シンフォギア   作:刃狗

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02.明確な敗北と―――

ライブ襲撃でのフィーネの登場から早1週間―――――

何事も起こらず、ただただ時間だけが過ぎていた中…

 

【風鳴司令】

 

「緒川か。どうした?」

 

【ライブ会場付近に乗り捨てられていたトレーラーの入手経路から遡っているのですが…辿り着きた場所が…この反社会的なこちらの方々は2ヵ月前から医療機器や薬品等に資金洗浄として体よく使ってたみたいなのですが―――――】

 

【緒川、こっちは終わった】

 

【ああ、どうでした?そっちは】

 

【何もないな…医療関係のモノが発注されてるならその搬入先も調べれば解るだろ】

 

【この記録…気になりませんか?】

 

「…追いかけてみる価値はありそうだな。そのまま継続して情報収集に当たってくれ」

 

【了解です。しかし…楽ですね、彼が一緒だと】

 

「…璃音、やりすぎないようにな?」

 

【わーってるよ…《このガキィッッ》はぁ…《ドサッ》…これも妹達を見つける為だって割り切っておくよ】

 

そうして情報収集をしていた緒川と璃音からの通信が切れ、弦十郎は溜息をついた。

 

「司令、良かったんですか?あの子を自由にさせて」

 

「まぁ…殺しはしない約束だからな。それに、体を動かしたいと言ったのは向こうだ」

 

「…体の良い雑用ですね」

 

「本人は気にしてないみたいだけどね?」

 

璃音が情報収集を手伝わされている中、歌唄はというと―――――

 

「えー、今日から編入になった月読 歌唄さんです」

 

「初めまして…月読 歌唄です」

 

弦十郎の言葉通り、リディアン女学院へと編入していた。

そして、朝のHR後―――――

 

「クリスさん」

 

「てめぇもおっさんの指示か?」

 

「ええ、まぁ…」

 

「そうかい…お互い、大変だな」

 

「…響さんからは意外と馴染んでいると聞いてましたけど」

 

「なっ…あのやろぉ…」

 

「えっと…月読さんと雪音さんって知り合いなの?」

 

「ええ。少し前からですが」

 

「そうなんだー」

 

編入してきたと言う事もあり、歌唄はクラスメイト達に囲まれていた。

そして、歌唄はクラス中から質問攻めにあう事に―――――

 

その頃―――――

 

「…調、まだアイツの事を?」

 

「何にも背負っていないアイツが…人類を救った英雄だなんて…私は認めたくない」

 

「で、でも…調のおねーちゃんも」

 

「……。」

 

「本当にやらなきゃならない事があるなら悪いと解っていてもやり通さないといけない事g」

 

キュッ―――――ガンッ

 

拠点にてシャワーを浴びていた調と切歌。

切歌の言葉を遮る様に調はシャワーを止め、目の前の壁を殴った。

 

「困ってる人達を助けると言うなら…どうして」

 

「それでも私達は私達の正義とヨロシクやっていくしかない…迷ったり振り返ったりする時間なんてもう…残されていないのだから」

 

「マリア…」

 

「それに…」

 

「それに?」

 

「…璃音が生きてて、ノイズを倒す力を持ってる…私達の敵…切歌」

 

「…にーちゃんと…戦う、デス?」

 

「それが必要であればね…切歌、貴方は…」

 

「戦う…デスよ」

 

「…そう。璃音も戦闘能力は高い方だから…」

 

「…全部が終わった時、にーちゃんに怒られるかもデスが…やるって決めたデス」

 

「切ちゃん…」

 

「調のおねーちゃんだって…装者デスし…」

 

「…戦う」

 

璃音と歌唄が敵側に居る以上、激突は免れないのだが、2人もまた、戦う事を決意していた。

それと同じ頃―――――

 

「っくしゅんっ」

 

「璃音さん、風邪ですか?」

 

「いや、大丈夫だ…しかし、忍者ってのもいるんだな。本当に」

 

「それを言ったら璃音さんこそ、人間じゃないじゃないですか」

 

「それは神器の影響だからな…しっかし、全然情報ねーな」

 

「まぁ、そう簡単に見つかるものではないですからね…」

 

ボキッ

 

「ぎゃぁぁぁっ」

 

「うわぁ…加減してねーだろ、ソレ」

 

「してますよ?まぁ、反社会的な人達ですから多少はアレですけど。っと、璃音さん」

 

「あいよ…斬っていいのか?」

 

「扉だけですよ?」

 

「へいへい…ふっ」

 

キンッ

 

「お見事です…コレはまたすごい額ですね」

 

「ざっと億はあるか…よくこれだけため込んだな…」

 

「まぁ反社会的な人ですから、資金源はかなりの物でしょうね…勿論、非合法の」

 

「ま、いいけどさ…」

 

緒川と璃音はそんなやり取りをしながらもフィーネの情報を追いかけて行った。

そしてその日の夜―――――

 

「ふぁぁぁ…ねみぃ」

 

「璃音、てめぇなんでここにいんだよ?」

 

「おっさんにコキ使われてるんだよ…LiNKERを提供してもらってるからな」

 

「後ろからバッサリ…なんてことはやめてくれよ?」

 

「解ってるよ…しっかし、人の気配がないな…搬入してるって話だし人は少人数…切歌達が隠れるなら持ってこいって訳か…」

 

【すいません、明日も学校があるというのに夜間の出撃を頼んでしまって】

 

「いえ、これもSAKIMORIである私達の役目ですから」

 

「…緒川、少々暴れてもいいんだろう?」

 

【施設ごと破壊しないのであれば構いません。どうせ破棄された施設ですから】

 

「解った…Briah―――――」

 

璃音は許可が出た事で空間から神器を取り出す。

しかし、刀身は見たことのないものだった。

 

「な、なんだ…そのでけぇ剣は」

 

「普段使ってるのは短い刀身だからな…たまに使わないと鈍る…」

 

「璃音、貴方は刀身をいくつ持ってるんですか?」

 

「数えてねぇけど…10本ぐらいか?全部バラバラだけどな…いくぞ」

 

璃音を先頭に、装者一同が病院内へと足を踏み入れた。

そこには紅い霧の様なものが充満しており、廃棄された病院と言う事もプラスしてかなりの雰囲気になっていた。

 

「うへぇ…」

 

「なんか雰囲気出てますねー…」

 

「どうやら早い出迎えの様だぞ」

 

翼の言葉に一同が警戒を強めると、通路の奥からノイズが現れた。

 

―――――Bluhen Sie ungelegen Caliburn tron―――――

 

―――――Balwisyall Nescell gungnir tron―――――

 

―――――Imyuteus amenohabakiri tron―――――

 

―――――Killiter Ichaival tron―――――

 

装者達はシンフォギアを纏う。

 

「…暁、貴様何故後ろを向いている?」

 

「なんでもない…(コレ、聖詠だったか?を唄うのは良いが…まぁどうでもいいか)」

 

「璃音」

 

「何?」

 

「前、お願いしますね?(そう言う処はしっかりしている様ですね)」

 

歌唄は何故璃音が後ろを向いていたか理解しているためか、璃音を前に出させる。璃音は肩に剣を担ぎ…ノイズへと突っ込んだ。

 

「せぁぁあっ」

 

ドォォォンッ

 

「…あんな馬鹿でけぇ剣をあんなに簡単振り回してやがる…」

 

「私達も戦おうっ」

 

「そうだな。暁1人にさせる訳にもいくまい。立花は雪音のフォローをしてやってくれ。懐に入られない様にな」

 

「はいっ」

 

「では…(若干、体が鈍い感じがしますが…この紅い霧の様なモノのせいでしょうか?)」

 

歌唄は自身の体に違和感を若干感じながらもノイズを倒していく。

そして、数分後―――――

 

「はぁ…はぁ…」

 

「もうへばったか?(…ここに来てからやけに体動きが鈍くなってきている気がするな…この紅い霧が影響してるのか?)」

 

「誰がっ…っ」

 

「雪音っ」

 

「なんで…こんなに手間取るんだっ!?」

 

「っ…ギアの出力が下がっている…」

 

「皆、気を付けてッ」

 

ドンッ

 

「はぁぁぁっ」

 

ザシュッ

 

「なっ…アームドギアで迎撃したんだぞ!?」

 

「どうして炭素と消滅しない!?」

 

「ノイズじゃ…ない?」

 

パチパチパチッ

 

「っ」

 

「え!?」

 

「ウェル博士!?」

 

「意外に聡いじゃないですか」

 

ノイズではないナニかの奥から現れたウェルに一同は驚愕していた。

そして、璃音は―――――

 

「…やっと、見つけた」

 

「ん?何処かでお会いしましたか?」

 

「…てめぇにとっちゃ俺らはモルモット程度でしかないんだろうさ…ウェル」

 

璃音はそう言ってフードを外し、金髪を晒した。

 

「…貴方、あの時の男の子ですか…しかも、神器を正常に稼働させているとは…」

 

「ウェル博士と璃音は知り合いなのか…?」

 

「ええ、私がF.I.S.に所属していた時に聖遺物の適合者を探す実験で集められた子供の1人がそこの彼です…まぁ、聖遺物の起動には至らなかったものの、神器を動かしたとなれば素晴らしいです…どうです?私と共に来ませんか?」

 

「断る…てめぇはここで…」

 

「博士、どうして…?だって、博士はっ」

 

「タネを明かしてしまえば簡単な事です…あの時既にアタッシュケースの中にソロモンの杖はなく、コートの内側に隠し持っていたんですよ」

 

「…自分で操作し、ノイズに自分を襲わせる芝居を打ったと言う訳か…」

 

「バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し、制御できるのはこのソロモンの杖を置いて他にはありませんからね。そして、この杖の所有者は今や自分こそが相応しい!そうは思いませんか?」

 

「っ…思うかよッ!」

 

クリスは吠え、腰のユニットからミサイルをウェルへと放つ。

 

「ぐあぁぁああああっ」

 

「雪音!?」

 

ドォォォンッ

 

「逃がさねぇぞ、ウェル!」

 

ドォォォンッ

 

クリスが放ったミサイルによる煙が充満する中、璃音は手にしていた銃をぶっ放した。その衝撃で、病院の一部が吹き飛び、一同は外へと出る―――――

 

「…どうしてこっちがズタボロなんだよ」

 

「(適合係数が低いこの状況で出力の高い技を使えば…ギアからのバックファイアでギアに殺されかねない…)」

 

「流石に神器を動かせる化け物相手だと大変ですね…ここは引きますか」

 

「逃がすかよッ」

 

「璃音っ」

 

「ノイズがさっきのケージをっ」

 

翼が空を飛ぶ、ケージを持ったノイズを追いかけ、響達はウェルの確保を行った。その後、ノイズは撃墜したものの―――――

 

「…時間通りですよ、"フィーネ"」

 

「フィーネ…だと!?」

 

「フィーネとは我々組織の名であると同時に彼女の2つ名でもあります」

 

「そ、それじゃ…あの人が」

 

「新たに覚醒したフィーネですよ」

 

「…マリア」

 

「…いるのでしょう?調」

 

「…お姉ちゃん」

 

「にーちゃん、ヘロヘロになってるデス…」

 

「切歌…戦うつもりか?」

 

璃音は、剣を持ち上げ、切歌と調へと向ける。

 

「っ…た、戦うデス。にーちゃんに怒られるとしても、自分にも譲れないものがあるデスッ!」

 

ジャキンッ

 

「…そうか…ごほごほっ」

 

「にーちゃん!?」

 

「ちっ…時間切れか…」

 

「璃音、下がっててください。その状態で聖遺物相手はキツいのでしょう?」

 

「……。」

 

パァンッ

 

「ッ」

 

「…に―…ちゃん?」

 

「ウェル…て、めぇ…」

 

「流石にその状態だとキツいみたいですね?化け物」

 

「お前、にーちゃんになにしやがるデスか!?」

 

「コイツにはアンチLiNKERが効果てきめんですからねぇ…暫くは動けない様にしておかなければ計画に支障をきたす可能があります。安心してください、死にはしないですよ…多分ね。コイツが衝動に耐えきれれば神器に喰われずに済みますから」

 

「…クソ…ッタレ…てめぇ…だけ、は…絶対に…殺s―――――」

 

適合係数を引き上げるLiNKERと適合係数を引き下げるアンチLiNKER。

定期的にLiNKERを投与しなければいけない璃音にとって、アンチLiNKERを直接撃ち込まれると言うのは、死へ近づく、と言う事と同意義であった。

 

そしてそんな璃音を回収しようと近づいた切歌だが―――――

 

「っ」

 

ドォォォンッ

 

「やらせるかよっ」

 

「このっ…」

 

【貴方達、撤退なさい】

 

「マム!?で、でもっ」

 

【貴方達もLiNKERを過剰付与しているのです…ここは指示に従いなさい】

 

「…解ったデスよ」

 

切歌はそのまま、調と共にウェルを回収し、撤退していく。

マリア達を回収にきたヘリは全員を収容した後、その空域を離脱しようとして―――――

 

「ソロモンの杖を返しやがれ…っ」

 

クリスがイチイバルの狙撃モードで撃墜しようと試みるが、ロックと同時に目標をロストした。

 

「なん…だと?」

 

【…目標、ロストしました。サーチャーにも反応がありません】

 

【…今からそっちに迎えを寄越す。歌唄君は璃音を頼む】

 

「了解です。(調…必ず貴方達を縛る鎖を断ち切って見せる…だから、それまでは)」

 

ソロモンの杖は奪取され、響達は完全にフィーネに敗北した。

そしてその日の夜、二課の一室で―――――

 

ガッシャーンッ

 

「璃音さん…お、落ち着いて」

 

シュンッ

 

「おー…見事に荒れてるな」

 

「ししょー」

 

「璃音、お前は負けたんだ。その事実は受け入れろ…お前がウェル博士を殺したいと思うほど憎んでいる事は知っている…この一件もいずれはカタが着く…その時、お前はどうしたい?」

 

「……。」

 

「フィーネと名乗った彼女達は確実に身柄を拘束される…いくら親族であると言ってもお前や歌唄君ではどうもできない…それを踏まえた上でお前はこれから何をする?ウェル博士を殺す…以外で。それを暫く考えておけ…。後、モノは壊すなよ…?」

 

弦十郎の問いに璃音は答えを見つけれないでいた。

ウェルを殺す以外の明確な目標もない故に―――――

 

「暁、とりあえず今はゆっくりと休息をとる事だ…その体にアンチLiNKERを撃ち込まれているのだからな」

 

「だな」

 

「で、私達は学院祭の準備と…」

 

「いうな…アタシはああいうの苦手なんだよ」

 

「それじゃ、璃音さん」

 

響達は通っている学院の催しの準備が有る為、休息をとる為に部屋を後にした。

 

「…気が向いたら、来てくださいね。璃音」

 

歌唄は学院祭の入場券をテーブルの上に置き、部屋を後にした。

 

「……。」

 

璃音はこれまで、研究所を脱走してから、神器を起動させ、ウェルを…F.I.S.の研究者たちを殺す事を目的に生きて来た。

 

妹である切歌の事が気がかりではあるものの、妹が自分の意志で敵対する事を選んだ事には納得しており、自分だけの…自分が何をしたいか…目的であった研究者たちを殺す以外の事はほぼ意識したことが無い為、璃音は暫くの間、悩みを抱える事となった。

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