わたしのヒーローアカデミア 作:Plot Must Die
咎と渡我
「ずずず……
日曜の昼。十二時と二十七分。山盛りの豚骨ラーメンを口いっぱいに頬張りながら、今日も絶好調で空腹な七躬治癒々が首を傾げた。彼女は被服控除が何であるのかを理解していない。いや、言葉としては知っているのだろう。ただ大抵の事をどうでも良いと断じてしまう少女にとって、被服控除とは印象に残る言葉では無かったらしい。勉強は出来るくせに、どうにも常識に欠けている。だからコミュニケーション能力が乏しいのではないだろうか。癒々が直すべき欠点のひとつだ。
ちょっと喧騒があるラーメン屋で、癒々の対面に座る
「入学前に個性届けと身体情報を提出すると、学校専属のサポート会社がヒーローコスチュームを用意してくれるんだ。要望を添付すると最新鋭の便利なコスチュームが貰えるんだけど……その様子だとどうでも良いんだね?」
「もぐもぐ。どーでも
雄英高校のヒーロー科に入学することが決まっているくせに、癒々はヒーローコスチュームにてんで興味を示さない。そんな事より目の前のラーメンを食べることの方が、彼女にとっては重要だ。空腹が解消されるまでどのくらいの量を食べるかは分からないが、どうせいつものように成人男性の三倍ぐらいは食べると思われる。今日も公安の懐は癒々の食事で大いに痛みそうだ。
癒々が沢山食べるのは個性が原因だが、それにしても小さな体のどこに山程の食べ物が収まっているのか疑問である。
「ちなみに、渡我さんは?」
「私もどーでも良いです。あ、でもカァイイのが良いです。こんなブレスレットみたいのじゃなくて」
「はいはい。じゃあ被服控除についてもこちらで勝手にやっておくよ」
「癒々ちゃんのもカァイイのにしてくださいね。可愛くないのは駄目です」
「それも留意しておくよ……」
被身子も被身子で、ヒーローコスチュームに興味は無い。カァイイと言う要望があるだけ、癒々よりはマシだろう。彼女達のデータや要望を受け取ったサポート会社は、頭を抱えることになりそうだ。いやむしろ、カァイイさえ満たしていれば好き勝手やれるのだからやり易いのかも。
「お待たせしました! 味噌ラーメン、ドデカ盛りです」
元気な店員さんがテーブルの真ん中に、山盛りの味噌ラーメンが配膳した。どうやら癒々はまだまだ食べるつもりらしい食べ盛りの子供だとしても幾らなんでも食べ過ぎだ。あれこれと話している内に、既に癒々の目の前に置かれたどんぶりが空になっている。これからドデカ盛りの味噌ラーメンに取り掛かるのだろう。
「ぁ、
「癒々ちゃん、まだ食べるんですか……?」
「
「まぁお腹いっぱい食べるのは良いけども、今日の目的を忘れないでくれると助かるなぁ……」
「それなんですけど、何で私は朝から連れ出されてるんですか?」
今日は朝から大独活と癒々に連れ出された被身子なのだが、何の目的で公安と一緒に外出しているのかまるで分からない。まさかラーメン屋で食事をする為だけに、朝から動いた訳じゃ無いだろう。その可能性が無いとも言い切れないような食いっぷりを癒々はしているのだが。
とにかく、今日の外出の目的は未だに不明瞭なままだ。被身子としてはそろそろ教えて欲しいとこである。
「あー、えっと。癒々ちゃん、話しても?」
「んー……、まぁ、
「じゃあ今日の目的だけどね。渡我さんの両親に会いに行くんだ」
「……は?」
大独活と癒々が被身子を連れ出した目的。それは三人で彼女の両親を訪ねることだった。何故今更になってこんな事をするのか、まるで分からない。被身子からすれば両親に会う理由なんて微塵も無い。自分を分かってくれなかった親なんて、年頃の少女にとって関わりたくない存在だ。
だから被身子は、二人から納得の行く説明が欲しい。納得しても両親に会いたいとは思えないだろうけど、ちゃんと説明してくれないと心構えのひとつも出来やしない。
被身子はつい、大独活を睨む。癒々に対しても文句を言いたい筈だ。どうして彼女は、いつもいつも大事なことを勝手に決めて勝手に行動してしまうのか。何かしようとした際、説明を一切しないところも癒々の悪いところだ。
「そう睨まないでよ。雄英に入学するなら、両親の同意がいるでしょ? 君は未成年なんだし、何をするにしても保護者の許可が居る立場だ」
まぁ父親として言うなら、あの人達は保護者失格だと思うけどね。と付け加えて、大独活は水を飲む。確かに彼の言うことに間違いは無い。被身子は未成年なのだから、何かをするつもりなら常に保護者の同意や承諾が必要になる。
ただ、それならどうして今日まで癒々と二人暮らしすることが許されていたのか。公安が動けば雄英に入るのに両親の許可なんて必要ないだろう。それに被身子は今、癒々のわがままによって癒々と同居することを公安に許されている。両親の許可なんて無くても、問題は無い筈だ。
「……許可が必要なのは、癒々ちゃんも同じです」
「言っておくけど、癒々ちゃんと君の置かれてる状況は違う。彼女は記憶喪失の上に親類縁者は誰一人居ないから、公安の保護下。彼女自身の事は公安で処理出来る。
でも、君にはまだ両親が居るんだよ。そこを無視して事を決めるのは法律が許さないんだ」
「今更、法律ですか? それこそどうとでも誤魔化せるくせに」
公安の力があれば、それこそ殺人事件すら無かった事になる。本来なら少年院に入らなければならない被身子が、これと言ったお咎めも無いままにのうのうと生活している。一応腕に
「そうだよ。どうとでも誤魔化せる。公安もそのつもりだった。癒々ちゃんのご機嫌取りにはそれが手っ取り早いし」
「だったら」
「これは癒々ちゃんの希望なんだよ。君の境遇を知った上で、それをどうにかしたいと一番思ってるのは彼女だ。君はそれを無下にするの?」
「……だから、私の気持ちは無視ですか?」
本当に癒々は何の説明もしないで自分勝手に動くけれど、それでもひとつだけハッキリ分かる事がある。
それは、癒々が被身子を本当に大切に思っていると言うこと。
だから彼女は被身子に固執して、被身子と一緒に居る為だったら強引にでも動く。文字通り何だってやる。それが嬉しいか嬉しくないかで言えば、被身子は嬉しい。彼女自身、自分を抱き締めてくれた人のやることは出来る限り受け入れたい。それはそれとして、やはり事前に相談ぐらいはして欲しいけれど、癒々の突発的な行動にはいい加減慣れてきた被身子である。
「まぁ僕としては、君の気持ちも大事だよ。デリケートな問題だし。でも君さ、放っておいたら二度と両親に会わないつもりでしょ?」
「はい。そのつもりです」
「だよね。僕もあれが自分の親だったらそうするなぁ」
「両親に、会ったんですか?」
「まぁね。ところで癒々ちゃん、それ食べ終わったなら会計済ませて良いかな? 渡我さんも、もう食べないよね?」
大独活と被身子があれこれと話している間、癒々はひたすらラーメンを啜っていた。少し前に配膳された味噌ラーメン(ドデカ盛り)は、もうスープぐらいしか残っていない。被身子の前には殆ど手が付けられていないミニチャーハンが残っているけれど、食が細くなっている彼女はもうこれ以上食べそうにない。
「塩ラーメン……」
「用事が済んだら食べにこようね。ほら、行こう」
「むぅ……。ごちそうさま」
「はい、お粗末様でした。じゃ、お会計!」
■
車に乗って二時間の移動。その途中ラーメン屋で昼食を取り、更に車で一時間弱。急な渋滞に巻き込まれつつ、それでも何とか三時間程度で三人は被身子の地元にやって来た。日曜日の昼間と言うこともあってか、昨年三月頃まで被身子が暮らしていた住宅街は遊びに出掛ける子供達の姿がよく見える。
乗っている車が目的地に近付く程に、後部座席に座る被身子は不機嫌を露にしていった。いつもより少しばかり顔色が悪いのは、それだけ彼女が家族に会いたくない証拠だ。許されるのであれば、今からでも引き返したいぐらいだろう。
静かに走っていた車がゆっくりと止まる。窓から外を見ると、見覚えしかない家が被身子の目に映った。
様々な形の住宅に囲まれた、普遍的な二階建ての家。ここに帰ってくるのは、実に一年ぶり。
懐かしいような、そうじゃないような。そんな複雑な気持ちが外を眺める少女の心に渦巻いていく。
「着いたよ。基本的に会話は僕がする。二人はただ居るだけで良いから」
「……はい。分かりました」
大独活の指示を聞いて、被身子は素直に頷いた。今更両親と会話したいとは思えないし、どんな顔をして会えば良いのかもまるで分からない。ただ、あれやこれやとこれからの事を許可して貰うのは大変だろうなと彼女は思う。
被身子の隣に座っている癒々は、まったく口を開こうとしない。大独活の話を聞いているのか非常に怪しいところだ。
三人は車から降りて、渡我家の門前に立つ。被身子の心の準備が出来るよりも早く、大独活がインターホンを鳴らした。被身子にとっては聞き慣れたチャイムの音が周囲に木霊する。家の中から人の動く気配がする。一分も立たない内に、インターホンから女性の声が聞こえた。
『どちら様ですか?』
「公安の大独活です。少々、お話よろしいでしょうか?」
『……もう勘弁してください。私達は精一杯やったんです。これ以上あの子についてお話することなんて』
「我々は被身子さんを確保しています。お話ししたいのは、娘さんのこれからについてです。手間は取らせません。
どうか、少しだけお話をさせては貰えないでしょうか?」
『……』
ガチャリと、受話器の置かれる音がした。また家の中から、人の動く気配がする。それは徐々に玄関に近付いて来て、やがてゆっくりと扉を開く。同時に、大独活は門を開き玄関の前に立った。きっと背後に居る被身子の姿を、まだ見せないようにする為だろう。
僅かに開かれたドアの隙間から、やつれた女性が姿を見せる。恐らくは彼女こそが、被身子の母親だ。
「休日だと言うのに、すみませんね。ちょっと良いですか?」
「……わざわざ何ですか。もう私達は、あの子に関わるつもりは無いんです」
「ええ、こちらの書類にサインを頂きたく。一枚目は被身子さんの親権放棄、二枚目は入学宣誓書、三枚目は誓約書になります」
携えた鞄から分厚い書類の束を取り出しながら、大独活は愛想笑いを浮かべている。彼の話を聞いた被身子の母親は目を丸くしたが、やがて深い溜め息を吐いて肩の力を抜いた。
「……どうぞ中へ。そちらのお嬢さんは?」
「ああ見えて公安の者です。ただの付き添いですからお気になさらず。気になるようでしたら、外で待機させますが」
「……いえ、ご一緒にどうぞ」
「もう一人よろしいでしょうか?」
「付き添いの方ですか? 別に構いませんよ」
「そうですか。じゃあ二人とも、こっちにおいで」
玄関前の大独活が、門前の二人に手招きした。癒々の姿は既に母親の目に映っている。しかし被身子の姿は、門から少しずれた位置で塀に隠れるように立っているのでまだ見られていない。母親の方も、娘が帰って来てるなんて少しも思っていないようだ。
久々に聞いた母親の声が、被身子の心を強く締め付ける。まだ何の準備も覚悟も出来ていないのに、呼ばれてしまった。これから大事な話をするのだから、出て行かなければならない。でも、体は少しも動いてくれない。
「大丈夫。行こ」
癒々が被身子の手を引いた。固まってしまっている彼女は、半ば引っ張られるような形で数歩だけ動く。
……運が良いのか悪いのか。被身子の母親は被身子が姿を見せる前に、家の中に引っ込んでしまっていた。
「行こ」
もう一度癒々に引っ張られて、どうにか被身子は足を動かす。彼女は俯き、一言も喋らない。喋ろうと口を動かしても、声が出てこないのだ。
手を引かれるままに、被身子は久しぶりにかつての自宅に足を踏み入れる。もうここに帰ってくることは無いだろうと思っていた。帰るつもりも無かった。なのに今、こうしてまた帰宅している。それは癒々が自分勝手に決めて、自分勝手に動いたからだ。
久しぶりに自宅に踏み入る感覚は、あまり良いものではない。大抵の人間は久々の帰宅で肩の力を抜くだろう。学生なら、親に甘えた姿を見せてもおかしくない。だが被身子の場合、そうじゃない。自分を周囲に合わせるよう縛り付けて来たこの家は、彼女にとって最も嫌な場所と言っても良いのだ。
そんな場所に帰って来て、心穏やかには到底なれない。
玄関で靴を脱ぎ、重い足取りになった被身子は癒々に連れられる形で廊下を進む。もう少し歩けば、両親が居るダイニングに辿り着く。まだ彼女の親達は娘の帰宅に気付いて居ない。先に大独活を通した両親が、あれこれと話している声が聞こえてくる。
「っ、今更何しに戻って来た!」
被身子がダイニングに辿り着くと、怒号が響いた。声を荒げた父親が、娘の姿を見るなり強い嫌悪感を見せる。テーブルを叩きながら立ち上がり、勢い余って腰掛けていた椅子が倒れた。その隣では、母親が怯えた顔で体を引こうとする。
「人様に迷惑をかけて何様のつもりだ! どうしてお前は普通に出来ないんだ! 何度も言っただろう!?」
家族なのに。親と娘なのに。一年も行方知れずになっていた我が子を、渡我夫妻は強く罵る。嫌悪や拒絶、怒りだけを表に出してただ感情のままに叫び散らす。
過去に被身子がしてしまったことは、とても許されることじゃない。きっと彼女の両親は普通だから、善良な市民だから、普通に見えない娘の事をまるで認められない。
親であれば誰だって、我が子が間違いを犯してしまったら怒る。叱責して、もう二度と間違わないように矯正を試みるものだ。二人の反応は言ってしまえば真っ当なものであり、何も間違ってはいない。……けれど。それは我が子を全く理解出来ていない子育てとも言えてしまう。
「斉藤さんちに迷惑かけて、警察から逃げ出して! 何がしたいんだお前は!! 普通にしなさいと、何度言えば分かる!?」
気色悪い物を見るかのような目で、自分は間違っていないと思い込んだ声で、父親は実の娘を罵倒し続ける。それがどれだけ、我が子の心を傷付けているのかも分からずに。
「……っ」
もう、被身子は限界だった。こんな家には居たくない。両親なんて見たくない。話すことなんて絶対に出来ない。だから彼女はその場から逃げるように立ち去ろうとして……。
癒々に、強く手を引かれた。
「被身子。あの人達に言いたい事があるなら、今言って」
「……別に、何も……。何も、無いです……」
「じゃあ、後はわたしの好きにする」
そう言って、癒々は被身子から手を離した。もう引き留めようとはしていない。
立ち去ろうとした被身子だったけれど、癒々がこれから何をしようとしているのか気になって、つい後ろを振り向いてしまう。
次の瞬間。被身子の父親の目の前まで歩いた癒々は、彼の頬を思いっきり手のひらでぶっ叩いた。
乾いた音が、ダイニングに響く。
被身子の父親は、自分が何をされたか直ぐには理解出来なかったようで目を丸くして固まっている。
「何で、分かってあげないの?」
怒っていた。普段は感情を見せない少女が、無表情ばかりの彼女が、眉間に深い皺を寄せて、いつもよりずっと低い声を漏らす。
七躬治癒々に、親族は居ない。記憶も無い。そんな彼女だからこそ、きっと家族と言う存在は羨ましいものなのだろう。色んな事をどうでも良いと言ってしまう彼女でも、家族というものを無視することはどうしても出来なかった。だから今日、被身子を家族の前に連れ出した。被身子には家族が居る。なら、その事実は大切にするべきだと考えたから。
「分かる……? 分かるわけ無いだろ。異常者の事なんて」
「家族なのに?」
「家族でも分からない事ぐらいあるだろ。大独活さん、何なんだこの子は! 出会い頭に人を叩くような真似をして!」
「……公安の問題児ですかね。ですがまぁ、私は彼女の言葉には賛同しますよ。子を持つ父親としては、あなた方をぶん殴りたいので。よくも我が子に向かって『異常者』なんて言えますね?
あなた達がそんなだから、被身子さんは間違いを犯したのでは?」
「私達は努力しました! やれるだけの事をして、それでも駄目だったんですよ!? その子は悪魔の子なんです! もう、私達じゃ無理なんですよ!」
今の被身子が出来上がってしまった原因が誰にあるのか。それを判断するのは難しいところだろう。
渡我夫妻は、被身子を普通に変えようと努力した。我が子を個性カウンセリングに通わせて、何度も何度も言い聞かせて。
被身子だって、周囲の普通に合わせる努力をした。我慢して我慢して我慢し続けて。なのに、結局は駄目だった。感情を、憧れを止めることはどうしても出来なくて。だから好きな人をチウチウしたくなって。……拒絶されて、してしまった。
何が悪かったのか。どうすれば良かったのか。その答えは未だ出ていない。この先も、出ることは無いのだろう。だけど、それでも、被身子を抱き締めることは誰にだって出来た筈だ。分かってあげようと歩み寄ることだって、きっとどこかで出来た筈なのだ。
誰もがそうはしなかった。ただ一人、記憶を喪った少女を除いて。
「……大独活。サインは貰った?」
まだ眉間に皺を寄せたままの少女は既に渡我夫妻から目を離し、二人の言い分に耳も傾けない。怒り心頭の癒々が見詰めるのは、テーブルの上に置かれた書類だけだ。
「……一枚目はね」
「被身子と外に居る。残りも貰っておいて」
「そのつもりだよ。まぁもう二枚目は要らないかも知れないけど」
「どうでも良い。直ぐ済ませて」
端的に話を終わらせて、癒々は被身子の手を掴んで廊下へ。まだ怒りが収まらないのだろう。痛い程、被身子の左手を握り締めている。
「っ、癒々ちゃん……」
「……」
「癒々ちゃん、痛いです……っ」
「……」
「癒々ちゃんっ」
「……、……ごめん」
癒々が被身子の手を離したのは、靴を潰し履いて家の外に出た時だった。引っ張られ続けた被身子も、満足に靴を履けてない。手を握られたのは僅かな時間だったけど、それでも彼女の手は真っ赤になってしまっている。下手をしたら骨に異常があるかもしれない。
「ごめん。また、自分勝手した」
「それは、もう……良いけど……」
「……ねえ。家族って、……幸せなものじゃないの?」
「……そうじゃないとこもあります。私の家みたいに」
家族は幸せであるべきもの。癒々はきっとそう考えてる。だから、渡我家の様相を見て心を痛めた。怒りに染まった。笑うことが無ければ泣くことも無い。そんな彼女が腹の底から怒るのは、本当に珍しいことだ。
「……ねぇ、被身子」
俯いて、目を合わせることもせず、振り向いた癒々は被身子の手をもう一度掴む。何か言いたい事があるのだろう。雄英に行きたいとお願いした時も、癒々は被身子の手を取ってお願いしていた。つまり、こういう時の彼女が言い出すことは被身子に取ってとんでもない事である可能性が高い。
「なーに? 癒々ちゃん」
それでも、被身子は癒々の話に耳を傾ける。何を言い出すかは分からないけれど、癒々の本心はちゃんと聞いておきたいから。
でも、流石に。今回の癒々の要望は、まったくの想定外だった。
「結婚、しよ?」
お久しぶりです。
トガちゃんと両親のお話はどっかで書きたいと思っていたし、このタイミングだなと思って入学前にぶちこみました。
癒々とか言う理解出来ない女は永遠にこんなんだと思われますね。突拍子もなく、勝手に動いて場を荒らす。災害かなんかか?
多分あと二回、どこかでトガちゃんには過去と向き合って貰う予定です。今回はこんな結末ですが、次はどうだか。ちょっとトガちゃんの心を壊したい欲が……なくもないなぁ……。