錦木千束に腹の底から出た本音を言って欲しいだけの話   作:伊勢うこ

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衝動書きで初投稿です。




Say ,I will kill you

 

 問.不殺主義者に「ブっ殺してやる」と言わせるにはどうすればよいか?

 

 

 

 かりんとうを口に運び、咀嚼しながら思考する。

 相変わらず美味。流石はかつて宮内庁で総料理長を務めていたと噂のシェフの一品。脱帽。

 

 間違いなく絶品なんだけど、その腕を活かしてもっとお菓子のバリエーションを増やして頂きたいものだ。

 

 

 

「どしたのあざみ? 考えごと?」

 

「あ、うん、ちょっとね」

 

「カワイイ顔に皺寄ってるぞ、ってあー! またかりんとうばっか食べてる! ダメだぞー先生も言ってたじゃん、『ご飯食べれなくなるから程々に』って・・・」

 

「一個いる?」

 

「え、いいの!? ヤッター! もーらい!」

  

 

 

 うまー! と幸せそうに黒い棒(かりんとう)を食べる美少女。かわいい(直球)。

 

 彼女こそが、私がどうにかして腹の底から出た本音を吐き出させたい相手である。

 

 

ーー錦木千束。

 

 

 黄色がかった白髪に赤いリボンと瞳が特徴な少女。

 やりたいこと最優先なはっちゃけハイテンションガール。

 底抜けに明るい性格で、誰とでもフレンドリーに接する恐ろしいコミュ強である。

 

 私もその毒牙にやられた(一敗)。

 

 

 世の裏で活躍する極秘治安維持組織・DAが育てる少女暗殺者リコリスの中でも、その才能から歴代最強の呼び声高いバケモンである。

 幼くしてリコリスの中で選りすぐりの精鋭であるファーストリコリスになるほど。

 それもそのはず。なんと銃弾を躱すのだ。知ってはいたが、実際に見た時は驚いたものである。

 

 そんな彼女だが、リコリスとして致命的といえる欠点を抱えている。

 

 

 不殺主義。

 

 

 千束は先天性の心疾患を患っていたため、激しい運動が長時間出来ずにいた。一度の演習の後に倒れることも。

 余命も短く、先は無いと思われていた。

 そんな彼女に人工心臓を授けて命を救った「救世主」に憧れ、以降人を殺さず助けることをモットーに。

 

 

 暗殺者であるリコリスの仕事は犯罪者の抹消。つまり殺人だ。

 日本の治安を守るために人を殺す。その権利が与えられている。

 

 そんな中で『殺さず』を掲げる千束は異端と言って差し支えなく、そのスタンスを疑問視する者も少なからず出てくる。

 リコリスとしては不適格。

 人を殺せないリコリスに価値は無い、と。

 

 

 だがそんな彼女の姿が、私にはどうしようもないほど美しく見えたのだ。

 

 そしてそんな彼女だからこそ、私は言わせたい。

 その口から殺意を溢れさせたい。

 

 

 その為の計画を練らねばならない。

 彼女が我を忘れ、掲げた主義を忘れ、凄絶な殺意を抱くようになるシチュエーションを用意する。

 自信はあまりないが、全くアテがないわけではない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()のはアドバンテージと言えるだろう。

 

 

 旧電波塔事件は未だ起きず。今日も日本は平和ボケ。

 千束の人工心臓の移植も済み、もうそろそろ起きるとは思うのだが。

 真島さんまだー? そろそろ出番ですよー? バランスとるんでしょー?

 

 

 

「千束、よかったね。あの弾・・・」

 

「あー、あれ? うん、先生が製ってくれたんだー。いいでしょ?」

 

「あ、うん、全然当たんないけどね・・・。ほんとに使うの、あれ」

 

「使うよ。私は誰かの命を奪うんじゃなくて、誰かを助けたいから」

 

 

 

 おっふ・・・(恍惚)。

 

 いかんいかん、突然のことでつい・・・。これだから光属性の人間は・・・。

 そんなことを言われると、余計にぶちまけて欲しくなってしまうやろっ!

 

 あー早く言ってくんないかなー!

 聞きたいよー! 超聞きたいよぉー!!

 

 でも自重自重っと。

 

 

 千束のメインウェポンである非殺傷弾が実戦で初めて使用されたのは確か旧電波塔事件だったはず。

 そうなると、もうそう遠い先の話でもないだろう。

 近いうちに必ず起こる。

 

 現在は例の手術が終わり、リコリスとして本部に復帰。

 とはいえまだ現場に出て任務を行うには至らず、現在DA本部で調整目的の訓練を行なっている。

 非殺傷弾を使用した演習を行い、毎度私がボコボコにされている。

 

 

「いっぱい、助けられるといいね」

 

「うん!」

 

 

 今はまだ我慢しなければいけない。

 不殺主義者で根っからの善人な彼女に腹の底から本音を吐き出させるには、並大抵なことでは不可能だ。

 

 その為に、私は彼女の側に居続ける。

 

 

「あ、先生から連絡来てる」

 

「任務?」

 

「たぶんね。行こ、あざみ!」

 

 

 赤い制服に身を包まれた少女(千束)に手を引かれて、最近になって青い制服に袖を通した少女()は歩き出す。

 

 

 待っててね、千束。

 何年かかっても、私は君に言わせるから。

 

 今まで君が口にしてきた言葉は全部嘘だったんじゃないかって思えるくらいーー

 

 

 

 

 

ーー腹の底から出た本音を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 錦木千束にとってあざみという少女はどういう存在かと問われると、一言で説明するのは難しい。

 

 

 北あざみ。

 自分と同い年のセカンドリコリス。

 右目にかかった青に近い黒髪と眠たげな瞳が特徴の少女。

 

 彼女とはリコリスとして幼少の頃からの付き合いであり、同じ支部出身。

 DA本部配属になってからも度々コンビで活動してきた。

 付き合いこそ長いが、幼馴染というのはなんだか少し違う気がする。

 

 卑屈というか自尊心が低い性格で、偶に変な笑い方をする。

 あと偏食(かりんとう)が目立つ。

 コミュニケーションが苦手で人見知りが激しく、親しくない人間とは目も合わせられない程。

 

 私生活ではかなりずぼらなためか、過去に同室となった春川フキをはじめとしたしっかり者たちに世話を焼かれることも多かった(なお本人たちは満更でもない様子だった)。

 DAにいなかったらニートやっていた、と何故か得意げに語っていたのを覚えている。

 

 人としては少々アレな感じの彼女だが、リコリスとしては優秀だった。

 そのためか、本気で彼女を嫌う者は少なかったのではなかろうか。

 

 幼くして早くもファーストになった自分が言うのもなんだが、その頃既に彼女はセカンドの制服に袖を通すことが許されていた。

 当時多くの同世代がサードであったことを踏まえると、その程が伺える。

 

 

 彼女は勘がいい。

 

 

 誰が次にどんな行動に出るか、どこを狙われるか、どう対処すれば良いか。

 そういったものが直感的になんとなく分かるらしい。

 と言っても絶対に当たる訳ではないし、自分のように銃弾を回避することなどは出来ない。

 しかしその危機感知は鋭く、彼女の直感に救われたリコリスは多い。

 

 能力と功績だけ見ればファーストに昇進してもおかしくないが、当の本人が乗り気でないためかセカンドのまま。

 

 

 戦闘では積極的に前に出て戦うよりも、その勘の良さを活かしてサポートに徹して立ち回る。

 千束が前に出て陽動、あざみが陰から援護射撃。それが二人の定番のやり方だった。

 

 自分にとって、得難い相棒。

 

 

 

 リコリスにあるまじき不殺を誓った時も、リコリスの中で唯一彼女はすんなり受け入れて「よかったね」と言葉を返した。

 そればかりか、自分から千束の前では敵でも極力命を奪わないようにしてくれた。

 彼女の無言の優しさがありがたかった。

 

 自分にとって、かけがえのない友達。

 

 

 電波塔事件後、DA本部を抜けて支部である喫茶リコリコを立ち上げた時も彼女は付いてきてくれた。

 先生やミズキとも仲良くやって、接客は苦手ながらもお客さん達に気に入られていた。

 

 新しくたきながリコリコにやってきて、クルミも加わった。

 

 

 仲間が増えてお店もそこそこ繁盛して、お客さんとも楽しくやりとりして、リコリコでの日常はますます楽しくなった。

 

 これから先もそうなると思っていた。

 自分はもう長くはないけど、それまではこの日々が続くと信じていた。

 ずっと一緒だった彼女と共に。

 

 

 

 

ーーーー目の前で横たわるあざみを見るまでは。

 

 

 

 

 脳裏に過ったのは、これまでの自分の信条。口に出して吐いた言葉。

 

 

ーー『命大事にって、敵もですか?』『そ、敵も』

 

ーー『誰かの時間を奪うのは気分が悪い』

 

ーー『私は誰かの命を奪うんじゃなくて、誰かを助けたいから』

 

 

 今まで私の口から出た言葉はーー

 

 全て嘘だったんじゃないかと思えるくらいーー

 

 

ーーーー腹の底から出た本音。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブッ殺してやる」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
いいですよね、リコリコ。私はちさたき派。

続きに関しましてはそのうち書く予定です。
高評価、感想をいただけると嬉しいです。それでは。
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