シンフォギア   作:刃狗

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00.Prologue【Side L】

ゴォォッ

 

「風が強いな…村か。小さいが屋根ぐらいはあるか…」

 

とある国の山の麓の小さな村を訪れている黒いフードパーカーを羽織る青年。腕には黒と金の腕輪が付けられている。

 

そして青年はフードを被ったまま、村へと足を踏み入れる。

しかし、何やら騒がしく―――――

 

「どうしたんだ?」

 

「アンタ…旅の人か?」

 

「まぁ…そんなところだね。それで、何かあったのか?人が集まっているが」

 

「前にあった地震で落石があって…水源が絶たれちまってな」

 

「水源?」

 

「ああ、ここは山の麓だが地下水なんだ…だから井戸で組み上げてたんだが…」

 

声をかけた男性の説明によると、以前発生した地震の影響で落石が発生し、村の水源である井戸が岩によって封じられたとのこと。

 

「山には入れないのか?」

 

「入れるが…この村の地下はデッカイ水脈があってな…もう三日になる…このままじゃ水不足になっちまう」

 

「そうか…ところで、ここに宿はあるか?宿でなくても屋根さえあればいいが…」

 

「あるにはあるが…この状況じゃ泊まる人間もいねぇ」

 

「ふむ…あの岩か」

 

「ああ、村の男全員でどうにかしようと思ったんだが…大人が少なくてな…砕くとしても井戸の中に入ってしまったら元も子もないからな…」

 

「そうか…」

 

「お、おい。何を」

 

少年は岩へと近づいていき、岩の状態などを調べる。

 

「完全に塞がっているか…砕くのはダメだな」

 

「何を…お、おい!アンタ1人じゃ無理だっ」

 

「ああ…向こう側の人は退避してくれ」

 

少年は岩を両手で押し始める。

それを見た村の人達は無理だと声を上げるが―――――

 

ミシィッ

 

「なっ」

 

「っよ…っと」

 

ドォォォンッ

 

「…こんなもんか」

 

「ア、アンタ…人間か?」

 

「んー…ちっとばかし人間じゃないな…でもまぁ…人間のつもりだけど」

 

「そ、そうか…」

 

「にーちゃん、すげーなっ。俺も大きくなったら出来るかな!?」

 

「それは無理だ…だが、身近な人を護れるぐらいにはなれる」

 

「身近な人?」

 

「自分の母親や父親だ…友達でもいい」

 

「難しいけど…なんとなく解った!」

 

「そうか。さてと…少年、この辺りで泊まれる場所はあるか?」

 

「止まれる場所?宿か?あるぞ?」

 

「そこへ案内してくれるか?」

 

「いいぜ!」

 

「そこの若いの…」

 

「ん?」

 

「あ、じーちゃん!」

 

「どなたかは存じませんが…助かりました」

 

「いえ。困った時はお互いさまですよ…別に報酬をくれ、とも言いませんから。明日にはここを出るので、それまで風をしのげる場所を教えてくれればそれで」

 

「しかし…」

 

「このじーちゃんな、この村の村長なんだよ!皆からじーちゃんって呼ばれてる」

 

「そうか…」

 

「にーちゃん、明日にはここを出るっていうけど…どこ行くんだ?」

 

「海を越えたところにある小さな島国、日本だよ」

 

「日本?」

 

「ま、もう少し大きくなればいずれは解るよ」

 

「そっか。あ、こっちだよ!」

 

青年は少年の案内で村に唯一ある宿へと向かった。

 

「ただいまーっ」

 

「あ、おかえり…って、見慣れない格好だけど、旅の人?」

 

「ええ」

 

「そうですか。でも…」

 

「このにーちゃんすげーんだよ!井戸を塞いでた岩を1人で動かしちまったんだぜ!」

 

「えぇ!?」

 

「(ここはこの少年の家か…)」

 

「で、にーちゃん、明日には出るらしいけど、風当たらない場所ないかっていうから連れて来た!」

 

「…あ、あのー…本当に井戸を?」

 

「ここに来るまでにあった岩であれば」

 

「そ、そうですか!あそこは貴重な水源なので…ありがとうございます!」

 

「は、はぁ…」

 

「この村にとって、水源はすげー大事なモノなんだよ。食い物は自分達で作れるしな」

 

「そうなんだな…まぁ、確かに水は大切なものだな」

 

「だろ?あ、姉ちゃん。部屋空いてるよな?」

 

「え、ええ…一泊ですよね?」

 

「ああ。コレで足りるか?」

 

青年はポケットから紙幣を何枚か取り出し、カウンターの上に置いた。

 

「こ、こんなに…い、一枚で十分です」

 

「そうか…ここは食事は?」

 

「あ、お出しします」

 

「なら取っておいてくれ…明日にはこの国から出るからな…あっても仕方ない。村の資金にでもしてくれ…少年、部屋へ案内してもらえるか?」

 

「おう、こっちだぜ!」

 

そうしてお金を置いたまま、青年は部屋へと通された。

 

「ここ。一応夕飯は出るし、その後になら風呂にも入れるから」

 

「それは助かるな。服が砂で埃っぽくなったから」

 

「…あ、あのさ。にーちゃん」

 

「ん?」

 

「にーちゃん、旅してるんだろ?だったら少しだけでいいからさ…旅の話聞かせてくれない?」

 

「構わない」

 

「ホントか!?んじゃ、皆呼んで来る!」

 

「待て…多いのか?」

 

「この村の子供とかだから…結構。旅の人って珍しいしさ」

 

「なら、ここではない方がいいな」

 

「なら、下で。下なら人が集まっても大丈夫だし」

 

「そうか」

 

「なら、俺呼んでくるよ!」

 

「走って転ばないようにな」

 

「大丈夫ー!」

 

そう言って少年は部屋を後にし、子供達を呼びに行き―――――

 

「ふぅ…子供、か。切歌も…もう15,6ぐらいか…」

 

青年―――――暁璃音はボヤきながらも生き別れみたくなっている妹の事を思い浮かべる。そして、璃音は何もない空間に手を向け―――――

 

「Atziluth―――――」

 

璃音の言葉と同時に何もない空間が歪み、璃音はその歪みへと腕を入れる。そしてそこから服を取り出し、フードパーカー以外を着替え着て居た服を空間に入れ、部屋を後にする。

 

その後、集まった人達の質問に答えながらも旅の話を話せる範囲で話した。

 

そして、夜は明け―――――

 

「…さて、行くか」

 

「あ…」

 

「ん?」

 

「お、おはようございます…もう行かれるんですか?」

 

「ええ。日本へは少しばかり時間がかかるので」

 

「そうですか…大したおもてなしもできなくて…すいません」

 

「いえ。風をしのげるだけでも違いましたから、気にしないでください。じゃ」

 

「あ、あのっ」

 

「何か?」

 

「名前…教えてもらえますか?」

 

「…璃音。暁璃音です…もし、次があるなら、妹も連れてきますね」

 

璃音はそう言ってその村を後にし、日本へと向かった。

そして、日本へと降り立った後―――――

 

「……。」

 

「こちらになります」

 

「……。確かに」

 

「しかし、以外でした…貴方が日本に来るとは」

 

「俺もそう思うよ…ただ、ここには聖遺物が集まっているから」

 

璃音は空港にあるカフェで空を見ながらのんびりしていると、隣に私服の男性が座り、璃音へデータチップを2枚、紙媒体のモノを1束渡してきた。

 

顔見知りの様で男性は年下である璃音がタメ口である事など気にしていないようであった。

 

「そういえば…特異災害対策機動部二課という聖遺物に関する組織が動いていますのであまり派手にはしない様に」

 

「特異災害対策機動部二課…ね」

 

紙媒体のデータを見ながら話を聞く璃音。

 

「いくら貴方がノイズと戦えるとはいえ、聖遺物を相手にするのは得策ではないでしょう?」

 

「だな…正面からは戦う気はないよ…でも、いいのか?アンタも一応は政府の人間だろ?」

 

「個人的な知り合いの助けをしているだけですよ…あと、こちらが例のモノになります。一応、10本用意できました」

 

そして、ケースを受け取り、中身を確認し、閉じる。

中には緑色の液体が入ったシリンダーの様なものが10本入っていた。

 

「そうか…助かります」

 

「それと…こちらが開示された桜井理論のデータになります」

 

「後で確認しておく…ん?コイツは…」

 

「ん?ああ…風鳴翼…貴方も聞いた事があるのでは?」

 

「名前程度だけど…コイツも?」

 

「ええ、装者です」

 

「そうか…ん?なんだコレは」

 

「貴方なら興味を持つかと思い、彼女のライブチケットです。日付は明日。場所についてはデータチップの中に入ってますので」

 

「…了解」

 

「それじゃ私は行きますね…何かあればいつでもご連絡を」

 

「…助かるよ。風鳴機関元幹部さん」

 

「ふふ、懐かしいですが…では」

 

そう言って男は立ち去り、璃音も空港を後にする。

女神達の旋律と神喰の旋律が交わるとき―――――物語は動き始める。

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