わたしのヒーローアカデミア 作:Plot Must Die
飯田天哉は、ステインを許せない。兄を意識不明の重体としたヴィランを許すことなど出来やしない。だからこの手でヒーロー殺しを捕えると決意した。それからの彼は周囲を見なくなった。いや、見れなくなった。
情報を集め、分析し、近い内にまたステインが保須に現れるかもしれないと推察。職場体験は保須市に事務所を構える、ノーマルヒーロー『マニュアル』からの指名を受けることに決めた。友人達からの気遣いは、大丈夫だと言い張って蔑ろにした。
今の飯田は、ヒーローの卵として誤った道を進んでしまっている。
「ぁああああっっ!!!」
人気の無い路地裏。ステインにやられ身動きの取れないヒーロー『ネイティブ』も、クラスメートによく似た容姿を持つヴィランすらも飯田の目には映らない。狭まった視野のままに雄叫びを上げて、憎き仇へと襲い掛かる。長い刃物を持った相手に真正面から突っ込むのは、愚策と言えるだろう。間合いの広さはヴィランの方が遥かに上。いくら頑丈なコスチュームに身を包んでいようとも、だからと言って全ての攻撃を防げるわけじゃないのだ。
頭の冷えている彼ならば、まず刃物をどうにかしようと考えた筈だ。刀を警戒して、立ち回った筈だ。けれど今の飯田は、自分を驚異とも思わないヴィランを蹴り飛ばすことしか考えられない。ただ真っ直ぐ距離を詰めて、力いっぱい憎き仇を蹴り飛ばしたい。そう思っている。
だが、彼とステインの間にはナロクが居る。彼女からすれば、必死の形相になったヒーローらしき少年が襲い掛かって来るようにしか見えない。
だからナロクは、反射的に拳を繰り出した。しっかりと地面を踏み締め、右手を振りかぶり、真っ直ぐ突き出す。その一撃は、飯田の腹にめり込んだ。
次の瞬間。飯田は悲鳴を上げる間も無く、吹き飛んだ。彼の体は凄まじい勢いで転がり、やがて自然に止まるとピクリとも動かない。気絶はしていないようだけれど、腹部から走る激痛で息が出来ない。指一本でも動かそうものなら、凄まじい痛みに襲われる。
「ぁ、が……っ……? ぐ、ぅう……っっ!?」
飯田は、我が身に何が起きたのか分からない。ナロクに殴り飛ばされてしまった彼は、ぐちゃぐちゃに歪む視界の中で痛みと呼吸困難でただただ苦しむしかない。
「あー、びっくりした。急に怖い顔で走ってこないでよ? つい殴っちゃったじゃん! 大丈夫? ちゃんと死んだ!?」
幸運と言うべきか、不運と言うべきか。飯田はまだ死んではいない。ナロクに殴られてしまった腹は、とても無事とは言えない有り様だ。凄まじい衝撃に晒されたことで、内蔵が潰れてしまった。表皮には大量の血が滲んでいる。筋肉はズタボロになっていることだろう。拳が腹を貫通せずに済んだことをマシと喜ぶべきか、拳ひとつで殺されかけたことを不幸だと言うべきか。
とにかく、たったの一撃で飯田は死にかけている。強力な治癒が出来る大活性を持つ癒々ですら、ナロクの一撃を受けたことで死にかけたのだ。彼女の攻撃は、人間が受けて良い代物ではない。
「……ハァ。兄共々、弱いな」
吹き飛ばされ、仰向けのままもがき苦しむ飯田に呆れ顔のステインが近付く。彼は飯田の側に経つと、苦しむ子供に向かって容赦なく刀を突き刺した。刃先が狙ったのは左腕。容赦など欠片も無い。ヒーローを殺害して回るヴィランの冷酷は、決して生半可なものではない。十七人を殺し、二十二人に大き過ぎる危害を加えたのがステインだ。彼の粛清により犠牲になった人数は三十九人。それ程の被害を与えておきながら、今なおヒーローや警察に捕まっていない。
ヴィランの中でも、特に凶悪な存在と言えるだろう。そんな犯罪者は、自らに立ち向かって来たのなら子供であっても容赦はしない。
「お前もお前の兄も弱い……。贋物だからだ」
「げほっ、ごほっ。だま……っ、黙……れ! 悪……党……!!」
口から血反吐を吐き出しながら、それでも飯田はステインを睨み上げる。苦痛で歪めた顔を取り繕う余裕は無いが、胸の内の憎しみを吐き出す気力はまだ残っているようだ。
例え死にかけたとしても、飯田の復讐心は収まらない。むしろより強く燃え上がる。左腕に刃が突き刺さろうが、血が流れようが関係無い。ステインが憎い。どうしたって許せない。自らの手で兄を痛め付けた悪党を捕えなければ、この復讐に終わりは来ない。
腹を殴られ、腕を貫かれ、自らの無力さを突き付けられても、ドス黒い感情は決して無くならない。
「こ、ろして……やる……っ!」
他の誰よりもインゲニウムを、兄を本当に大切な存在だと思って居るから、無茶だろうと無謀だろうと仇討ちを目論んだ。だが飯田には、実力が伴っていない。彼がもっと強ければ、せめてナロクの迎撃を避けることが出来ていれば、まだ戦況は良い方に転がっていたかもしれない。
だが、現実は残酷だ。今の飯田では、憎き仇に一矢報いることすら出来ない。
憎しみに囚われ、けれども復讐は果たせず。動くこともままならない。そんな己の無力さすらも飯田は憎む。湧き続ける怒りを、仇に向かって吐き散らす。今の彼には、それぐらいしか出来ないのだ。
「殺して、や、る……っ!」
「あいつをまず救けろよ」
剥き出しの殺意を向けられたステインは、ヒーローらしからぬ言動をした飯田を踏み付けたまま口を開いた。
ステインと言うヴィランは、今のヒーローの在り様を嫌う。真の英雄はオールマイトのみで、他は全てヒーローを語る贋物でしかないと思っているのだ。だからこそ、飯田の愚かな行動に呆れながらも的確な指摘をする。
「自らを顧みず、他を救い出せ。己の為に力を振るうな」
復讐に染まった少年に向けて、殺人犯がヒーローが何であるかを説く。彼の言うことを否定する材料は、今の飯田には無い。もっとも、私利私欲で復讐に走り、視野を狭めてしまっている愚か者と化している彼に誰が何を言おうが届くことは無いのだろうが。
腕に突き刺さった刀を引き抜き、刃先に付着した血液をステインは舐め取る。その瞬間、彼の個性が発動したことで飯田の肉体が固く硬直してしまった。身動ぎすることも、指先を動かすこともままならない。
「じゃあな。正しき世界への供物」
動けぬ弱者に、刃が向けられる。ステインに飯田を生かしておく理由が無い。血に濡れた刀が振り下ろされれば、間違いなく飯田は死ぬ。殺されてしまう。
これは復讐に身を堕とし、感情のままに動き続けた報いだ。どんなにステインが憎かったとしても、飯田はもっと考えて動くべきだった。
「黙、れ……! 黙……れ……っ!!
何を言ったって、ぉ、前……は、お前は……っ!!」
例えヴィランに諭されようが、彼は聞く耳を持てない。だから死ぬ。殺される。兄の仇を討つことは出来ず、夢見たヒーローになることも出来ないままに。でもそれは、このまま都合の良い救けが来なければの話でもある。
ふと、ナロクが路地裏の奥に目を向けた。その時彼女の視界に映ったのは、壁を蹴り宙を駆ける一人の少年。コスチュームに身を包み、体を淡く発光させた彼の姿を見た黒い少女は、楽しそうに微笑んだ。
次の瞬間、飯田の側に立つステインが殴り飛ばされた。
「救けに来たよ! 飯田くん!!」
■
ナロクはその少年を知っている。この路地裏に駆け付け、勢いのままにステインを殴り飛ばした少年の事を知っている。それは日頃から行動を共にしている死柄木弔が多少の執着を見せた相手だからでもあるし、何より大切な妹が守ろうとしていた存在だからだ。
だから、興味が湧いた。飯田の事はどうだって良かったし、ステインに殺されそうになろうが知ったことじゃない。でも、この場に介入してきた少年の事は気になった。
「ねえねえ。あなたって、ひょっとしてナナサの友達?」
(っ、
飯田を庇うように立つ少年、緑谷出久に向かって、未だしゃがんだままで居るナロクが口を開いた。彼女の声を聞き、その姿形を改めて目の当たりにした彼は驚いた表情を浮かべる。が、直ぐに気を引き締め直した。
出久の目に映る状況は、最悪だ。目の前にはヒーロー殺しと、USJ襲撃事件の際にクラスメートを痛め付けた黒い少女。近くに倒れているネイティブは動けず、直ぐ後ろで伏している飯田も怪我をして立ち上がらないままで居る。この状況を打開するのは、決して簡単では無い。敵は二人。負傷者も二人。目の前のヴィランと戦える者は、出久一人だけ。
「救けに来た。……良い台詞じゃないか。
だが俺はこいつらを殺す義務がある。ぶつかり合えば当然……弱い方が淘汰されるわけだが……。
さァ、どうする?」
「―――っっ!」
一度殴り飛ばされたとは言え、ステインはまだまだ健在だ。出久の不意打ちは、まるで効いちゃいない。
「ねー、無視しないでよ。わたしちょっとあなたに興味があるんだけど……。ナナサのお友達だよね? だってあの時、ナナサが庇おうとしてたもんね。
男の子と仲良くしてるとは思わなかったけど……まぁ学校行ってるなら、そんな事もあるよねぇ。それでそれで、ナナサとは友達なの? ねぇ、ねえっ!」
今の出久には、ステインだけでも手に余る。彼の言葉を聞いただけでも恐怖が膨らむのに、得たいの知れない少女までもが自分に意識を向けてくるのだ。このまま戦うようなことになれば、二人を同時に相手取らなければならないだろう。そうなった時、果たしてこの状況を切り抜けられるかは分からない。
だけど、数が不利だからと言って自分一人だけ逃げ出すような真似はしない。そんな行為は、絶対に出来ない。
ひとまずナロクの言葉を沈黙で返しながら、出久は腰の後ろに回した手でスマホを操作する。
(身動き取れない二人を守りつつ……僕一人で時間を稼ぐ。出来れば……ヒーロー殺しと、あの子を退ける)
恐怖が無いわけじゃない。これからヴィラン達を相手に一人で戦わなければならない。無茶も無謀も分かっている。そうしようとしている出久を、飯田は血を吐きながらも君には関係無いと叫ぶことで拒絶する。だからと言って、はいそうですかとこの場を見逃すわけにはいかない。
例え飯田に望まれていなかったとしても、出久は動く。無茶だろうと無謀だろうと、知ったことじゃない。何よりそんな時だからこそ。
「オールマイトが言ってたんだ……。
余計なお世話は、ヒーローの本質なんだって」
出久は、笑う。困難を前にして、笑って見せる。
「―――ハァ……」
その時、ステインも笑みを見せた。そこらに居る有象無象のヒーローとは違う。復讐に走る子供とも違う。正しくヒーローであろうとして居る出久を見て、確かに歓喜の笑みを浮かべた。
この少年は他のヒーローとは違う。正しい意味のヒーローであろうとしている。そんな存在をステインが目撃したのは、果たしていつ以来か。
(ワン・フォー・オール……フルカウル!!)
全身から淡い光を発しながら、出久は両の拳を構えた。
今ある力全てを総動員して、戦い抜かなければならないのだ。
「だーーかーーらーーっ! 無視しないでっ!!」
轟音が、路地裏に響く。砕けていた足元に更なる亀裂が走り、地震でも起きたのかと錯覚してしまう。
出久に無視され、勝手に盛り上がろうとしているステインを前にナロクは頭に血が上った。七躬治癒々と変わらぬ黄金色の瞳が冷たく輝く。幼い表情が、怒りに染まっている。握った拳が震える程だ。無視された事が相当気に入らなかったらしい。
「ねぇ! ナナサと仲良しなの!?」
「っ、そ、それは今関係ないだろ……っ!? 何を言ってるんだ……!?」
「あるよ! ナナサはわたしの妹なの! 妹が学校でどうしてるか、知りたいに決まってるでしょーっ!?」
ステインと相対しているだけでも、出久に余裕なんてものは無い。なのにナロクは、自分が知りたいことを問い掛け続ける。そこに何の意図があるのかは全く分からないし、いちいち言葉を聞くだけ時間の無駄だろう。
「余所見をするな」
「っ!!」
幼い子供のようなわがままを口にするナロクに意識を引かれていると、今度はステインが動き始めた。彼の狙いが自分なのか、それとも直ぐ側で伏している飯田なのかは分からない。だが刀を持ったヴィランが近付いて来ているのだ。これを無視する訳には行かない。
だから出久はナロクの動きを気にしつつ、自分からステインに向かっていく。ステインは足を止め、刀を振りかぶった。その瞬間、出久は瞬間的に個性を強める。5%で抑えていたフルカウルを、地面を蹴る瞬間だけ17%に引き上げる。そうすることで、ヴィランとの距離を一息で潰した。
(長物に対し間合いを詰める。良い判断だ)
(そん、でぇええええっ!!)
想定外の速度で距離を潰してきた出久を内心で褒めつつ、ステインは腰のナイフを引き抜く。それを目視した出久は上体を大きく下げ、寸でのところで刀を避ける。そうして、ステインの脇を通り抜けた。ひとまず、刀もナイフも当たらない位置に少年は飛び込んで見せた。
後ろを取られたヴィランは振り向きながら、刀を払う。だがそこに、もう出久の姿は無い。正確には上体が無い。彼は背後を取ったと同時に、這いつくばるかのようにしゃがみ込み、右足で強く早くステインの両足を刈った。
「5から17%……! デトロイト……」
地に伏せる出久が狙うのは一点。足を払われ体勢を崩したヒーロー殺しに向けて、癒々に教えられた事を躊躇い無く実践する。敵は二人も居るのだ。彼が一人で戦ったところで勝率は低い。せめてどちらか片方だけでも行動不能に出来れば、まだどうにか出来るかも知れない。
故に、出し惜しみしている場合じゃない。不完全だろうが何だろうが、今ある技術で戦わなきゃいけない。
狙うは、一点。インパクトの瞬間にのみ、まだ扱うことは出来ない17%を引き出す。
「スマァアアアッシュ!!!」
勢いを十分に乗せた一撃。それをステインの顎に、下から叩き込む。手応えは―――。
「ぐ……っ!!」
十分。瞬間的とは言え、17%の一撃を受けたステインはその場でぐらついた。その様子を見ながら、出久はその場から跳び退いて飯田の側に着地する。同時にヒーロー殺し相手に自分の攻撃が通用した。その事実を少し喜んでしまった。自らが培ってきた物が実戦で通用したのだ。まだヒーローの卵であるが故に、自らの成長はいつだって喜ばしく思ってしまうものなのだ。
仕方がないと言えば、仕方ない。
だが今の状況は、授業の中の出来事じゃない。本当の戦闘の中での出来事だ。つまり、出久が今してしまったことは油断に他ならない。だから彼の意識は、一瞬ナロクから離れてしまった。
「だ、か、ら、っ!!」
「っ!!?」
いつ距離を詰めたのか。着地したばかりの出久の側で、ナロクが足を振り上げている。彼女の足は細く綺麗なものだけれど、その足から繰り出される蹴りは容易く地面を砕くものだ。そんなものが高速で、とても出久の目では捉えきれない速さで彼の体へと迫る。
(やばっっ!!!)
ナロクの蹴りが、咄嗟に構えた右腕に直撃した。瞬間、出久の体は高速で吹き飛び近くの壁に激突。体の中から何か聞いたことのない音を、彼は聞く羽目になってしまった。
「がっ、あ……っ!?」
右腕があらぬ方向を向いている。壁に激突した体が激痛に襲われて、ろくに息も出来やしない。腕でガードしたとは言え、ナロクのパワーはオールマイトの半分に匹敵する。言い換えれば、OFA50%分の一撃だ。そんなものを受けてしまえば、ガードしたところで無意味だ。命が有るだけ、出久は運が良かったと言える。
ナロクから与えられたダメージは、大き過ぎる。出久はたったの一撃で戦闘不能まで追い込まれてしまった。これではもう、飯田もネイティブも救けるどころではない。
「ナナサと友達なのかって聞いてるんじゃん!! 何なの!? 何で無視するの!? そんなにわたしとお喋りしたくないっ!!?」
「う、ぐ……っ」
「あーー、もーーっ! もう良い! まだ無視するつもりなら、ナナサの友達だとしても関係ない! 殺すよ!? 殺しても良いよね!!?」
理不尽な怒りを見せながら、ナロクは倒れたまま動けない出久へと向かっていく。このまま行けば彼女は間違いなく出久を殺す。人を殺すことに躊躇いなんてものはない。
怒りの矛先を出久に向けたナロクは、とても動けそうにない出久の前で立ち止まった。既に拳が振り上げられている。それを力いっぱい振り下ろせば、間違いなく出久は死ぬ。殺されてしまう。
だが。
「―――待て、
そうはさせまいと膝をついていたステインが立ち上がる。出久の一撃を受けて、頭から血を流している。足取りがふらついているのは、まだダメージがあるからだ。
「パワーもある。動きも良い。口先だけの人間は幾らでも居るが……その子供は生かす価値がある」
「……だから?」
「殺すには惜しい。殺したいなら、こいつらにしろ」
少しふらつきながら、手に持つ刀を引きずりながら、ステインは飯田の元へと近付いていく。彼は今、出久を殺さないし殺させないと決めた。だがそれ以外は粛清対象のままだ。ヒーローを語る贋物も、徒に悪意を振り撒くナロクもだ。
「なにそれ。ヒーローなんて殺して良いでしょ? それにこの子、何回もわたしを無視するんだよ?」
「……ハァ。まだ子供だ、ヒーローじゃない」
「じゃあもう一回だけ聞くけどさぁ」
出久の前でナロクはしゃがみ、彼の髪を掴んで無理矢理頭を上げさせた。痛みで歪むその顔を、彼女は苛立ちのままに覗き込む。
「あなた、ナナサと友達なの? ほら、クラスメートに居るでしょ? わたしそっくりな女の子」
「っ、ぐ……っ、ゲホッ! ナ、ナサが誰か……っ、知らないけど……っ、七躬治、さんとは……友達だ……っ!」
「最初っからそう言ってよー。そしたら蹴飛ばさないのに。ごめんねえ、わたしカッとなると見境なくって。反省してても、どうにも直らないんだよねぇ……。
大丈夫? 思いっきり蹴っちゃったけど、右腕以外は折れてない? ここで死んだらナナサが悲しむから、死んじゃだめだよ?? 治してあげたいんだけど、わたしナナサと違って人を治せないんだよね。ほんと、ごめんねぇ……」
「……っ!」
直ぐ目の前のヴィランを前に、出久は顔をしかめた。この黒い衣の少女が何者であるのか、全く分からない。クラスメートによく似ているのに、その言動はまるで違う。なのに声は全くと言って良い程に似ていて、この場には居ない存在を嫌でも思い出させられる。
どうにか動こうにも、折れた右腕はピクリとも動かない。それどころが肋骨が何本か折れてしまっているようで、息をする度に激痛が走る。ナロクと言うヴィランの向こう側でヒーロー殺しが動いているのに、出久はどうすることも出来ない。
「ちく、しょう……! 止め……ろっ! やるなら、僕を……っ、げほっ、ごほ……っ!!」
ステインが、飯田に向かって刃を振り下ろそうとしている。握った刀に、力が込められる。
暗闇の中、鈍く光る刃が動けぬ飯田の首元へ吸い込まれていく。そして。
赤く輝く目映い炎が、ヒーロー殺しを襲った。
「―――緑谷。こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまっただろ」
飯田くん、秒で死にかける。出久、原作よりもちょっと善戦するが秒で死にかけ。
ナロクの攻撃を受けてはいけない。癒々曰くOFA50%分ですからね。即死しなかっただけマシです。
逃げて轟くん!超逃げて!!