「コレは…世界を敵に回すという事ですかね…翼さんっ」
「月読?!何故ここにっ」
「話は後で…アレは…」
「…間違いない、ガングニールだ」
「…確かに奏さんや響さんの持つガングニールでさえ欠片…複数あっても可笑しくはないですが…」
「そうだな…さしあたっては、国土の割譲を要求しようか」
マリアの言葉に翼は驚きを隠さず―――――
「馬鹿なっ」
「24時間以内に要求が通らなければ各国首都機能がノイズによって不全となるだろう」
「っ」
「…貴方」
「?私、ですか?」
「そう…貴方、名前は?」
「…月読 歌唄です」
「月読 歌唄…ですって?」
「…貴方とは初対面のはずですが?」
ドォォォンッ
「何だっ!?」
突然の轟音と煙で視界が塞がれるマリアと翼と歌唄。
そして、煙が晴れて行き―――――
「…数年で、えらく変わったな…久しぶりと言うべきか?"マリア"」
ステージの中央には黒いパーカーを羽織った金髪の青年が立っていた。
その手に剣を手にして。
「何処かで会ったかしら?」
「ああ…そうか…処分廃棄された事になってるんだったな」
「処分廃棄?一体何を…」
「お前と少しだけ面識があるが…数年前、あの白い空間の中で」
「…白い空間…っ、貴方…まさか…でも、彼は死んで…」
「そうだな…LiNKERを過剰投与してなお適合しなかった…だから実験するだけして処分廃棄される処だった…あの研究所から神器を持ち出し逃げたがな」
「…なら…貴方は」
「ああ…だから言っただろう?久しぶりだな…と」
「…貴様は何者だ?」
「…俺は暁 璃音。F.I.S.出身の神器使いだ。よろしくな、風鳴一族のアイドルさん」
「っ、貴様、何処まで知って―――――」
「そんな事はどうでもいいさ…なぁ、マリア。アイツh―――――」
ドォォォンッ
「っと、介入者か?」
「マリアッ」
「危機一髪デース」
「…イガリマとシュルシャガナか…流石に3人相手はキツいな」
「マリア、大丈夫?」
「え、ええ…大丈夫よ、調、切歌」
「コイツも適合者デス?まぁ、敵なら倒すだけデースッ」
「あ、切歌っ」
緑色の鎌を手に、切歌と呼ばれた少女が璃音へと突っ込むが―――――
「デェェエエスッ」
ブゥンッ
「…大きくなったな…切歌」
ピタッ
「…お前、誰デス?」
「…暁 璃音…っていえば解るか?」
「…う、嘘デスよ…だって…だったら誕生日を知ってるはずデース」
「4月13日だろ?マリアは8月7日だったはず」
「……生きてるならどーして連絡してこなかったデスか!?」
「出来る訳ないだろ…あの研究所に戻ったらモルモットが関の山d―――――」
「…にーちゃん?どーしたデスか?」
「切歌、離れなさいッ!」
ドォォォンッ
「…何が…どうなってるデスか!?」
「切ちゃん…あの人」
「切歌の兄…暁 璃音よ。そして…あの後ろにいる黒髪の女性が…」
「っ……お姉…ちゃん?」
「―――――。」
黒髪の少女の言葉に歌唄は無言でサムズアップしていた。
「くそ…ったれ。こんな時に…時間切れ、か」
璃音は剣を手放し、その場にうずくまる。
「にーちゃんっ」
「マリ、ア…引け…」
「で、でも…」
「いいから、引けっ…」
璃音の言葉にマリアと調、切歌が撤退を開始するが―――――
「翼さんっ」
「どうなってんだ!?」
「立花…それに雪音も」
カチャッ
「ッ」
ギィィンッ
「―――――。」
「…中々の速度…というより、人間のレベルではないですね」
「月読っ」
キィィン
「っとと…一撃を受け止めれただけでも十分ですね…」
歌唄がマリアの投げた杖状のマイクを拾っており、それで璃音の斬撃を受け止めた。しかし、マイクと剣では耐久性の問題である。その為、弾かれると同時にマイクは真っ二つになった。
「調」
そこに響き渡った声に、調と呼ばれた少女が反応した。
「…何?」
「そこの子は…お友達?」
「…うん。大切な、家族」
「…そう。切歌ちゃん、だったかしら?」
「デェス?」
「この人…お兄さん、で合ってる?」
「そうデースッ」
「了解…ならこの人は私が止めるから、貴方達は撤退しなさい」
「で、でもっ」
「Briah―――――」
璃音が空間の歪みに剣を突き刺し、引き抜くと―――――
「…剣が、変わった?」
「アレも聖遺物だっていうのか!?」
「いえ…聖遺物であれば本部から連絡が来るはずです…となれば、聖遺物ではないモノ…しかし、聖遺物に近いモノ、と言う事でしょう。仕方ないですね―――――」
―――――Bluhen Sie ungelegen Caliburn tron―――――
歌唄が聖詠を詠い、自身が保有する聖遺物であるカリバーンを身に纏う。
そして聖遺物の起動に、璃音はターゲットを歌唄に絞る。
そしてカリバーンを纏った歌唄の右目が金色に変化し、白色と灰色を基調とした鎧を纏い、右手には1振りの両刃剣が握られていた。
「歌唄さん!?」
「ここは任せてください…とりあえず、響さん達はノイズの方をお願いします」
「わ、解った!」
翼とクリス、響の3人は会場にいるノイズを片付けに向かい、ステージ中央で歌唄と璃音は向き合う。お互いに獲物を手にして―――――
ガキィィンッ
「化け物じみた速度ですね…それもその腕輪の力ですか?」
「…ニ…ゲロ」
「まさか…そう言う訳にもいかないので…とりあえず、止めさせてもらいますね」
璃音の言葉を否定し、何度か打ち合っている時、近くで膨大なエネルギーが
溢れだす。
その中心に居たのは響達であった。
「S2CA―――――トライバーストッ」
―――――Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolonzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurate edenal Emustolrozen fine el zizzl―――――
「スパーブソング!」
「コンビネーションアーツ!」
「セット!ハーモニクス!」
「―――――。」
「っと、行かせませんよ?」
「―――――。」
「理性がない…というより、時間切れと言ってましたし…(F.I.S.出身でLiNKERって言ってたから…LiNKERの効力切れ?)ま、これぐらいであれば―――――」
―――――カランカラン…ドサッ
「…ふぅ、とりあえず、止めれましたね。弦十郎さん」
【どうした?】
「このフードの人、回収をお願いしても?」
【…解った。すぐに人員を送る】
「お願いしますね」
歌唄は璃音の持つ剣の刀身をへし折り、気絶させた後、弦十郎と呼ばれる人に連絡を入れ、璃音の回収を頼んだ。
「コレが私達の―――――絶唱だぁぁぁぁああっ!」
ドォォォンッ
「…凄まじいですね」
目の前で猛威を振るう圧倒的な威力の技。
S2CAトライバースト―――――装者三人の絶唱を響が調律し、ひとつのハーモニーと化す。それは手を繋ぎ合う事をアームドギアの特性とする響にしかできない。だが、その負荷は響一人に集中する―――――という技である。
その一撃で会場に居たノイズは全て消滅した。
そしてそれを会場の外で見ていたマリア達―――――
「な、なんデスか!?アレは」
「綺麗」
「…あんな化け物も…私達の戦う相手―――――ッ」
それを見届けた後、マリア達は撤退し、歌唄達は―――――
「翼さん」
「緒川さん、どうかしましたか?」
「司令から言われてきたんですけど…」
「ああ、この人をお願いします」
「この人…ライブ前の」
「聖遺物ではないにしろ、ノイズを倒せる力を持っていましたから…
一度、本部で調べるのがいいかと…それに、LiNKERが投与されてる可能性もあります」
「…解りました。では急いで戻り、検査させてみます」
そうして璃音は緒川に抱えられ、会場を後にする。
「…さて、私達も戻りましょう」
歌唄も撤退の際、へし折った剣の刀身を手に、会場を後にした。
そしてそれを影で見ていた人物が1人―――――
「…あの神器を動かした人間が生きていて、更にカリバーンを見つける事が出来るとは…」
白衣を翻し、行方不明になっているソロモンの杖を手にした男、ウェルがそこには居た。
そして―――――
「司令」
「緒川、彼の結果は?」
「検査結果になります」
「…コレは」
「検査の結果、彼には過去にLiNKERの過剰投与が見受けられ、腕には
F.I.S.が保有していたとされる神器と呼ばれるモノが付けられていました。こちらは取り外しが出来ないそうで…外すとなれば腕ごとになるそうです」
「そうか…連中の方は?」
「あの時のやり取りを見る限り、彼は連中と知り合いで、歌唄さんの妹さんが敵側にいる…ということになります」
「まだ目覚めていないのか?」
「はい。気絶しているだけなので遅くても明日には目が覚めるだろうと」
「そうか…翼達は?」
「翼さん達であれば帰路に…歌唄さんは彼の所にいます」
「彼女は彼とは面識がないんだろう?」
「はい。でも妹であろう子が敵で、歌唄さんの妹の事も知ってるのではないかと…」
「…ま、歌唄君なら大丈夫だとは思うが…」
「一応部屋の外に二人配置してはいますから」
「そうか…ま、話は彼が目覚めてから…だな」
璃音が目覚めたのはライブの翌日の朝だった。
「……はぁ(部屋の外には監視付か…面倒な事になったな。また暴走する前にLiNKERを打たないとだが…)」
シュンッ
「目が覚めたか」
「…誰?」
「人に名前を聞くときはまず自分から…親から習わなかったか?」
「物心着くころには研究所に連れて行かれてたからな…暁 璃音」
「そうか。璃音か。俺は風鳴 弦十郎だ。キミには色々と聞きたい事があるんだが…」
「それは聴取か?それともF.I.S.にでも売り払うか?」
「…個人的な事を聞きたいだけだ。その腕輪についてもな?」
「…Briah―――――」
「…なんだ、それは」
「コレが神器…この腕輪の力って所だ。一応ノイズ程度であれば負けないが…聖遺物相手はちと分が悪いな」
「…聖遺物ではないのか?」
「俺は過去にLiNKERの過剰投与をされたが係数はかなり低かった…まぁ、男だから、だろうが。それでも中々に死なないからモルモットにされ…適合者が見つかったら処分廃棄される処で…神器を持って研究所から脱走した」
「F.I.S.か…確か、ウェル博士m―――――」
「ウェル、だと?」
「知っているのか?」
「それはこっちのセリフだ…あいつは今何処に居る?」
「…昨日、ソロモンの杖を護送した後、ノイズに襲われ行方不明だ」
「…ちっ」
「…ウェル博士と何やら因縁があるようだな…」
「アイツはこの手で殺す…絶対にだっ」
「殺すとは穏やかじゃないな…」
「アイツはレセプターチルドレンをモルモット程度にしか思ってないかったんだよ…F.I.S.が保有する聖遺物の適合者…シンフォギア装者を見つける為だけに妹まで巻き込んだ…だから殺す…絶対に。神器の影響でLiNKERを定期的に打たないと暴走してしまう事になってるけどな…」
「LiNKERが必要なのか?」
「ああ…」
「定期的に…とはどれぐらいだ?」
「月に2,3回だな」
「そうか…ならそれはコチラから提供しよう」
「…何をしろと?」
「こちらの事をある程度知っているんだろ?」
「…アンタが風鳴機関を前身とした組織の頭…ってか?」
「…そこまで知ってるのか。ならこちらからはその辺りの情報の口外を禁止してもらうという頼みの報酬としてLiNKERを定期的に提供する…それでいいか?」
「…ま、いいか。それで…調に似た奴が居たな…黒髪の」
「歌唄君の事か?彼女なら―――――」
シュンッ
「あ…弦十郎さん。ここに居たんですね」
「歌唄君か、丁度いいところに」
「はい?」
「アンタ…調の姉か?」
「…そう、ですね」
「そうか…どうにもこの一件…ウェルが絡んでそうだな…」
「ウェル博士は行方不明だぞ?」
「アイツが護送してたんだろ?」
「ああ」
「なら、ソロモンの杖とやらを隠すのもできた訳で…それを使ってノイズを襲わせて行方をくらますことも出来るって訳だ…つまり…」
「ウェル博士は生きていて、ソロモンの杖を所持し、ノイズを操っていると?」
「多分だけどな…可能性の1つではある」
「…一応、頭の隅には入れておこう。それより歌唄君…何か用があったのか?」
「ああ…彼の剣をへし折ったので…刀身はそこに置いてますし…一応謝罪に」
「…アンタが止めたのか…別に気にしないでいい…修理すれば使えるしな…」
「…月読 歌唄です。アンタと呼ばれるのは不快ですので」
「そうか…じゃ、歌唄で。後、歌唄が怪我してないならそれでいい」
「何故?」
「コイツは俺の目的の為の力だ…ウェルを殺し、ノイズを狩る以外…
誰かを傷つける為に手に入れた訳じゃないからな…」
「そうだな。男が女を傷つけたら痛い目みるからな?」
「…経験者か?」
「違うが?」
「…まぁいい。しかし、璃音。くれぐれも口外するなよ?」
「解ってるよ…約束は守る…それで、歌唄は謝罪に来ただけか?」
「…F.I.S.出身なら…調の…妹の事を知ってると思って」
「知ってると言っても…あまり話す機会はなかったから顔見知り…程度だけどな…妹の切歌とは仲良かったのはよく覚えてる…だから、だろうな」
「何がだ?」
「イガリマとシュルシャガナの適合者があの二人だって事に…だよ。
あの2振りは女神ザババの使ってたとされる武器だからな」
「詳しいんだな?」
「聖遺物とは神話に名を残す武器等である事が多いからな…一度調べた事があるだけさ」
「…ま、後は若い二人に任せて大人は退散するか。あ、そうだ。歌唄君」
「はい?」
「彼の監視…キミにしてもらう事になるからな」
「何故ですか?監視なら付いているのでは?」
「…彼が暴れた時、止めれるのはキミぐらいだと判断した。これは司令命令だからな?頼んだぞ」
そう言い残し、弦十郎は去って行き―――――
「…面倒事は起こさないでくださいね?」
「はいはい…監視付いて、LiNKERが切れかけてるんだ。何もできねぇよ」
そう言って璃音はベットに横になった。
「あ、それと…言い忘れていたが」
「…まだ何か?」
「歌唄君、キミには来週からリリアン女学院に編入してもらうからな。制服などは誰かにもっていかせる。ではな」
弦十郎は要件を伝えると即座に去って行った。
「…学生、ですか」
「…歌唄、いくつだ?」
「…あまり女性に年齢を聞くのはアレですけど…今、17です」
「同い年か」
「…貴方、名前は?」
「そういえば名乗ってなかったな…暁 璃音だ」
「…では、璃音と」
「好きにしてくれ…そういえば、ここに居るって事は歌唄も装者なのか?」
「ええ…カリバーンの装者になります」
「…コレまたエライものが出て来たな…ま、主神の槍に女神の刃、草薙剣とか色々あるしな…カリバーンって言ったらアーサー王の選定剣だったな」
「ええ」
「…ま、聖遺物は色々あるからな…驚きはしたが、あるんだろ…」
「…貴方のその腕輪…神器、でしたか?」
「ああ…聖遺物ではないがな。だが戦う力ではある」
そう言って璃音は腕輪を撫でる。
その時の顔は神器に絶対的な信頼をしている表情だったと歌唄は後に語った。
そして、神喰の力を宿した青年(璃音)と奇跡を纏う女性(歌唄)が出会った事で物語がどうなり、どういう結果をもたらすかはこの時、まだ誰にも解らない。