会社から帰り、ベッドに寝転びつつスイッチを立ち上げる。
今日もまた厳選が始まる。
俺はいたって普通の社会人、中島智也だ。
うちの会社は俗に言うブラック企業というモノなのだろうが、子供の頃からやっていたポケモンを今も続けている。
「また通常色かよー」
俺は今、剣盾でダイアドの色厳選をしている。側から見れば変人だろうが、他の人が釣りをするように趣味としてやっているのだ。
「あ゛ーーーー」
また一つ悲鳴が上がる。俺は俗に言う「ポケモン廃人」だ。
今日の狙いはレックウザ。通常色でもかなりの人気を持つレックウザだが、黒レックとも呼ばれる色違いレックウザとなれば、すごい人気だろう。
「クァwせdrftgyふじこlp‼︎」
ついに出た。色違いレックウザだ。もちろんレックウザを選ぶ。
そしてレポートを書き、ゲームを切る。
しっとりと夢に落ちていく。
だんだん意識が無くなっていく。
自我が消えていくような感じ。しかしやっと色違いを出したことから来ているのであろう、優越感も感じる。
いつもと全く違う感じ。
今日も眠りについていく。
そして今日の終わりを迎える。
*
目が覚めると、そこは病院だった。
もちろんお見舞いに来てくれる人などはいない。
持病も無いのになぜ病院に運ばれたのか?
そもそも誰が通報したのだろうか?
俺が倒れたとしても通報してくれる人は親ぐらいしかいないだろう。
それか最近うちの会社に来た後輩か。
ちょっとポケモンの話で気が合ったからってそこまでされる仲では無いだろう。
もしその後輩が助けてくれたんならあとでお礼を言っとかなきゃな。
とりあえず誰が助けてくれたかは今は関係ない。
俺はなぜこの病院に運ばれたのだろうか?
その結論が見つかるのは、すぐ後であった。
「あなたは睡眠不足で倒れたんです。そちらの方から聞いたところではなかなかのブラック企業だったそうですね。それなのに帰ってからもゲームをしていたと聞きました。大丈夫なのですか?」
看護師さんの横を見ると、あの後輩がいる。
やはりあいつが助けてくれたのか。
あいつが唯一のスイッチのフレンドだから、オンライン状況でポケモンをしていたことがバレたのだろう。
しかし俺が今一番思っていることはそれじゃない。
あのクソ上司はどうなったのだろう。逮捕されたのか?まあ、そう考えるのが妥当だろう。
「そういえば中島さん。会社、やめておきましたよ。勝手な判断ですが、これ以上中島さんが傷つくのが見たくなかったので。あと、上司は逮捕されました。ほんっとに精々しましたよ」
しかしこれで俺の稼ぎ口がなくなってしまった。
「あ、お金のことは心配しなくていいですよ。僕らは賠償金として300万円がもうすぐもらえるそうなので。」
何から何までいい後輩だ。しかし、こいつがもう後輩じゃなくなるのは惜しい。
そんなこんなで俺は無事に退院するはずだった。
お前、なんでやめたんだ、一生呪ってやる
仕事から逃げるな
お前らだけは絶対に殺してやる
上司が出てくる悪夢がここ最近ずっと続いている。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
呪いのように付き纏ってくるこの言葉。
こんなのなら…
俺は病院内でたまたま見つけたメスで───
はい。よーするにブラック企業に勤めてたんですよ。主人公は。(謎倒置法)