親の脛齧り芸大生 城田真結   作:邪骨

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逃したチャンスは戻らない。


ああ無念

 この世は何て無情なのだろう。何事も思うままにはいかず、成功例はまぐればかり。望んだことは尽く失敗する我が人生の、何と不幸なことか。当然、たまたまの成功もうれしくはあるが、とはいえ望んだ成功が訪れないのは、余りにも歯痒く、とても辛いものであった。20を超えた身分にあるから、酒を浴びるように飲んで忘れることも出来ようが、しかし我にそんな金などなし。手持ちの4000円は、全て本に使うと決めてあるのだ。

 

 ……まあ、そんな皮算用も先ほど崩れ去って。今は茫然自失の最中にある次第だ。

 

 欲しかったんだ、『夜な夜な夜な』のサイン本が。欲しかったんだ、柴田先生のサインが。2000円と、ほんの少しの運さえあれば、手に入れることが出来たのに、ソレは今私の手にはなく。ああ無情、いや無念。

 

 あああああああ、ああ、ああ、ああ、ああ。

 

 今はこの、不本意ながら浮いてしまった2000円を、どうしてくれようかと思っている。少し高い昼食でも食べるかな、いやいや、そこはお高い本だよなお前。そういう思いを無理やりにでも廻らさないと、無念さに押しつぶされてしまいそうだった。

 

 知ってたさ、『青騎士 x scene トーク&サイン会』の日時も場所も、告知が出た時から知ってたさ。それを「熊本なんか遠すぎて行けない。そんな交通費はない」と逃したのは私だ!その後天から降ってきたような今回の通販。「サイン会にこれなかった人も少数ですが取ってあるのでサイン本売りますね」と言うから、期待してしまった。わかってたさ瞬殺になるんだろうなって。青騎士作家陣はサイン会なんて滅多にしないもんな。柴田先生に至っては私が知る限り初めてのサイン会だったんじゃないか。だから行きたかった。欲しかった。ああ無念。次のサイン会はいつになるのだろうか。もしかしたらもう無いのかもしれない。以前、名古屋の三洋堂のポップに、柴田先生のサインがあるのを見た。輝いていた。素晴らしいと思った。私も書店員になって思う存分あのポップのサインを眺めてやりたいと思った。あわよくばその後仕舞われるときにお持ち帰りしたかった。そういった憧れが叶うと思ったのに、ああ無念。

 

 今はだいぶ落ち着いた。

 

 こうやって文に認めているうちに、気分は幾分かマシになったように思う。やはりこうして思いの丈を吐き出すことは、精神衛生上よろしいのだろう。

 

 いや、やっぱつれぇわ。

 

 そりゃつれぇでしょ。予備に取っておいた秘蔵のデンジくんを駿河屋に売っ払って作った4500円!きっと使うと決めたのに!使えなかったから!いいよ!他の買うよ!チクショー!

 

 私は『フランケンシュタインの男』を買って鬱憤を晴らそうと心に誓った。

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