自然系能力者の日記 作:自然系すき家
×月×日
わたし、てんせいしゃ、むじんとう、に、います。
今は、転生してから大体2か月近く。ある程度、無人島生活に慣れてきて、食料も安全にとれるようになってきたところ。今、書いているこの日記は、漂着した船の残骸に残っていたノートに書いている。今の状況を説明すると、無人島から脱出するために準備中。もっと細かく書くとことはいろいろあるけど……。
今回は、折角なのでこれまでの2か月をまとめておく。
転生初日の衝撃はすごかった。
普通に仕事から帰ってきて、疲れた体を休めながら布団へ入った記憶が最後。気が付けば前には、青々と茂った森。後ろを振り向けば、青い海に白い砂浜。まるで、南国のリゾート地のような風景にポツンと佇むオレ。
これこそ、THE MUZINTOU。
転生直後は、精神的に地獄だった。なぜ、どうして、どうやって、と考えても答えの出ない問題を考えながら茫然。ただ人間、ボーっとしていてもエネルギーは消費する。半日も過ぎればお腹が減り、1日経てばそれも無くなり、2日目にして食べ物を探しに森へ探索に出る。
そんな数日間をはじめ過ごしていたが、それも1週間も過ぎれば次第に慣れてくる。
最初は、手を出せなかった虫や果物に手を出し始め、動物が怖くて奥まで行けなかった森を進むようになる。そして、そこから自分が転生したことを認識する。
綺麗な水面に映る自分は他人で、周りの草木というか果物や虫、動物が明らかに地球と違うことに気づく。そして、そんな衝撃の事実を噛みしめながら、常識が通用しないことに恐怖する。漠然とした状態で過ごしていた日々から夢がさめたような感覚。
そこで、これまで溜まっていた現実が襲ってくる。
ここがどこなのか、人はいるのか、助けは来るのか、進んでいる方向は当たっているのか…考えても答えは出ず、恐怖心だけが重なっていく。
そんな中、畳みかけるように自分の転生した世界を知ることになる。
転生して大体2週間目。ついに島の反対へと出てしまう。
朝は、猛獣を避けながら歩き、夜は、猛獣に怯えながら息を殺す毎日。そんな心が摩耗していたところで、ついに抜けた森。そして、広がる大海。その間、誰とも会うことなく人間のいた痕跡もない。正直、森を抜けた先に出た瞬間から心が折れていた。
そんな時、明らかに毒があるであろう禍々しくも特徴的な果物が足元にあるのを発見する。
精神的に追い詰められ、肉体的にも限界。そこで視界端に映る死への片道切符。誰もがそこで、その切符を死神から貰うと思う。それほどまでに追い詰められていた。これまで確信もないのに、この森を抜ければ誰かが絶対にいると自分の心に噓をつきながら進んだ先の海岸。その時の気持ちを一言で表すなら正に―――絶望。
だから、死ぬには丁度良いと思った。
転生直後に見た風景と変わらない。前には、青い海に白い砂浜。後ろを振り向けば、青々と茂った森。まるで、南国のリゾート地のような風景にポツンと佇むオレ。死ぬ景色としては、最高級で勿体ないくらい。
オレは、迷わず足元からその果物を拾って口へ運んだ。
そうして、口に入れたモノは、毒物としては申し分ない不味さ。口に広がる苦々しさは、吐き気を催すレベルを超えていたが、無理やり腹の中へと入れた。
吐き気はあれど苦しさはない。こんなに安らかに死ねるならラッキーだ。…と、思いながら砂浜に寝転がっていたが、一向に死はやってこない。あるのは、力が溢れてくるような感覚。果物を食べる前と後では、明らかに一線を画す肉体の感覚。
その感覚こそが、死に近づいているということだと思っていたが、どうもおかしい。明らかに別の何かが起こっている。
そう思った瞬間―――体がなんかモクモクしていた。
なぜ、こんなことになっているのか、落ち着いて状況を整理すると見えてくるモノがある。
体がモクモクする前は、死ぬために毒果物を食べた。あの……禍々しくて特徴的な果物、味は吐き気を催すレベルを超えたアレ。そして、そのあと体に変な感覚があってモクモクしている。ということは―――。
―――ここはONEPIECEの世界だ。
そこからは、一気に堕ちていた心が救われた。
何にも分からなかった中で見えた真実。そして、自分があの少年漫画の頂点ONEPIECEに転生した興奮。悪魔の実を食べたという事実。なんか変化している体。その全てが希望につながった。
ONEPIECE世界ということは、この視界に映る海だけが全てではない。まだ、先がある。人がいる。知っている世界が広がっている。確かに、未知の部分はある。今がどんな時代なのか、ここがどこなのか、分からないことはまだまだたくさんある。
ただ、それさえ分かっただけでも心が救われた。ここまで進んだことは無駄ではないと知れた。それだけで良かった。
あの日は、転生して初めてぐっすり眠れたと思う。
翌日からは、人の痕跡を探すことなんて忘れて、自分の食べた悪魔の実の研究をした。
まず、このモクモクした体の研究から始めた。このモクモクした体から連想されるのは、海軍所属のスモーカーさん。モクモクの実の能力者の煙人間。ということは、オレの体もモクモクしてるから食べた悪魔の実は、モクモクの実だ!
ただ、なんかしっくり来ない。
オレの顔は、スモーカーみたいな渋めの顔でも無かったし、自分が煙人間になったと思えなかった。そんな何かが違うという感覚があったが、それよりも何が出来るのか調べるほうが気になって研究に没頭した。
そうして、研究するためにいろいろ変化させようとして全く出来ないことに気づく。腕だけとか、足だけみたいな各部分で変化させることが無理。出来るのは全身の煙化だけ。だから、はじめは各部位を煙化させることが出来るよう修業した。
―――だが、上手くいかない。
全身を変化させることは出来るが、部分で変化させることが全く出来ない。何なら、変化する兆しすら見えないという状態。原作にて、悪魔の実は練度が重要だという話を聞いたことがある。もしかすると、ある一定値まで使いこなせるようにならないと変化出来ないのかもしれない。
それこそ、全身の変化を一瞬で出来るようになるまでとか。そう考えたオレは、今度はこの全身変化状態の継続と変身時間の短縮するための修業を始めた。
そうして、修業を始めてから3週間後。自分の悪魔の実がモクモクの実ではないことを知った。
いつも通り修業をしていたら、何かが来るという感覚があった。
最初は、何が来るか分からないが、ただ感じるというちぐはぐな状態。何かが起きれば分かるという漠然とした感覚。そんなフワフワした状態は、雨が降ったことで全てを理解した。あの何かが来るという感覚は、雨が降る前の予兆であり、空気の流れが変わっていることを無意識化で知覚していたということを。
そして、雨雲を視て理解した。オレもあの雲に成れることを。自分の悪魔の実の名前を。
名は―――クモクモの実。食べれば雲人間になる。
名前を知ってからは、今まで上手く行っていなかった修業が上手く行くようになった。全身のモクモク化から部分的なモクモク化まである程度できるようになった。
まぁ、出来るようになったと言っても部分変化するまでの時間はまだまだ掛かる。それこそ、スモーカーさんみたいに腕を伸ばして攻撃を当てるとかも出来ない。ただ、全身のモクモク化の切り替えは一瞬で出来るようになったのはだいぶ強い。
そんな修業の成果を感じた1週間後、遂に戦闘訓練へと切り替えた。
まずは、動物狩りから。樹に停まっている鳥やウサギなどの小動物をメインに狩りを始めた。はじめは、俊敏な動きについて行けず攻撃を当てれない日々だったが、それも何日も続けば体が追いつくようになる。
前世では考えられない身軽さとスピードを持って動物を狩る。最初にウサギを殺した時は、手に伝わる生暖かい感覚と独特の臭いに吐き気を催すが、ソレも食欲の前には負ける。久しぶりに肉を食べることが出来るということだけに意識が飛び、自分が殺したという事実は数秒でどうでも良くなっていた。
ただ、あの時のウサギ肉は今でも記憶に残っている。
そんな狩りを続けて多分2週間くらい。島の外周をなぞる様に歩いていると大破した船を発見した。
その船は漂着してから長い年月が経っているのか、船体は腐っている部分が多く中へは簡単に侵入することが出来た。中に入ると、錆びた刀や剣、漫画でしか見たことないような銃、海賊服っぽいモノを着たガイコツなんかが散乱していた。
マストは折れていたため確認できなかったが、多分海賊船だったのだろう。宝箱を守る様に折り重なっているガイコツがあった。
そんなガイコツ達の守っていた宝箱の中身は空。何にも入っていなかった。正直、黄金や宝石なんかは要らないが、今後使えそうなモノとか入っていてほしかった。それこそ、
まぁ、そんな幸運は悪魔の実を食べたことで使い果たしているから、期待はしていなかったけど……、オレの運はまだ尽きていなかった。
宝箱開封後、使えるものがないか船内を漁っていると、
一先ず、ガイコツに今世のファーストキスをあげた後、持っていた
見つけた洋服もすぐに着替えて使っている。コーデに関しては、出来る限り海賊として見られないようにすることを意識して、海賊っぽい帽子とかでかい羽織は着けていない。普通の長袖と長ズボン、靴を着けて一般人を意識している。
剣に関しては、ソレっぽい動きを想像して毎日素振りしているけど……たぶん向いてない。だいぶへっぴり腰だし、樹とか切れない。大体3分の1くらいで止まってしまう雑魚です。
ただ、継続したほうが良い結果が出るのが少年漫画。
少年漫画の良いところは、継続した分、努力した分の結果が大なり小なり出るところにある。だから、これからも悪魔の実の修業とか素振りとかは忘れずにしていきたい。
―――かなり適当に書いたけど、コレが転生して2か月くらいの記録。
書きながら思うが、中々に濃い2か月間を過ごしていると思う。ただ、ここまで濃い体験をしても、まだ人に会うことが出来ていない。すべてがこの絶海の孤島で完結している。ONEPIECE世界に転生していることが分かっても、ONEPICE要素は悪魔の実や森にいる不思議生物くらい。
出来るなら早くにも海に出て人に会って話をしてみたい。だが、それは叶わない夢。
この無人島にある大破した海賊船は海には出せないし、それに代わるようなボートや船もない。それに、脱出するための船に関する知識もない。あるのは、次にどこに島があるのかを示す
そんな脱出には絶望的な状況だが、方法がないわけではない。
オレの食べた悪魔の実「クモクモの実」をある程度使いこなすことが出来ればこの島から脱出することが可能だと考えている。
クモクモの実は、
―――あの空に浮いている雲を。
つまり、ある程度使いこなすことが出来れば空に浮いて島と島の間を移動することが可能だと考えている。その根拠として原作では、クロコダイルやシーザー、黄猿、スモーカーなど疑似的に或いは性質的に飛行を可能にしているキャラが存在している。
ということは、オレも能力を鍛えさえすれば脱出が可能。
ただ、そこにたどり着けるまでどれくらいかかるのかが不安要素ではある。
まぁ、どんなに時間が掛かってもやってやるッ!
こんなところで死ぬなんて嫌すぎる! 出来れば
その為にも、能力訓練とか筋トレを頑張るぞッ! あとは、覇気習得に向けた修業もやって世界を回れるくらい強くなんだッ!!!!