全ては虚しい。どこまで行っても、全てはただ虚しいものだ。
少女は目を覚ます。あのひと騒動の後、事務所のソファーを借りて睡眠をとっていた。今の時刻は日も登らぬ夜中の3時。
ムツキに枕替わりにされ、唸りながら寝ている社長。ソファーに座ったまま寝ているカヨコ。猫のように丸くなって寝ているハルカ。
その姿を見て不思議と笑みがこぼれ、少女は皆を起こさないようにソファーから起き上がる。音をたてぬように抜き足差し足。
荷物と火器が入っている鞄を手に取り、事務所の扉をゆっくりと開く。
(流石に先生はいないか、まあいない方がいいけど)
本心ではない悪態を吐きながら、階段をゆっくりとゆっくりと降りていく。一段、また一段と降りていく途中で少女は昨日の出来事を思い出す。
あの時、少女は何かを見た。しかし見た事は覚えていても、それが何だったのかは覚えていない。
何かいた、それだけを記憶している。その矛盾が発端なのかわからないが頭痛がずっと続いている。
空いている左手で頭を押さえる、ズキズキッと痛みは変わらない。痛み止めを後で買わないといけない、そう考えているとようやく階段を下り終える。
足が地面についた瞬間、明確な敵意に気づいて鞄から瞬時に銃を取り出して構えた。動作は最適で最速であった、しかし敵意を発していた相手は。それよりも早く少女が抜いた銃を払い落とした。
戦闘能力が格段に高い相手に驚きつつ、撥ねよう様に間合いをとり。暗がりの中で、敵の姿を視認する。
「ゲヘナの風紀委員長……?」
「あら、知っているなら話は早いわ。少し時間いただける?」
「断ったら……?」
「それは、賢明じゃないわ」
どこにも所属していない少女でさえも知っている人物がそこにいる。ゲヘナ学園、風紀委員会の委員長の空崎ヒナ。
「私は……ゲヘナとは関係ないんですがね?」
「あら、お店を吹き飛ばしといてよく言うわ」
ばれている、昨日起こった出来事を完全に把握されていると少女は冷や汗を垂らす。もしもこのまま反抗していれば、実害は便利屋68にも及ぶ可能性もある。
現時点で風紀委員長は少女に声をかけているだけ、ならば波風を立てぬ為にも反発せずに従う事が最善の行動。
「わかりました!わかりましたよ、ついていきますから」
「……聞き分けがよくて助かるわ」
ハンズアップして敵意が無い意思を伝え、風紀委員長に従う。落とされた銃を鞄にしまい、大人しく風紀委員長の前まで移動をする。
少女にはゲヘナの風紀委員長に呼ばれる意味が未だに理解できずにいる。便利屋はゲヘナ学園の生徒、その為に不審である自分に声をかけたのではないか?
「じゃあ、ちょっと両腕を前に出して」
「こんなふうですか?」
両腕を前に出した、手錠をつけられた。手錠がついたままの腕を掴まれ、引っ張られるようにつれていかれる。
「……??」
理解が出来ずに少女は頭を捻りながらついていく。思考している筈なのに答えは思いつかない。
ありえないが連続すると思考はどうやらフリーズしてしまうようだ、少女が意味がわからないと言葉を漏らすのには、時既に遅し。
また、みじかめ、すまぬ、はすみ、すこ。
戦闘能力高いキャラに蹂躙されるのすここここここここ。
おじさんはボロボロなる姿も大好きだよ。