ダンジョンにモニカがいるのは間違っているだろうか 作:刺身の盛り合わせ
どうも、刺身の盛り合わせです。
今回は後半戦、前回の最後からの続きです。
今回の文章量はいつもの倍で、4800文字になりました。
前回の終わりで階層中が樹木で埋め尽くされ、モニカや晶達がどうなったのか…ぜひ読んでお確かめください。
それと、今回は後書きの最後に本作でのワイズオウルの設定を書いているので、興味があったら読んでください。
また、今後のために第44話での杖の描写を変更しました。(色が紅→漆黒へ変更)
感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。
それでは、どうぞ。
2023/05/25 ワイズオウルの設定に少し変更を加えました。
「……モニカさんの警告のおかげで、かなりの人数が軽傷でした、晶さん」
モニカが直前で放った警告のおかげで、シャドウと戦っていたほとんどの冒険者は軽傷で済んでいた。
「それでも数人はかなりの重症者がいるにゃ」
「でもそれは片手で数えられる程度で十分治療範囲だったでしょ?それと樹木に巻き込まれてシャドウも消えた、っていうのがラッキーだったかな。おかげでこの間に安心して治療が行えるでしょ?」
周りを樹木に囲まれ身動きが取れない状態となった晶達だったが、戦っていたシャドウが巻き込まれて消えた後に追撃が無かったため、この間に回復魔法を使える者は怪我人の治療を、それ以外の者は周囲の警戒と自分達を囲んでいる樹木の排除を行っていた。
『今ならあたし達を一網打尽にできるはずなのに、なんであのモンスターは何のアクションも起こさない?外にいるモニカちゃんのことも心配だし、早くここから脱出……』
樹木を取り除きながら晶がそんなことを考えていると、突如周囲を囲んでいた樹木が全て枯れたのである。
周囲の光景が見えるようになった晶達が目にしたのは―――
「————かはっ」
―――樹木に突き刺されていたモニカの姿であった。
「モニカさん!!」
ツムギが名前を呼んだ瞬間、モニカを突き刺していた樹木がまるで生き物のように動きだし、モニカを晶達の方向へ投げ飛ばした。
「―――ツムギッ!!」
「分かって、ますッ!!」
自分達のいる方向へ投げ飛ばされたモニカを糸で包み込むように受け止めたツムギは、即座にモニカの状態を確認した。
先ほど見た際は胴体を貫かれたように見えていたが、確認すると胴体ではなく左脇腹を貫通しており、かろうじて息をしている状態だった。
治療するためにツムギがモニカを運ぼうとした瞬間、ツムギとタマキの姿を模した大量のシャドウが晶達を囲うように出現し、一斉にモニカを抱えたツムギへと襲いかかった。
「【権能解放、世界の全ては我が手の思うがままに変容する。オブジェクト・クリエイション】ッ!!」
「そうは、させるかにゃ!!」
しかし、晶の魔法によって生み出された石柱とタマキの全力の一撃により、ツムギに近寄ろうとしていたシャドウ達は吹き飛ばされ、ツムギは無事に回復魔法を使える冒険者の下にモニカを連れていくことが出来た。
「な、なぁ。こいつの武器があれば俺達でもあのモンスターと戦えるんじゃねぇのか?」
「そ、そうか!嬢ちゃん、聞こえてねーかもしれねーがとりあえずサーベル借りるぜ……って何だ
唯一壊れていないモニカのサーベルを使い、モンスターと戦おうとした冒険者達もいたが、サーベルを手にした瞬間、
『モニカちゃんのサーベルがガラクタ?そんな筈はない、戦ってた時も相手にダメージを与えられていたし、何よりそんなにボロボロじゃなかった……まさか、専用武器?それが本当だとしたら、モニカちゃん以外にあのサーベルは使えないってこと!?』
冒険者達の話し声と自身の知識からモニカの武器の正体を推測した晶は、ワイズオウルを倒すにはモニカの力が必要不可欠と考え、背後で絶望や悲観の表情を浮かべている冒険者達に向けて指示を出した。
「全員聞いて。あたしはモンスターを、タマキとツムギはシャドウの相手をする。だから回復魔法を使える冒険者はモニカちゃんの治療、それ以外の冒険者は治療中のモニカちゃん達を命がけで守って。…今この場であのモンスターを倒せるのは彼女だけ。だから彼女が目を覚ますまで死ぬ気で守っていてほしい。……任せたよ」
晶は指示を出しながら背後にいる冒険者達を一瞥し、一人ワイズオウルの下に向けて走り出した。
なんだか、疲れた。全身が痛い。指一本動かす気力すらない。それに、なんだか眠い……
『おい寝るな、私!』
!?…なぜ私が二人いるんだ?
『そこは気にするな。だがあえて理由を言うなら、ここが心の中だからだ』
心の、中?……それで、一体何の用なのだ、私?
『何、警告に来ただけだ。ここで眠ったら晶殿と交わした約束を破るだけじゃない、ベルやヘスティア様達に会えなくなるし、軍人になるという夢も叶えられないぞ?』
!……それは、眠るわけにはいかなくなったな。
『その通りだ、私。それじゃあ目覚める前に一つだけ』
何かあるのか?
『何、ほとんどの冒険者達が戦意を喪失しているからな。ここで一発、気合を入れ直してやってはどうかと思ってな』
だが、どうやればいいか私にはさっぱり…
『モニカ・ヴァイスヴィントここにあり!みたいな内容を言えば大丈夫だ。…と、そろそろ目覚めの時間だ。盛大に決めてこい、私!』
「血も出てないし、呼吸も落ち着いてる。あとは目を覚ますだけ…」
「クソったれが、俺達ここで死んじまうんだ!」
周囲から聞こえてくる絶望や悲観、安堵の声で徐々に目を覚まし始めたモニカ。
「……すまないが、私のサーベルを取ってくれないか?」
「お、起きたんですが!?…ってダメです!応急処置で穴が塞がったとはいえ、さっきまで重傷だったんですよ!?もしも戦ったらまた穴が開いたら―――」
「―――頼む」
「―――ッッ!!……分かりました、サーベルです。…それと、気を付けてください」
戦いに行くのを止めようと冒険者に、頼み込むモニカ。
それに押し負けた冒険者は、側に置いてあったサーベルをモニカに渡した。
仰向けの状態から立ち上がったモニカは、周囲を見渡した。
『晶殿はふくろうのモンスター、タマキ殿とツムギ殿は自分のシャドウと戦闘中、それ以外の冒険者は私の周囲に全員、そのほとんどが絶望か悲観の表情で戦意を喪失している……全員の気合を入れ直さなければな』
モニカは息を大きく吸い込むと、階層中に響き渡るほどの大声を出した。
「この階層にいる冒険者達よ、全員聞けぇ!」
その声は自分達のシャドウと戦っていたタマキとツムギは勿論、ワイズオウルと戦っている晶の下にまで届いていた。
「私があのモンスターを必ず倒す!だから、私が戦っている間どうかシャドウの足止めをしてほしい!先ほどからの連戦で厳しい戦いになるかもしれないが、頼む!」
「………俺達よりも年下のガキが諦めてねぇんだ。俺達が諦めちまってどうするよ?」
「そうよね、まだ私だってやり残したこといっぱいあるもの。こんな所じゃ死ねないわ!」
「よっしゃぁ!気合入れろ、テメー等ァ!!」
「「「「「オオォォォォォォ!!」」」」」
そんなモニカの懇願に対して周囲にいた冒険者たちは、再び気合を入れ直し前衛部隊はシャドウの下に、後衛部隊は司令官がいない分を全員で補いつつ前衛部隊の支援を行い始めた。
冒険者達の脇をすり抜けながらワイズオウルの下へと向かうモニカ。
ワイズオウルの下へ行かせまいとシャドウがモニカの下へ向かってきたが、攻撃が来る前に他の冒険者達が抑えてくれたため、シャドウと戦わずに進むことが出来た。
「晶殿、私を上空に吹き飛ばしてくれ!」
「何か考えがあるみたいだね……。それじゃあ、【権能解放、世界の全ては我が手の思うがままに変容する。オブジェクト・クリエイション】!」
一気にワイズオウルに近づいたモニカは、ワイズオウルと戦っていた晶に呼びかけ、自身の足元に石柱を出現させ、自身を上空へ吹き飛ばさせた。
ワイズオウルよりも高いところに跳んだモニカは、サーベルを両手で逆手持ちにし―――
「ここだぁ!」
落下するスピードを乗せた一撃を、上に跳んだモニカを見るために顔をあげたワイズオウルの右眼に突き刺した。
『ギャオアァァァ!?』
目を刺された痛みで叫び声をあげるワイズオウルの目からサーベルを即座に引き抜き、地面へと降り立ったモニカは、返す刀で逆袈裟斬りからの斬り下ろし、斬り払いの連撃を行った。
『
ワイズオウルの受けるダメージが増えていることに気付いたモニカは、ワイズオウルへの攻撃を続けた。
ワイズオウルもモニカへの反撃とシャドウの召喚を行うために、モニカに向けて杖を突き刺そうと振り下ろした。
「先ほどと同じ轍は踏まん!」
「その杖は、折らせてもらうよっ!」
『ギギャア!?』
しかし、モニカがサーベルの刀身で杖の軌道をずらし、晶の魔法により出現した石の柱によって、杖は真っ二つに叩き折られた。
モニカは杖を折られたことで呆然としたワイズオウルの隙をついて飛び上がり、首元から股下までをサーベルで縦に切り裂いた。
『……ギャァァァァァァ!!!』
痛みで正気に戻ったワイズオウルは、自身の目の前に着地したモニカに向けて
フリューゲル・コートによって負うダメージは少し減ったものの、衝撃は殺されなかったため、直撃した左腕は歪な形になり、殴られた衝撃で塞いでいた脇腹の穴が再び開くなど満身創痍、いつ気絶してもおかしくない状態だった。
しかし、大量に分泌されたアドレナリンと『ワイズオウルを倒す』という使命感のおかげでギリギリ気を失わなかったモニカは、体力を回復するために晶から渡された
自身の杖を折られたことで魔法による攻撃が出来なくなったワイズオウルは、自身を倒す可能性のあるモニカが重傷で動けない間に体勢を立て直すべく、自分の巣へ向かうために翼を羽ばたかせ空を飛ぼうとした―――
「タマキッ!!」
「お前はここで、死んどけにゃ!!」
が、晶の指示により全速力でワイズオウルとの距離を詰めたタマキによる踵落としを脳天に食らい、地面に落とされた。
『全員が作ってくれたこのチャンス、絶対無駄にはしない……!!』
「「「「「「「「「今だ、モニカちゃん!/今にゃ、モニカ!/今です、モニカさん!/今だ、やっちまえ!/今だ、行けえぇぇ!」」」」」」」」」
「これで…、終わりだぁ!!」
全員の声を背中に受けながら地面から跳び上がったモニカは、起き上がろうとしたワイズオウルの頭をサーベルで一気に斬り下し、ワイズオウルの頭を真っ二つに分断した。
『ギャァァァ……』
頭を半分に分断されたワイズオウルは、断末魔を上げながら塵となり、それと同時に階層を覆っていた紫色の結界が消え去った。
「……やった「倒した?「倒したんだ!「俺達帰れるんだ!「ここから出られるぞぉ!「やった、やった!「俺達の、勝ちだぁぁぁ!!」
ワイズオウルが倒され、階層から出られるようになったことに気付いた冒険者達は、それぞれ喜びの声を上げた。
『これで少しは貴公に追いついただろうか、ベル……』
「お疲れにゃモニカ…って危なっ!いきなり倒れるなにゃ!」
「モニカさん!?…大変です晶さん、モニカさんの血が止まりません!」
「…このままだとモニカちゃんが危ない。二人共、この場から脱出するよ!ツムギはモニカちゃんの傷がこれ以上酷くならないように拘束して!モニカちゃんはあたしが抱えていく!」
オラリオ出発前にベルと交わした約束について考えていたモニカは、血の流しすぎやアドレナリン切れの結果、近寄ってくる晶達の声を聞きながら気を失い地面へと倒れた。
ラキア大森林にある迷宮『密林の大樹』、今ここに完全攻略。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
というわけでワイズオウル戦決着&密林の大樹、攻略完了です。
今回はこれまでで一番モニカがぼろ雑巾になった戦闘回となりました。
これまでの戦いでは誰かとの協力戦が主でしたが、今回はモニカが中心の戦いとなりました。
なぜ章ボスとしてワイズオウルを選んだのかについては、次回書ければなと思います。
ちなみにこの裏では既にベル君がミノタウロスを倒してレベル2になり、そろそろヴェルフに合うところです。
後書きの最後には前書きで書いた通り、本作でのワイズオウルの設定を書いています。
プリコネでのワイズオウルをベースにかなりオリジナルな設定になっています。
モニカの持つヘスティア・サーベルの設定については次回をお待ちください。
次話はエピローグ、それが終わったら第三章は終了です。
それでは、次回。
~ワイズオウル~
ラキア大森林の奥深くにある迷宮『密林の大樹』の最上階にいる階層主。
名前に『ワイズ』とついていることから分かるがとても聡明で豊富な知恵を持っており、自作した杖を用いて台風を作りだしたり、樹木を生成させる魔法が使える。
更にミノタウロスと同様強制停止の咆哮を放つことが出来る他、武器破壊の咆哮も放つことが可能。
シャドウを召喚する魔法も使えるが、これは杖に付いた宝玉によって行われている。
なんだか宝玉から邪悪なオーラが出ているが果たして…?
通常の梟とは違い草食。
また、近接戦になるとめっぽう弱い(魔法と比べるとの話。実際は豊富な知恵を用いた相手の嫌がる戦い方や、鉤爪による引き裂きなどを行う)ため、戦い方としては前衛としてシャドウを召喚し、自身は背後から魔法で攻撃を行う完全後衛型となっている。
ワイズオウルは、ダンジョンの19階層から24階層の間で現れる希少種レアモンスター『スリーピィオウル』が古代の時代に地上へ進出後、大森林にて独自に進化した姿。
今回戦ったワイズオウルは沢山いるワイズオウルの中でも長命かつ体躯が一番大きい、魔法の威力が一番強い個体で、いわば群れのボスポジションでもあった。
今回の戦闘では一切出てこなかったが他にもたくさんのワイズオウルがいる。
戦ったワイズオウルと同様に聡明だが、体が小さくそこまで強くない(魔法含めてウォーシャドウ、魔法を除くとダンジョン・リザードレベル)なため、今回戦いが始まった時は傍観に徹していた。
また、オラリオ外にいる他のモンスター同様、体内に魔石がほとんどないが、強さとしては魔法を含めてゴライアスには劣るものの、ミノタウロス以上の強さ(魔法なしだとミノタウロスと同程度)となっている。
もしもこの個体がダンジョンにいた場合は、魔石を食べることを覚えた結果、強化版モス・ヒュージ以上の狡猾さ(中層モンスターを操り上層で怪物進呈を行うなど)を持つ可能性が高く、また魔法の威力も大幅に上昇するためかなりの強敵となることが予想される。
モニカは……
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仲間
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相棒
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