錦木千束に腹の底から出た本音を言って欲しいだけの話   作:伊勢うこ

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いつも応援ありがとうございます。

いつの間にか日間ランキングに載るようになってました。皆さんのお陰です。
これからも頑張って書いていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

それではどうぞ。


Team up / ヨシ!

 

「あざみのこと?」

 

「はい」

 

 

 旧電波塔を覗く公園で、千束とたきなは小休憩をとっていた。

 保育園、日本語学校、組事務所。一見繋がりの見られないこれらの施設を周り、リコリコにおける活動を一区切り終えた2人。たきなが千束の仕事についていくつか質問をする中、出てきたのは千束にとって長年の相棒の名だった。

 

 

「なになに、たきなったらあざみに興味あるの〜? ハッ、もしかして!?」

 

「違います、そういうのじゃありません」

 

「なぁ〜んだ〜。ま、いいや。それで、何が聞きたいの?」

 

「あざみさんもリコリス、なんですよね?」

 

 

 たきながリコリコを訪れて最初に会った少女、北あざみ。

 ぱっと見た限りではあるが、リコリスに、というより自分たちと同様に裏で活躍するエージェントにはとても見えなかった。あれが擬態なら大したものだが。

 

 たきなとて一応彼女は先輩であるという認識はあるが、尊敬の念を持てそうかと聞かれると悩ましい。むしろその対極にありそうなくらいだ。なにせ初対面の挨拶とはいえ目も合わせてもらえなかったのだから。

 おとなしい性格と評すればいいのやもしれないが、それにしたって頼り甲斐は感じられない。

 

 

「そうだよー。たきなと同じセカンドリコリス」

 

「えっ」

 

「あ、今驚いた!? 驚いたでしょー!?」

 

「・・・・・・・・・・・・はい。正直、サードだと思ってました」

 

 

 最初はリコリスだとも思いませんでした、とは流石に言えなかった。

 たきなは空気の読めるリコリスなのだ。

 

 

「やっぱりかー。なんでか一回はリコリスに舐められるんだよね、あざみは。まぁ、そういうとこもかわいんだけど」

 

「優秀なんですか?」

 

「そりゃあ昔から私の相棒だからね!」

 

 

 えへんと得意げに胸を張ったあと、千束は右手の人差し指を遠くに向けた。

 方角は、旧電波塔。

 

 

「結局折れちゃったけど、あれも2人で解決したんだよ」

 

「じゃあ、電波塔コンビのもう一人って・・・・・・」

 

「そ、あざみだよ」

 

 

 あの事件を解決した本人の口から聞いても信じ難い事実を耳にした。

 

 旧電波塔事件の話は有名だ。地方のリコリスにまで広く知られ、一種の伝説のような扱いになっている。なにせあれを最後に日本で大事件と呼べるものはここ10年起きず、東京は世界一治安の良い街として名を馳せることになったのだから。

 

 それを成した片割れが、自分がナチュラルに格下認定していた、あのあざみだという。

 実際に活躍するところを見たことがないせいもあるだろう。

 人は見かけによらないものだと、たきなは自分の偏見を少し反省した。

 

 

「でも、それならどうしてセカンドなんですか? それだけの活躍をしたのなら、ファーストになってもおかしくないと思いますけど」

 

「んー、色々あるけど。まぁ一番はあざみがコミュ障だから?」

 

「はい?」

 

 

 聞き間違いだろうか。たきなは千束が口にした理由があまりに想像とかけ離れていたせいか、自身の聴覚の不調を疑った。

 

 

「あ、たきなはコミュ障ってわかる?」

 

「コミュニケーションを苦手とする人の俗称、程度ですが」

 

「そうそう、そんな感じ。あざみは仲良くないと全然喋らなくなっちゃうから、昔から組める人限られるんだよね。私とフキと、あとは何人か、くらいかな」

 

「それでよくDAに残れましたね・・・・・・」

 

「ねー。まぁそれだけ優秀ってことなんじゃない?」

 

 

 納得しがたい理由だったが、なるほどそれなら確かに上も昇進させられないだろう。いくら優秀でも、リコリスは基本的にペアで活動する。

 二人一組で活動する以上、余程相性が良くない限り、コミュニケーションは不可欠だ。それが満足に出来ないとなると、リコリスとしてはほぼ致命的。連携が満足にとれない可能性があるのだから。

 況してやファーストリコリスともなると任務の規模にもよるが、小隊の隊長や部隊長を任されることとなる。彼女には壊滅的に向いていなさそうだ。

 

 紙パックのジュースを飲んでいた千束が、あ、と声を出す。

 

 

「そろそろ時間か。よし、行こうたきな! 次は警察署だ!」

 

「はい」

 

 

 色々気になることはあるが、切り替える。自分たちはプロ。

 日本の平和を裏から守る、機密組織のエージェントなのだから。

 

 

 

 

 日が落ち、辺りが夜の帷に包まれてきた。

 

 刑事からの頼まれごとを聞き、ストーカー被害に遭っているという篠原沙保里を護衛しながら彼女の自宅まで行くことに。

 というのも、彼女がストーカー被害に遭うきっかけとなったSNSにアップされた写真に、例の銃取引現場の様子が一部写っていたのだ。

 

 犯人がストーカーではなく銃取引に関わる人間だと気づいた二人は、彼女を狙うであろう者達から守るために今日は彼女の家で泊まることにした。

 千束は「命大事に」と言い残して宿泊セットを取りに向かい、たきなは沙保里の護衛を継続。

 

 その道中に犯人のものと思わしき車が背後から近づいてきていることを確認したたきなは、沙保里を囮にして犯人たちを誘き出した。

 彼等の車に弾丸を放ち銃の所在を聞き出そうとしたが、人質となった沙保里を巻き込むと千束が止めに入る。

 

 結果。千束一人で彼等を制圧し、沙保里を解放。

 犯人たちの中に誰一人として死傷者はおらず、千束は彼等の応急処置を始めていた。

 

 

「・・・・・・命大事にって、敵もですか?」

 

「そ、敵も。おっと」

 

 

 運転手の手当をしていた彼女に銃を向けた犯人の一人だったが、呆気なく返り討ちにされた。

 頭部に命中したはずだが、死んではいない。千束の銃から発射されたのは、特殊な弾頭をもつ非殺傷弾。被弾しても血ではなく、赤い粉塵の花が咲くのみ。

 不殺を掲げる彼女の、その象徴のような弾丸。

 

 

「あっぶなー。今日あざみいないんだった」

 

「いつもは彼女が?」

 

「そそ。今みたいに私がうっかり撃ち漏らした敵も、殺さずに動けなくしてくれるの」

 

 

 この場にいない彼女のことを語る千束は、どこか嬉しそうに見えた。

 コンビになって長いのだろう。言葉の端から、2人の仲の良さが伺えた。

 たきなと千束がコンビになったのは今日のこと。日が浅いのだから、完璧に連携をとるのは難しいと分かってはいる。

 それでも自分以外の人間がそれを出来ると聞くと、上手くは言えないが悔しさのようなものを覚えた。

 

 突然命の危機に遭い泣く沙保里を宥める。

 クリーナーに連絡を終えたらしい千束が、たきなー、と呼んで近づいて来た。

 

 

「クリーナーに連絡しといたから、あとは沙保里さんを送って・・・・・・」

 

「千束さん」

 

 

 遮るつもりのなかった彼女の言葉を、途中で止めた。

 同時に、聞くべきではないようなことを口走る。

 

 

「私とあざみさん。どちらが優秀ですか?」

 

「どっちも優秀だよ」

 

 

 千束は即答した。

 

 

「どっちがー、って比べてもしょうがないよ。たきなはあざみじゃないし、あざみもたきなじゃない。あざみが出来ることを、たきなが全部最初から出来るとは私も思ってない。逆もそう」

 

「私たちは今日初めて出会って、初めてコンビになった。確かに私はあざみと組んで長いけど、今の相棒はたきなだよ。だからさ」

 

「私は私たち二人で、私たちのやり方で頑張りたい。だからたきなの力を貸して。コンビって、そういうもんでしょ?」

 

 

 差し伸べられた、手を握る。

 

 

「・・・・・・はい。改めて、よろしくお願いします」

 

「うん、よろしくたきな!」

 

 

 誰かに負けるのも、他人に出来ることが自分には出来ないことも悔しい。

 それでもーーーー

 

 

「じゃあコンビ結成記念にまずはお互いを呼び捨てにすることから始めよう! ほらほら言ってみたきな、ち・さ・と!」

 

「行きましょう」

 

「あぁ〜ん、たぁ〜きぃ〜なぁ〜」

 

 

 ーーーー今は、悪い気はしない。

 

 

 

 

 

 私が死ねば千束がブッ殺すって言ってくれるかも!

 

 千束と仲が良くてある程自由に動けてしかも好きな時に死なすことが可能! 理想のブッ殺聞けちゃうかも!?

 そうなれば万事解決、ミッションコンプリート!

 これは勝ったな、ガハハ! 風呂入ってくる!

 これでノーベル賞は私んモンだぜ〜〜〜〜!!

 

 

 ーーーーそう思っていた時期が、私にもありました。

 

 

 何故かたきなに終わった表情をされ、千束がフキに彼女を殴った件について電話で文句を言った後。

 千束とたきながコンビになり、仕事に行ってはや半日程度。もう辺りが暗くなってきた。

 私はというと店で少し早めのレジ閉め中。

 誤差なし。ヨシ!

 

 え、コンビ解消されたのかって? そうとも言えるし、そうでないとも言える。その説明をするには(以下略)。

 

 リコリコにいるリコリスはたきなを除けば2人。評価を上げてDAに戻りたガールのたきな後輩のために、ファーストの千束と組んだ方がいいのでは、と私が気を利かせたのだよ。クビになったわけじゃねぇから。ホントホント。アザミウソツカナイ。

 

 お、千束から電話きた。はーい、もすもすひねもす〜?

 

 

『あ、あざみ? 私のお泊まりセットってどっかにある?』

 

「探しとく。入口に置いとくから」

 

『ごめ〜ん、ありがと!』

 

 

 えぇーっとお泊まりセット、お泊まりセットはどこだったかなっと。

 まぁたぶん押し入れの上から二番目くらいでしょ。ほらあった。

 ヨシ!

 

 

「どうした、あざみ。それは・・・・・・あぁ、千束のやつか」

 

「うん。なんか、どっかに泊まるっぽい」

 

「ちょっと、あいつシフトは〜!?」

 

 

 ミズキが泣き言言い始めた。どんまい。まぁでも今日はお客さんもうおらんし、大丈夫やろ。

 

 

 で、千束ブッ殺宣言計画について。

 

 冷静に考えて、千束は私が死んだら本当に言ってくれるのだろうか。

 私が死んだところで割と平然としてたらどうしよう・・・・・・。友情を感じていたのは自分だけだったパターンの可能性ゼロじゃないよコレ。

 あの千束に限ってないとは信じたいが。ないよね?

 

 あ、その時はもう死んでるから確認できないか。うっかりしてたぜ!

 

 というか死んだらブッ殺聞けないやん。となると死んだフリしないといけなくなるわけだが、あの千束に死んだフリとか効くんやろか?

 あっさりバレたらホントにキレてその場で殺されそう。ないよね? ね?

 

 問題はそれだけではない。

 仮に死ぬのが私でいいとしても、どんなシチュで誰に殺されるかも重要なポイントだ。ここまでくると、私一人の手ではどうにもならん。

 

 つまり協力者が要る。

 

 あぁ〜あ、どっかに居ないかなぁ。

 私と利害が一致して、頭のネジが程よく外れてて、黒幕っぽい人、居ないかなぁ〜。

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 

 

「久しぶりだね、ミカ」

 

「・・・・・・っ!?」

 

 

 

 ヨシさん確認! ヨシ!

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちさたきとヨシさんのちょい出しでした。
あざみは頭アランさんと協力出来るのか!? 乞うご期待!

感想、高評価をいただければ幸いです。次回もよろしくお願いします。
それでは!
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