わたしのヒーローアカデミア 作:Plot Must Die
出久の個性制御訓練初日は、結局上手く行かなかった。何度個性を発動しようとして、意識の固まりが体に伝わってしまって何度でも萎縮してしまったのだ。これは彼の心がもたらした問題だろう。クラスメートに向かってOFAを使うことはどうしても難しい。特に、癒々相手には強いブレーキが掛かってしまう。
何せ、出久は見てしまったのだ。OFAと遜色ないであろう力が、癒々を傷付ける瞬間を。あの時は状況が状況だったので気にするどころでは無かったが、後に冷静になった時に気付いてしまった。癒々にそっくりなヴィランがOFAを想起させるような個性を存分に振り回して、癒々を殺そうとしていたことに。少なくとも彼には、そうとしか見えなかった。
最悪なことに、事が収まった後で癒々は入院してしまった。手術をしなければならない程の大怪我を負ってしまったのだ。
だから、ヒーローを志す少年は自分に託された個性がどれだけ危険な物なのか理解してしまった。巨大ロボットを倒したり、建物を壊す分には思いきって使えたこの力を人に向けて振るったら、どうなってしまうのかを。
「全然、駄目だったな……」
訓練後。更衣室で制服に着替えた出久は手のひらを見詰めながら呟いた。せっかくオールマイトが、そして爆豪すら下して入試一位となった癒々が自分の為に時間を割いてくれていると言うのに、個性を使えないなんて情けない姿を見せてしまった。体育祭が始まるまで時間が無い。なのにのっけからこの調子では駄目だと彼は分かっている。分かっているのだけれど、今日は本当にどうしようもなかった。
「こんなんじゃ、僕が来た! なんてとても……」
気分が沈んでいく。そんな場合じゃないと思っていても、自分の不甲斐なさで思考も気持ちもマイナスに向かってしまう。出久は大きな溜め息を吐いて、リュックを肩に引っ掛ける。もうそろそろ時刻は夜の七時に差し掛かるのだ。さっさと帰宅しなければ家族に心配をかけてしまうし、何より教師に見付かったら「まだ帰っていないのか」と小言を言われてしまう。
晴れない心をそのままに、取り敢えず出久は更衣室を出た。もう一度出てこようとする溜め息をそのまま吐き出して、後ろ手で扉を閉める。と、同時に直ぐ隣の女子更衣室の扉が開いた。中から出てきたのは、被身子と癒々だ。何故か癒々の制服が訓練していた時よりも着崩れている。あと少し、普段より顔が赤いような気がする。
「あ、緑谷くん」
「渡我さん、七躬治さんも。今から帰り?」
「これからご飯。出久も来る?」
「いや、僕は家に帰ってから食べるから……」
「じゃあ、途中まで一緒に帰りますか?」
「う、うん……。よろしく」
このまま廊下で話し込むわけにもいかないので、取り敢えず三人は言葉を交わしつつも横並びになって歩き始める。もう外はすっかり暗い。早めに帰宅した方が良いだろう。
「……今日、どうだったかな……?」
静まり返った廊下に響くのは、足音と出久の呟き。通り過ぎる教室からは誰の気配もせず、今校舎に残っている生徒は彼と彼女達ぐらいだ。職員室にはまだ先生達が残っているだろうけど、わざわざ夜の七時に廊下を彷徨く理由は無いと言って良い。
がらんとした静寂とした帰り道で、出久は答えが分かりきっている質問を隣の二人にした。何とも情けない呟きを聞いた被身子は思わず左隣の彼を見て、次に視線を右隣の癒々に移した。彼女は盛大な欠伸をして眠たそうにしている。それでも出久の言葉はちゃんと聞いていたようで、無表情の癒々は被身子を挟んだまま彼を睨んだ。
「全然駄目」
「ダメダメだと思いました」
「だよね……。僕もそう思ってる」
「分かってるならわざわざ聞かないで」
「う、ごめん……」
遠慮も何も無い辛辣な言葉が、容赦なく出久の心を抉る。今日の彼は本当に時間を無駄にしてしまったので、女子二人の言葉に弁明することは出来ない。かと言って、自分の駄目さ加減にへこんでいる時間は無い。明日にはまた、癒々との個性制御訓練が待っているのだ。反省をするのは良いが、同時に何をどうしたら改善出来るのかも考えなければならない。そうしなければ、次の訓練も時間を無駄にすることになる。それだけは、何としても避けておきたい。避けなければならない。
「……どうして今日は、個性を使えなかったんですか? ずっと見てましたけど、凄く萎縮してたのです」
「えっと……」
どう説明したら良いか、彼は迷う。萎縮の原因は分かっている。怖いのだ。自分の個性が誰かを、癒々を傷付けることが恐ろしい。まして癒々に何かある事を恐れている被身子の前で、癒々を傷付けるような真似はしたくない。
だから、どんなに個性を使おうとしてもその直前で踏み止まってしまう。OFAを撃つべき相手が人ではなく物であったなら、まだ訓練はマシなものになっていたかもしれない。
被身子と癒々を交互に見詰めて、出久は口を閉じる。本音を伝える勇気は、今の彼には無い。
「……渡我さんは、さ。訓練で七躬治さんが傷付いても……良いの?」
「嫌です。嫌に決まってるじゃないですか。二人きりの時間は減っちゃうし、怪我なんて絶対して欲しくないです。そもそも緑谷くんと訓練すること自体、私は反対なのです」
「ご、ごめん……」
とても冷ややかな愛想笑いを出久に向けて、被身子は捲し立てる。今口走ったことは、全て彼女の本音だ。嘘は一つもない。癒々に怪我なんて欲しくないし、そもそも相手が誰であっても恋人との時間を邪魔されたくない。訓練さえなければ、もうとっくに被身子は自宅で癒々との時間を思う存分満喫していた筈なのだ。でも今は、出久の訓練があったせいで未だに学校に居る。これから夕飯を外で済ませて家に帰る頃には、夜の九時を回ってしまうだろう。明日の事を考えると、今晩はそんなに夜更かし出来ない。
「まぁでも、あの訓練は癒々ちゃんがしたい事です。だから、ちょっとぐらいは我慢します。本当にちょっとだけ、ですけど」
「う、うん。ありがとう」
嫌なことには変わり無い。だけど被身子は、癒々がしたい事だから多少は許そうとしてくれている。それが余計に出久の心を沈めてしまうのだが。
「……まさかとは思いますけど、緑谷くん。私を気遣ってたから個性が使えなかったのですか?」
「……っ、それは違うよ!」
「じゃあ、何?」
「それは……」
個性が使えなかった理由を癒々に問い詰められて、出久は黙り込んでしまう。事情を話さなければならないことも、彼は分かってる。なのに、口が開かない。伝えようとしても、声が出てこない。
既に情けない姿を晒しているのだから恥もへったくれも無いのだけれど、それでも個性を扱うことが怖いだなんて口が裂けても言えそうにない。自分が誰に期待されていて、誰から個性を授かったのか。それをちゃんと分かっているからこそ、今更逃げる訳にも行かない。弱音を吐くことなんて許されない。出久は、そう思い込んでしまっている。
「怖がってる暇なんて、あなたにあるの?」
「……っ!」
心の内を、見透かされていた。無感情な瞳に見詰められて、臆病になってしまっている出久は息を呑む。癒々の言葉を聞いた被身子は出久の顔を思わず覗いて、瞬きを繰り返す。彼女は、まさか彼が怖がっていることが原因だとは思っていなかったらしい。
「怖いんですか? 緑谷くん」
「……っ、情けない……よね……」
「そんなこと無いです。あんな凄い力を人に向けて撃つなんて真似、誰だって簡単には出来ないですよ」
怖がることに否定的な癒々とは違い、被身子はむしろ納得しているようだ。出久に怖がっているような時間はない。それは変えようのない事実だ。でも、怖がることも仕方ないような力が彼の個性であることも確かな事実だ。
何より、どうも被身子は出久の存在を無視出来ないようだ。顔を会わせた回数も、言葉を交えた回数も決して多いわけじゃない。何度か話したことがある程度のクラスメート。それが彼女と彼の関係だ。そして今後は体育祭に向けて訓練を共にすることになるし、二人して癒々に教えを乞うことになる。彼を放っておくことは、ちょっと出来そうにない。
「それに、緑谷くんには頑張って貰わないと困るのです。癒々ちゃんとの時間を減らさないで」
「ご、ごめん。訓練、頑張るから」
「……約束ですよ? 破ったら本気で許さないですから」
被身子が出久を放っておけないと思っているのは本当のことだけれど、それはそれとして警戒心は剥き出しである。彼は癒々が固執する数少ない存在だ。もしかすると、もしかするかもしれない。それは絶対に許せない。ちょっと想像しただけでも、独占欲が大きく膨れ上がって表情に出てしまう。
もはや微塵も隠すつもりがない盛大な嫉妬をぶつけられて、出久はたじたじだ。そんな二人を俯瞰している癒々は、被身子の右腕を強く引いた。お陰で、被身子はちょっとバランスを崩した。
「わ た し の !」
無表情のまま、彼女は怒った。珍しく声を荒げている。どうやら被身子と出久が話している姿を見て、大いに妬いているようだ。
癒々は癒々で独占欲が大きい。どっちと話してもどちらかが嫉妬してしまうような彼女達を前に、出久は固まってしまった。ちょっと彼にはどうしようもない。恋愛に疎いクソナードには、この状況を上手く打破することはまず無理だろう。
「い、いや別に七躬治さんから渡我さんを取ったりはしないからっ!」
「それ、私から癒々ちゃんを取るってことですか?」
「取らないよっ!? そんなつもりは微塵もないよっっ!!」
どうしてか、話がおかしくなってきた。ちょっと前まで訓練が上手く行かなかった原因について話し合っていたのに、三人はもうそれどころなくなっている。
他に誰も居ない廊下をぎゃあぎゃあと騒ぎながら、彼と彼女達は歩いていく。
■
廊下を通り昇降口を出て、校門まで歩いた三人を待っていたのは大きな警護車両だった。助手席の扉の前には、スーツ姿の大男が立っており癒々を見るなりにこやかに笑って手を振り始める。また公安の
「や、癒々ちゃん。
「は、はい。緑谷出久です。あの……どちら様ですか?」
「ん? そこの二人の保護者。帰りが遅いものだから、迎えにね」
「保護者の方でしたか……! すみません、二人には僕の訓練に付き合って貰ってて、それでこんな時間に……!」
もう夜の七時を過ぎている。外はすっかり真っ暗だ。癒々と被身子の帰りが遅くなっているのは事実で、だから保護者が迎えに来たとしても何もおかしくはない。
大独活の言葉を鵜呑みにした出久は、ペコペコと頭を下げ始める。急な保護者の登場に少し緊張しているようだ。それでも礼儀正しく接するのだから、癒々や被身子よりはしっかりしている。少なくとも、大独活に悪い印象は与えていないだろう。
「ああ、良いの良いの。学友との時間は大切だからね。ついでに駅まで送ってくから、君と
「は、はい。すみません、よろしくお願いします」
今のところ、大独活は癒々や被身子の保護者にしか見えないような口振りをしている。出久はすっかり信じ込んでしまっているようで、言われた通り車の後部座席に乗り込もうとドアを開く。車両の中は明らかに普通の車よりも広いもので、後部座席だけでも八人ぐらいは楽に乗れそうだ。
被身子は大独活を睨み付けてから、出久の後に続いて車に乗り込む。彼女が座席に座ると同時、ドアは音を立てて勝手に閉まった。二人がちゃんと車に乗ったことを確認した大独活は、溜め息を吐きながら車に寄り掛かる。
「わざわざ迎え? 何で?」
「……君ね、立場分かってる? 敵連合の的にされてる可能性があるの。なのにこんな時間まで家に帰らないとか、そりゃ迎えに来るに決まってるでしょ」
彼の言葉は、当然のものだった。癒々は公安に保護されている立場に有るのだ。日頃から好き勝手に動いている彼女だが、その行動は右手に付いたブレスレットで常々監視されている。まして最近は、ヴィランの襲撃によって入院する羽目に遭っていたのだ。
またいつヴィランが襲ってくるか分からない。そして癒々が真っ先に狙われる可能性は、ゼロとは言い切れない。もし万が一ナロクと言うヴィランが癒々の個性の仔細を敵連合に話していた場合、癒々は間違いなくターゲットにされてしまうと公安は踏んでいる。
「どうでも良い。それで、何の用?」
いつもの口癖が飛び出した辺り、癒々は公安からの心配を受け取るつもりは無いらしい。こんな彼女を警護するのは大変だろう。現に大独活は眉間に皺を寄せてしまっている。頭に手を当てたのは、頭痛がしたからだ。もう少し癒々の自由奔放さが落ち着いてくれれば、彼も仕事がしやすいだろうに。
「……はあ。近々行われる体育祭なんだけど、雄英との話し合いで癒々ちゃんは不参加になったから」
「わたしが雄英に居ることはもう
「君の個性を見て、僅かでも君の価値に気付く者がこれ以上現れないようにする為だ。これには従って欲しい。渡我さんに危害が加わる可能性もあるしね」
公安は、どうしても癒々を守らなければならない。何よりヴィラン襲撃なんて事件があった以上、彼女の存在を世間に晒すような真似は絶対に出来ない。だからこそ、癒々が雄英体育祭に参加しないよう既に手を打っているのだ。本当なら、学校にだって行かせたくないのだろう。
ただ守るだけなら、もう雄英になんて通わせずにどこかに隔離してしまえば良い。被身子や癒々の意思なんて、無視してしまった方が早い。それでも今二人を雄英に通わせているのは、公安なりに譲歩してくれているからだろうか。ただ今は様子を見ている、と言う線もあり得なくは無い。
何にせよ、公安は癒々の警護の為にちゃんと動いている。癒々が少しでも気を遣って行動してくれれば、彼女は公安の問題児などと言われなかっただろうに。
「……そ。なら従っとく。話はそれだけ?」
「取り敢えず。さ、車に乗って」
「お腹空いた」
「悪いけど外食は無し。出前も控えるように」
「……」
にこやかな笑顔を浮かべた大独活が、割と洒落にやらないことを言い出した。殆どの食事を外食や出前で済ませている癒々にとって、その二つを禁じられるのは結構な死活問題だ。何せ、彼女も被身子も料理が出来ない。被身子の方は簡単な調理ぐらい出来るが、それでは癒々が満足する食事は用意出来ないだろう。
本当に大問題だ。体育祭に参加出来ないことよりも、ヴィランに狙われるよりも大問題である。流石にこれには従いたくない癒々は、無表情のまま大独活を睨んだ。
「しばらく警護の目は厳しくなるから、ご飯は自炊で済ませるように。食材はこっちで用意するから、これを機に料理してみたら?」
「誰が?」
「癒々ちゃんと、渡我さんで」
当然でしょ? とでも続けそうな物言いだ。警護の都合上、被身子と癒々はしばらく大変な思いをすることになりそうだ。
「ほら、車に乗って。しばらく登下校は送迎するから、そのつもりでね」
「……むう。ご飯……」
空腹を感じている癒々は不満そうな雰囲気を醸し出しながら、車に乗り込む。急に外食も出前も禁じられてしまったので、この後はもう家に送り届けられるしかない。助手席に座り込んだ彼女は早速シートを後ろに傾けて、後部座に目を向ける。先に車に乗っていた被身子と出久はお互い別々の方向に顔を向けて、特に会話しようとはしていない。すっかり黙り込んでしまっているようだ。別に、彼と彼女の仲は悪いわけじゃない。ただ単純に話題が無いだけだ。
そんな二人を眺めた後、癒々はシートに体を預けて目蓋を閉じた。今日は寝不足な上に、今は空腹。もういい加減、起きていることが嫌になってきたらしい。
「癒々ちゃん、シートベルト」
運転席に乗り込んだ大独活は癒々にそう指摘をするけれど、彼女は動こうとしない。もう寝ているとは思えないが、動く気も会話する気も無いのは確かだ。仕方がないので、彼は運転席から身を乗り出して癒々にシートベルトを掛ける。それから静かに、車を動かし始めた。
「緑谷くん。どの辺りまで送っていけば良いかな?」
「あ、えっと。駅までお願いします。あとは電車で帰りますから」
「分かった。ところで、癒々ちゃんや
「っ。それ、止めてください。名前で呼ばれるのは不快です。鳥肌が立ちます」
さっきから、大独活は被身子のことを名前で呼ぶ。彼女からすればそれが堪らなく不快だ。被身子は思いっきり大独活を睨み付けるが、彼はまったく気にしていない。そんな素振りが、余計に彼女の神経を逆撫でする。
「ははは。見ての通り反抗期でね。二人とも学校のことは何も話してくれないんだ」
「……その、七躬治さんや渡我さんの保護者ってことは……二人のお父さんですか?」
「いや? 親族じゃないよ。似てないでしょ? ただちょっと訳有って、二人の後見人をやってるんだ」
運転しつつも、にこやかな笑みを絶やさない。なので大独活が見せる雰囲気は優しいもので、つい出久は気を許してしまう。何を考えているか分からないが、公安はクラスメートにまで取り入ろうとしているらしい。
「そう、なんですか。すみません、踏み入ったことを聞いてしまって」
「良いよ良いよ。それで、二人はどうだい? 特に
「……渡我さんは、真面目だと思います。授業もちゃんと受けてますし、クラスメートとの仲も悪くないです」
促されるまま、出久は学校での被身子の様子を話し始める。そんな彼を被身子は数秒ほど横目で睨み、直ぐ目の前の助手席に向かって手を伸ばす。彼女の指先が触れるのは、癒々の髪だ。大独活と話すつもりも、かと言って出久に突っ掛かるつもりも無い。今の二人の会話に下手に割り込むと、面倒なことになりそうな予感がするからだ。
「でもこの前、サボってたでしょ?」
「ま、まぁ……それはそうですけど。でも授業態度は良いですし、この間の対人訓練だって頑張ってました! だから、心配しなくても大丈夫です!」
「……」
隣に本人が居るにも関わらず出久がそんな事を力強く口走るものだから、被身子は少し擽ったい気持ちになる。取り敢えず気を紛らわせる為か、彼女は癒々の髪を好き勝手に弄り始めた。指先に巻いてみたり、手櫛で整えてみたり。とにかく、被身子は何がなんでも大独活と出久の会話を頭に入れたくない。二人の会話が終わることを願うばかりだ。
「君は良い子だね緑谷くん。出来たらで良いんだけど、二人のことをサポートしてあげてくれないかな? 特に癒々ちゃん。好き勝手するから大変だとは思うけど」
「はい。僕で良ければ、喜んで」
「本当に良い子だ。二人に君の爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいだよ。
……さて、この辺りで良いかな?」
気が付けば、車は駅前のロータリーに辿り着いていた。大独活は静かに車を止めて、後ろを振り返る。出久も目が合うなり彼は微笑んで、ドアロックを解除した。
「はい、大丈夫です。ありがとうございました。じゃあ渡我さん、七躬治さん。また明日」
「また明日です」
「強くなろうね。僕も、渡我さんも」
「……はい。約束です」
去り際に笑顔を見せた出久に小さく手を振って、被身子は愛想笑いを浮かべる。彼は静かにドアを閉めて、駅の中へと向かって行った。
遠ざかっていく背中を目で追いながら、彼女は癒々の髪をもう一度撫で回す。
強くなろうなんて約束を出久と交わしてしまったことを、少し不思議に思いながら。
という訳で癒々は体育祭不参加です。参加させると「癒々つえー」で終わってしまうので。ただ、別の形で活躍させようとは思っています。たぶん恐らくきっとメイビーそう。
癒々の職場体験先
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エンデヴァー(癒々ガチ切れ)
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リカバリーガール(癒々の情報開示)