わたしのヒーローアカデミア 作:Plot Must Die
「んー……」
授業中。プレゼント先生が教壇に立って教鞭を取っているのに、癒々は授業には何ら関係の無いことで頭を悩ませていた。今日、彼女は珍しくノートを開いている。左手でボールペンをくるくると回しながら、天井を見上げては唸る。そして唸ってはノートに文字を書き込んで、書き込んでは直ぐに手を止める。そしてまた唸る。これを何度も何度も授業中に繰り返すものだから、彼女の周囲に居るクラスメートは地味に集中力を削られていく。
今癒々が何に悩んでいるか。それは被身子と出久の事だ。彼女は昨日から、体育祭に向けて二人を指導することになった。なので授業中にも関わらず、その指導内容を考え込んでいるわけだ。寝はしないものの、授業そのものをちゃんと受けるつもりは無いらしい。
「……んー」
「ヘイヘイA組の問題児。ちゃんと授業は聞けよ? 担任に報告するぜ? それとも俺の授業はつまんねーってか?」
あまりにも授業態度が悪いものだから、しっかり教師の目に付いてしまった。教壇の英語教師は少々、というか大分お冠のご様子である。そんな彼に睨まれた癒々は一度手を止めた。何で先生が怒っているのか理解していないようで、彼女は首を傾げる。反省する気配は少しも無い。
「聞く意味あるの?」
「あるに決まってるだるぉおっ!? 何でないと思った!?」
「……? 教科書、丸暗記してるから?」
入学初日の時点で全科目の教科書を全て記憶してしまった癒々からすれば、教科書通りに進む授業を聞く意味は無い。意味は無いのだけれど、だからって授業を全て聞き流して良いわけじゃない。彼女のせいで授業が中断されてしまっている。クラスメートからしたら、ただただ迷惑だ。
「はーそうですか、大層な記憶力だな。じゃあ明日から教科書に載ってない内容やるから、ちゃんと授業受けろ!?」
「……分かった。聞くようにはする」
「ノートも取るんだよ!!」
「どっちかにして」
「どっちもやれ!!!」
「んー……」
今日もA組一番の問題児っぷりを遺憾無く発揮しながら、癒々は教師との会話を打ち切った。本当に残念なことだが、彼女を教育するという点で公安は匙を投げている。そして、何だかんだで雄英に押し付けたのだ。結果、プレゼント・マイクが大絶叫する羽目になってしまっている。彼の声量が凄まじいものだから、A組全員は思わず両耳を塞いでしまった。
何をどう言われたところで、特に従う素振りを見せない癒々は放課後に向けての準備を進めていく。多分今日一日はこんな様子で過ごすのだろう。教師達は大変苦い思いをすることになりそうだ。
「……んー……。プレゼント、わたし抜ける」
「は?」
「抜けるから」
癒々はまた問題行動を起こそうとしている。こんな場面を相澤に見られたら、次は謹慎じゃ済まない。停学になれば良い方で、下手すれば除籍になってしまう。そうなってしまえば雄英に入学した意味がなくなってしまうことを、彼女は理解しているのだろうか。いや、理解しているなら尚更質が悪い。
ノートと筆箱を片手に癒々は席を立ち、真っ直ぐ教室を出ようとする。
「ちょっ!? 待ちたまえ七躬治くん! それは見過ごせないぞ!!」
「飯田うるさい。授業中は静かにしないと相澤に怒られるよ?」
「授業を抜けようとしている君が言えることかそれ!?」
「じゃ。被身子、出久。また放課後」
さらっと放課後まで授業をサボることを宣言し、彼女は教室を出て行ってしまった。と、その時。被身子も席から立ち上がる。
「先生、連れ戻してきます。私、相澤先生に癒々ちゃんの面倒を見るよう言われてるので」
「オーケー。じゃあ渡我ガール、あの問題児を次の授業までに連れ戻してくれ。相澤には報告しとく」
「……はい。じゃあ、失礼します」
相澤先生に癒々の世話係を命じられている以上、授業を抜け出してしまった彼女を放っておくことは出来ない。そんなことをしたら、後で被身子も一緒に怒られてしまう。流石にまた担任に怒られるのは望むところではない。だから癒々を連れ戻す為に授業を放り投げてでも被身子は動かざるを得ない。
……と言うのは、建前の話。実際のところは、癒々のように授業から抜け出すチャンスだ。先生は次の授業までに連れ戻して来いと言った。なので問題児である癒々を理由に、癒々と一緒に授業をサボれる。恋人と一緒に、煩わしい授業から逃れることが出来る。そんな黒い事をさらっと思い浮かべて実行に移してしまった辺り、被身子も中々の問題児だ。相当質が悪い。真実を知ったら、彼女の腹黒さにクラスメート達は絶句するだろう。
そんなこんなで。教室から出た被身子は後ろ手で静かに扉を閉めつつ、ぐるりと廊下を見渡す。そして直ぐ、癒々を視界に収めた。
と、同時に癒々が後ろを振り返る。彼女は被身子を見るなり口を開こうとしたが、直ぐに被身子が唇に指を当てたので声は発しなかった。
「私も抜けてきちゃいました。このまま次の授業までサボっちゃいましょう」
足音も立てずに癒々に駆け寄った被身子が、悪い笑顔を見せながら囁いた。そんな彼女の手を取ったA組一の問題児は、特に何も言わずに歩き始める。
指と腕を絡ませ合いながら、二人は他に誰も居ない静かな廊下を歩いて行く。どこに向かうかは考えていない。バレたら先生に怒られてしまうことも、考えていない。ただ今は、二人きりで静かな時間を過ごせるならそれで良いのだ。
……。二人並んで歩くこと、数分。
授業を抜け出した被身子と癒々はサボるのに最適な場所を見つけた。それは屋上の扉の前である。広くもなければ狭くもないその空間は、手すりが設置された小さな壁があり、人ふたりが身を隠すにはもってこいの場所だと言えるだろう。そんな場所に彼女達はぺたんと座り込み、身を寄せ合った。退屈な授業から抜け出せたことと、こうして恋人と触れ合うことが出来て、被身子は随分と上機嫌だ。癒々は膝の上に広げたノートに文字を書き始めた。
次の授業が始まるまで、そこそこの時間がある。少なくとも三十分はサボっていられるだろう。大きな声を上げて喋ることは出来ないけれど、それでも被身子は嬉しくて楽しい。満面の笑みを浮かべた彼女は、癒々の肩に頭を乗せてこの時間を堪能していく。
「……癒々ちゃん、何を書いてるの?」
教室にいる時からずっと癒々はノートに何かを書き込んでいる。その内容が気になった被身子は、そのままの姿勢でノートを覗き込みながら囁いた。
「今日の訓練内容を考えてる。被身子の方は直ぐ決まったけど、出久の方は悩ましい」
「……だから、さっきは唸ってたんですか?」
「うん。出久は面倒くさい」
「むぅー。私は簡単な女じゃないのです」
癒々の言い分に、被身子はちょっと拗ねた。訓練の為とは言え、恋人が男子の事を考えて悩んでいる姿を見るのは面白くない。しかも自分の事は直ぐ決まったなんてあっさり言われたら、簡単だと思われているようで気に食わない。どうせ考えてくれるのなら、もっと悩んで欲しいと彼女は思っている。好きな人の心は、全部全部独占してしまいたくなるものなのだ。
だから、被身子は癒々の首筋を唇で啄む。ここは学校で、自宅の寝室じゃない。でも、キスぐらいはしたい時にしたい。何より今、癒々を独り占めしたくて堪らない。彼女が自分以外の誰かについて悩んでいる姿など、これっぽっちも見たくないのだ。
すっかり構ってちゃんに変貌してしまった被身子を横目に見て、癒々は手を止める。ボールペンをノートの上に置いて、自由になった右手を被身子の頬に添えた。
「また、やきもち?」
「そうです。やきもちです」
「被身子の欲しがり」
「癒々ちゃんには負けます」
すっかり拗ねてしまっている被身子は、癒々の手のひらに頬を擦り付ける。金色の瞳が、物足りないと訴えている。どうにも自制が出来ていない。
「ちうちうしたい?」
「……少しだけ」
「それは、家に帰ったらね」
「でもぉ」
「でもじゃない」
少し開いた被身子の口に、癒々は人差し指と中指を差し込んだ。チウチウをお預けされてしまった被身子は、更に不満そうにしながら癒々の指を唇で挟む。そして指先を、ちろりと舐めた。大きな不満に小さな期待が混ざった目で、真っ直ぐに恋人を見詰める。今の被身子は欲しがりで、ちょっとやそっとじゃ満足しそうにない。これ以上の行為を許すと、お互いに歯止めが効かなくなってしまうだろう。だけど、ここは学校だ。何もかも忘れて、求め合って良い場所じゃない。
ただ、昨晩は眠気が限界だったこともあり、被身子は満足する程チウチウ出来ていない。故に癒々が欲しくてどうしても我慢が出来ない。普段は受け入れてくれるのに、何故か今は受け入れて貰えなくて不満が大きくなっていく。
「……ちょっとだけね」
拗ねきった被身子を前に少しだけ考えて、それから癒々はネクタイを緩めブラウスのボタンを外す。それから彼女に抱き付いて、少し制服をはだけさせた。被身子の目に、白くて柔らかな肌が映る。それが嬉しくて、彼女は心が跳ねた。
「大好き。声、出しちゃ駄目ですよ?」
満面の笑みを浮かべた被身子は、今日は首ではなく肩に噛み付いた。理性のブレーキは、またも壊れてしまったようだ。
■
放課後がやってきた。結局今日一日、癒々は教室には居たものの授業は全く聞かずに過ごした。昼休みに相澤に呼び出され手短にお説教されても、授業態度は少しだって変わらぬままだった。
ホームルームが終わり少し経った頃、A組教室前の廊下は騒がしくなってしまった。その理由は、体育祭前に他のクラスの生徒達がA組の様子を覗きに来たからに他ならない。つまり偵察である。
ヴィランに襲撃され、それでも全員
その後、偵察に来た他クラスの生徒達は一斉に敵意を見せた。普通科の生徒が堂々と宣戦布告したり、A組にヘイトが集まってしまったことに切島が慌てたり、爆豪が「上に上がりゃ関係ねえ」などと豪語したりして、最後は教室前に出来た人集りは取り敢えず解散。
この騒動を見ていた出久は、密かに決意を新たにしていた。ちょっとの失敗でへこたれている場合じゃない。個性を怖がってる場合じゃない。何より、オールマイトの期待を裏切りたくない。そして被身子と交わした約束を、破りたくない。頬を両手で思いっきり叩いて、彼は腹を据えた。
以上が、ほんの十五分程前の話。癒々は現在、体操服に着替えた被身子や出久と共に校舎裏の雑木林に居る。今日はちゃんとした場所が用意出来なかったことを謝罪する連絡が、オールマイトから出久にあったせいだ。お陰で癒々は考えていたプランを変更する羽目になってしまった。
「ん。じゃあ被身子も出久も、まずは柔軟体操から始めて。時間をかけてゆっくりと。ストレッチでも良い」
雑木林の中に見付けた少し開けたスペースにて。これから被身子と出久を指導するのに制服を着たままの癒々は、最初の指示を出した。
「柔軟にストレッチ、……ですか?」
自分勝手な癒々が考えた訓練は厳しいものになるだろうと勝手に思い込んでいた被身子だが、最初の指示を聞くと目を丸くした。体育祭までそんなに時間は無く、平日は授業がある以上どうしても訓練時間は短いものになってしまう。なのに癒々は、柔軟やストレッチに長い時間をかけろと言う。その指示が示す意図は少し考えれば簡単に思い浮かぶものだが、それでも被身子は首を傾げる。出久も、あまり納得はしていないようだ。
「準備体操ってこと……だよね? でも、時間はあんまり無いし……。いや、大事なのは分かるんだけど体育祭まで時間が」
「時間が無くてもちゃんとやって。それと寝る前にも必ずやること。怪我されると時間が無駄になる」
「う、うん。分かった。頑張ろう渡我さん」
「はい。緑谷くんも」
どうにも拍子抜けしてしまった感じが抜け切らないが、体操着の二人はそれぞれが時間をかけて体を解していく。前後左右に体を反らしたり、手足を伸ばしたり関節を回したり。取り敢えずパッと思い付く柔軟体操や簡単なストレッチなんかを何度も繰り返していく。木々に囲まれながら筋肉や関節を伸ばすのは気分が良い。
この後どんな訓練が待ち受けているのかまったく分からない被身子と出久だけれど、それでも少しずつ気分が落ち着いていく。そんな二人を、癒々は黙って見続ける。
「……んっ、……ふぅ。こういうのも……悪くない、です……」
「そう、……だね。何か、リラックス……出来ると言う、か……」
私語を交えながらも、彼女と彼はゆっくりと体を解し続ける。一分、二分、三分と時間が流れていく。ただ、どこまでやれば良いかは指示されていないので、ちらちらと癒々を見てしまう時がある。そんな二人と目が合っても、彼女は何も言わない。取り敢えず次の指示があるまで、このストレッチを続けるしか無さそうだ。
「んん……っ。癒々ちゃん、これ……いつ、まで……?」
「わたしが良いって言うまで」
「……。……はい」
まだまだストレッチの時間は終わらない。四分経とうと、五分経とうと癒々は「良い」とは言ってくれない。彼女からの許可が出るのは、あと何分先のことなのだろうか。怪我防止以外に、何か目的が有ってもおかしくはない。ただ体を解させる為だけにやらせているのなら、つぶさに二人を観察する理由はどこにもない筈だ。
……十分後。もう何度目になるか分からない問い掛けの視線を向けられた癒々は、ようやく二人に新たな指示を出す。
「出久は昨日と同じ。わたしに向かって個性を撃つ。ただし今日は失敗する度にわたしが殴るか蹴るかするから、避けるなり防ぐなりして。
成功したら個性を撃ち続けて。わたしの攻撃に対応出来なかったら、被身子と交代」
「う、うん。実戦形式みたいな感じ、だよね?」
「ん。被身子はわたしからひたすら逃げる。但しわたしから二歩以上は離れないで、背も向けない。タッチされるか、三分経ったら出久と交代」
「……はい。でも癒々ちゃん、それって何の訓練ですか?」
出久に出した指示は、要するに対人戦闘訓練だ。けれど被身子に出した指示の内容は、訓練と言うよりは遊びに近い。癒々が言っていたことは、逃げる範囲が限定された鬼ごっこにしか思えない。それがいったい何の役に立つのか。どんな訓練なのかさっぱり分からない。
被身子の質問に癒々は答えない。ただ出久の方に向き直して、昨日と同じように開いた片手を前に突き出す。
「被身子は少し離れてて。ほら、出久」
「じゃあ、行くよ七躬治さんっ」
少しの緊張が混ざった真剣な顔付きで、出久は昨日のように拳を振りかぶる。力まず、脱力を意識せず、そして個性を抑え込もうとしない。昨日癒々に言われたことを、そのまま実践しようとしている。
その言葉の意味を、彼は昨晩ずっと考えていた。そして辿り着いた結論は、個性を全開で使えということじゃない。
昨日の出久は、例えるなら100ある力が人や自分を傷付けないように抑え込もうとしていた。だから撃てなかった。抑え込むイメージが強すぎて、個性を発動させることが出来なかった。そもそも、電子レンジに入った卵を爆発させないなんてイメージは分かりにくい。つまり、癒々が伝えようとしていたことは。
(ワン・フォー・オールを、抑え込まない! 軽く引き出す! 電子レンジじゃなくて、息を少しだけ吐くイメージ……!)
真っ直ぐ放たれた拳が、手のひらにぶつかる。昨日よりも大きな音が鳴り響き、そして癒々が構えていた手が、少しだけ後ろにずれた。正確には、拳を受け止めた衝撃で癒々の体が真後ろにずれた。
今、間違いなく出久は個性を使った。反動は全く無い。右腕は少しも痛まない。昨日は全然駄目だったことを、今日は確かにやって見せたのだ。
「っ、で、出来たっ!」
「止まらない。続けて。次は左腕で撃つ」
癒々はもう一度、開いた手を出久に向ける。右腕ではちゃんと個性を扱えた。だけど右腕だけしか使えないなら何の意味も無い。左腕や両足、それこそ全身で個性を扱えなければ体育祭で結果を出すことなんて出来ない。
もう一度息を少しだけ吐き出すイメージをしながら、出久は左拳を振るう。……が、今度は癒々の手は少しも動かなかった。そして次の瞬間、出久の腹に癒々の拳が突き刺さった。
「うぐ……っ!?」
「ちゃんと避けるか防ぐ。被身子」
腹を殴られ前屈みにしゃがみ込んでしまった出久を叱責した後、癒々は被身子の方へと体を向けた。もう既に歩き出している。これから始まるのは、ちょっと変わった鬼ごっこ。逃げる側は、三歩以上は鬼から離れられない。
真っ直ぐ向かってくる癒々から三分間逃げ切るために、まず被身子は後ろに下がる。鬼から目を逸らさず、二歩以上は下がらないよう距離と足元に気を付けながら。と、その時。
「あ」
癒々が声を上げて右を見た。足を止めて、確かに右を見たのだ。何か気になるものでも有ったのか、それとも人でも通りかかったのか。つい被身子も癒々が見ているところに視線を向けてしまう。それが、彼女の間違いだった。
「はいタッチ」
「え……っ!?」
一瞬。ほんの一瞬目を離した隙に肩にタッチされてしまった。確実に二歩以上は離れていたのに、今は直ぐ目の前に癒々が居る。まるで瞬間移動でもされたかのような感覚に、被身子はただただ困惑するしかない。
「次。出久」
「……っっ、ちょっ、ちょっと待って……っ」
「待たない。動かないなら蹴飛ばす」
「ぅ、ぐ……っ」
今すぐにでも立ち上がろうと彼は手足に力を込めるけれど、体の中から衝撃が抜けてくれない。たった一度のボディーブローが、出久から立ち上がる力を全て奪ってしまった。それでも歯を食い縛りながら、何とか立ち上がろうと足掻く。立ち上がらなければ、次に飛んでくるのは蹴りだ。腹を打たれただけでこうなってしまうのだから、蹴飛ばされたらそれこそ気絶してしまう。
訓練時間は長くない。気絶は何としてでも避けなければ、今日は何も出来なくなってしまう。まだまだ訓練は始まったばかり。疲労で動けなくなるのも、ダメージで動けなくなるのもまだ早い。
ただ、癒々は容赦なかった。
「う゛っっ!」
立ち上がることが出来ない出久の頭を、膝で蹴飛ばした。彼の体は一回二回と転がり、ピクリとも動かなくなる。もう立ち上がろうともしない。どうやら気絶してしまったようだ。
「み、緑谷くん……!?」
流石にこれには被身子も驚いた。訓練とは言え、癒々が気絶するまで人を痛め付けるとは思っていなかった。流石に気絶しているクラスメートを放っておくことは出来ず、被身子は慌てて出久に駆け寄ろうとする。が、癒々に手を引かれてしまい彼に近付くことは出来ない。
「放っておけば良い。そのうち起きるから」
「……癒々ちゃん、もう少し手加減した方が良いです。気絶するまでやるのは……」
「手加減ならちゃんとしてる。防がなかった出久が悪い」
「それは、そうかも知れないけど……」
癒々の指導は、とても手厳しい。とは言え生ぬるい訓練で得れるものは、そう多くない。体育祭まで時間は無いのだ。多少スパルタになってしまうのは仕方がないことではあるが、早速気絶してしまうようなことをするのは如何なものか。
出久は、未だ動かない。目が覚めるまでまだまだ時間がかかるだろう。体育祭当日までこんな感じの訓練が続くと言うのなら、彼も被身子も前途多難である。
癒々の職場体験先
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エンデヴァー(癒々ガチ切れ)
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リカバリーガール(癒々の情報開示)