ダンジョンにモニカがいるのは間違っているだろうか   作:刺身の盛り合わせ

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仕事を始めたおかげで休みの大切さを知ることが出来ました。
どうも、結局休みの一日をだらだら無為に過ごした刺身の盛り合わせです。

ということで最新話です。
今回はヘスティアとモニカがモルド達に誘拐される回です。
今回の視点主としてはヘスティア&モニカなので、ベルとモルドの決闘はバッサリカットです。

またモニカを巻き込むために少しだけ原作に出てこなかった魔道具が出てきています。
それが一体何なのか、分かる人はいるかなぁ。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



第54話 『誘拐』

「ヘスティア様、このポーションを忘れています」

 

「ありがとうモニカ君。……よし、荷物はこれで完成っと」

 

ベルとヘルメスの覗き騒動から一夜明けた翌朝。

18階層を発つ【ロキ・ファミリア】に置いて行かれないようにそれぞれが帰還準備を行っていた。

そんな中でモニカは、ヘスティアと共にナァーザから譲り受けた回復薬(ポーション)入りの小鞄(ポーチ)に道具の詰め込み作業を行い、【ロキ・ファミリア】から借りたテントを返却のために二人でたたもうとしていた。

 

「……!何者だ!」

 

がさり、という音を聞いて瞬時にヘスティアの背後へ立ち、サーベルの柄に手を添えいつでも抜刀が可能な状態を取り、周囲を警戒するモニカ。

少し待ってみるものの、何も起きないことから葉擦れの音かも、とヘスティアから言われ警戒を解き柄から手を放したモニカだったが―――

 

「――――がッッ!!?」

 

「!?も、モニk―――むぐぅつ!?」

 

まるで何かに感電したかのような声を上げたかと思うと、白目を剥きその場に倒れたのである。

突然倒れたモニカを心配し、名前を呼ぼうとしたヘスティアであったが、突然口を塞がれたかと思うと、まるで太い腕を体に回されたかのように身動きが取れなくなってしまった。

やがてひょい、と自分の小柄な体が地面から浮くのと同時に、側で倒れていたモニカも体が浮き上がり、その場から移動し始めた。

 

(ま、まさか……透明人間!?)

 

ヘスティアの動揺を肯定するように、何もなかった虚空から羊皮紙の巻物が草地へと転がった。

拘束から逃げ出すべく足をばたばたと暴れさせるが空しく空中を泳ぎ、弾みで蓋が開いた小鞄(ポーチ)から回復薬(ポーション)などの道具がこぼれていく。

結局、くぐもった悲鳴を上げながら、ヘスティアは気絶したモニカと共に森の奥へ連行されていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「うぅ…、ここは……」

 

「―――おい、コラッ、(ボク)を無視するんじゃ――ってモニカ君!?目が覚めたのかい!?体の方は何ともないかい!?」

 

森中に盛大に響き渡る剣戟(けんげき)の音と大勢の叫喚、そして何者かに体を揺らされたことで気絶から目を覚ましたモニカ。

モニカが目を覚ましたことに気付いたヘスティアによって、モルドという冒険者にベルへの『指導』のための餌として自分達が囚われの身であることを聞いたモニカは、怒りをあらわにしていた。

 

「それが冒険者のやることなのか……ッ!貴公ら、モルドという冒険者と話をさせろ!」

 

「ハァ?何でテメェをモルドに合わせなきゃいけねぇんだよ。大人しくそこで縛られてろよ、ガキ」

 

「ガキ扱いするな、私は17歳だ!…クソッ、私達を解放しろ!」

 

「そうだそうだ、縄を解いてボク達を解放しろぉー!」

 

ヘスティアとモニカが身体を必死に揺り動かしながら縄を解くよう、見張りの冒険者に訴えかけた。

するとヘスティア達の目線の先で、がさがさ、と緑葉の茂みが揺れ動いていた。

見張りの冒険者達は茂みを警戒しつつ剣を抜き放とうとすると、ひょこりっ、と長く白い耳を生やした兎―――アルミラージが顔を出した。

 

「ベ、ベルくん!?助けに来てくれたのかい!?」

 

「違ぇーよ!」

 

「『アルミラージ』か……脅かしやがって」

 

「確かに、見れば見る程ベルに似ているな……」

 

くりくりとした赤い瞳をきょろきょろと左右に振りながら茂みから抜け出したアルミラージ。

両手にはたっぷりの雲菓子(ハニークラウド)を持ち、まだ果物(フルーツ)を探し求めているのか、ヘスティア達の視界をぴょんぴょん飛び跳ねて横断していった。

冒険者の一人は溜息をつこうとしたところで、本来13,14階層にいる筈のアルミラージが18階層にいることに違和感を覚えた

視界から消えたモンスターの姿を反射的に追おうとすると、べちゃっ、と体に蜂蜜色の液体がべっとりと付着した。

隣の仲間も同じく果汁まみれなことから、アルミラージに果物(フルーツ)を投擲されたとことに気付くのと同時に、自分達の後方から木が叩き折れる破砕音が聞こえた。

ゆっくり振り返ると、そこには三体の『バクベアー』が大粒の涎を垂らしながら、果汁まみれの冒険者二人を見つめていた。

 

「「―――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」

 

『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』』』

 

三体同時に飛びつかれた冒険者達は動転し、雲菓子(ハニークラウド)を求め襲い掛かるバグベアーから森の彼方へ逃げ出していった。

それに追走するバグベアーという光景に、ヘスティアとモニカが目を点にしていると、先程果物を投げたアルミラージが、ぴょんぴょん、と二人に近づいてきた。

 

「おおおおお!?ボ、ボクは食べても美味しくないぞぉッ!?」

 

「ヘスティア様には指一本触れさせんぞ!」

 

「―――【響く十二時のお告げ】」

 

モンスターからヘスティアを庇おうとしたモニカだったが、アルミラージの体の内側から響いてきた『魔法』の()()()に、二人は目を見開いた。

 

「ヘスティア様なんかを食べてしまったら、モンスターもお腹を壊してしまいます」

 

「「サポーター君!/リリ!」」

 

灰色の光膜がアルミラージの体を包み込んで溶けるように消えると、そこにいるのはモンスターではなくリリだった。

 

「君一人だけかい!?いや、それよりもどうやってここに!?」

 

「ヴェルフ様達とは、ベル様のもとに到着する直前で分かれました。この場所がわかったのは……ヘスティア様が今朝もしっかり香水をつけていてくれたおかげです。リリの変身魔法は模倣(もほう)に限り、相手の身体能力まで『模写(コピー)』できます。リリの能力値(アビリティ)以上の能力(ステイタス)は不可能ですが、獣人の恩恵未授(もともと)の嗅覚や聴力は反映可能なんです。なので、獣人に変身して嗅覚を『模写(コピー)』し、香水のにおいを追いかけてきました」

 

「便利なのだな、変身魔法というものは……」

 

「今ベル様達はあの一本水晶の辺りで戦っています。急いで合流しましょう!」

 

「ああ!」

 

「……その前に、武器を回収してからでいいか?」

 

ナイフで縄を断ち切られたヘスティアとモニカは、ヘスティア・サーベルを回収しつつ、救出してくれたリリと共にベル達の居る一本水晶のもとへ走り出したのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「や―――――め―――――ろ――――――――――っ!!」

 

一本水晶の先にある、ベルとモルドが決闘を行っていた小さな広場。

捉えられていた場所からモンスターに襲われつつも、モニカがモンスターを追い払い、広場に辿り着いたヘスティア。

モニカとリリを側に従えたヘスティアは、乱闘しているベル達冒険者に向けて乱闘を止めるように大声で呼び止めた。

 

「ベル君達、ボクもモニカ君もこの通り無事だ!無駄な喧嘩は止せ!君達も、これ以上いがみ合うんじゃない!」

 

大喝一声するヘスティアに、ベルは心底安堵し、腕をゆっくりと下げた。

ヴェルフ達も武器を下ろし、無言で女神の神意に従った。

 

「神の指図なんざに構う必要はねぇ!やれ、やっちまえ!」

 

だが、怒りの形相を浮かべるモルドは、大唾を散らしながら固まっている仲間に吠え立てた。

既に覆面の冒険者―――リューによって満身創痍になっていた上級冒険者達だったが、モルドの激励を聞きここまで来たら引けぬとばかりに武器を構え直し、モルドも眼前のベルへ飛びかかろうとした。

しかし。

 

「――――止めるんだ」

 

ヘスティアのその静かな一言が、周囲の音を呑み込み、空間を打った。

金縛りにあったように、モルド達の体が一斉に停止した。

愕然、そして青ざめた顔を再びヘスティアに向けたモルド達は喉を震わせていた。

ベル達もモルド達同様、表情を消したヘスティアの威圧に言葉を失っていた。

(こうべ)を垂れざるをえない超越存在(デウスデア)としての一端、下界の者を平伏させる神の威光である神威(しんい)

それを自らのためではなく、争い傷つけ合おうとする子供達を止めるために、ヘスティアは神威(しんい)を解放したのである。

 

「剣を引きなさい」

 

ベル達の聞いたことのない口調と顔で、ヘスティアはモルドを諭すように告げる。

モルド達は呻き声を上げ、神秘的な青みがかかったその瞳に押されるように後退った。

そうして、一人の冒険者が背を向けて逃亡すると、彼を追うように一人二人と次々と逃げ出していき、最後にはモルドも逃げ出した結果、森には嵐が過ぎ去ったような静けさだけが残った。

一歩も動けずにいたベル達は、ヘスティアの体当たりをベルが貰ったことで時を取り戻した。

胸に抱き着きながら泣きべそをかくヘスティアに、ベルも困り果てながらも幼子を慰めるように淡く抱き返した。

普段ならば犯さない抱擁(こうい)を行った理由、それは先程神威を解放した姿ではなくなったヘスティアに、戸惑いを覚えていたからである。

しかし、私利私欲のためには力を振るわず、自分達と同じ人の身であろうとしている神々を、自身の胸の中で涙ぐみながら見上げてくる小さな少女を……ベルはこの時、確かに愛しく思ってしまった。

それからは、ヴェルフに苦笑され、リリには怒られ、モニカには感謝されつつも小言を言われ、そんなパーティの光景を、(ミコト)達も微笑みながら見守っていた。

一戦の後の静けさが森に訪れ、笑みを交わし合うベル達を包み込む。

ともかくこれで、とヘスティアがそう言いかけようとした―――まさにその時。

 

「じ、地震っ?」

 

「いえ、これは……」

 

「ダンジョンが、震えてるのか?」

 

階層全体の揺らめきに千草(チグサ)(ミコト)桜花(オウカ)が足元を見降ろしながらうろたえた。

この間にも揺れは大きくなっていき、周囲の木々を左右に振りざぁっざぁっと葉々を斉唱させる。

 

「これは…()()()()()

 

リューがそう口にすると同時に、異常事態(イレギュラー)が起きる前触れであるとベル達もまた悟った。

そこから階層の揺れは続いたまま、次の瞬間―――ふっ、と頭上から注ぐ光に影が混ざったかと思うと、周囲が薄暗くなった。

 

「…おい。なんだ、あれ」

 

空を見上げたヴェルフが呆然と呟いた言葉に全員が空を見る。

天井一面に生え渡り、18階層を照らしている数多の水晶。

その内の太陽の役割を果たす、中央部の白水晶の中で。

巨大な何かが、蠢いていた。

その巨大な何かは18階層を照らす光を塞ぎ、周囲へ影を落としていた。

天井を見ながら固まっていたベル達だったが、18階層全体を震わす振動が発生したかと思うと、未だに巨大な何かが蠢く白水晶に深く歪な線が走った。

亀裂は更に広がり青水晶のもとまで及び、黒い何かは水晶の内部をかきわけるようにその体を徐々に大きくしていく。

 

「おいおい……まさか、ボクのせいだって言うのかよ」

 

ベル達の視線を一身に浴びながら、ヘスティアは愕然と水晶の部分を見上げ続けた。

 

「たったあれっぽっちの神威(しんい)で……冗談だろ?」

 

中央部の白水晶から巨大な亀裂音が放たれた瞬間、ヘスティアはその青みがかった双眸を見開いた。

 

()()()……!?」

 

水晶を突き破り、新たに一体のモンスターが18階層(安全階層)に生まれ落ちた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、『ヘスティア&モニカの誘拐』と『ヘスティアの神威解放』の回でした。
本当はここまで長くするつもりはなかったんですけど、書き足して行ったらいつの間にか文字数が4000字超えてました。
そして今章での『モニカ気絶ノルマ』達成です。
何かモニカは毎回気絶してますね、何でだろうなぁ?

今話でモニカに使われた魔道具ですが、名前は『サンダーソード』。
原作13巻に付属しているドラマCD『ダンジョンにRPGを求めるのは間違っているだろうか』にて登場している魔道具となっています。
魔剣とは違い文字通り雷の剣で、剣から出る雷の威力は10万ボルトになっています。
この魔道具がどのように使われたのかは、YouTubeやダンメモでぜひお確かめください。

次回は遂に漆黒のゴライアスとの戦いがスタートです。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。

モニカは……

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