でも大丈夫、ここチラ裏だから。
始まり
目の前に巨大な蟻がいるんだが?
そしてその蟻に銃を向けて発砲している軍人達。そして同じ服装、同じ装備を持った俺。
「怪物を撃て!!」
「何なんだ!この化け物は!」
「EDFは化け物を恐れない!」
混乱に飲まれる者、己を鼓舞する者。滅茶苦茶な現場。
思わず笑ってしまった。近くにいた同僚も銃を撃ちながらつられて笑う。
「わかるぜ。こんなフィクションみたいな光景は笑うしかねえよ」
本当にな。
見たことのある空飛ぶ黄金の円盤を視界に入れながら、心の中でぼやく。
どうしてオレは地球防衛軍の世界に転生しているんだ……
ここは『地球防衛軍5』の世界だ。前世によく遊んでいたゲームシリーズの1つである。
そう、前世。オレはこの世界をゲームとして楽しく遊んでいたプレイヤーだ。
記憶を思い出す前に親方日の丸的に入ったこの「全地球防衛機構軍」ことEDF。なんで入隊してから前世を思い出すかな……。いや、民間人のままでも命を落とす確率が高い。なにせ『地球防衛軍5』の物語の結末は総人口の9割を失い、社会システムはおろか文明も崩壊寸前というものだ。お先真っ暗。
オレは転生したがチート特典はもちろんなく、ストーム1でもない一般隊員なので大したことはできない。だが、民間人のまま抗うすべもなく一方的に殺されるよりは、EDF隊員になったほうがましだ。
あれ?『地球防衛軍6』は?ループして最終的には人類は勝っていなかったっけ?
残念ながらそれは最後の方であり、そこに至るまでとんでもない犠牲をはらっていた。
ループを自覚していたのはストーム1こと主人公とプロフェッサーだけだしな。
いまの時空も劣勢世界なのかもしれないし。
今、オレがいる場所は基地だ。つまり基地がプライマーに攻撃されている。
ここは市街地から少し離れた場所に位置する小規模基地だ。こんな所まで攻撃するなんて。
この基地はベース228のようにイベントなどで民間人を呼んでいたわけではないが業者など外部の民間人がいる。そういった人たちも怪物に襲われている。
こんなオレでもEDF隊員だ。助けないと。
視線の先には民間人の姿だ。ゲームではないので市民も普通に死んでしまう。
襲う巨大蟻を小銃で撃ち殺す。日々の訓練のおかげかスムーズに撃つことができた。
「もう安全だ。今のところは」
目の前の民間人は頭を抱えながらうんうんと唸っている。苦しそうだ。あんな化け物に襲われて頭が痛くなるのもわかる。
男は突然、オレを見て目を見開きすごい勢いで手を掴んできた。
「思い出した。あんたはコマンダーだ!!」
コ、コマンダー!?オレは平隊員なんですけど!
『だ、大丈夫か?とりあえず落ち着いてくれ』
「覚えていないのか?前世で共に地球を救っただろう!?”インベーダー”を撃退した!」
突拍子もないことを言う男に病院を勧めそうになったが、オレも前世持ちという病院案件の身の上であったため言葉が詰まった。
それにオレの前世はそんな大そうなことは……ん?前世?
ここは地球防衛軍世界……オレは転生者。目の前の男の「思い出した」という発言。
『お前も転生者か!?』
「そうだ!理解してくれたのか!」
オレは前世で戦いなんて経験してないが。しかし、“インベーダー”という単語が気になるな。
そういえば、地球防衛軍シリーズの1と2の敵が“インベーダー”だった。そいつらを撃退した。
もしかして
『陸男か?』
『THE 地球防衛軍』『THE 地球防衛軍2』の主人公。陸戦兵であり陸男とは通称である。
一人で”インベーダー”と呼ばれる宇宙からの侵略者を撃退した伝説の男である。
「姿も声も分からないがあんたのことはわかっていたんだ。あんたのおかげで一人でも勝てたんだ」
第四の壁を認識していたのかよ。コマンダー呼びはオレがテレビの前でコマンドをとばしていたからか。
「今世でも侵略者と戦うことになるとはな。でもあんたがいればどうにかなるだろう」
『オレはいらないだろ。陸男一人で十分だ』
「あれは作戦あっての活躍だからな。よろしく頼む」
そう言って陸男は手を出してきた。
よろしくするかは置いておいて、この窮地を脱するためにオレは二つ持っていた武器の1つを渡し、銃声の鳴る場所へ向かう。
訓練も受けていない民間人に武器を渡す。軍人にとってはあってはならない行動だが陸男ならオレよりも何倍も強いからね。仕方がないね。
陸男もやる気満々だったから許される。許されるよな。許されるといいな。
そんな不安にもまれながらも、陸男のおかげもありオレの所属基地は守られたのだった。
***
『陸男、お前これからどうするんだ?』
「もちろん入隊する。侵略者を撃退する力があるんだ。やられたままなのは俺の性に合わない」
『そうか、頑張れよ』
「コマンダーはオレと一緒にたたかってくれないのか?」
無理だが?陸男みたいな超人と共に行動なんて不可能だ。オレはこの世界を、敵の情報をゲームとして知っているだけだ。
他の一般隊員とともに戦うので精一杯だろう。
『やめておく。オレは流れに身を任せる。俺は強くない』
「何故だ?あんたはこの世界のことを知っているはずだ」
『奴らはインベーダーとは違う。どんなに人類が優勢でもひっくり返してくる。
それにこっちにも陸男みたいな人間がいる。最終的にそいつがどうにかしてくれる。オレが何かしたところで……』
「そうだとしても関係ない。俺は助けられる命は助けたい。もちろんコマンダーもな。
仲間がいるだろう?殺されるのを黙って見ているのか?」
そうだ。オレには仲間がいる。流れに身を任せれば皆死んでしまう。
ここはゲームではなく現実だ。
知っていたのに何もしなかった罪の意識でつぶれてしまう未来が見える。
きっとこの世界の大まかな流れは変えることはできないだろう。何せストーム1がいるから。ストーム1が選ばれしもので人類の代表だからだ。
時間は戻る。手に取った勝利も無に還る。
それでも、オレたちがこうして前世の記憶を取り戻した。意味があるのか無いのかは分からない。でもやらなければならないか。
『わかった!陸男と戦えばいいんだろ!?もう一度言うがオレは弱いからな!』
「よろしく頼む」
嬉しそうに手を出す陸男。やけくそなオレは勢い良くその手をとった。
こうして陸男は入隊した。
陸男は前と同じように一人で戦い、戦果はあげたものの色々やらかしたらしい。そこで陸男から名前の上がったオレがストッパーとしてバディにつくことになった。
こうしてオレと陸男のチームでプライマーに挑むのであった。EDFは一人じゃない!でも、このチームは二人しかいないぞ!