わたしのヒーローアカデミア   作:Plot Must Die

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 二日間の休みが終わってしまった。被身子と癒々は飯田兄の怪我を治す為に東京まで行ったり、その帰り道に渋谷でちょっとしたデートをしたりした。本当は思う存分東京観光をしたかったのだけれど、警護を理由に断念するしかなかった。その上、まだ癒々は公安からの警護が解けていない。最近世間では何かと物騒な事件が増え始めているので、もうしばらくの間は公安に送迎される毎日だろう。

 被身子からすれば、恋人と二人きりの時間を邪魔されるだけなのだから登下校時の送迎は不愉快だ。そんなに嬉しいものじゃない。だけど、今日に限っては普段よりは公安の送り迎えを容認している。

 なにせ今日は、朝から強い雨が降っている。空は雲に覆われて、どこまでも灰色だ。雨に濡れながら学校に向かうのは、中々に面倒くさい。制服が濡れると不愉快だし、足が濡れるともっと不愉快だ。なので、天気が悪い日だけは公安の送迎も悪くない。被身子は現金な部分がある女子高生なのだ。

 

「ボンジュール、ジュヌフィーユ達。今日は生憎の天気だね☆」

 

 下駄箱で上履きに履き替え、雨が原因かいつもよりちょっと雰囲気が違うような気がする廊下を歩き、教室に足を踏み入れた二人を待っていたのは青山だった。自分の席で頬杖をついた彼は、何故だか被身子や癒々の姿を穴が空きそうなぐらいに見詰めている。朝からいったい何の用だろうか。もしかすると用なんて何もなくて、本当にただの挨拶なのかもしれない。

 ……どちらにせよ、被身子はちょっと警戒してしまう。それは青山が、癒々のことをジロジロと見ているからだ。

 

「……おはようございます。青山くん」

「体育祭のチアガール衣装、とっても輝いてたよ☆ でも、ボクの輝きには届かなかったようだけどね」

「癒々ちゃん、行こ。これは無視で良いです」

「んー」

 

 A組の中でもっともヒエラルキーが低いのは峰田なのだが、青山の扱いも中々ぞんざいだったりする。彼の言うことは、微妙に理解が及ばない。なので女子の殆どは、青山の発言や行動はナルシストのそれとバッサリ切り捨ててしまう。

 特に被身子は、恋人が男の子と仲良くすることに乗り気では無い。むしろ反対だ。我ながら束縛が強過ぎると彼女は自制しようとするが、どうにも嫉妬を抑え込むことが出来ない。

 青山の存在を無視して、二人はまだ人が少ない教室の中を歩いて自分の席へと向かっていく。被身子は自分の席に鞄を置くと、椅子に腰掛けることなく癒々と一緒に癒々の席へ。まだ予鈴が鳴るまで時間が有るのだ。時間が許される限りは、カァイイ彼女から離れたくないのである。

 

「おはよう渡我、七躬治」

 

 青山の次にA組バカップルに話しかけたのは、意外にも轟だった。今朝は少し、と言うか大分柔らかい表情をしている。クラスメートではあるが、被身子も癒々も彼とはあまり馴染みが無い。彼について知っていることは正直少ないのだ。

 

「おはようございます。轟くん」

 

 特に交流が無くとも、挨拶されてしまったのなら、被身子は完璧な作り笑いを浮かべて挨拶を返す。癒々はやっぱり返事はせず、代わりに黙って轟の目を見詰めている。

 

「そういや気になってたんだが、二人は結婚するのか?」

「する。昨日指輪作りに行った」

「おお。おめでとう。子供は?」

「被身子の子なら産んでも良い」

「何の話をしてるんですか。そもそも、私と癒々ちゃんじゃ子供は作れないのです……」

 

 何故か癒々は被身子との子供を作ろうとしているようだが、そもそも二人の性別からして子供を作ることは不可能だ。そんな事は轟だって分かっている筈なのに、何でわざわざ子供について質問しているのだろう。

 

「何かこう……そういう個性で出来るんじゃないのか?」

「性転換って手は無くもない。確か海外に、そういう個性を持った人が居る」

「じゃあどっちかが男になるってことか。その個性は一時的なのか? 永久的だったら大変だな……」

「ちゃんと一時的。長くても三日とかだった筈」

「そうか。なら問題無いか」

「いや本当に、何の話をしてるんですか??」

 

 何でとんとん拍子で話が盛り上がっているのか、被身子はさっぱり分からない。しかし現に、轟と癒々が変なところで通じ合っている。この二人に共通点は髪の色が似通っていることぐらいなのだが、何故だか妙に仲が良い。ように見える。

 その事実を前に、嫉妬し易い被身子は轟に向かって警戒心を露にしてしまう。彼に恋人を()られるなんて事態はそもそも起きない筈だが、万が一にでも間違いなんて起きて欲しくは無い。だから椅子に座った恋人を抱き寄せて、癒々は自分のものだとアピールしている。

 

「子供、何人欲しい?」

「私、性転換なんてしたくないのです」

「じゃあ、わたしがする?」

「駄目です。嫌です。癒々ちゃんも、女の子ままで居てください」

 

 男になった癒々に一切の興味が無いとは言い切れないけれども、だからと言って子供を作る為だけに性転換なんて、絶対にして欲しくないと被身子は思う。

 なので、どちらかが性転換することで子供を作るなんて計画は最初から却下だ。この話は絶対に通したくないので、何が何でも阻止しなければならない。何ならこの話は、もうここで終わりにしておきたい。でなければいつ話を蒸し返されるか分からない上に、癒々が本当にその気になってしまう。

 

「とにかく、子供は作らないのです。性転換も駄目。分かった?」

「ん。じゃあそうする」

「もう……。どこでそんな変な事知ったの?」

「去年、教育プログラムを受けてた時に」

「……後でスマホ貸してください。文句言っておきますから」

 

 癒々に変な知識を植え付けたのが公安だと知った被身子は、ただでさえ嫌いな公安を更に嫌いになってしまった。後で大独活に公安への罵詈雑言でも伝えるつもりなのだろう。金色の瞳が、今は非常に冷ややかだ。

 

「にしても雄英体育祭すげえよな。来る時、何回も話しかけられて大変だった」

「あー、切島も? アタシもそうだった。ビックリしちゃったよ」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ……」

 

 教室が賑やかになって来た。気付けば登校を済ませたクラスメートがわいわいがやがやとしている。話題はもっぱら今朝あった出来事についてだ。

 雄英体育祭は、全国放送もされたしインターネット配信もされている。なので体育祭に選手として参加した雄英生徒が普通に通学していれば、体育祭を観ていた人達に話しかけられるのも仕方がない。もっとも被身子と癒々は校門前まで車の中なので、一般の方々から話しかけられることは無いのだが。

 

「轟くんはどうでした?」

「俺は……色々大変だった。話しかけてきた女性に礼を言ったら軒並み立てなくなっちまって……何でだ?」

「ぁー……、それは……災難でしたね……」

 

 轟は轟で、登校中にひと騒動あったらしい。何せ顔面偏差値で言えば、A組男子の中ではトップである。顔に大きな火傷痕があることを差し引いても、イケメンと言わざるを得ない美貌の持ち主なのだ。被身子とて、彼のことはイケメンだと思っている。彼女の趣向を考えると、顔に火傷痕があるのも地味にポイントが高いのかもしれない。

 ……とは言え、異性としてはまるで意識していない。恋愛する相手は一人で十分。癒々以外の誰かに好意を向けることなんて、もう無いのだ。

 

 恋愛的にも、友情的にも、絶対に。

 

 

「おはよう」

 

 

 教室の扉が予鈴と共に音を立てた、その瞬間。A組の面々は全員一斉に席に着いた。包帯が取れた相澤先生のご登場だ。如何に話が盛り上がっていたとしても、彼の存在を無視出来るような生徒はこのクラスには一人しか居ないだろう。

 今朝も気怠げな相澤が猫背のままに教壇に立つと同時に、癒々が静かに席を立った。物音ひとつ立てないで立つ姿は無表情も相まって不気味そのもの。そんな彼女は、鞄から数枚の作文用紙を取り出した。全て余すところなく文字で埋め尽くされているようだ。内容は、体育祭での婚約宣誓に関する反省文である。実は登校中にでっち上げた代物なのだが、そんな物をこれから提出するつもりらしい。

 

「ん。今出しとく」

 

 教壇前まで移動した癒々が、でっち上げた反省文をさらっと提出した。相変わらずマイペースな問題児を前に、相澤は朝から溜め息を吐き散らかす。

 

「……ったく。お前は卒業するまでに何度反省文を書くつもりだ? ほんといい加減にしとけよ」

「ごめんなさい?」

「疑問符は要らん」

「……ごめんなさい?」

「もう良い。席に戻れ問題児。

 ……さて、諸君。休み明けだが、さっそく君達にはやって貰うことがある」

 

 クラスメートの大半がゴクリと喉を鳴らした。これから我らが担任が何を言い出すのか、各々考え始めて警戒している。相澤先生のことだから、突然の何かを言い出し始めてもおかしくはない。

 例えば、除籍が懸かった訓練。これはあり得なくもない。入学初日にとんでもない体力テストを言い渡した彼なのだ。

 例えば、小テスト。なんて可能性もあるだろう。二日も休みがあったのだ。その間に勉学を怠けていないかチェックすると言い出す確率は決して低くない。

 一拍の間を置いて、相澤が口を開く。その瞬間、生徒達の緊張は更に高まった。

 

「コードネーム。ヒーロー名の考案だ」

「胸膨らむヤツきたああああっっ!!」

 

 相澤先生の一言で、教室が歓喜の叫び声に包まれた。ヒーローの卵としては、自身のヒーロー名を決めるなんてイベントは胸がわくわくになってしまう。クラスメートの半数程が騒いでしまうのも無理はない。が、話の途中で大声を上げられた担任は鋭い目付きになりながら手首を折り曲げて骨を鳴らす。指先が首元の捕縛布に向かって伸びているのは気のせいじゃない。

 これ以上騒ぎ立てるなら黙らせる。とでも言いたそうにしているイレイザーを見て、騒いでいた全員は口を閉じた。癒々は興味無さそうに欠伸をして、机に突っ伏す。被身子は、周りが喧しすぎて片耳を塞いだ。

 

「というのも先日話した、プロからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される二・三年から……。

 つまり今回来た指名は、将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味を削がれたら一方的にキャンセルされる、なんてのはよくある」

「大人は勝手だ……っ!」

 

 まだ相澤先生が話している最中ではあるが、峰田が机を叩いた。大人が憎いからではなく、世間の勝手さに震えているようだ。

 まぁ実際、勝手な話ではあるだろう。自分達から指名しておいて、興味が失せたらやっぱりキャンセルなんて行動は大人が子供に向けてやるべきことじゃない。だが、今のヒーロー飽和社会からしたら余分な芽を育てる必要はどこにもない。使い物になりそうなら使う。そうじゃないなら切り捨てる。ヒーローとて公務員。嫌なところで合理的だ。

 

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルに成るんですね!」

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」

 

 教壇の奥にあるディスプレイ(黒板)に、A組生徒への指名を集計したものが映し出される。上から順に轟・爆豪・七躬治と表示されていた。この集計結果に、A組の面々は一斉に首を傾げる。轟や爆豪が票を集めているのは、分かる。二人は雄英体育祭で表彰台に乗り、しっかりと結果を残した。だが体育祭三位の常闇を制して、何故上から三番目に癒々の名前が有るのかさっぱり分からない。

 

「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った。

 ちなみにだが、七躬治にやたらと指名が来てるのは、唾を付けとこうって魂胆だ。あのレベルの治癒の個性は貴重だからな。血生臭いこともあるヒーローとしちゃ、七躬治の個性は引く手数多(あまた)だ」

 

 癒々は体育祭に参加していない。だが一度、出久の手足を治す為に人前で個性を使った。彼女にやたらと注目が集まってしまったのは、そのせいだろう。少なくとも世間は、癒々の個性を強力な回復系とでも思っているらしい。

 なら、指名が集まるのは当然なのかもしれない。ヒーローと言う仕事は決して平和的なものではない。時にはヴィランと戦い傷を負うし、時には災害救助で怪我人を目の当たりにする。そんな時、怪我を治せる個性を持ったサイドキックが居たら安心だ。しかも仕事が捗る。救けれる命が幾つも増える。

 婚約宣誓については問題有りだと思っていても、個性の強力さを考えたら取り敢えず指名しておこう。なんて考えになったヒーローが、どうやら大勢居たようだ。

 

「……それって、ヒーローは癒々ちゃんを道具として見てるってことですか?」

「これはそういう輩が多いって結果だな。気に食わないのも当然だ」

「ヒーロー、さいてーです」

 

 ヒーローが癒々をどんな目で見ているか。それを知った被身子は、苛立ちを露にした。確かに癒々の個性は強力なもので、それは身を以て知っている。だけど、恋人が誰とも知らぬヒーロー達に変な目で見られているなんて事実を前に、彼女はとても黙って居られない。露骨に不機嫌になってしまった。

 恋人の事になるとヒーローにすら噛み付こうとするのだから、被身子は本当に面倒くさい女子である。彼女がこうなってしまったのは、間違いなく癒々のせいだ。

 

「落ち着け。七躬治にはどこの指名も受けさせん。担任としちゃ、こんな問題児を外に出してたまるか」

「相澤先生はちょっぴりまともなのです」

「渡我、お前もだからな」

「……? どうしてです?」

 

 癒々が問題児であることは、最早どうしようもない事実だ。それは雄英体育祭の際、世間にもバレている。だから相澤が癒々の指名を跳ね除けようとしているのは仕方ない。むしろ担任としては、真っ当な判断だ。

 しかし被身子は、そこまでする必要が有るよ問題児とは言い切れない。癒々と一緒に一度だけ学校をサボっただけだし、その後はちゃんと真面目に登校して授業を受けている。生徒としての評価は、間違いなく癒々よりは高い筈である。問題児と言う点では、何なら爆豪の方が上だ。

 

 ……なのに、指名は受けさせないと相澤は言う。何か意図があっての判断だろうか。

 

「……その話は後でする。この集計結果を踏まえ指名の有無は関係なく、いわゆる職場体験に行ってもらう。

 お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りのある訓練をしようってこった」

 

 何の為にヒーロー名をこれから名付けるのか。その理由に、被身子と癒々以外の誰もが納得し始めた。そして相澤の話はまだまだ続いていく。

 

「まァ仮ではあるが適当なもんは……」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

 担任の声を遮る形で、一人の教師が教室に足を踏み入れる。体育祭では主審を務めていた、ミッドナイト先生が堂々と姿を現した。

 

「この時の名が! 世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」

「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定して貰う。俺はそういうのできん」

 

 どうやら相澤先生の助っ人としてやって来たらしい。ミッドナイトに査定を丸投げした彼は、教壇の下から寝袋を取り出し始めている。どうやら生徒達のヒーロー名が決まるまで、教壇の側で寝て過ごすつもりらしい。空き時間を有効活用するのは良いことだが、だからって生徒の前で寝ようとするのは教師として如何なものか。

 

「将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりそこに近付いていく。それが名は体を表すってことだ。

 オールマイト、とかな」

 

 最後にちょっと良いことを言っている担任だけれど、寝袋に入り込もうとしているので妙に話が締まらない。

 

 ……そんなこんなで。生徒達はヒーロー名を決めることになった。

 

 

 

 

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

 

 フリップボードが配布されてから十五分後。ミッドナイト先生により、A組の面々はこれから自分が名乗るヒーロー名を教壇に立って発表しなければならなくなった。まさかの発表形式に戦慄している者が何人か居る。クラスメート達を前に、自分が考えた名前を発表するのは年頃の男女にはちょっと気恥ずかしいものがあるだろう。

 だがそれでも、真っ先に教壇に立ったのは青山だった。

 

「行くよ。輝きヒーローI can not stop twinkling.」

「短文!!!」

 

 短文だった。先発の青山が発表したヒーロー名は、何故か短文だった。

 

「そこはIを取ってcan’tにした方が呼びやすい」

「それねマドモアゼル☆」

 

 しかもミッドナイト的には短文でも良いらしい。ひとつアドバイスを送っているぐらいだ。ヒーロー名を決めて、発表をする場がこれを機に何故か変な空気に包まれ始める。

 

「じゃあ次アタシね! エイリアンクイーン!!」

「2!! 血が強酸性のアレ目指してるの!? 止めときな!!」

「ちぇー」

 

 青山に続いた芦戸だったが、これについては残念ながら却下されてしまった。短文が良いのであれば最早何だって良いような気がしないでもないのだが、とにかく駄目なものは駄目らしい。盛大に却下された芦戸はちょっと拗ねた声を出しながら席へと戻っていく。その際ちらりと被身子の姿を視界に入れて、直ぐに目を逸らした。

 

「次、私良いかしら」

「梅雨ちゃん!?」

 

 短文だったり変な方向にインパクトがある名前を発表された後で、我先にと手を上げたのは蛙吹だ。彼女もまたフリップを手に教壇に立つ。既に大喜利っぽい空気感が教室に漂っている中で、彼女が発表した名前は……。

 

「小学生の時から決めてたの。フロッピー」

「カワイイ!! 親しみやすくて良いわ!! 皆から愛される、お手本のようなネーミングね!」

 

 至極真っ当と呼んでも良いヒーロー名だった。このお陰で大喜利っぽい空気は解消され、それぞれがどんどんヒーロー名を発表していく。そんな賑やかな教室の中で、被身子はボールペンを片手にどうしようかと悩んでいた。

 そもそもヒーローになることに興味が無い彼女が、ヒーロー名を決めろと言われても直ぐに何か良い名前が思い浮かぶわけじゃない。皆どんどん自分だけの名前を考え、発表している。このまま最後まで発表せずにいると、後で担任から何を言われるかも分からない。だが、思い浮かばないものは思い浮かばないのだ。

 そんな被身子の横を、癒々が通り過ぎた。どうやらヒーロー名が決まったらしい。が、教壇に立とうとしたところでミッドナイト先生によりストップが掛かってしまった。

 

「ちょっと待って。ちゃんと考えてきたの? ちょっと見せてみなさい」

「これを名乗れって言われてる。ヒーロー名なんて、どーでも良いけど」

「あら、まともね。じゃあ発表!」

「んー」

 

 ミッドナイトが一度癒々を止めたのは、体育祭での出来事を思い出したが故の事だ。あの時は、何でも良いから誓いなさいと言ってしまったが為に、婚約宣誓をぶちかまされて大変なことになってしまった。が、今回はそんな心配は無いらしい。許可も出たところで、癒々はフリップを教壇の上に立てた。

 

「ヒールヒーロー、リペアクティ」

「えっ!?」

「何っ!!?」

「えぇっ!!?」

「何か変なものでも食べたの七躬治!?」

「七躬治ちゃん、体調悪いの!? まさか渡我ちゃんが変身してたり……!?」

 

 癒々の発表に、散々なリアクションが飛んできた。常日頃の彼女を知っている者からすれば、彼女が真っ当な名前を発表していること自体に驚いてしまう。どうせまた何かをやらかすのだろうと、誰もが思っていた。しかし現実はそうじゃなかった。何をしでかすこともなく、普通なネーミングセンスを披露している。お陰でA組の脳はバグりそうになっているのだけれど。

 

「リペアクティ……。リペアとアクティベイトを合わせたものかしら? 良いわね!」

 

 周囲に盛大に驚かれているものの、リペアクティと言うヒーロー名はミッドナイトに許された。癒々がまともな名前を用意していたことを未だに呑み込めないのか、クラスメート達は固まっている。被身子だって、少しばかり驚いているようだ。

 実際、リペアクティと言う名前は癒々が用意したものじゃない。これは公安が考え、彼女に名乗るよう指示したものだ。周りが驚くのも、今回ばかりは本当に仕方ないと言える。

 この後、ちょっと驚きを隠せないままでいるA組の面々は次々とヒーロー名を発表していく。途中、轟がショートと名乗ったことで被身子もヒーロー名が決まったようだ。

 

「私はこれで良いです」

「あなたは名字なのね。良いの?」

「他の名前を付けたって、トガはトガなのです。だから、トガで良いです」

 

 被身子のヒーロー名は、名字から取ってトガとなった。

 その後。出久がデクと名乗ることを決めたりして、何だかんだヒーロー名の考案はスムーズに終わりを迎える。

 

「爆殺卿!!!」

「違うそうじゃない」

 

 ……尚、爆豪は最後の最後までやり直しを命じられていた。

 

 

 

 

 

 







以下、長い言い訳になります。

癒々のヒーロー名はリペア・メモワールとかオールリペアとかリペア・ブランとかホワイトとか幾つか候補がありましたが、リペア+アクティベイトでリペアクティにしました。横文字のヒーロー名なのにコスチュームが巫女装束なのどうなん? とは思いますけど。まぁ良いかなって。
と言うわけで公安命名「リペアクティ」です。

渡我ちゃんはあれこれ悩みましたが、渡我って咎とのダブルミーニングだよなってやっぱり思いますし、だからこそ人殺しさせた訳ですし、渡我ちゃん書く上で人殺しは絶対にさせると決めていたので、渡我であり咎でもあるトガにしました。

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