シンフォギア   作:刃狗

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Ex02.追想と温泉。

月の落下を巡る騒動…「フロンティア事変」から数か月…

 

 

「…うわぁ…」

 

「日本のホテルはすごいデース…」

 

「…つーか、ここって政府直轄の施設だろう?」

 

「えぇ、そうですよ?近くに貸切のビーチもあるとか。」

 

「アタシらここにいてもいいのかよ?」

 

「紆余曲折、ありましたが…みなさん頑張ったから、と風鳴司令からの休暇ですし…少しは羽を伸ばせ、という事でしょう」

 

「翼や響たちはともかく…私や調、切歌は…」

 

「それを言ったら私だって…」

 

「おい、それを言ったら男は俺1人だぞ…前線にいたのは…」

 

「マリアさんは国連のエージェントとして、調や切歌ちゃんは友人として、それぞれベストを果たした…なれば、当然の報酬でしょう?未来さんもある種被害者ですし、響さんの友人…侘びのつもりではないが一緒にゆっくりしてくるといいと、司令から言われております」

 

「緒川まで来てんのか…」

 

「えぇ、何かあった時の連絡役に。」

 

「それに…何もしていない、というなら私が一番動いていないと思いますよ?」

 

「ダウト」

 

「えぇ~…」

 

何もしてないと言い張るも即座に全員から否定される歌唄であった。

 

 

「さて…荷物を持ちっぱなしというのもなんだ、部屋割り…ささっと決めちまわね?」

 

「そうですね…では、どうしましょう?」

 

「…私は調とが良いデス!」

 

「2人を離す気はないから安心なさい…クリス、一緒に3人部屋、お願いしても?」

 

「ん?あぁ、OK」

 

ここまではささっと決まったが…残ったメンバーを見てマリアが軽いため息をつく。

 

「はぁ…残りはもう決まってるようなものじゃない…そちらのカップルはそのままだし…」

 

「小日向も立花と一緒がいいだろうしな…というわけで、マリアと私か」

 

「そうみたいね…それじゃ部屋に荷物置いてしまいましょう…その後は各自、自由行動で良いわよね?緒川さん」

 

「えぇ、問題ありません…ですが、20時には夕食をお願いしてありますのでそれまでにはここにお集まりください」

 

 

~たまさか&SAKIMORIの部屋~

 

「雑誌とかの写真では見たことあるけれど…本当に入ることになるとは思ってもみなかったわ」

 

「温泉は日本だけでなく世界各地に点在している…どこもいい湯だというのは聞いたことがあるが…」

 

「その『いい湯』っていうのはどういうことを指すの?」

 

「そうだな…どう表すのがいいだろう…マリアはシャワー浴び終わった後、さっぱりした気分になったりするだろう?ああいうのを指し示す場合もあれば、身も心もリラックスさせるのが風呂というもの…それに対しての最大限の賛辞、という事になるな」

 

「なるほど…では、その『いい湯』であることに期待して、私たちも向かいましょうか」

 

「うむ」

 

 

~カップルの部屋~

 

「さて…荷物はここらへんでいいとして…」

 

「そうね…浴衣、浴衣…私はMサイズだけれど…璃音もMサイズでいいかしら?」

 

「ん、それで構わない」

 

「では、ここに置いておきますね…あの時アヴァロンの光を直にあてたから大方ヒトとしての腕に戻ってますが…璃音、貴方腕の浸食は止まっているだけですから…今はしっかりと休んでおいてくださいね。私は温泉、行ってきます…いつぶりかしらね…温泉などというものに入るのも。」

 

「俺は…緒川でも捕まえてチェスでもしてるわ…」

 

 

~夫婦の部屋~

 

「あー…こんなみんなでわいわい温泉来れるなんて思ってもみなかったよー…」

 

「そうだねー、あんな事になるなんて予想もしてなかったしね」

 

「それじゃ…いこっか、未来!」

 

「うん!」

 

 

~先輩後輩の部屋~

 

「温泉…入るのは初めてデス!」

 

「気持ちいいよ、温泉」

 

「っへぇ…調は入ったことあんの?」

 

「お姉ちゃんとお母さんと…1回だけ。」

 

「そっか…」

 

「でも、本当に小さいころだから…ほぼ初めてだと思ってる。」

 

「あたしも切歌も初めてだしなぁ」

 

「調も先輩もそろそろ行くデース!」

 

 

 

響きや未来たち6人が脱衣所に来た時にはすでに1人分の服が置いてある状態…

 

「あれは…歌唄の服ね…右手の長手袋があるし…」

 

 

――何千の意思が叫ぶ ネガウ 何を喚く? 哭(な)り止まないの 何億の星が 幾度壊れ崩れ消え去っても"抗おうじゃないか、輪廻" 崩れ落ちた四肢を抱いて 歩き出した――

 

 

「それに歌まで聞こえる…」

 

「むぅー…一番乗りできると思ったのにー!」

 

「まぁ、月読の事だ…アイツの動きの突拍子さと迅速さで勝てた者は居ないしな…仕方あるまい」

 

残念がる響とそれを宥めつつさっさと服をかごに入れて入っていく翼

 

「…こんなカゴに服入れておいて、取られたりしないデスか?」

 

「そのために各部屋の金庫に貴重品は入れていくんだよー、ここは貸切状態な訳だから大丈夫だとは思うよ?」

 

もっともな疑問に対し未来も説明を返す

 

「翼さん!景色はいか…が…?翼さん?」

 

そのまま入り口付近で固まってる翼を見てその視線の先に目を移す一向。

 

 

――哭(な)り止まぬ ほしの痕(こえ) 繰り返す あやまちを

ひとひらの 灯火に 願わくば 愛しいひと――

 

 

「あら、皆さんお揃いで…なかなかいい湯ですよ…まずは体と髪の毛をささっと洗ってからお入りくださいね」

 

そういうのは縁に座って足だけで湯に突っ込んでおり、今まさに浸かろうとしていた歌唄の姿…

 

「はぁ~…これが温泉かぁ…」

 

「なんか開放的になるデス!」

 

「…お姉ちゃん」

 

「どうしたの?調」

 

「タオル…お湯に沈めちゃ、ダメ」

 

「あぁ…ごめんなさいね…いつもの癖で…」

 

そういうと右腕にかけていたタオルを外し縁に置く

 

「な…」

 

「ん?……あぁ、これですか?」

 

周囲が絶句している中、右腕を上げてにこりとする歌唄、その右腕はには響の胸と同じような傷が無数にできていた

 

「ズタボロじゃねーか…そんな傷見たことねぇぞ…?」

 

「当然でしょう…ギアを装備すればここは隠れますし、普段から右腕だけは隠してましたしね?」

 

「あの…それって…」

 

「いいところに気が付いたわね、響さん…そう、私の胸にカリバーンの破片が食い込んでるのはみんな知ってのとおりでも、私の場合、胸だけじゃなくて右腕全体と頭にも食い込んでるのよ…いわゆる響さんの大規模バージョンね…(右腕にはもう1つあるけれど…まぁ、今はいいでしょう…

持ってるのを知っているのは璃音と風鳴さん…翼のお父様しか知らないでしょう…OTONA達にはばれてるとは思いますが…どこに内包されてる、などは絶対わからないでしょうから)」

 

「(お姉ちゃん、あれ隠してる…なぜ…?)」

 

「だ、だが検査では浸食の影響もなかった…」

 

「えぇ…そうね…それも含めて…どこから話しましょうね」

 

「お姉ちゃん…イギリスのあの場所でどうなったの?」

 

「イギリス?お前イギリスにいたってのか?」

 

調から歌唄への問いかけに驚くクリス

 

「では、そこから話しましょうか…私達の一家はイギリス旅行中だったの…私も調もまだ物心つくかつかないかの頃。…そこで私たちはフィーネの遺伝子を持つ者を集める”レセプターチルドレン”として目を付けられていた調の「招集」の為にFISから襲撃を受けたわ…表向きは博物館襲撃事件と呼ばれた事件よ…両親は即死、私もカリバーンの破片で致命傷、調はFISが「招集」していった…私はその後彷徨っていたところを…翼さんのお父様に助けていただきました」

 

「司令から聞いたことがある…表向きは博物館襲撃事件と呼ばれてはいるが…その実は聖遺物の強奪、と聞いていたが…」

 

「えぇ…実際その事件にて聖遺物 "カリバーン" は粉砕、完全聖遺物である神造剣"エクスカリバー"とその鞘"アヴァロン" がロスト…FISの管理下にあるもの…と、思われていたわね…私達「フィーネ」ではその事実は否定していたけれど。」

 

「だが、それらは…」

 

「はい、私がすべて保有してますよ…私が今こうして生きていられるのもアヴァロンのおかげですし…」

 

「それって…」

 

「確か伝承では…その盾はある意味絶対防御のシンボル…そして、それは持つ者を不死にする…」

 

「えぇ…ですが不死…というわけではないでしょう…死ぬよりも早く体細胞を活性化、修復する効果を発揮します。私は無尽蔵なエネルギー生産機関…エクスカリバーと、それの制御をするために収められていたアヴァロンを丸ごと内包、致命傷でも再生してしまったの。私が検査で何も引っかかっていないのも響さんが苦しんでいた浸食作用が起きるよりも早く体細胞が再生してしまっているんですよ…さらに…その効果は自身にだけ適用されるわけではないのがこの盾の特徴ですね…その光を浴びたものですらその恩恵を受けられるのですよ」

 

「じゃぁ…璃音さんの言ってた治療って…」

 

「はい、浸食されるよりも早く体細胞を修復していたのです」

 

「了子さんとの戦いのときも…」

 

「あれは…まぁ、そうですね…聖遺物を3つも内包してるが故に私についた特性の影響もありますが…どうやら私は他者の歌を受けて、その効果を何百倍にも増幅する音叉の役目を果たせるようにもなってるみたいで…

それに込められた想いと共にアヴァロンの能力を無意識に増幅していたようで…だからクリスも翼さんも復帰した上にエクスドライブまで起動したのでしょうね」

 

「しかし…あの時点ではまさか月読まで奏者だとは思わなかったぞ…いきなり聖詠を奏で始めたからな」

 

「…ふふ…実は響さんとクリスには何度かギアを装備した状態であってますよ」

 

そういって笑う顔をよそにハッとするクリスと響。

 

「やっぱりか…お前のギア、どこかで見たことあると思ってたんだが…アタシがフィーネの下で動いてた時に出したノイズを片っ端から消していってたのは…」

 

「私も…地下鉄構内で私を助けてくれたギアに似てると思ってたんだけど…あの時バイザーで顔がよくわからなかったから誰かと…」

 

「はい、両方とも私です。あの時は司令にすら私の中にギアが内包されてることを知らせるわけにもいかなかったから…聖詠の際に出るカリバーンのアウフヴァッヘン波形をアヴァロンとエクスカリバーから出るそれぞれの固有波形で乱して特定出来ないようにしていたの…でも、世界の危機にそんな隠ぺいしてられなかったから…」

 

苦笑する歌唄に対し、溜息を吐く翼

 

「どおりで司令が困惑していたわけだ…」

 

「聖詠を聞いたとき、キーンって音がして途中から聞こえなかったのもそれが原因…」

 

「そう思っていただければ…まぁ、終わったことですし…ようやく肩の荷が下りた気がします…」

 

「ねーちゃん…(ボソッ」

 

「ねーちゃん、か…ふと気になったんだけどよ?」

 

「クリスちゃん?」

 

「歌唄と調って姉妹じゃねーか…確かに雰囲気にてるけれど…なんでそこまで発育ちg…ムグググ」

 

「セ、センパイそれ言っちゃダメデス!」

 

慌てて口を塞ぎにかかる切歌…だか、時すでに遅し…

 

「は、発育って…ん?どうしたの調?」

 

調の視線が皆の一部を凝視しては次を見ていく…それを受けてキョトンとする者もいれば隠す者も…それを見て歌唄もようやく理解する…調が気にしていたこと。

 

「し、調…?」

 

「同年代の切ちゃんですらあるのに…私だけ…」

 

そういうと鼻下までブクブクと沈んでいく

 

「なるほど…一番発育良いクリスがそれ言っちゃうのねー…」

 

「そ、そういう意味じゃねーっての…ただ、その…ちょっと気になっただけで…」

 

「どーせまた板のナインペタンですよー…(ブクブク」

 

「誰もそこまで言ってないでしょって…あらら…頭まで全部お湯はいっちゃいましたよ…調?そのままだとのぼせちゃいますよ?」

 

あやすかの如くそのままポンポンと頭をなでる歌唄

 

「しかし…調…そこまでコンプレックスに感じていたのね…私はみんなより頭1つ年齢上だからあれだけれど…」

 

「さらりと年上だから仕方ない発言してもこの場合羨望の対象からは抜けられないと思いますよマリアさん…とりあえず、クリス?」

 

「う…(ヤベェ…スイッチ入ったかコレ…」

 

「な、なんか寒気が…」

 

「ね、ねぇ未来?温泉浸かってるのに寒いんだけれど…ここ水温低かったっけか…?」

 

「響…今は静かにしておこう…?」

 

絶対零度のオーラを出した笑顔でクリス相手に凄む歌唄に各々が慌てる

 

「ねーちゃん、とりあえず落ち着いてほしいデス…先輩も悪気あったわけじゃないデス!」

 

「そうかもしれないですけれど…「きゅ~…」あら?」

 

声のした方を向くと…茹で上がった調の姿()

 

「ちょ、ちょっと調!?ど、どうしたら…」

 

「…だから言ったのに…ってこうしてる場合じゃないわよね…切歌に未来さん、ちょっと手伝いお願いしてもいいかしら?」

 

「あ、はい…」

 

「とりあえず切歌は調の着替えのとこからバスタオルを、未来さん、緒川さんと璃音に布団と氷嚢の用意をお願いしてください」

 

「わ、わかりました!」

 

「すぐ行ってくるデス!」

 

心配するマリア、的確に指示を出す歌唄

 

「クリスは…後でOAHANASHI、しましょうね?」

 

「うげー…」

 

そのまま調べを抱き上げるとさっと上がっていく歌唄、ついていく未来と切歌…そしてぼやく響

 

「…もしかして…シスコンなのかな…」

 

「いや、あれは過保護という奴…いや、家族想いなのだろうな…というかシスコンって立花、今の月読には火に油だぞ?」

 

 

その後、ロビーにて未来に調の介抱をお願いしている間にクリスを正座させて説教している歌唄の姿があったとか。

 

 

「おい、歌唄」

 

「どうしました?璃音」

 

「その辺にしてやれ…コイツ以前俺が正座させたことあるんだ…さすがに堪えるだろう…」

 

「そうでしたか…ではこの辺にしておきましょうか」

 

「この辺…って、お前もうすでに小一時間経つぞ…」

 

「身から出た錆…といったところでしょう?」

 

そういうとそのまま自身の部屋に直行する歌唄。

 

「あ、未来さんありがとうございました、代わりますよ」

 

「あ、はい…調ちゃん大丈夫でしょうか…」

 

「頭まで浸かってたから…ちょっと湯だりすぎちゃってるかなぁ…とりあえずありがとうございました」

 

笑顔で見送ると改めて調のそばで布団をかけ直す…よく見ると所々に細かい傷跡が。

 

「こんな傷だらけになって…守ってあげないと行けない立場なのに…情けない」

 

「お姉ちゃ…ごめんなさい…」

 

「!?」

 

「弱いばっかりに…未熟なばっかりに…」

 

「この子…」

 

「ごめんなさい…」

 

「寝言でまで…もぅ…謝らなくてもいいのよ…妹は姉が護るもの…今はゆっくりおやすみなさい」

 

調の目に光るものを見た歌唄は頭を撫でて手を握り、そのままあやすように一緒に横になる…

 

「調~?お夕飯デs…にーちゃん、そっとしとくデース…」

 

「おい、歌唄…メシ…はぁ、しゃーねーか…」

 

様子を見に来た璃音切歌兄妹もそっとしてUターンしましたとさ…

 

翌日目を覚ました調が寄り添うように寝ていた歌唄を見てびっくりして固まっていたのはまた別のお話。

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