──それは意外です。
ミホノブルボン はい。しかし不満があった、容易すぎたからという訳ではありませんでした。ハヤヒデさんと同じく様々な困難を突きつけられたレースではありましたし、(ビワハヤヒデを凝視しながら)すぐ次の年で破られることになったのですが……レコードを更新したという栄誉も合わせて不足のない勝ち方ができましたから。ただし、言語化に窮するのですが……なにかが欠けている、と本能が訴えるように、思考回路にエラーが発生していて……。
リオナタール そうなんですか……?なんだか燃え尽き症候群、とはちょっと違うような感じですね。
ミホノブルボン ええ。ですがそうであるとも、そうでないとも取れるような不思議な感覚で……その意味を探すため、と表現するのはおそらく不適切となりますが、故障発生時から今まで現役続行の意思を折れずにいたのは、間違いなくそのときの記憶が背景にあったからと存じます。
──夢の続きを見たい、ということですね。
ビワハヤヒデ フフ。これから戦う私としては、喜ぶべきか迷うイレギュラーかな?
リオナタール いやぁ……自分としては三冠を取るとそう見えるものなのか、って思うばかりですね。自分のときは怪我で皐月賞に挑めなかったせいで、始まる前から潰えた夢でしたから。
──確かに、ナタールさんのクラシック級は年頭から長期の休養が発表されていましたね。
リオナタール はい。この三人の中では私だけなんですよ、皐月賞行ってないの。それでやっとダービーに出られる頃にはテイオーが頭一つ抜けてる、っていうその……大きい壁があったって状態で(笑)。
ビワハヤヒデ ふむ……だが、実際復帰後の君の活躍は目覚ましかった。条件クラス、トライアル、ダービーと駆け上がっていく様は私としても胸を熱くさせられたからね。
リオナタール えー!嬉しいです。やってきてよかったですね。正直あの時期の自分……というか割と最近までそうだったんですけど、ファンの人たちの声って聞こえてるけど聞いてない、なんておかしな状態だったりしたんですよ。
──なにかプレッシャーのようなものに追い詰められていた、ということでしょうか。
リオナタール そうです。やっぱりあのとき、自分たちの世代で誰が注目されてるかって言ったらテイオーしかいなかったんですよ。そのテイオーが消えて、主役不在って呼ばれる中で菊花賞に行くことになってたんですよね。
──かなり切実な状態だったんですね。
リオナタール ええ、本当に。ダービーでは結構離されて2着だったので、正直誰よりも差は感じてたんですよ。でも3000mならチャンスがあるだろうって持ち直した矢先にコレで。
ビワハヤヒデ ……倒すべきライバルを失うというのは、それほどまでに恐ろしいのだな。
リオナタール はい。こうなるともし怪我がなければ、とかテイオーの強さはもう一人歩きしていくばかりで、自分ってなんだろう?という。自分は「テイオー以外」にしかなってなくて、「私、私、私。私はどうなんだ?」って盲目的な、そんな状態です。
──ですが今では、あの菊花賞はファンの間では名勝負として語り草となっています。掲示板に載った他の面々も、以降話題を提供し続けてくれましたね。
リオナタール ……ええ。でも自分はもうただ「やってやったぞ」というその……いっぱいいっぱいだっただけで、それからはまったく振るわなくなってしまいましたから。あの後もずっと存在感を出してる(ナイス)ネイチャや、シダー(ブレード)、他の皆は……本当に凄いです。
グランプリの景色
──それではいよいよグランプリについて話題を移しましょう。近日開催のGI・有馬記念について、まずは現役のお二方の想いをお聞かせください。
ビワハヤヒデ そうだな。私としてはシニア級の先輩方と初めて顔を突き合わせる場だ、大いにリスペクトを持ちつつも……ああ、妹になぞらえて言うなら、狩り尽くす、という気概で挑ませてもらうつもりだよ。
ミホノブルボン 同じく。先ほども述べましたが、私にとって同世代の方々以外と競うシチュエーションはこれが初です。そしてその場は、この一年向き合ってきたあらゆることへのアンサーを出すには最適な舞台だと認識しています。三冠という称号を背負うに相応しい走りを……皆さんにお見せします。それだけです。
──ありがとうございます。ではナタールさん、去年の有馬記念出走者として、今振り返ってみて見えるもの、というものがあれば、是非おっしゃってください。
リオナタール ……そうですね、競技に出なくなってからも、やっぱり有馬は自分にとって特別なレースではあるな、と。でなきゃここにいないですから(笑)。今思えば、あの場に一度きりでも出ることができたのは、ちゃんと私のことを見ていてくれた人たちがいたからなんだよな、とここにきて改めて振り返ることができましたね。
──確かに、有馬記念とは出走にファンの投票を必要とするレースですから、応援してくれる人々の想いというものが最もダイレクトに伝わってくる場所ではありますよね。
リオナタール はい。それを伝えに来てくれた(ファンの)皆さんへ、現役中に目を向けられなかったのは、痛恨の極みだったなと。
ミホノブルボン ……この流れで話すべきではないのかもしれませんが、ファンの皆さんの声がこちらに届くというのは本当に嬉しいことです。SNSの類にはあまり触れられてはいないのですが、マスター(=トレーナー)からという形でメッセージを聞くことも多くありました。先ほどは足りないものの意味を探すため……というように形容しましたが、実際にはその声も原動力になっていたかと。
ビワハヤヒデ 目標のためだけではなく次第に応援してくれる誰かのために、という想いも混ざっていく感覚だろう?
リオナタール うわぁ、ものすごく羨ましい(笑)。
グランプリと、その先
──最後に。この有馬を越えてからも続く皆さんの未来について、思いの丈を語ってください。
ビワハヤヒデ ……そうだな、私は気持ちを込めすぎると話が長くなるタチでね。手短にいこう。まず私の勝つ姿に夢を見てくれる人々がいると定義した上で──。
リオナタール もう長くなりそうですね(笑)。
ビワハヤヒデ (笑)。では伝えるだけにしておこう。私はこれからも自らの望む勝利、栄光のために、理論を証明していくだけだ。だから見ていてほしい、とね。
ミホノブルボン ……私も変わりません。私の走りに夢を見て、今まで待っていてくれた方々に、ただ全力を捧げ続ける、とだけ。
──ありがとうございます。全力で駆け抜けるお二人の姿を、これからも追っていければと思います。それではナタールさん、どうぞ。
リオナタール 私もですか!?あーその、まあこれからもセカンドキャリアが待ち受けているんですけども、そこでもう一度皆さんに注目されるようなすごいことをしでかしたい、という感じですかね。
──ありがとうございます(笑)。ちなみに同じく引退済みの同期の二冠ウマ娘・トウカイテイオーさんは所属チームに身を置きながらトレーナーとしてのセカンドキャリアを歩んでおります。ナタールさんも、そういった後進育成などの考えはありますか?
リオナタール あ〜えっと、今のところは全部未定です(笑)。それもいいな、あれもいいな、って感じなので。でも勇気は同期にものすごくもらってきましたから、ほんとに飛んでいくだけって感じです。シダー見てて!私もまだ消えないぞ!
──開幕の迫る年末頂上決戦。同レースにはハヤヒデとブルボンの両名も出走予定だ。そのほか注目メンバーも数多く集まる舞台にて、頂点を掴むのは誰になるのか。
アニメSeason3エグい……。
次回、『残影─有馬記念─』。