シンフォギア   作:刃狗

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08.フロンティア

「私達と共に来て…本当に被害が抑えれると本気で思ってるの?」

 

「信用ねぇなぁ…信じられないなら鉄火場の最前線で戦うアタシを後ろから撃てよ」

 

「勿論、そのつもりですよ」

 

フロンティアへ先に上陸を果たしたF.I.S.のメンバー達はフロンティアのジェネレータールームを訪れていた。

 

「それにしても…Dr.ソレは?」

 

「ネフィリムの心臓とLiNKERですよ」

 

ゴゴゴゴッ

 

「な、なんデスか?コレは」

 

「心臓だけになっても聖遺物を喰らおうとするとは…卑しいですねぇ」

 

「…しばらくすればフロンティア全域にエネルギーが巡るでしょう」

 

「ならボクはブリッジにあがりますかねぇ。ナスターシャ教授も制御室でフロンティアの世話をお願いしますよ。どうせ…アイツらは邪魔しに来るでしょうしねぇ。まぁ…約1名、死にかけが居ますけどね」

 

「死にかけ…だと?」

 

クリスはウェルの言葉に疑問を抱き、問いかけた。

そしてウェルの口から発せられた言葉はクリス達が言葉を失うには十分なものだった。

 

「…アイツが」

 

「何の…冗談デスか…」

 

「…恐らく、あの子は力を使いすぎているのでしょうね…カディンギル跡地で損傷が見受けられていましたから…」

 

「…アイツ、そんな事は」

 

「言わないでしょうね…」

 

「マリア…」

 

「Dr.が言ってる事が正しいとしたなら…璃音は戦える程じゃないって事よ。神器がどういうモノか詳しいことは解っていないのよね?マム」

 

「解っているのは、アレも聖遺物を喰らう特性がある事と定期的なLiNKERの投与が必要な事ですね」

 

「LiNKERを?」

 

「あの子以前にも神器の適合試験を行った子供達は居ます。その時に神器には特殊な細胞の様なものが存在していて、それが適合者の体を浸食する、という事。それを抑えるためにはLiNKERの定期的な投与が必要でした」

 

「しなかった場合は?」

 

「浸食され…人間ではなくなります」

 

「つまりだ…アイツは棺桶に片足突っ込んでるって訳か」

 

「恐らくは。今まで神器が損傷したという事例がない以上、対処できないですが…LiNKERを投与して、浸食を遅らせているかもしれません」

 

F.I.S.の研究者の1人でもあったナスターシャの説明に、クリスとマリアは納得していた。しかし切歌は―――――

 

「…マム、にーちゃんがこのまま戦い続けたら…」

 

「遠からず人間ではなくなり、切歌の知る璃音ではなくなるかもしれません」

 

「……。」

 

「…神器の力を使いすぎなければ進行は遅らせる事は出来ると思います」

 

「そう、デスか…」

 

「淡い期待なんてすんじゃねーぞ…アイツは絶対にここに来る」

 

「それは…」

 

「神器の力を使わない…なんて選択肢、アイツは持ってねぇよ」

 

そう言い残し、クリスも何処かへと向かって行った。

 

「…切歌」

 

「…大丈夫デスよ。絶対死なせないデス」

 

そうして、切歌も外へと向かい、ナスターシャは制御室へ、マリアはウェルのいるブリッジへと向かう。

 

「…どうして、私の操作を受け付けないの?」

 

「ボクが制御してるからだよ。フロンティアが浮上した以上、これでボクも英雄になれる…ラストアクションのヒーローだッ」

 

自身にネフィリムの細胞サンプルから作り出したLiNKERを撃ち込み、左腕を疑似的にネフィリム化させ、フロンティアのシステムのほとんどをその手に収めたウェル。

 

フロンティアという力を手に入れた事で加速していくウェル自身の欲望。

かつて―――――地球を救ったとされる、ルナ・アタックの英雄である響、翼、クリス、歌唄に憧れ…自分自身も英雄と呼ばれたいとうウェルの願望は手段を択ばないでいた。

 

そして、なんの力もなく、ウェルの暴挙すら止めれずにいるマリアは

一人、涙を流すだけだった。

 

そしてその頃二課では―――――

 

「…フロンティアの浮上、止めるには…」

 

「ネフィリムの心臓を破壊してエネルギーを無くすか…フロンティアに核弾頭でも叩き込んで消し飛ばすか…だな」

 

「核弾頭は周囲への被害が大きすぎる。却下だ」

 

「なら、乗り込んでネフィリムの心臓を破壊するしかないな…」

 

「…行く気か?」

 

「勿論…あそこにウェルがいるからな。言っただろ?俺はウェルを殺すって」

 

「…その身体でか?」

 

「…てめぇらは自分の仕事をしてろ…腕がこうなっても戦える…その結果、神器に喰われて死んだとしても…な」

 

「死ぬのは許さん」

 

「限られた時間で出来る事だけはやる…死ぬ気はないが…戦わない、なんて選択肢はないからな。俺は俺で勝手に動かせてもらう」

 

そうして璃音は司令部を後にし―――――

 

「璃音」

 

「歌唄…と調か」

 

「死ぬ気?」

 

「まさか…最低限、ウェルを殺して敵を取るまでは死ねないさ」

 

「無理はダメですよ?治療しているとはいえ、力を使いすぎればそれだけ

浸食速度があがって…」

 

「解ってるよ…調、切歌の事…頼むな」

 

「…解った。でも1つだけ約束して」

 

「なんだ?」

 

「切ちゃんを1人にしないって」

 

「…善処するよ。俺は先にフロンティアに向かう」

 

そう言い残し、璃音は1人先にフロンティアへ向かった。

その後、司令部で―――――

 

「捕虜に出撃要請って…どこまで本気?」

 

「何処までって…最初から全部」

 

「私はあなたのそういう処、嫌い…偽善を振りかざすだけで」

 

「…私、自分がやってることが正しいなんて…思ってないよ。ただ、自分に出来る事をしてるだけで…もし、調ちゃんのやりたい事が私達と少しでも一緒なら力を貸してほしいんだ」

 

「……。」

 

「…調、貴方は何がしたい?」

 

「…切ちゃん達を…助けたい」

 

「なら…どうすればいいか、解ってるでしょう?」

 

「…けど、信じるの?敵だったのよ?」

 

「姉である私は信じていますよ?というか、信じて当然です。それに…調がやりたい事はもう解ってるんです…なら私はそれを少し手助けするだけですよ」

 

「…お姉ちゃん」

 

歌唄や響の説得に、調はマリア達を止める為に力を貸すことに。

そして歌唄と調、響も先に出た璃音とSAKIMORIを追ってフロンティアへと上陸する。

 

歌唄達が二課の船を後にした頃、SAKIMORIは―――――

 

「…そろそろ頃合いだと思っていたぞ…雪音ッ」

 

「―――――。」

 

F.I.S.側に着いたクリスと出会い―――――

 

「…これが船だと想定した場合は上にブリッジ、下に動力系だろうけど…下にいくか。なんとやらは高い処が好きだ…ってな。敵の本拠地だし、何かしらアクションがあるだろ。…って行き止まりか。ぶち抜くか」

 

ドォォォンッ

 

璃音は行き止まりに行き当たると床などを破壊しながら、フロンティアのジェネレータールームを探して探索を続ける。

 

そして―――――

 

「切歌ちゃん!?」

 

調と響、歌唄の3人は切歌と遭遇し、闘いが始まる寸前―――――

 

「―――――。」

 

―――――Zeios igalima raizen tron―――――

 

「切ちゃん!」

 

「調…どうしても、デスか!?」

 

「Dr.のやり方じゃ何も残らない…弱い人達を護れない」

 

「Dr.のやり方じゃないと何も残せないデス…間に合わないデス!」

 

「二人とも落ち着いて話し合おうよっ」

 

響の言葉に―――――

 

「「IKUSABAで何を馬鹿な事をっ」」

 

調と切歌は同時に同じ事を響に言っていた。

 

「(そういう処はよく似てるんですよね…調も切歌ちゃんも)」

 

「貴方とお姉ちゃんは先に行って…二人ならマリアを止められる」

 

「私は残りますよ。マリアさんの方は響さん1人でなんとかなるでしょう」

 

「歌唄さん?」

 

「私は…二人の闘いを見届けようと思ってますから…お願いできますか?」

 

「…解りました」

 

「…貴方なら、マリアと手をつないでくれる…はず」

 

「調ちゃん…」

 

「私とギアを繋ぐLiNKERには限りがある…だから行って」

 

―――――胸の歌を…信じなさい―――――

 

「…うん」

 

響は調の言葉に過去を思い出すも、1人でフロンティア内へと入って行き―――――

 

「行かせるもんかデs―――――ッ」

 

キンキンッ

 

「…切ちゃん」

 

「調ッ…どうしてアイツを…アイツは調の嫌った偽善者じゃないデスか!?」

 

切歌は調が響を護るとは思っていなかったのか、動揺していた。

 

「でも…アイツは自分を偽って動いてるんじゃない。そんなアイツが…眩しくて、羨ましくて…少しだけ、信じてみたい」

 

「調…」

 

「…それに、お姉ちゃんも居るから…負けられない」

 

「…さいデスか。けど、私も引き下がれないデス!私が私で居られるうちに何かを形に残したいんデスッ」

 

「切ちゃんが切ちゃんで居られるうちに…?」

 

「…調、こういう時どうすればいいか…解りますか?」

 

調の疑問に対し、歌唄は調へと問いかける。

 

「…全力でぶつかる」

 

「そうです…互いに貫きたい想いがあるなら…時には力で言い聞かせるのも手段です」

 

「…お姉ちゃんは…あるの?」

 

「どうでしょう?私は本気を出した事がないですからね…相手になりそうなのが…璃音と弦十郎さん…ぐらいでしょうか?」

 

「そう…ねぇ、切ちゃん」

 

「なんデスか?」

 

「私にも切ちゃんにも…譲れないモノがある…だから、私は全力で切ちゃんを倒す。倒した上でOHANASHIする」

 

「…やれるモンなら…やってみるデスよッ!」

 

「(切歌ちゃんは自分で居られるうちに…と言いましたが…さっきの調の言葉…アレは…"あの時"に"彼女"が告げた言葉…それにあの時にみた障壁の事も考えると…器は調の方…?いや、確証がない以上断定はできませんか…いざとなれば止めれますしね)」

 

切歌と調が互いに自分の想いを貫き通す為に戦いを始め、歌唄は二人のやり取りからフィーネの魂の器がどちらかを考えていた。いつでも動けるように…止めれるようにしながら。

 

そして別の場所では―――――

 

「はぁぁぁっ」

 

「っ」

 

ドォォォンッ

 

クリスと翼が無言のまま、戦闘を開始していた。

そして翼は気づく…クリスの首に何かが付いていることに。

 

「(アレが雪音を従わせているのか?こんな時…月読や暁なら…)っ」

 

ガガガガガッ

 

「考え事とは余裕だな…」

 

「余裕ではないが…お前の首根っこをどう引っ張って帰るか考えていただけだ」

 

「っ」

 

「お前が居やがったとしても…絶対に首根っこ引っ張ってでも連れて帰る…お前が居るべき場所に…な。剣である私にはそれぐらいしかできそうにない…暁や月読程頭が回るわけでも器用な訳でもないからな。だから…雪音、多少の怪我などは覚悟してもらうぞ」

 

「…やれるもんなら、やってみろよ!」

 

「無論、そのつもりだ」

 

翼の意思を理解したクリスは…

 

「…風鳴…先輩」

 

「っ」

 

「…今日まで繰り上げて来たコンビネーションだ。次で決める」

 

「なら…こちらも真打をくれてやる」

 

翼にのみ伝わる様に言葉を告げ、それに翼も答えた。

その頃、制御室では―――――

 

「…ここは、制御室か…?」

 

「…璃音」

 

「…ナスターシャか。久しぶり…というべきかな?」

 

「そうですね…最後にあったのは研究所ですからね。しかし…」

 

「ん?ああ…この腕か。喰われたよ」

 

「…なぜそこまでして」

 

「必要だからな…ウェルは何処にいる?」

 

「Dr.はフロンティア内の何処かに…としか」

 

「そっか…ならジェネレータールームはどう行けばいい?」

 

「…相変わらずですね」

 

「言わないでくれ…まぁ…上を目指せばいいのか?」

 

「…ええ、上にはブリッジもあります」

 

「…解った」

 

璃音は制御室にいたナスターシャから必要な事は聞けたので部屋を後にしようと

したが―――――

 

「璃音」

 

「…何だ?」

 

「…マリア達の事を…頼みましたよ」

 

「…善処しておく。約束はできないけど」

 

「ええ、それで構いません…」

 

ゴゴゴゴッ

 

「地震?」

 

「いえ…これはっ。Dr.!フロンティアから月のバラルの呪詛を司る遺跡を起動させれば

月の公転軌道は正常にッ」

 

【そんなに起動させたいならアンタが月に行ってこればいいだろ!?】

 

「…Dr.ウェル…貴方という人はっ」

 

「…何処にいる?」

 

「…上です」

 

「そうか…切歌が世話になった…ナスターシャ教授」

 

「皆、いい子なのです…ただ、選択肢がなかった…私もあの子達に強いてしまった…璃音、さっさと脱出なさい。ここは月に向かって」

 

「…解った。サヨナラだな」

 

「あの子達を…頼みます」

 

璃音は地鳴りがする中、入口から脱出した。

その直後、制御室のある場所が空へと発射された。

 

「…絶対に約束は果たすよ…マム。その為にこの身が人でなくなったとしても…」

 

ブワッ

 

制御室を見上げながら璃音は紫焔を纏う。

片腕だけでなく、背中には紫焔の羽根の様なものが生まれ、神器だけでなく、もう片方の腕も浸食が始まっていた。

 

「…ウェル、貴様だけは絶対に…」

 

そう呟いた璃音は、その場から消え、立っていた場所には焼けた跡が残っていた。

 

 

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