「変じゃないか?」
「ううん、似合ってる似合ってる」
クリスマスも終わり、一晩のうちに歳末セール仕様に一変したショッピングモール。
その一角、アメリカンカジュアルなファッションブランドの試着室で、俺は女子中学生の着せ替え人形になっていた。
ただ今のコーデは緩めのデニムにVネックのシャツ、黒のフライトジャケット。
今ドキな渋カジスタイル。少し若返った気分だ。
「すみませ~ん、レジお願いします。あ、両方着たままで」
透き通った声が店員を呼ぶ。彼女もまた、2日着たままの制服から着崩した深緑のネルシャツが目立つスキニージーンズスタイルへと様変わりしていた。
「こちら7点で24580円になります」
「あ、はいはい。25000円から」
レジスターに表示された数字を見て絶句した。
2000円ちょっとのパーカーで満足する俺にとって、それは未知の数字。明らかに1日で消費していい金額ではない。
何より、こんな小さな女の子に収入で負けたという客観的事実が成人男性の心に耐えがたい敗北感を刻む。
「半分は俺が出す……」
「バカ言わないの、しばらく担当いなかったんだし、ボーナスも出てないんでしょ?」
「それは……うぅ、俺のプライドが……」
結局、何事もなく会計はシービーによって支払われ、俺たちは店を後にする。
通路ですれ違う通行人の目が少しにやけ気味ったが、気にしないことにした。
「フフッ。これでお揃いだね!」
靴先で足首をつっつかれ、彼女の足元を見る。
俺は歩きやすさで選んだスニーカー。シービーもウォーキングシューズ。それにお互いデニム生地のパンツ。
——しまった、コーデを一任したのも計算の内か。
大人びた彼女と若く見える俺。傍から見れば歳の差カップルにも間違われる風貌で、俺たちは次のフロアへと向かっていく。
次は家具を見繕うらしい。今の部屋は味気なさすぎるんだと。
「このライトスタンドいいな~。あ、カーテンも色揃えた方がいいかも」
「レイアウトもいいが運ぶ俺のことも考えてくれ」
「大丈夫だってアタシウマ娘だし」
「家まで運転するのは俺なんだけどな……」
家具家電のフロアを回りながら、大型犬が乗れそうなほどのカートに次々段ボールが積み上がっていく。
思えば、同棲を決めた時も君も部屋にはこだわる方だったな。あの時は「アタシの方が家にいる時間が長い!」と押し切られてしまった。
——ちょうど、今みたいに。
「そういえばシービー、お前なんで中学生で一人暮らしなんだ? 生徒なら普通、寮暮らしだろ」
不意に見えた面影をかき消すよう、さっき湧いて出た疑問をこぼす。
その瞬間、カートを押す手が止まった。
「……それ、話さなきゃダメ?」
シービーが伺うように俺の顔を見上げる。何かをはぐらかした笑顔だった。
「いや、ダメじゃないが気になってな」
「うーん、それじゃ、帰ったら話してあげる」
しばらく天井スピーカーの店内放送だけが耳に入る。
再びカートが動き出し、彼女は気まずそうに笑顔を作った。