設定を変えました。
3人称視点に挑戦しました。
前の話と重複する部分があるけど許して。
『あれ?』
ただの一般EDF隊員ながら一定数の隊員からコマンダーと呼ばれる男が声をあげた。
彼は先ほどまで人類がプライマーの攻撃に対して優勢であった世界にいて、基地の食堂で焼肉定食を食べようと箸を持った瞬間であった。
ところが、
『オレ俺の焼肉定食はどこ?』
男の目の前から焼肉定食は消え、手には小さい缶詰が一つ。
コマンダーがあたりを見渡すと瓦礫だらけの地下。先程までいた清潔な基地の食堂とは全く異なる場所に代わっていた。
男はこの現象に思い当たる節があるようで苦虫をつぶしたような顔で怨嗟たっぷりにつぶやいた。
『歴史改変か。プライマーめ』
プライマーの歴史改変を認識できる男、コマンダーと呼ばれる男は転生者であった。もっと深く踏み込むとEDFシリーズを楽しんだゲーマーで、もちろんEDF6もプレイ済みである。
なので、プライマーがどのような戦略をとり、どのようにEDFに滅ぼされるのかも知っている。
ただ、転生者ことコマンダーはとんでもなくビビりなのでストーム1と共に戦うなんて勇敢なことはできなかった。ストーリー乖離を何よりも恐れたのだ。
そんな彼は転生者という特性からリングを介してなくても今までの歴史を認識することができた。といってもゲームと同じでプライマーが歴史改変をする前の優勢世界のみの歴史であったが。
そんな優勢世界の焼肉定食に思いを向けるコマンダーにとある男が近づいてきた。
「飲み水をもらってきたぞ……その様子じゃプライマーが歴史改変したのか」
『陸男か。今回もダメだったみたいだ』
「皇帝都市を落とされて諦めたインベーダーを見習って、プライマーも諦めて欲しいもんだ」
インベーダーのことを口に出した陸男と呼ばれた男。陸男というのは本名ではなくあだ名である。
EDFをプレイしている人から「陸男」と呼ばれる男は大体は一人の伝説の男を指す。そう、the地球防衛軍1と2主人公その人である。たった1人で様々な戦場に送り込まれては化け物扱いされたりと散々な言われ方をする苦労人。
そんな彼がEDF5・6の世界にコマンダーと共に転生していた。
陸男はコマンダーこと転生者がゲームで遊んでいたことを共に戦っていたと認識していたらしく、転生者をコマンダーと呼ぶようになった最初の男だ。
こっちの世界でも相変わらずの規格外な男だが、仲間と大人数で戦うために力をセーブしているようだ。
コマンダーにとっての陸男の存在は転生後最大の幸運であった。
「コマンダーの様子じゃ人類はかなり優勢だったみたいだな」
『そうなんだよ、それこそあの臨海都市の再開発が無事に終わるぐらいには』
かき消された今に思いをはせながら、濁った水と小さい缶詰で腹を満たす。缶の中身はもちろん肉類ではなかった。
『陸男視点の歴史はどんな感じだ?』
「クラーケンと闇の魔物が投入された」
『あのイカか。ということはループは最後か。いやー長かった』
「毎回思うがよくあんな化け物をイカ扱いするよな……」
心底分からんという顔でコマンダーを見る陸男。そういえばと他にも思い出したように渋い顔をしながら口を開く。
「コマンダーはエイリアンをカエル扱いしたり、クルールをタコ扱いしていたが本当にそう見えるのか?」
『オレには奴らが人間そっくりに見えたり恐ろしい邪神にはどうしても見えないんだよな』
「見えているものが違うのか?まあ、コマンダーは時が戻っても記憶を保ったままでいられるし、歴史改変を認知できるような特別な人だから納得できるが……」
口を閉ざす陸男の様子を見てコマンダーは話を変えた。
『陸男もやっぱりクラーケンやクルールを恐ろしいと思ったのか?』
「あれは人間の本能に訴えるような生き物だ。ただのグロテスクな生き物だとか話している隊員がいたが内心じゃあいつも怖かったのかもな」
『そうなのか』
「コマンダーがストーム1と呼んでいた隊員もクラーケン初見時はビビっていたな。コマンダーが攻略法を話していたから何の問題もなかったが」
コマンダーは陸男の話を聞き、飲み物を吹き出しそうになったがこらえた。
『オレたちはストーム1と共闘して、なおかつ初見の敵の情報をベラベラ話してたのか!?』
「共闘というか、チームに組み込まれたというか………」
今度こそコマンダーは飲み物を吹き出した。
『どどど、どうして』
「マザーシップを無断で撃墜しに行った時にストーム1がついてきてな。ストーム1から情報部に俺たちの情報が洩れたいうのと、ストーム1からの熱い要望から」
『ついにバレたか。改変世界でも毎回二人でマザーシップを落としていたみたいだからストーム1も気になったのか』
「本部や情報部から無線が届いて所属やらスコアの過少報告の件がバレた時のコマンダーの顔は見ものだったな」
『すさまじい顔をしてただろうよ』
「そのときのストーム1の顔も面白かった。すごいドン引き顔だったな」
『ストーム1にはドン引きされたくないんですけど』
「同じことを言ってたな」
その時の顔を思い出したのか愉快そうに陸男は笑う。コマンダーは全く笑える状態ではなかった。大きな心配事があった。
『これかなり不味い気がする。オレたちがストーム1と共闘だなんて歴史に狂いが生じてしまう。もしかして今もストーム1と行動していたりするのか?』
「いや、地下にこもる前に襲撃されてな。そこで生き別れだ」
そうか、とポツリを言葉を吐いた後、モソモソと食べ始めた。
カチャカチャと缶詰にスプーンが当たる音だけが響く。
食べかすが少し残りながらも缶詰を完食したコマンダーが口を開いた。
『オレは全て知っていた。知っていたが何もしなかった。全てをストーム1に任せて俺は何もしなかった』
コマンダーはうなだれた。罪悪感でつぶされそうな顔をしている。
『知っているなら何をどうすればいいのかをストーム1に教えれば良かったんだ。なのにオレは自分の知識から外れることを恐れて……』
「同じことをストーム1に話していたぞ」
陸男はコマンダーの空き缶を手に取りながら話す。
「懺悔する罪人みたいにストーム1に話していた。歴史の繰り返しのことも、何もしなかったことも。それを聞いたストーム1は怒る事はなく、落ち着いた様子だった」
『……』
「ストーム1はコマンダーに一つ二つ質問をしていた。その後、ストーム1は重荷を下したように清清しい顔をしていた」
『大丈夫なのかそれ』
ストーム1は何度も何度も人類敗北の歴史を繰り返している。人類が優勢であった頃の記憶はプライマーの歴史改変で消されている。
コマンダーはストーム1の精神状態はあまりいいものではないだろうと素人ながら分かっていた。
ストーム1がおかしなことを考えていないかコマンダーは気になった。
「問題ないだろう。コマンダーと交流するようになってからストーム1の顔色が良くなっていったし」
『オレはストーム1相手にカウンセラーみたいなことをしていたのかよ………』
陸男は空になった二つの缶詰に飲み水をいれ、一つを食べかすを残すまいと啜りながら話す。
「俺はコマンダーに信頼を寄せている。コマンダーといれば死ぬことは絶対ないと確信しているからだ。それはインベーダーの時から変わらない。今のコマンダーにあの力がなくてもな」
『オレも陸男がいれば絶対死なないとは思っているけど』
「コマンダーの話だと、俺とインベーダーと戦った時と同じことをこっちの世界でもしたんだろ?」
『まあ、うん』
コマンダーは少し言い淀んだ。同じようなこととはゲームとしての行動からだ。
そんなことを知らず、陸男は自分が啜っていない缶詰をコマンダーに渡した。
コマンダーも陸男と同じように啜る。
「コマンダーはあのストーム1に入って、インベーダーと戦った俺たちみたいに戦う可能性もあったわけだ。
コマンダーの神がかり的な知識、経験やあの力はストーム1を生存させる一番の力になる。ストーム1はその事実を無意識ながらわかったのかもな」
『知識や経験はともかく、あの力が使えたら大問題だろ』
「プライマーのリング以上のぶっ壊れだからな」
リングの単語を聞きコマンダーは思い出したかのように暗い表情になる。
『ストーム1がリングで事故を起こすまで、オレたちは祈ることぐらいしかできないのが辛いところだ』
「と思うだろ?」
陸男はいたずらっ子がするような笑みを浮かべながら話す。
「実はマザーシップよりも大きい船が来たという噂がある」
『リングのことだな……あ!』
「コマンダーも気が付いたか。地下に引きこもっている俺たちにこの噂が届くということは、そこまで遠くない場所にリングがある」
『リングは毎回浄水場のある街に降りてきた。浄水場のある街からここはどれぐらい離れている?』
「少し遠いが行けない距離ではない」
それなら、とコマンダーは勢いよく空き缶の飲み水を啜り声高らかに言う。
『オレたちもリング破壊作戦に参加しよう!どうせ俺たちがいてもいなくても結果は変わらないがストーム1の負担は減らせる!』
「ああ!やってやろう!」
行動に移すべく、二人は立ち上がった。
あの力:再出撃・退却
マザーシップ撃破バレの話を書きたい。