錦木千束に腹の底から出た本音を言って欲しいだけの話   作:伊勢うこ

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いつも感想、評価、誤字報告などしてくださりありがとうございます。
前回の投稿から少し時間が経ってしまいすいませんでした。
なんとか完結までもっていければと思っています。

それでは第5話です。どうぞ。


Messiah / けっかはっぴょー / bullet

 

『あれから彼女の容体はどうだい?』

 

「大丈夫だ。今も元気に動き回ってるよ」

 

『それは良かった。こちらも手を尽くした甲斐があったよ』

 

 

 二人の少女がDA本部内にある屋内戦闘訓練場で模擬戦を繰り広げる様子を上階から観察しながら、ミカは電話越しにとある人物と連絡をとっていた。

 自分の教え子の短命を伸ばした「救世主」と。

 

 

『あれに関して何か問題が起こったらすぐに伝えてくれ』

 

「すまないな、色々と」

 

『なに、構わないさ。それも彼女の才能を、世界に届けることに繋がるのだからね』

 

「・・・・・・そうか」

 

 

 

 本音を言うと、ミカは「才能」というものについて語る時の彼の様子が少し苦手だった。その瞳から、言葉の端から覗く仄暗い狂気が。

 正確に言うなら、彼、というより彼が所属する組織の人間の。

 

 

 ーーアラン機関。

 

 才能を持つ子供たちの為に無償で支援を行う団体。

 公になっている情報は殆どない。いつから存在しているかも不明。

 

 分かっているのは彼等が支援する対象は才能ある者ということ。

 その支援はアラン・アダムズ名義で分野を問わず行われること。

 支援対象はアラン・チルドレンと呼ばれ、各方面で成果をあげているということ。

 そのアラン・チルドレンに必ず送られる梟を模したような装飾品。

 

 そして機関の人間は原則として支援対象との接触を禁じられていること。これは彼から聞いたことだ。

 

 

 才能の支援と聞けば耳障りが良いが、彼等は見境がない。

 

 彼等は天才を神からの贈り物だと信じ、その開花の為にあらゆる手を尽くす。例えそれが、世界にどんな影響を及ぼすことになろうとも。

 彼等は必ず、そのギフトを世に送り出す。

 

 才能に対する、狂気的なまでの情熱。否、執着と言うべきか。

 才能という希望を愛し、その眩しい光に目を焼かれた者共。

 まるで呪いのようだ。

 

 

 いや、悪いようにいうのはよそう。

 彼等のその狂気のお陰で自分の教え子は命を繋げたのだから。

 今は、そのことを頭に入れておけばいい。

 だがーーーー

 

 

『私は今後暫くはそちらに行けない。連絡することもおそらくね。その間、彼女のことは』

 

「あぁ、任せてくれ・・・・・・なぁ」

 

 

 ーーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 余命僅かだったあの子の寿命を延ばしたことに、後悔はない。

 だがあの子の持つ才能を、彼らが望む形で世に送りだすことは、果たして本当に正しいのか。

 自分はあの子の才能を知っている。本人も知らない、その正体を。

 

 彼と機関に恩はある。だがしかし、だからこそーーーー

 

 

「・・・・・・いや、なんでもない」

 

『頼んだよ、ミカ。神に与えられた彼女の才能を、私の代わりに届けてくれ』

 

 

 約束だぞと言い残し、彼との通話はそれきりになった。

 

 

 

 

 ・・・・・・い。せ・・・・・・せい。

 

 

「先生?」

 

「ん、あぁ・・・・・・大丈夫だ」

 

「ホント? 無理してない?」

 

 

 心配した様子でこちらを覗き込む千束。

 どうやら気付かぬうちに、少しぼうっとしていたらしい。

 ふと過去を顧りみるとは、まるで老人のようだ。自分ではそこまで歳だと思いたくないのだが。

 

 過去から時間を戻して現在。

 喫茶リコリコでは緊急の依頼をこなすべく、早くから店を閉めて支度を整えていた。メンバー総出の依頼のため、各々の役割と確実に遂行するための装備を事前確認する。

 そんな時に司令塔の自分が呆けて彼女たちを心配させている場合ではない。

 

 

「大丈夫だ。少し昔のことを思い出していただけだよ」

 

「ならいいんだけど。何かあったらすぐ言ってね」

 

「あぁ」

 

 

 優しい娘だ。この子は他人のことを本気で思うことが出来る。

 そんな娘を見る度に、これでよかったのだと思う。

 

 彼等が信じる使命とやらを、こんな娘が全うする必要はない。

 それに。

 

 

「それより千束、準備はもういいのか?」

 

「ばっちり。たきなは?」

 

「問題ありません。いつでも行けます」

 

 

 装備点検を終え、リコリス制服を見本のようにキッチリと着込んだ彼女の相棒のたきな。

 今回の依頼が彼女の希望である本部復帰の糧になるかは不明だが、それでも任務にあたる姿勢は意欲的だ。真面目な彼女らしい。

 

 そう、千束は一人じゃない。きっと大丈夫だ。

 

 何故彼が今になってここを訪れたかは引っかかるが、それは自分がなんとかすればいい。

 

 

「そーいやあざみは? まだ準備中?」

 

「先に行ったのでは?」

 

「ナイナイ、だってあざみだよ? それはない」

 

「何故か妙な説得力がありますね・・・・・・」

 

「あざみなら少し前に買い物に行ったぞ。かりんとうが切れたんだろう」

 

「あ〜なるほど。そりゃ納得」

 

「任務前に何を・・・・・・。というかあの人、先週も行っていませんでしたか?」

 

 

 加えて千束にはあの子が、あざみがいる。千束以上にマイペースな子だが、彼女以上に千束を理解している者もいない。

 自分が見れないところでも、彼女が千束を支えてくれるだろう。

 

 だからきっと、大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 やせい の ヨシさん が あらわれた!

 

 あざみ は どうする?

 

 →ひっこむ  めをそらす

 

  かくれる  きょどる

 

 

 うん、そうなんだ。そういうことなんだ。察してくれるとありがたい。

 

 千束・たきなコンビの初仕事が終わった翌日、リコリコを訪れたのはヨシさんこと吉松シンジ。

 その正体はアラン機関に所属し、かつて千束に人工心臓を提供することで彼女の命を救った救世主その人。不殺の原点。

 千束がDAを抜けて以来ずっと探している人物でもあるが、そのことを彼女はまだ気づいていない。

 

 ヨシさんなら私の計画にぴったりの協力者になってくれそう。

 なにせ自分の命を使ってまで千束に殺人を犯させようとするほどだ。

 快く協力してくれるに違いないぞぅ!

 

 そう思いたったが吉日。早速行動に移そうとしたがーー

 

 

 ここで今一度私という人物のことを考えてみてほしい。

 

 仮にも飲食店で10年働いておきながら、まともにいらっしゃいませすら言えないコミュ障。初対面の人間に目も合わせられない。前世はニートの社会不適合ぶり。

 

 つまり何が言いたいかというとーーーー

 

 

 ーーーーなんの成果も!! 得られませんでした!!

 

 私がコミュ障なばかりに! ただいたずらに時間を消費し!!

 ヨシさんと・・・・・・!! 会話することもできませんでした!!

 

 

 そりゃあそうじゃ(納得)。

 

 これが出来る転生者ニキネキならば例え衆人環視の中であろうともかっこよくスタイリッシュに、かつ密かにヨシさんとコンタクトを取り「これは・・・・・・!」とか言わせてたかもしれないのに!

 でもしゃーないやん! リコリコの皆もおったし! たきな後輩の初めてのお客さんやったから接客はたきな、あとはほとんど先生と喋ってたし!

 私は裏に引っ込んでました・・・・・・。千束は普通に話しかけてました・・・・・・。

 イキッててすみませんでした・・・・・・。完璧な計画思いついた私tueeee! とか思ってました・・・・・・。もうまぢむり、かりんとう食べよ・・・・・・。

 

 

 何故私はいつもこうなのだとこの世の無情を嘆きながら、役立たずな私は買い物を終えて帰路についていた。

 これから任務があるが、まだ時間に余裕があるので先に切れたかりんとうストックの買い出しにいっていたのだ。これで一週間はもつな。

 

 しかしヨシさんと協力関係を結ぶにはどうしたらいいのか。その機会がない。会うとしてもリコリコだが、みんなの目がある。

 そんな中で「千束にブッ殺すって言わせたいんです!」とかさすがに言えない。

 

 あぁーあー、ヨシさんと話せる機会があればなー。

 リコリコメンバーの誰も見てないところで話せたらなー私でもなー。

 

 

 そんなことを考えていたら、向こうから男性が一人リコリコから出てきたのが見えた。

 背広を着ているが、こんな時間から喫茶店に顔を出すことから明らかにただのサラリーマンではないと思われる。

 加えてどことなくラスボス味を感じる。誰とは言わないが、某奇妙な冒険の第四部の爆弾魔の変態に見えなくもない(偏見)。

 

 あ、あいつは・・・・・・!

 すいませーん、ちょっといっすかー?

 

 

 

 

 

 吉松シンジは、今しがた少女から渡されたモノを見つめていた。

 

 自身の親友が営んでいる喫茶店におよそ一月ぶりに顔を出し、その娘同然の少女とも話をした。彼女に接触するのは黒に近いグレーの行為だが、幸い向こうにこちらの正体が割れている様子はない。そう大きな問題にはならないだろう。

 

 それから店を後にしてすぐのこと。道の反対から歩いてくる一人の少女の姿が。

 見覚えがある。あの店では確か、あざみと呼ばれていた少女。

 例の彼女とは親しそうではあったが、自分の中では特に印象に残ってはいない。

 

 一応挨拶を交わそうとする前に彼女はこちらに近づくと、何故か無言で目線も合わせずに手に握った何かをずいと渡そうとしてきた。

 思わず受け取ったそれを確認する間もなく、彼女はその場を離れて立ち去ってしまった。

 

 一体なんだったのだろうか、という疑問は次の瞬間に別の感情に取って代わられた。

 

 渡されたモノは赤い弾頭が特徴的な、一発の弾丸。

 これは、まさかーーーー

 

 

「ミカ・・・・・・」

 

 

 かつて約束をし、先程まで顔を合わせていた己の親友の名を口に出す。

 今自分の頭にある推測は、あまりに根拠の少ない、勘とも言えるものだ。唯の嫌な予感、悪い想像。だが得てして、そういう時こそバカにならない。

 

 だがもしそれが本当なら、彼は自分との約束を破っていることになる。信じたくはないが、掌の中にあるこれを使って。

 

 何故彼女はこれを自分に渡したのか。自分と彼の約束を知っているのか。知っているなら、どのようにしてそれを知ったのか。

 

 彼女があの少女の、千束の才能を知っているからなのか。

 

 不明な点ばかりだが、今それを考えても仕方がない。

 己に出来るのは、手をうつことのみ。携帯電話を手に、連絡を入れる。

 

 だが願わくばーーーー

 

 

 

「私だ。少し君に頼みたいことがあってね。あぁ、例の患者をーー」

 

 

 

 ーーーー彼女もまた、我々と志を同じくする者であらんことを。

 




アラン機関だけに(激ウマギャグ)。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
あざみちゃん今回はセリフなし回。残念。

感想、高評価いただけると嬉しいです。それでは。
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