ダンジョンにモニカがいるのは間違っているだろうか   作:刺身の盛り合わせ

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前話投稿後に気付いたのですが、本作品を投稿し始めてから一年たってました。
本作品をここまで続けることが出来たのは読んでくれる皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。
どうも、これからも執筆頑張る刺身の盛り合わせです。

ということで最新話、そして第五章の最終話です。
今話では一気に話を加速させて、春姫加入のシーンまで行っちゃいます。

感想と評価、お気に入りを登録してくださった方々、そしてこの作品を読んでくださっている方々。
本当にありがとうございます。

それでは、どうぞ。



第74話 『サンジョウノ・春姫』

 

「――おい、大男!?この道で合ってるのか!?」

 

「知らん!全て階段が壊されていただろうが!?」

 

「ええい、こんな時まで言い争いをするんじゃない、二人共!?」

 

女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)内の中層階にて、それぞれ大刀と斧、サーベルを担ぎながらヴェルフと桜花(オウカ)、モニカは通路を疾走していた。

襲撃される歓楽街と宮殿。

その惨状を目の当たりにし、ベル達の身を危ぶんだ三人は、ヘスティア達とは別行動する形で先行していた。

謎の襲撃者達はモニカ達を見向きもしないことが幸いし、三人は周囲の混乱に乗じて娼館街から一気に宮殿内まで走破していた。

 

「っ!?」

 

戦闘娼婦(バーベラ)!?」

 

「うっ、うぁあああああああああああああああああああああああっ!?」

 

敵と遭遇することなく宮殿までやって来たモニカ達の前に、悍婦(かんぷ)が現れた。

血と裂傷まみれの彼女は呼吸を乱しながら左手で棍棒を持ち、右手で脇腹を押さえていた。

そんな彼女は血走った目で、まるで恐怖を来したようにモニカ達に襲い掛かってきた。

振り回される棍棒を咄嗟に防いだ桜花(オウカ)だったが、一撃の重さにその巨体が揺らぎ、大きく後退させられた。

 

「大男!?」

 

「こいつっ、Lv.3だ!?」

 

痺れた両手から斧を取り落としかけた桜花(オウカ)とともに、相手に圧倒されるヴェルフ。

戦争遊戯(ウォーゲーム)直後で鍛冶場の環境が整わなかったため『魔剣』を一振りも所持していない現状。

手負いの敵であるものの押されている有り様と、相手とのLv.の差に対して盛大な悪態をぶちまけようとしたヴェルフだったが―――

 

「――二人共!一瞬でいい、相手の動きを止めてくれ!」

 

―――モニカのその言葉を聞き、戦闘娼婦(バーベラ)の攻撃を同時に受け止めたヴェルフと桜花(オウカ)

モニカはヴェルフの背中を踏み台にして飛び上がり、二人の必死の防御によって動きを止めた戦闘娼婦(バーベラ)の頭上まで来ると、サーベルの柄頭を勢いよく振り下ろし後頭部を殴った。

後頭部への一撃に加え、ここまで負ってきたダメージの積み重ねの結果、戦闘娼婦(バーベラ)は意識を失い、地面に倒れたのであった。

 

「おっとと……、二人共、無事だったか!?」

 

「無事だし何とか倒せたからいいが……、背中踏むなら一回声かけてくれよ、モニカ」

 

「まぁ倒せたのだからいいではないか、ヴェルフ?」

 

「お前達、今は先に――ッ!?」

 

襲い掛かってきた戦闘娼婦(バーベラ)を気絶させたモニカに対し、何も言わず背中を踏まれたことにヴェルフが文句を言っていると―――突如、通路の壁が粉砕した。

ヴェルフと桜花(オウカ)とともに驚愕するモニカの眼前に大穴が空いた。

無数の瓦礫と一緒に大穴から出てきて通路に転がったのは、ボロボロになった一人のアマゾネスだった。

 

「手間をかけさせんじゃねぇ、娼婦が」

 

瀕死とかした彼女に続いて、一人の猫人(キャットピープル)の青年が砕いた大穴から現れた。

血に濡れた長槍を持つ小柄な冒険者は、手負いの戦闘娼婦(バーベラ)に冷酷な眼差しを向けていると、自分を見てくるモニカ達に気付いたのか、一瞥を投げてきた。

 

「なんだ、てめぇらは」

 

鋭い視線の切っ先に対し口を開けない中、青年はヴェルフの纏う空気が職人の者であることを見抜いたのか、ヴェルフを唾棄した。

 

鍛冶師(スミス)ごときが……大人しく鉄遊びでもしてろ、三下」

 

「なっ………て、てめぇっ!?」

 

「押さえろ、ヴェルフ!彼は――」

 

鍛冶師(スミス)矜持(きょうじ)を傷つけられ吠えるヴェルフとそれを止めようとするモニカだったが、青年はもう見向きもせず移動していた。

軽い足音とともに大穴の奥へ消えたその姿に、慄然(りつぜん)としていた桜花(オウカ)が呟いた。

 

「【フレイヤ・ファミリア】のLv.6、【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】……アレン・フローメル」

 

息を飲む桜花(オウカ)の側で、屈辱と無力感を叩きつけられたヴェルフは、ドンッと壁を殴った。

 

「―――後悔の時間は後だ。今はベル達の救援に向かうぞ、お前達!」

 

「ッッ!……そうだったな。急いでいくぞ、大男!」

 

「言われなくとも!」

 

意気消沈していたヴェルフ達だったが、モニカに発破をかけられたことで立ち直り、ベル達の救援に向けて先に進み始めた。

そして、空中庭園に辿り着いたモニカ達は、月明かりに照らされながら春姫(ハルヒメ)を抱えたベルの救出に、別動隊として動いていたヘスティア達が(ミコト)の救出に成功したのであった。

 

 

○○○○○

 

 

【イシュタル・ファミリア】との抗争から二日後。

主神(イシュタル)の強制送還による歓楽街を支配していた大派閥(イシュタル・ファミリア)の完全消滅は、冒険者や神々などあらゆる者に多大なる影響を及ぼしていた。

そして、主神を失った【イシュタル・ファミリア】の団員達はそれぞれの道を歩み始めていた。

 

「わ、(わたくし)、サンジョウノ・春姫(ハルヒメ)と申します。こっ、この度はヘスティア様の【ファミリア】に入団させて頂いてっ……」

 

ベルに助けてもらった春姫(ハルヒメ)も、タケミカヅチから提案された故郷への帰還を断り、新たに【ヘスティア・ファミリア】へ所属することとなった。

 

「あー、堅苦しいことはいい。俺もまだ入団して日が浅いが、よろしく頼む。ヴェルフ・クロッゾだ。下の家名では呼ばないでくれ」

 

「こちらこそよろしくお願いします、春姫(ハルヒメ)様。リリルカ・アーデです」

 

「モニカ・ヴァイスヴィントだ、これからよろしく頼む。何か困ったことがあったら頼ってくれ」

 

「おっほん……じゃあ最後にボクが。昨日いろいろあったし知っていると思うけど、ボクがヘスティアさ。キミを家族として歓迎するよ、よろしくね」

 

ヴェルフとリリ、モニカに続いて春姫(ハルヒメ)に自己紹介を行うヘスティア。

春姫(ハルヒメ)より小さい身長ながらも大きな胸を張って、言葉通り【ファミリア】の一員として迎え入れた。

よろしくお願いします、とぺこぺこ頭を下げていると、ヘスティアは春姫(ハルヒメ)にずずいと寄ってきた。

 

「―――それで、春姫(ハルヒメ)君。君はどうやらベル君に()()()()()を抱いているようだが……ベル君はボクが育てた、決して血迷った行為はしてはダメだぜっ!」

 

「は、はえ?」

 

「馬鹿なこと言わないでくださいっ、誰がベル様を育てたんですか!?ヘスティア様なんて借金だらけでベル様に養ってもらっていただけじゃないですか!!」

 

「こ、こらーっ!?新入団員の前で神の威厳を損なうことを言うんじゃなーい!」

 

「いつものことだからな、気にしないで大丈夫だぞ」

 

「だな、もう聞き流していいぞ」

 

ヘスティアとリリのやり取りを呆れた表情で見ているモニカとヴェルフ、ぎょっとして汗を流すベル達を見て、上手くやっていけそうと春姫(ハルヒメ)が考えていると、玄関の扉が開き、中から精神疲弊(マインドダウン)特有の倦怠感に襲われている(ミコト)が現れた。

 

「み、(ミコト)さん!?」

 

「おいおい、動いて大丈夫なのか?」

 

「だ、大丈夫ですっ、もう精神疲弊(マインドダウン)の反動しか残っていないので……じ、自分も春姫(ハルヒメ)殿の新たな門出を祝って……ふわっ!?……申し訳ありませんっ、春姫(ハルヒメ)殿」

 

全員が唖然としている中、向かってくる途中玄関の階段で転び倒れ込む(ミコト)を自分の体で受け止める春姫(ハルヒメ)

驚くモニカ達に見守られながら抱き合う姿勢を取る(ミコト)春姫(ハルヒメ)

 

「申し訳ありません、(ミコト)様……私(わたくし)のせいで、たくさんのご迷惑と、たくさんのお怪我を……」

 

「は、春姫(ハルヒメ)殿……」

 

「助けてくれて……ありがとう、(ミコト)ちゃん」

 

しばらく目の前で見つめ合っていた二人の沈黙は、春姫(ハルヒメ)が口を開くことで破かれた。

目を伏せていた春姫(ハルヒメ)は、ぐっと勇気を出すと、尻尾を緊張させながら(ミコト)の顔を見つめると、瞳を潤ませながらか細い声で感謝を告げた。

体を春姫(ハルヒメ)から放した(ミコト)は、謝罪の言葉におろおろと右往左往していたが、春姫(ハルヒメ)の言葉を聞き、唇を綻(ほころ)ばせた。

 

春姫(ハルヒメ)殿、笑ってください。自分は……昔の頃のように、貴方と心の底から笑い合いたい」

 

(ミコト)の言葉と滲みかけようとしている青紫の瞳と笑顔を見て、(みどり)双眸(そうぼう)から涙をこぼしながら笑顔を浮かべた。

 

「……ベル様、本当にありがとうございます」

 

「今日から、僕たちは家族(ファミリア)です。よろしくお願いします」

 

春姫(ハルヒメ)からのお礼に照れたように頬をかきながら屈託のない笑顔を浮かべるベル。

 

「こちらこそ……ベル様、どうか末永くよろしくお願いいたします」

 

ベルの言葉を聞き、瞼を閉じて涙を流すと、深々と頭を下げると、桜のように笑みを咲かせるのだった。

 

「ちょっと待つんだ春姫(ハルヒメ)君っ、いま変な言い回しをしなかったか!?」

 

「そうです、今何かおかしかったです!!」

 

「そ、そうでございますか?」

 

「ま、まぁまぁ。ヘスティア様、リリ様」

 

「そんなことよりも……新しい入団者だ、今日は羽目を外していいんじゃないか?」

 

「おっ!話が分かるじゃないかヴェルフ君、よしっ、今日は春姫(ハルヒメ)君の歓迎パーティーだ!」

 

「や・め・て・く・だ・さ・い!?これ以上の散財癖がついたら派閥(ファミリア)は……!」

 

「だから硬いこと言うなって!ベル君もモニカ君もパーティーを開くべきだと思うだろ!?」

 

「そう、ですね。春姫(ハルヒメ)さんのために、やっぱり」

 

「新たな家族が加わったのだ、今日ぐらいはいいのではないか、リリ?」

 

「ベル様ぁ!?モニカ様ぁ!?」

 

「よ、よろしいのでしょうか?」

 

「いいのです、春姫(ハルヒメ)殿!こうなったらタケミカヅチ様達もお呼びしましょう!」

 

狐人(ルナール)の少女を中心に喧騒(けんそう)と笑い声が広がっていく。

空は快晴。

澄んだ蒼穹(そうきゅう)に神と眷属達は見守られる。

新しい仲間を歓迎するかのように、館に飾られたエンブレムが、日差しを浴びて輝いていた。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、歓楽街篇無事終了です。
本来この章ではモニカもベル達と行動するつもりで、フリュネの足止めを行うものの力の差で瀕死の重傷を負うものの、ミアハ・ファミリアメンバーに助けてもらう……という流れで進めるつもりでした。
しかし、7巻はベルと命、春姫が主役のお話なので、今回の活躍は控えめになりました。

アンケートを答えてくれた皆さん、ありがとうございました。
結果として、『作者、君に任せた!』が一番多かったので、順番はこちらで決めることにしました。
個人的にはオリジナル長編に2つも票が入ってて少しうれしかったです。
投稿の順番がどれからになるのかは、ゆっくりとお待ちください。

次回からは原作第八巻、そしてダンモニを書き始めるにあたって作者が一番書きたかった章です。
ここを書くためにこれまで書いてきたと言っても過言ではありません。
原作では色々な話が混ざった内容になっていますが、本作ではラキア関連のお話は書かず、全てオリジナルになります。
いい出来になるよう頑張って執筆していきます。

誤字脱字、また文章でおかしな部分があれば報告をぜひお願いします。
それでは、次回。
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