死神が如く   作:フェルトファン

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二話 二つの選択

 

 

 

死神狩り捕獲作戦の翌日....

 

 

 

一番隊隊舎・隊首会前

 

 

 

 

「2人とも!本当に大丈夫なのか!?」

 

 浮竹は、隊首会に参加してきた夜一と浦原の元へ駆け寄る。

 

「おう、浮竹か。見ての通りピンピンしておるぞ。」

 

「あははは....自分も無事っスよ。」

 

「無事ではないだろ!もう既にボロボロではないか!?」

 

 浮竹から見た2人の身体には、所々包帯で巻かれている状態である。本当だったら安静するのが一番だが、2人はどうしても隊首会で報告したい事があると、この場いる。

 

「安心せい浮竹。卯ノ花から聞いたばかりじゃが、激しい運動さえしなければ、普通に歩く事もできる。」

 

「ま〜流石に今後の任務とかは控えてくださいねって言われましたけどね。」

 

「しかし.........」

 

「いいじゃないか浮竹。こうして2人は無事に戻ってきたんだしさ。」

 

「京楽.......」

 

「ま〜こうして二人とも無事なんだしさ、こうして生きているだけで喜んで良いと思うよ。それにしても、そちらの副隊長さんは大丈夫なのかね?」

 

「え.....あぁ!ひよ里サンの事っスか!それなら心配ないっス。今は四番隊で入院していますから。」

 

 十二番隊の副隊長であるひよ里は、現在四番隊で入院中。左全身火傷してしまったが、四番隊の治療法のお陰で彼女の皮膚を治す事ができた。

 

「彼女は今、順調に回復しましたので、多分二、三日には退院できるっスよ。」

 

「そうか!それはよかった!」

 

「何や、ひよ里の奴もう退院すんのかい。」

 

「平子サン。えぇ、つい先卯ノ花隊長からの報告で。」

 

「ふぅ〜ん。そっか.........せやけど。わざわざそんな話をするために隊首会を開いたんじゃないんやろ浦原?」

 

 めんどくさそうな雰囲気をしていた平子は、浦原に訪ねる。そして、他の隊長達も同じ気持ちである。

 

「そうだね。なんか、捕まえたらしいじゃないか“死神狩り”さんを......しかもこの事を報告したのは、隊長と副隊長だけだもんね。」

 

 死神狩りの捕獲に成功したとの報告は、隊長と副隊長のみにしか知られていない。他の隊士達にはまだ知らせていないのだ。

 

 当然ながら、まだ中央四十六室にも報告してない。なので、死神狩りの正体は少年である事を知っている人は隊長と副隊長だけである。

 

「あぁ、その通りだ京楽隊長。その事について話そうとを思っているんじゃが、どうやら総隊長殿はまだ来んらしいな。」

 

「せんs....総隊長は、まだ書類の仕事が残っているから少し遅れるらしい。」

 

「ほ〜〜そっかいなん。ほんで待っている間は、その刀をじっくり見ようっかのう。」

 

 そう言っている平子は、興味津々で台の上に置いてある刀と鞘を見ている。この二つは、少年が持っていた斬魄刀である。

 

 隊首会が執り行われるいつもの場所には台が置いてないはずだが、今回は隊長達に見せるために浦原が用意した物である。

 

「しっかしこの斬魄刀、結構血がついているんだね。しかも刃が所々ボロボロだし。」

 

「おい夜一さんよ。確かこの斬魄刀を持っていたのはマジでガキだったらしいじゃないか?そのガキは今どこに?」

 

「その事なんじゃ、今は四番隊で入院中じゃわ。少年の治療担当者は、卯ノ花に見てもらっておるわ。」

 

 卯ノ花は、少年の治療と見張りで欠席である。念の為に夜一は、部下である砕蜂にも見張ってもらっている。

 

「そうか.....しっかし未だに信じられないな。その少年がまさか死神狩りの正体なんだって。」

 

「何や浮竹、残念そうな顔して。せやけどホンマにどうやってこの斬魄刀を手に入れたんだ?」

 

 平子は、少年の斬魄刀を持ち上げようとする。

 

「こないな斬魄刀を持って隊士達を斬り続けた……ん……......か.....?」

 

「ん、どうした?」

 

「............何やこれ......」

 

「……は?」

 

「なんだ?どうした平子?」

 

 突然、平子の様子が変わり、それを心配するラブと拳西。

 

「.........おい夜一、浦原.....これホンマにこれ斬魄刀か.....」

 

「おい、マジでどうしたんだ平子?」

 

「.......持ち上げれへん......」

 

「ーーーーーーは?」

 

「全然持ち上がれないんや!何やこれ?どうなってんねんこの刀! 全っ然、重いんやけど!? 」

 

 

 

「何言っているんだよお前。俺も少し…............」

 

 

 

 

 

 

       ズッシン

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!? なんだこれ!?」

 

 力自慢がある拳西は軽く持ち上げようとするが、できなかった。その重さは、巨大な岩と同じ重量である。

 

 そして斬魄刀の隣に置いてある鞘をラブが持とうとしたら........

 

「ーーーーーーーーーーーおいおいおい。これ本当に鞘か!?石.....いや、岩見たいに重てーぞ!?」

 

「本当かい?僕も少し..........って!?何だいこれ!?めちゃくちゃ重いんだけど!?」

 

 鞘も斬魄刀と同様、動かせない所か、持ち上げる事もできなかった。彼らは目を疑っていた。こんな台の上に簡単に置いてある刀と鞘は、普通の大の人間だったら余裕で持つ事ができるはず。

 

「ちょい浦原!オマエなんか仕掛けたのか!?まさかドッキリじゃないやろな!」

 

「イヤイヤ!流石にボクはそんな事をしないでしょ〜。ちゃんとした証拠品ですって!手も何も付けてませんよ。」

 

「じゃどうやってここに持って来れたんだよ!?どう考えたって、腰に差す重さじゃないよ!」

 

 三番隊隊長であるローズも驚きを隠せなかった。

 

「あ〜〜それっスよ。ここまで持ってくるにに大変だったんっスよ。」

 

「ここまで持ってくるのにって.....どうやって持ってきたの?」

 

「え〜〜ボクその斬魄刀を背中に背よって持って帰りしましたが、重すぎて途中で夜一サンと交代しながら移動したっス。ま〜それでも必死だったっスけどね。」

 

「.............それマジかいなん夜一....」

 

「喜助の言う通りじゃ平子。その斬魄刀を背良いながら歩くのもやっとだったわ。」

 

「えぇ.....ボクも腰が折れるんじゃないかと思いましたよ。」

 

 背中に背負ってある斬魄刀のせいで重い足取りで帰ってきた夜一と浦原。それがかなり重いようで歩くのもやっとだった。その事実に驚く平子とその場にいる同じ隊長達も驚きを隠せなかった。

 

「ちょっと待ってくれ!じゃ、あの少年は一体どうやって持てたんだい!?」

 

 浮竹の言う通りである。砕蜂と同じ身長を持つ少年は、なぜ重量がある斬魄刀を持ち歩く事ができるのか。それについては、浦原と夜一も分かっていない。

 

「流石に今の所分かりませんが、恐らくこの斬魄刀と少年は何らかの力があると思います。」

 

「力.........それはつまり。あの少年とこの斬魄刀には何か特別な力があると言うことか。」

 

「銀嶺隊長.........えぇ。その通りだと思います。ただ、この斬魄刀にはどんな力があるか、また少年とどう関係があるかについては調べないといけませんね。」

 

 

 

 

 

 

 

「すまんな皆の者、少し遅れたわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 聞き覚えのある声を聞いた皆は、その声の主の方に視線を向ける。

 

 

一番隊隊長・山本 元柳斎重國

 

 

 

 この隊首会は山本の即断によって招集されたものだった。

 

 

「山爺、ちょっと遅かったじゃない?」

 

「大量の資料に苦戦してのう。まだ仕事が残っておるが、今は例の死神狩りについて話す事があるんじゃろ.......浦原隊長。」

 

「え.......えぇ。ですが、その前にこの斬魄刀を見て欲しいのですが.........」

 

「斬魄刀?.........何じゃその刀は.....」

 

 山本はその斬魄刀を見た瞬間.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山本の顔から感情が消えた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ............あの.....総隊長......」

 

「ーーーーーーーーーーーー」

 

「山爺?どうしたんだい?」

 

「ーーーーーーーーーーーー」

 

 浦原と京楽が声を掛けても、反応しない。山本は、台の上に置いてある斬魄刀を黙って見つめている。

 

「元柳斎先生........流石に何か喋ってくれないと。」

 

「ーーーーーー浦原隊長.......先の事について報告せよ。」

 

「............え!?あ、はい!」

 

 やっと反応してくれたのか、山本は浦原と夜一の報告を聞き出す。浦原は、他の隊長達にも説明し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーっての事です。」

 

「............そうか.........」

 

 山本はたった一言で、浦原の説明に理解できた。それからしばらくの沈黙が続くと.........

 

 

「四楓院隊長.....今その少年は.....」

 

「今は、四番隊で入院中じゃ。まだ寝ておるが、一応念の為に卯ノ花と砕蜂に見てもらっておるわ。」

 

「そうか.........ならその少年が起きたらすぐに報告しておくれ。それと浦原隊長、この斬魄刀をしばらく儂に預からせて貰う。」

 

「えぇ!?」

 

「何じゃ?何か言いたい事でもあるのか?」

 

「............いえ、特にありません。」

 

「なら結構。以上じゃ .......」

 

 山本は、杖の先で強かに床を打つ。カン!という乾いた音が響き、それが隊首会の終わりを告げた。

 

「何やえらい早く終わってしもうたな...」

 

 そう言って平子は、どこかへ向かう。その後、他の隊長達にも次々へと去って行く。

 

「あの総隊長、さっきの斬魄刀についてですg「よ〜し、喜助!儂らは四番隊へ行くぞ!」......え!?ちょっと!よ、夜一サン!?」

 

 浦原は何かを総隊長に尋ねようとしたが、それを見た夜一が阻止し、浦原を無理矢理連れて行きながら四番隊へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、未だにその場で残っている山本は、台の上に置いてある斬魄刀を見つめる。

 

 

 

 

「ーーーーーー」

 

「............元柳斎殿......」

 

 山本の近くに寄ってきた一番隊副隊長・雀部長次郎忠息。彼は、先程の山本の様子が変化した事に気づいた。彼もこの斬魄刀に目をつけた瞬間、言葉を失ってしまった。

 

「............元柳斎殿......その斬魄刀は...」

 

「言うな長次郎。」

 

「ですが!この斬魄刀は!」

 

「聞こえなかったか長次郎。今は何も言うな。」

 

「ノ字斎殿!この斬魄刀は貴方の(・・・)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も言うなと聞いておらんかったか!この愚か者が!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!?」

 

 

 懐かしい呼び名を耳にした山本は、思わず大声を出してしまった。その声を聞いた雀部は、言葉を失う。

 

「ーーーーーすまぬ、少し言い過ぎたわ。ともかく、その少年が目を覚めるまではこの事を内密にしろ。もちろん中央四十六室にもじゃ。」

 

「し、しかし......「総隊長命令だ!分かったな....」........................はっ。すぐに他の副隊長にも報告します。」

 

「うむ............それと.......今は一人にしてくれぬか。」

 

「はっ................では失礼します。」

 

 雀部は、その後何も言わずにその場から立ち去って行った。そして山本は、誰もいない事を確認し、斬魄刀に手を触れる。

 

 

 

「ーーーーーーー」

 

 

 

 

 少年の斬魄刀を触れながら、山本が誰かの名前を呼んだ。それは、誰の耳にも届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

『何だその目は、気持ち悪い!』

 

 ーーーやめろーーー

 

『こっちに来るな!化け物!』

 

 ーーー俺を見るなーーー

 

『ふひゃひゃ!その目を取れば、高く売れるな!』

 

 ーーー見るな!ーーー

 

『キモい!』『来るな!』『殺す!』

 

 ーーー黙れーーー

 

『化け物!』『疫病神!』

 

 ーーー黙れーーー

 

 

 

 

『アンタなんか死んじまいな!』

 

 

 

 

 

 ーーー黙れ!!!!!ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っは!?..................ここは.......」

 

 夜一に気絶させられた少年は、身に覚えのない場所で目が覚める。そして、自分が寝ている場所も変だと感じる。

 

「何んだこれ.........布団....それにここはどこだ.........イッテ!!」

 

 少年は起き上がろうとするが、身体中から痛みが感じる。彼が浦原達に出会う前、まともな治療もできなかった為、適当に捨ててあった布や雑巾で傷口がある所に巻きつけていた。

 

「傷は.........って、何だこれ?」

 

 だが、身体中にはちゃんとした綺麗な包帯が巻いてあった。

 

「何だよこれ......俺は一体.....」

 

「おや、目が覚めましたね。」

 

「っ!?」

 

 声が聞こえた方に向けると、聴診器のように結った独特の三つ編みが特徴的の女性が立っていた。

 

「だ、誰だお前!?」

 

 少年は、慌てて何かを探そうとしたが.....

 

「(!?......ない!俺の刀がない!)」

 

 ずっと持っていた刀が、手元にない事に気がつく。その他の場所に目を向けるが、どこにもなかった。

 

「(クソ!ここを出なければ!).........うぅ!?」

 

 立ちあがろうとしたが、全身から苦痛が走り出てくる。起きあがろうとしても、同じ痛みが出てくる。

 

「無理に起きあがらないでください。今の貴方の状態は非常に酷いですよ。健康不足、水分不足、そして栄養不足。そのせいで体内の血液も不安定です。」

 

「ふ....ふざけるな!大体アンタは誰だよ!?」

 

「四番隊隊長・卯ノ花烈です。今日は貴方の治療の担当をする事にしました。」

 

「ち.....治療だと!?ふざけんな!さっさとここから出てやr「ここから逃げたら、速攻で捕えるぞ。」....!?」

 

 卯ノ花の背後からもう一人の女性....少女が現れた。夜一の部下である砕蜂は、少年を監視していた。そして少女は、砕蜂の顔を見て思い出す。

 

「お前.......あの時の.....オカッパ頭か?」

 

「ーーーーーーーーーーーーはぁ!?」

 

 突然自分の事をオカッパ頭だと言われた事に驚く砕蜂。

 

「おい、聞いているのかオカッパ?」

 

「だ、誰がオカッパだこの愚か者!」

 

「オカッパはオカッパだ女。お前の頭がオカッパに見えるからお前に事をオカッパって呼ぶ。」

 

「な、何だとこの馬鹿者!そもそも私の名は砕蜂だ!忘れるな!」

 

「なんか.........ポンコツみてーな名前だな...」

 

「はぁ!?.......ぽ、ポンコツだと!?」

 

 今度は自分の名前をポンコツみたいだと言われる。

 

「私はポンコツではない!そしてオカッパではないんだぞ!砕蜂っと言う名だ!」

 

「うるせぇなポンコツ.......じゃ、オカッパで。」

 

「そういう意味ではない!聞こえなかったのか!砕蜂だ!そ・い・ふ・ぉ・ん!」

 

「.........そいh.........ダメだ、覚えられねぇ。俺の頭の中からオカッパとポンコツしか出て来ないんだ。」

 

「なぜだ!?一番簡単な名前だろ!お前やっぱりバカにしているだろ!?」

 

「バカにしてねーよ。ただお前の顔を見るとオカッパとポンコツにしか見えねえだけなんだよ、ばーか!」

 

「それがバカにしているって言ってんだ!しかも今度はバカの言葉を使ったな!もう許さん!!!!」

 

「上等だ!こっちはイライラしているんだよ!!」

 

 ギャーギャーと騒ぎ出す少年と砕蜂。そんな二人を見た卯ノ花は.........

 

「御二方....そろそろ静かにしてくださ...」

 

「大体貴様をここまで運んだのは私だぞ!少しは礼くらい言ったらどうだ!」

 

「あの、そr....」

 

「ウルセェ!!こっちから見たら迷惑だ!いい加減ここから出てやるわ!」

 

「あの...」

 

「何だと貴様!」「何だとこの野郎!」「もう頭に来た!」「上等だ!!」「このアホ!」「このバカ!」

 

 ガミガミと言い争う少年少女。そんな二人の争いを止めようとする卯ノ花だが、彼女の言葉には耳も貸さなかった。

 

「.....................はぁ.....」

 

この二人は、もはや自分の事を全く気にしていない事に気づく卯ノ花は、最終手段を使う事にする。

 

「「この!!!クソy……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬撃!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーへぇ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の斬撃によって、窓の隣に置いてある花瓶が綺麗真っ二つに割れた。

 

 

 

「何やら楽しそうですね。」 

 

喧々囂々の争いを繰り広げていた二人の声がピタリと止む。向かい合っていた2人はそのままアイコンタクトでお互いに訴えかける。

 

――な、なななんなんだ今の!?――

 

――い、今私の前にや、刃が!?――

 

 先程とは打って変わった静寂が室内を満たす。

 

「お二方…」

 

 柔らかく穏やかな声に名前を呼ばれ、二人は錆びついた扉の様にギギギと顔を声のした方へ向ける。

 

そこには、穏やかな笑みで待つ白い隊長羽織を着た美しい女性が佇んでいた。

 

「お……おい……なんで……この女、か、刀……ももも持っている……」

 

「………う、卯ノ花……隊長 ……そ、そそその……斬魄刀は…」

 

「はい?何か問題でも?」ニコ

 

「「ヒッ!?」」

 

 幼子をあやすようなその口調と笑顔とは裏腹に、室内の温度が急速に下がるのを2人は感じている。そんな2人をよそに、卯ノ花はしとやかに2人へと近寄り、少年の方を見る。

 

「まずは貴方に言いたいことがあります。」

 

「ひ…ヒャい!」ガクガク

 

「別に私に対して敬語を使わなくてもよろしいですが、せめて名前くらい覚えて欲しいですね。ちなみに卯ノ花隊長か卯ノ花さん、どちらでも呼んでいいですよ。」

 

「え…い、いやでも…「返事は?」ヒッ!!は、はい!う、ウノハナサン……」

 

「それと砕蜂さん。」

 

「は、はひ!」ガクガク

 

「私は貴方の上司ではありませんが、病室内では静かにお願いしますね。」

 

「し、しかし……「わかりますよね?」ヒッ!?わ、ワカリマシタ……」

 

 

二人の返事を聞いた卯ノ花は、自身の斬魄刀を鞘に納めようとする。

 

「そうそう。最後に忠告しますが………」

 

「「…………え?」」

 

「もしもここで互いに暴れるなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療以外の方法で対処しますので

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………よろしくお願いしますね。」ニコ

 

 

 

 

 

「「ーーーーーーー」」

 

 ――キン。無慈悲に斬魄刀を鞘に納める音だけが、室内に響く。

 

この時二人は、卯ノ花の笑顔を覚える事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「卯ノ花!少年が起きたって本当か!」

 

「まあ。お早いお着きでしたね、四楓院隊長、浦原隊長。えぇ、ご覧の通り起きてますよ。」

 

「そっスか!それはよかったですn……」

 

「浦原隊長。―― お 静 か に 」

 

「……はい」

 

相変わらず卯ノ花の笑顔は恐ろしい。夜一ですら尻込みしてしまうほどだ。さりげなく少し距離を取っていると、次々と近付いてくる足音が聞こえた。

 

「(恐ろしい笑顔じゃのう…)オホン!それで、少年は?」

 

「病室にいます。今なら面会もできますよ。」

 

卯ノ花は、二人を少年が入院している病室に案内する。病室の奥、寝台に座っている少年。

 

「夜一様!」

 

「監視ご苦労じゃったな砕蜂。」

 

「い、いえ!夜一様のご命令ならば!この砕蜂におまk「砕蜂さん?」…ヒッ!………な、ナンデモアリマセン……」

 

「お、おう……(なんかあったじゃろ…)…」

 

「(なんかありましたね。)」

 

砕蜂が卯ノ花に対しての反応に大体察しがつく二人。ここへ来る前、絶対何か卯ノ花に怒らせてはいけない事をしたんだと思っている。

 

「よう!気分はどうじゃ少年?」

 

「あ?…………お前ら!あん時の!」

 

「あら?もしかしてボク達の事を思い出してくれましたk「返せ!!!」.....はい?」

 

「“レッカ”を返せ!アンタらが持っているだろ!?」

 

「「.........レッカ?」」

 

 少年の言葉に疑問を持つ二人。だがその言葉の意味について浦原はすぐに分かった。

 

 

「もしかして......君の“斬魄刀”の名前っスか?」

 

「ザンパクトウ?.........何だそれ?」

 

「斬魄刀も知らないんっスね。君が持っていた刀なんっスよ。」

 

「刀......斬魄刀......って!それだったらお前らが持っているだろ!返せ!あれは俺のk....イッテ!?」

 

「あ〜〜ちょっと!無理に起きてはいけませんって!少年サン。」

 

「ふざけんな!だったらレッカを返せ!」

 

 少年は自分の斬魄刀を返して欲しいと言っているが、今の二人にはその斬魄刀を持っていない。

 

「残念ながら、儂らは持ってないんじゃ。ついさっき総隊長殿に没収されたからのう。」

 

「.........はぁ!?何だよそれ!こうなったら俺が.....イッテ!」

 

 自分で斬魄刀を取り戻そうと動くが、再び身体中から苦痛が感じ出てくる。

 

「おいおい無理するな。その身体じゃまだまともに動けないじゃろ?」

 

「ウルセェ!大体アンタらは、俺を捕まえにここへ来たんだろ!?分かってるよ!どうせ殺す気なんだろ!!」

 

 少年は思った。死神をこの手で斬り続けてきた自分を殺すのだろうと考えている。だったら今の内にこの手で自分の刀を取り戻そう。そう思っていたが.........

 

「何じゃお主。儂らがいつお前を殺すと言ったのだ?」

 

「........................は?」

 

「いいかお主!お主に二つの選択がある!」

 

「は....せ、選択?」

 

「一つ、今からお前が死神狩りである事を四十六室に報告する。そうなってはもう死刑確定じゃろうな。」

 

「し....死刑って....」

 

「つまり死じゃ。要するにさっきお主が言った通り、おそらく奴らはお主を罪人として殺すじゃろ。」

 

「ッ!!」

 

「よ、夜一サン!いくらなんでもそれh「喜助、少し黙っておれ。」.....」

 

「二つ、今からお主が死神狩りである事を忘れ、第二の人生を進む事じゃ。」

 

「............は?」

 

 少年は、夜一が言っている意味を理解できなかった。もちろん浦原達も。

 

「つまり、四十六室に“死神狩りは死んだ”っと報告する。そうすれば、もうこの世界には死神狩りが存在しない事になる。」

 

「なるほど.............そう言う事ですか。ですが四楓院隊長、そうしたらこの少年の存在はどう説明できますか?」

 

「卯ノ花....それはどう言う意味じゃ?」

 

「もしも彼を死んだ事にすれば、彼はこの世にいない存在になります。存在しない人、言わば彼は亡霊ですよ?」

 

「あ〜〜そうか….....そうじゃな……」

 

 卯ノ花の疑問を聞き、夜一は目を閉じた。

 

「……どうじゃ、お主.....」

 

 再び開いた彼女の目が嬉々としていることに、喜助と卯ノ花は気付いた。

 

「儂の養子にならんか?」

 

 その間、たっぷり数秒ほど.........

 

 

 

「……………………………………………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年の瞳はまん丸になった。

 

 何を言われたのかすら、理解が追い付いていないようだった。

 

「よ......夜一サマの.......養子.....ダレガ......まさか....此奴が...?」

 

 そしてそれを聞いた砕蜂は理解どころか現実から離れてしまった。

 

「じゃから、儂の養子にならんかと訊いておるじゃが.........」

 

「ちょ、ちょっと!夜一サン!」

 

 突拍子もない話に喜助は口を挟み、夜一の腕を掴んで病室の隅に引っ張っていった。

 

 

「(何じゃ喜助?今あの少年と話をしておるぞ?)」

 

「(何考えてるんスか!?)」

 

「(少年を手元に置くことを考えておるぞ?)」

 

「(そうじゃなくて!理由を……って言うか何で養子なんスか。引き取るなら弟子とかでは?)」

 

「(うむ、まずはそこなんじゃが、あやつは力の扱い方を知るべきじゃ。今のままでは、いずれ抑えきれる事なく、またあの時みたいに暴走するもしれん。かと言って自由も無く監視するって言うのは、彼奴の人生を完全に決めてしまうことになる。更に言えば儂が面白くない。四十六室に連れて行かれれば、あやつの力を見る機会が減ってしまうからの.......)」

 

「(……どっちかって言うとそっちが本音でしょうに……)」

 

 呆れて溜息も出ない。あの少年の事をかなり気に入っているようには見えたが、まさかこれほどとは.......

 

「(でも夜一サン。養子と言いましたけど、そんなことをすれば四楓院家の人達に何を言われるか判ったものではないですよ。面倒な事にならないのなら、弟子の方が傍に置いても不自然ではないし、手ほどきもしてやれますよ。)」

 

「(安心せい、そこも考えておるわ。別に屋敷の者には、儂の弟子だと伝えればいい。)」

 

「(え?.........でもそうしたら養子っと言うのは.......)」

 

「(あの少年は、あくまでも四楓院家の養子ではなく、四楓院夜一の養子(・・・・・・・・)になるんじゃ。)」

 

「(なるほど.....そうすれば四楓院家の人達や隠密機動から見れば夜一サンの弟子だと思えますね。)」

 

「(そう言う事じゃ。それにな喜助、あの少年の事をなぜか放って置けないんじゃ。)」

 

「(どうしてそこまで……)」

 

「(この儂を嵌めたのじゃぞ? あのような小僧が全く悪びれず。面白いと思わぬか。それにお主もあの少年の力に興味があるじゃろう?それにな喜助....)」

 

 

 まだあるのかと思えば、金色の瞳がきらりと光った。とても怪しい瞳で。

 

「(儂の養子にしたあやつを、白哉坊に会わせたらどうなると思う?きっと面白い事が起きるぞ。)」ニヤリ

 

「(…………それが狙いなんっスね.......)」

 

「さて、もういいじゃろ……戻るぞ!」

 

 そう言って、夜一と浦原は病室の方へ戻る。病室内へ戻ると、そこには先程夜一が提案した二択の選択に悩んでいる少年がいる。

 

「あら、もう話し合い終わりましたか?」

 

「おう終わったぞ。さてっと......本題に戻るかのう。」

 

「ーーーーーー」

 

「その様子じゃ、まだ迷っているな。まあよい。お主、才があることに気付いとらんのか? 鍛えれば間違いなく凄腕の死神になれるぞ。」

 

「は?……おい待て、別に俺は死神になりたいんじゃ....」

「別に“なれ”とは言っておらん。すぐに霊術院に入れるつもりなどないし、当分は儂が直々に面倒見てやるわ。」

 

「少年サン、ご家族は?」

 

「.........いねーよ。てかそもそも自分の家族なんて知らねーよ。」

 

 家族もいないのかと思うと、猶のこと放ってはおけない。

 

「儂の元へ来い、少年。強い力を持つ者は、それを扱う術を知らねばいずれ身を滅ぼしかねん。自分の力を理解しないと、自分自身で扱う事ができまい。」

 

「…………」

 

「……というのは建前でな、実際はお主の力は何処までやれるかを見てみたいからなんじゃ。」

 

「…………」

 

「……まあ、今すぐ答えを出せというのも難しいかもしれんな。今日一日ゆっくり考えるがよい。」

 

「…………おい、女。」

 

「女では無い、夜一だ。覚えておけ小僧。」

 

 少年の口から出たのは否定を含む言葉。どういう意味か、何を指して言ったのか、続きを待つ。

 

「いらねーよ、考える時間なんて.........」

 

 無垢な、けれど真摯な双眸が、こちらに向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか.......それがお主の答えか。」

 

「あぁ.........」

 

「お主の答え、よく分かった。卯ノ花、少年の退院を知らせてくれ。儂らは今から総隊長殿に報告するわ。」

 

「えぇ、分かりました。」

 

 少年の答えを聞いた夜一達は、病室から出ようとする。そんな時浦原は、ふっと思い出す。

 

「そう言えば、貴方の本当の名前は何ですか?」

 

「.....................え?」

 

「もしかしてお主、名前も無いのか?」

 

「..................名前はある.......多分......」

 

「そうですか.....ちなみにお名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーカズマーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書
危険罪人【死神狩り】に関する記録・報告書

 

 

正体 【不明】

 

男女 【不明】

 

年齢 【不明】

 

霊力 【副隊長または隊長以上】

 

 

 

<記録>

【"死神狩り"の戦闘記録】

 

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■■■■年06月■■日 午前11:24

 

 西流魂街・四十二番地区にて死神狩りの行動を監視していた、二番隊と十二番隊が尾行。しかし、対象に尾行がバレてしまい、人気のない場所で戦闘を始めた。

 

 だが戦闘中、“対象は瓦礫と共に落下し、滝と共に流されてしまった“。その後、隊士達はすぐに対象を発見したが、見つけたには千切れた右腕だけである。

 

 なお、遺体が見つからないまま、対象であった《死神狩り》は“死亡”っと見なす。

 

 

 

 

 

 

報告者 一番隊総隊長・山本源流斎重國

 

 

 






〜死神図鑑〜


砕蜂「ヨルイチサマ.......ヨウシ.....ダレ......」

卯ノ花「あらあら、大丈夫でしょうか?」



 現実を受け入れていない砕蜂は、まだ少しかかりそうである。

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