わたしのヒーローアカデミア   作:Plot Must Die

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大活性のリスク

 

 

 

 

 

 精密検査を受けた。あと、カウンセリングも。あの絵本を読んで気絶した後と、ナナイと名付けられた脳無に負けた後に。インゲニウムや相澤が来なければわたしは死んでいたと思う。結局二人に助けて貰う形で、何とか生き延びることが出来た。まだ死にたくない。死ぬのはワン・フォー・オールの役に立つ時と決めている。出久に何かあった時が、わたしの死ぬ時。そう決めてる。オールマイトも出久も、それを嫌がるのは不思議でならない。

 

 わたしが死ぬことで助かるなら、それで良いのに。

 

 検査結果は、もう出ている。だから診察室に呼び出されたわけだけど、正直どーでも良い。わたしの体の事はわたしが一番よく知っている。結果なんて、わざわざ知らされるまでもない。カウンセリングは、いい加減な相槌を打って済ませた。話は長いし、時間がかかるから、ただただ面倒に思う。

 何より、わたしは記憶なんてどーでも良い。思い出したくもない。過去なんてものは、忘れたままで構わない。被身子と過ごした日々は別だけど。

 

 正直、検査結果を聞くぐらいなら寝ていたい。まだ体が本調子じゃない。今日一日ぐらいは何もせず寝て、体力を回復させておきたい。だから呼び出しなんて無視して寝ているつもりだった。でも、周りがうるさいからそうも行かなかった。

 同じ病室の出久も飯田も轟も、ちゃんと結果を聞きに行けと言ってくる。自分達の身体の話じゃないのに、何でそんなに同じ事を言い続けるのか理解出来ない。わたしを心配するのは、被身子だけで良い。

 

 本当に面倒だけれど、わたしは仕方なく診察室に来た。待っていたのは知らない顔の医者と、リカバリーガール。それから大独活の三人。直ぐには来なかったけど、ちゃんと来たんだからお説教はしないで欲しい。どーでも良いとしか思えないから。

 

「結果は?」

 

 知っていることを説明されるのは時間の無駄だけれど、ちゃんと聞いておかないと後で周りがうるさくなる。だから取り敢えず、話は聞いておく。聞かなくても良いことだったら、聞き流してしまいたいけれど。

 用意されてた椅子に据わって検査結果の催促をすると、リカバリーガールや大独活が顔をしかめた。ちゃんと聞きに来たんだから怒らないで欲しい。面倒くさい。

 

「落ち着いて聞いて欲しい」

 

 知らない医者が口を開いた。言われなくても、わたしは落ち着いてる。

 

「まず今回の診察結果から話させてね。身体はほぼ異常無し。

 ……でもね。前回ここに入院した時と比べて、心臓が悪くなってる。今回の検査結果と、過去の検査結果と照らし合わせても、やっぱり悪くなってるんだ」

 

 知ってる。いずれそうなるだろうと思っていたし、それはわたしを知る大人全員が知っていること。だから命を使う個性だって、周りには言い続けてきた。クラスメートにも、出久にも、被身子にだって。

 

「個性を使うのは、もう止めた方が良いね。今はまだ、日常生活にもヒーロー活動にも支障が出る程じゃない。けれど今後、このまま悪化が続くなら君は……」

「それで?」

「……心臓が止まってしまう。医者としては、ヒーローになるのは諦めた方が良いとしか言えないんだ」

 

 どうでも良い。そうなるのが分かった上で、わたしは個性を使ってる。ワン・フォー・オールの役に立って死ぬ。被身子を遺して死ぬのは心残りだけど、誰にもひとりぼっちになった被身子を任せたくないけど、それでもわたしは残ってしまったこの命を使い切る。

 

 怖くはない。だって、わたしはあの時死ぬべきだったんだから。

 

 今こうして生きてるのは、ただの偶然。たまたまあの時、オールマイトが救けに来てくれただけ。そうじゃなかったら死んでいた。生き残ったことは、今でも嬉しくない。だから、いつ死んでも良い。

 その後で被身子に泣かれるのは、嫌だけど。

 

「何か自覚症状は? 疲れやすいとか、胸が苦しいとか、何でも良い。以前の自分と変わったことは?」

「無い」

「……まだ症状らしい症状は出ていないようだね。これから気を付けていけば、大丈夫」

「気を付けなかったら?」

「……いずれ心不全になる。君の場合は、心筋症になる可能性が高い」

「……」

 

 心筋症。簡単に言えば心臓の筋肉の異常によって、心臓が働かなくなる病気。どうやらわたしは、このまま行くとそうなってしまうらしい。

 心臓を起点に個性を発露しているのだから、心臓に負担がかかるのは当たり前。だからこれは、そんなに大した問題じゃない。急に心臓が止まるよりはずっとマシ。いずれ心筋症が悪化していけば急に止まったりするんだろうけど、それまでは幾らか猶予がある筈。だったら構わない。それまでにワン・フォー・オールの役に立てば良い。

 

「あと何回個性を使ったら、心臓が止まる?」

 

 ただ、これについては知っておきたい。心臓が悪くなることは分かってた。個性を使い続けた先に心筋症が待っているなら、あと何回個性を使ったら心筋症になるのか知っておきたい。病気については医者の方が詳しいだろうし、分かる筈。正確で無くても良いから、ある程度の目安が欲しい。

 

「……それは君の個性について詳しく調べないと分からない。負担がどの程度かかっているのか。それによってどの程度症状が進行するのか。

 いずれ、必ず心臓に異常が起こる。これは確かだ」

「分かった。話はそれだけ?」

「……そうだね」

 

 有益な情報は得られず、無意味な時間を過ごしただけだった。話が終わりなら、もう病室に戻って寝る。少しでも多く休んでおきたい。夜には被身子が戻ってくるから、たくさん甘えたい。たくさん甘えられたい。ちうちうだってされたいし、その為に個性を使いたいから食事と睡眠は絶対に欠かせない。

 席を立って診察室を出ようとすると、大独活が道を塞いだ。邪魔。わたしに何が言いたいのか知らないけれど、そんな怒った顔をしているの?

 

「これからどうするつもりだ? 雄英に通い続けるのか、それとも」

「雄英は辞めない。このままヒーロー科に居る。公安もそれが望みでしょ?」

「こうなるとは誰も思ってなかったんだよ。流石にこれは、想定してない」

「嘘は良くない。あなた達はこうなる事を知っててわたしを教育した。これは大活性のリスクを軽視していた、あなた達の落ち度」

「……」

 

 怒った顔になったと思ったら、今度は苦いものでも食べたみたいな顔になってる。そんなにわたしに死なれたら困るの? 死なせる前提で教育してたくせに?

 公安は勝手だ。なら、わたしも勝手にする。大人の都合なんて知ったことじゃない。わたしは、わたしのしたいようにする。

 

「雄英は辞めない。わたしはヒーローになる」

 

 正確にはヒーロー免許が欲しいだけで、ヒーローをやりたいわけじゃないけど。万人を救いたいなんてわたしは思わない。

 今は、出久の役に立つ。それだけは譲れない。だから被身子に、命まではあげてない。いつか死ぬ為に、命は取って置かなきゃならないんだから。

 

「渡我被身子はどうするんだ」

「あなたには関係無い」

 

 被身子の事は……後で考える。死ぬまでには、決めておく。今はこのままで良い。このままが良い。被身子と居れば寂しくない。幸せな気持ちになれる。あの子が笑って側に居てくれれば、それだけで嬉しいの。それに、誰にもあの子を任せたくない。どうせ誰も、被身子を分からないんだから。

 この大人だってそう。被身子をヴィランでも見るかのような目で見る。犯罪者の処遇を決めるかのように、被身子を語ろうとする。そんな人に、被身子の話なんてしたくない。

 

「この事を、伝えないつもりか? 隠すつもりか?」

「話す必要が無い」

 

 精密検査の結果は、被身子には話さない。問題無かったと嘘を吐くことにする。そうしないとあの子は、きっと泣いてしまう。泣いて欲しくない。その為なら、嘘でも隠し事でも何でもする。人を殺したって良い。

 

「あるでしょ。彼女には」

「無い。話せば被身子は泣く。泣かせたくない」

「話さなければ、いずれ泣かすことになるんだよ」

「その時わたしが生きていたら、謝る」

 

 謝ったとして、許してくれるかは分からない。絶対に泣くと思うし、嫌われるかもしれない。それは嫌だけど、こればっかりは譲れない。譲りたくない。

 

「あんた、もうヒーロー目指しちゃいけないよ。あたしゃ嫌だよ。命を犠牲にヒーローを目指す子を見るなんて。公安は何を考えているさね。こんな子を、雄英に入れて……」

 

 リカバリーガールが、何でそんな悲しそうな顔をするのか分からない。心臓に負担がかかる個性なんだから、心臓に異常が起こるのは当たり前。なら、これは悲しむことじゃない。起こるべき事が、起きただけの話。だったら、他の誰かが気にすることじゃないのに。

 

「……どうでも良い。もう戻るから、どいて」

「駄目だ。まだ話は終わってない。これからの事を、君は考えなきゃならないんだ」

「考えて、何になるの?」

 

 時間の無駄。考えたところで、何が変わるわけでもない。わたしは個性を使うことを止めない。個性を使わなくなれば、役に立てなくなる。そんな事になるのは、絶対に駄目。誰に何を言われたって、わたしはこの命を使い切る。

 

 そうしなきゃ、わたしはあの時……。

 

 

 

 何で皆に見送られたのか(・・・・・・・・・・・)分からなくなる(・・・・・・・・)

 

 

 

 ……そう。わたしは見送られた。皆がわたしに託した。

 

 オール・フォー・ワンの為じゃない。

 ワン・フォー・オールの為に、この力を使うんだって。

 

 ……? ……??

 ……わたし今、何を考えた? オール・フォー・ワン……? それは何? いったい何の……。

 

 ……思い出せない。思い出そうとすると、頭が痛くなる。オール・フォー・ワンについては、オールマイトや出久が何か知ってるかな? 何となく、そんな感じがする。

 

「わたしの命をどう使おうが、わたしの勝手。この件について、もう話すつもりはない」

 

 これ以上わたしの事で話すことは、何も無い。けど、ひとつだけ言っておきたい事がある。

 

「大独活。職場体験中は、被身子に警護を付けて。ナロクに狙われてるから」

「……分かってる。もう手配済みだ。それにイレイザーも居るから、警護のことは心配しなくて良い」

 

 ……。……、相澤だけじゃナロクを止めることなんて出来ない。あの子をどうにかするなら、最低でもオールマイトの力が要る。それを公安が分かってるかは正直怪しい。

 わたしは、身を以てナロクの強さを知っている。ナロクが力ずくで被身子に迫ったら、相澤は殺される。他に何人プロヒーローが居ても、それは変わらないと思う。オールマイトにも警護して欲しい。後で電話して、お願いしてみようかな……。

 

 困った。被身子が心配で堪らない。公安は信用ならない。相澤だけじゃ不安がよぎる。なら、わたしはどうするべきか。

 

 ……決まってる。誰かに頼ることが、そもそも間違ってる。被身子を守りたいなら、わたしが動くしかない。ナロクは、わたしが止めるしかない。

 

 

 

 

 だって……。

 

 

 

 

 

 お姉ちゃんを止めるのは妹の役目でしょ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 






さて、癒々の心臓や記憶に爆弾を設置したところで今章はここまでとなります。
後半戦も含めると長くなるので一旦区切らせて貰います。ちょっと疲れちゃったので休憩挟みたいって本音もあります。

次章は今章で予定していた後半戦、被身子の職場体験をお送りします。長くはならない予定です。また二週間後とかに投稿出来たらなと思います。
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