プライマーの侵略により人類は窮地に陥った。
人口減少による社会システムの崩壊、プライマーの台頭により人類は表立っての生存が出来なくなった。
人々はEDFの地下基地や民間の地下施設など地上から離れてプライマーから身を隠していた。
そんな情勢の中、転生者と陸男は重要な任務を任された。
地下と地上をつなぐ出入り口に二人は立つ。
陸男は周囲をレーダーで警戒しながら小銃を構える。バックパックには布製の袋が引っかかってている。
転生者は小銃をスリングで首から下げていた。首からさげた小銃を手で支えることはせずに、自由になった両手は大容量ポリタンクでふさがっている。背負っているバックパックは戦闘時にも使っているものだが、戦闘では確実に使わないであろう物が飛び出している。他にも物が入っているが武器などの戦闘用に使うものはなさそうだ。
『頼むぞ陸男』
「任せておけ」
『俺もレーダーは見れるが丸腰だからな』
「心配するな、必ず基地に帰してやる」
ありがとう、と返事をする転生者だが陸男の“基地に帰してやる”発言で紫と橙色のとある男を思い浮かべ少し不安になった。そう、彼についていった民間人は家に帰れたっけと。
二人は基地の外に出る。
空は分厚い雲で覆われている。風が強く吹き、枯れた草木を揺らしている。
『雨が降りそう』
「これは目的の物を取ったら寄り道せずに帰った方がよさそうだ」
整備されていないコンクリートの道を歩く。
道路は水の溜まった跡がありボコボコと歩きづらい。
道には崩れた瓦礫や車両が放置されており、中にはひっくり返った一般車両や壊れた戦車が転がっていた。放置された車両には種類に関係なくスプレーでバツ印が描かれていた。
風が重い空気を運ぶ中、転生者と陸男は迷わずに目的地に進む。
『このあたりのプライマーを掃討しておいてよかったよ』
「そのままにして基地を襲撃されたり繁殖されても困るからな。このエリアに戻ってくる前に色々調達できるといいな」
うんうんと頷く転生者。崩れた建物の間を縫うように歩き、避けられない瓦礫はよじ登りながら進む。
時折レーダーや双眼鏡を使い進行方向に怪物がいないかを確認するため時折足がとまる。
ゲーム内のレーダー同様この世界のレーダーも優秀だが、地中にいる怪物は見つけられないし急に反応が出たりとレーダーだけをあてにするのは危ないのだ。
しばらく進むとバスの車庫があった。
二人はバスの車庫の敷地に入った。彼らの目的地はこのバス車庫であった。車庫に並んだバスにはスプレーでの模様は描かれていなかった。
転生者はバックパックからバールをとり出し、バスの給油口を無理やりこじ開けた。開いた給油口に給油ポンプをいれてガソリンを吸いだす。刺激臭があたりに広がる。
転生者はガソリンがあると分かり嬉々として作業を進める。
『前の戦闘時に車庫付近で戦わないで正解だった。戦っていたらガソリンが燃え上がっていた』
「いままでは気にしていなかったが、ここまで物資が不足してくるとこういったことも考えないといけないのは中々骨が折れるな」
『インベーダー時空で意味もなくガスタンクを爆発させてきた男の発言だ。説得力がちげぇや』
「実行犯は俺だけど指示したのはあんただからな」
というか、あのガスタンクへの攻撃に意味がなかったのかよ、と呆れたようにいう陸男と意図的に無視して作業を進める転生者。
そして転生者の作業が終わった。
『今回のポリタンク分は貯められた』
「まだガソリンが残っているバスがありそうだな」
『往復して取りに来ないとだけどこの天気じゃあ』
駆除任務中などは雨が降ってきても気にせずに続行するが、今回は調達任務だ。
ここで雨に濡れて風邪を引き戦闘が出来なくなったり、風邪をひいて貴重な薬を消費したりなどのリスクを負ってまで遂行する物ではないのだ。
転生者はバックパックからスプレー缶を出す。ガソリンを抜いたバスにスプレーで模様を描く。描かれた模様は移動中に放置車両に描いてあった物と同じだった。
陸男は転生者が描き終わるのを確認しバスの車庫から出ようとするが、転生者の目線は営業所に向いていた。
その営業所はプレハブで出来た建物であり、窓ガラスは割れ風化して金属部分のさびが壁面を汚している。
『使えるものがあるか見ていいか』
「……いいぞ。見てみよう」
営業所の扉のドアノブに手をかける。砂埃で汚れたドアノブは簡単に回った。鍵が開いていたようだ。
二人は営業所に入り、薄暗い部屋をライトで照らす。カビ臭くよどんだ空気がこもっていた。割れた窓ガラスから吹き込んだ雨風で白色だったであろう壁紙はカビがはえて黒ずみ、場所によってはめくれている個所もある。
窓から離れた位置でとある物が落ちていた。
『お金が落ちてる』
それは紙幣だった。よく見ると何処かに続くようにぽつぽつと落ちている。
元をたどると金庫があった。金庫の扉は開いていた。
『お金を持って逃げようとしたのか?』
「よほど慌てていたみたいだな」
金庫内には札束があった。
『紙だから燃料にもなるかも』
「どうだ明るくなったろう、てか」
やってみたいなそれ、と軽口を叩く二人。
だが札束には手を付けずに探索を進めた。
二人はいくつかの使えるものを見つけて持っていた布製の袋に突っ込む…ことはせず、営業所内にあったカーテンを外して風呂敷の要領で包んだ。
火事場泥棒のようなことをしているが、この情勢だと生きるためには多少のモラルは切り捨てなければならない。元々の持ち主がいなくなり使う人がいないのだ。なら生きている人間が使うべきだ。そう転生者は思い込むことにした。
それでも多少の罪悪感を感じながら探索を終えた。
「戦利品はメインのガソリンにカーテンにその他もろもろか」
『布は貴重だからな。生地が合わないかもだけど医療用に使えるかも』
ガソリンの入ったポリタンクを両手に持ち、カーテン風呂敷を背中、小銃を首から下げた大荷物で元来た道を戻る転生者と、行きと同じ装備で周りを警戒する陸男。
彼らは敵に遭遇することなく基地に帰還した。
***
「もしかしてそれは…」
『これぐらいは許されると思うんだ』
任務から戻り、二人しかいない住居兼待機場で転生者と陸男はコソコソと喋っていた。
陸男の目線は転生者の手が持つ物品に釘付けだ。
『娯楽もくそもないこの世界での唯一の楽しみになるかもしれないんだ。見逃してくれ!』
「何も言ってないが」
『もちろん陸男の分もあるぞ。4本あったから2本あげる』
「全部で4本か、そんなもんか」
陸男はその2本受け取る。
『この飢えに飢えてる状態で使ったら脳が快感でどうにかなりそうだぜ』
ゲヘへ、と下品な笑い方をする転生者に呆れつつも、楽しそうな姿に口元が緩む陸男。
彼の手にある2本、それはスティックタイプのインスタントカフェオレの粉だった。
スティックタイプのインスタントカフェオレの粉
転生者には聞きなじみのないブランドのインスタント粉。こっちでいう「ブレ〇ディスティック」
バス車庫の営業所からの戦利品。来客対応用の品だったと思われる。
これが20本とかあったら基地の皆に分け与えてた。4本は分けるには少なかった。
ガソリンって腐るのでは?と思ったけどフィクションだから許して…