錦木千束に腹の底から出た本音を言って欲しいだけの話   作:伊勢うこ

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それでは第6話です。どうぞ。


Escort request / おま(えが)いう(のか)

 

 正直言って、井ノ上たきなは今現在に至っても北あざみの実力を疑っている。

 

 

 コンビとなった千束からその活躍の程を聞いてはいるものの、何事も百聞は一見にしかず。実際に現場で目にするまでは信じ難いものだ。

 

 仲間のことを悪く言うつもりはないが、あざみは先輩として少々頼りない。

 まず声が小さい。リコリコ従業員以外の人に声をかける時は「あっ、あの・・・・・・」か「す、すいません・・・・・・」のどちらかで、返答の際は「あっ」で始まる。

 前髪が目元の近くまでかかって表情が分かりにくく、やや猫背で俯きがち。

 接客は新人の自分より辿々しく、そのため業務中はもっぱら奥に引っ込んでいるため、たきなは仕事のほとんどを千束から教わった。

 一応は飲食店従業員のはずだが、ホールの適性が絶望的に低い。なお適性が低いのが接客業に限らず労働全般であることを、この時のたきなはまだ知らない。

 

 

 向こうがこちらに話しかけてくることもそう多くないため、関係は決して強いとは言えない。一方、千束はこちらのことなどお構いなしとばかりに距離を詰め、おすすめの映画のブルーレイまで渡してきた。

 

 人と距離を縮めるのが不得手なあざみと、積極的に距離を詰めてくる千束。まるで正反対の性格だが、不思議と仲は良好。喧嘩をしたこともほとんどないとか。

 両極端で一見噛み合わなさそうな二人だが、だからこそこれまで長く組んできた、と二人の父親代わりでもあるミカはそう言っていた。ミズキは凸凹コンビと評していたが。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 天才ハッカー・ウォールナットの護衛依頼を引き受け、千束、たきな、あざみの三人は集合地点に向かっていた。

 何故かワンボックスカーを運転し颯爽と現れた依頼主。

 彼(?)の運転する車に乗り込みもう一度車を乗り換えるための地点へ向かうはずが、何者かに車両のシステムをハッキングされ、結局車体は海の中。

 追手から逃れるべく、一行は廃れたスーパーの跡地に身を隠した。

 

 事前にミカから伝えられた情報によると敵は5人から10人程度、プロ寄りのアマチュア。

 ただ敵を殲滅するならばそう難しくはないが、数的不利に加えこちらには護衛対象がいる。油断は禁物だ。

 

 

 ミカとの通信を終え、一度スーパーから脱出するべく動き始めたその時だった。

 

 

 たきなは自分の前を歩いていたあざみに突如空いていた右手ーー左手はウォールナットの全てだというキャリーケースを掴んでいたーーの手首を掴まれ、彼女の方へと引っ張られる。

 

 急に何をするのかと抗議する前に、聞こえたライフルの発砲音。

 見れば先程まで自分がいた場所を目掛けて撃ったと見られる痕跡が。

 

 もし彼女に引かれていなければ、身を守るためにケースを盾にしてしまっていただろう。

 

 追手に追いつかれた。

 

 あざみが棚を盾にして身を隠しながら牽制射撃を始める。

 たきなもすぐに援護をするべく銃を抜いたが、手で制された。

 

 

「たきなはナットさんお願い」

 

「でも・・・・・・!」

 

「こっちは私が何とかする。千束が道作ってくれるから、先にナットさん逃がしてあげて。これ、護衛任務だからさ」

 

「・・・・・・っ、はい」

 

 

 普段の彼女からは想像出来ないほど落ち着いた声音。有無を言わせない冷めた視線。気圧されそうになる程、殺伐とした雰囲気。

 これがリコリスとしての彼女の姿なのだろう。知っている人間の、いや、知っているつもりになっていた人間の知らない側面。

 普段からこうだったらいいのにと、ちょっとだけ思った。

 

 

 あざみの言う通り追手二人を彼女に任せ、たきなは行動を開始する。

 

 依頼主を連れて出口へと移動させる道中、あざみに足止めされていた敵が通路を迂回してこちらに襲いかかってきた。

 

 そこで目にしたのは、信じられない光景。

 

 それは先行していた千束が敵を倒す手際の良さでも、敵の持つライフルの射撃を平然と躱したことでもない。

 どちらも、特に後者は驚くべき光景ではあったが、それ以上に信じられないのは彼女が敵の治療を始めたこと。

 

 彼女の信条である「命大事に」という言葉を思い出した。

 

 確かに彼女の掲げるその言葉通りの行動だ。一月程前に一度、似た光景を見てもいる。

 

 立派なことかもしれない。だが、不必要なことだ。

 確かに出血はしているが急所は外れている(あざみがわざと外したのだろう)。

 そもそも相手はこちらの命を奪おうとした敵だ。治療する義理はない。それどころか、処置を施せばこちらをまた追ってくるかもしれない。

 さらに言えば今は任務中。緊急性が高い上に時間もそう残されていない。もし敵の増援が来れば、依頼主を逃すどころか自分達まで危ない。

 

 囲まれる前に脱出しようと千束に提言しようとした時、足止めの役目を終えたあざみが戻ってきた。

 

 

「こっちどう?」

 

「今応急処置中〜。そっちはどうだった?」

 

「問題なし。もう中には敵いないと思う」

 

「おっ、やるね〜。流石あざみ」

 

「手伝う」

 

「大丈夫。たきな達と先行ってて」

 

「そっちの人は私が撃った。私がやる。二人でやった方が早いよ」

 

「・・・・・・ありがと」

 

 

 

 千束と短いやり取りをし、彼女まで治療を始めた。

 千束と組んで長く活動していたためか、慣れた手つきだ。千束の意志を汲んで、これまで誰も死なせないようにしてきたのだろう。

 

 

 たきなには、千束が不殺を掲げる理由が分からない。

 何故そうしているのかと彼女に問うたことはないし、そもそもそれ以前にリコリスの仕事は殺すことだ。

 国を守るために悪を殺す。それが自分達リコリスの役割であり、存在意義。

 

 それなのに、何故。

 何故、彼女は頑なに人の死を拒むのか。

 何故あざみは、千束の方針に付き合っているのか。

 

 尋ねればおそらく答えてくれるだろう。

 答えを聞いたところで今の自分にそれが理解出来るかは別だが。

 

 

 処置をする二人をその場に残し、たきなは依頼主であるぬいぐるみを連れて先に出口へ進む。

 おそらく建物内に敵は残っていないが、別の出口から増援が来ないとも限らない。

 周囲を警戒しながら進み、出口の前までやってきた。

 

 脱出前に念のため出口と反対の通路を確認。敵の姿も、『すぐに追いつくから先に行け』と言った千束とあざみもまだ来る様子はない。

 

 

 その時だった。

 

 

「えーーーー?」

 

 

 依頼主からほんの少し目を離しただけだった。

 

 その「少し」で。

 手元のタブレットに視線を寄越したまま、足を止めずに出口を跨いだ彼はーーーー

 

 

「たきな! 出ちゃだめ!」

 

 

 ーーーー凶弾の雨を浴びた。

 

 

 

 

 

 

 第一回ウォールナットを守れ!(2回目の予定なし)

 

 はぁーじまーるよー!

 

 

 さぁついに始まりました第一回ウォールナットを守れ!

 実況解説は私、北あざみでお送りいたします。

 

 さぁ今回は原作屈指のチートハッカー、ウォールナットを護衛するこの任務。

 チームリコリコは全体指揮に店長のミカ、裏方にミズキを、そして前線には実行部隊として千束、たきな、そして私を配置。

 

 依頼主との合流地点に向かうために乗った電車で私が浄化しかける事件、通称『千束のあーんからの「はいおいしい!」かわいすぎるだろ事件』が勃発するというアクシデントに見舞われたものの、なんとか目的地に到着した。

 

 なお、たきなの後私もあーんされて無事浄化(一敗)。

 

 

「すっげー! すっげー! スーパーカーだぁー!!」

 

「・・・・・・目立ちますね」

 

 

 最初の目的地である某駐車場に停められてある赤い高級車にバイブス上がりまくりの千束と、対照的にテンション下げ下げのたきな。

 まぁ気持ちは分かる。あれで逃走しろって言われてもね・・・・・・。派手スギィ! 

 

 

「ハイハーイ! 千束が運転しまぁす!」

 

「却下します」

 

「えぇ〜なんでぇ〜? たきな運転できんのかよぉ〜?」

 

「出来ないとリコリスになれないでしょう・・・・・・運転はあざみさんにお願いします」

 

 

 愚痴る千束にアホを見る目を寄越したあと、たきなはこっちを見て告げた。

 え? わたし?

 

 

「乗車中に射撃戦にならないとも限りません。その時は私が応戦しますので・・・・・・運転、出来ますよね?」

 

「アッ、ハイ」

 

 

 できらぁ!!

 

 DAでの訓練時代、数少ない私の得意訓練が自動車の操縦だった。

 何せ前世で私が唯一持っていた免許証だからなぁ! なおペーパードライバーだったせいか訓練でも一番ではなかったし、現在は・・・・・・。

 

 

 役割を決めていたところに依頼主のクソデカリスが颯爽登場。運転は依頼主ことウォールナットがそのまま続け、少し狭いが三人で後ろの席へ。

 千束とたきなに挟まれて謎の動悸に襲われました(一敗)。

 

 適当に(千束が)自己紹介をした後、リコリスが何故学生制服を着用しているか等について話していたが、私はずっと「着ぐるみ被って運転ってアウトじゃなかった・・・・・・?」と訝しんでいた。そう思ったの、私だけ・・・・・・?

 

 

 その後敵のハッカー・ロボ太=サンの手により車の制御を奪われたものの、射撃の王様シャゲキングTKNのおかげでなんとかもう一度制御を取り戻すことに成功。

 さすがたきな! 私たちに出来ないことを平然とやってのける! そこに痺れる憧れるぅ!

 ロボ太くん見てたか〜?(煽り)

 

 

 車を海にダイナミック不法投棄し、場所を潰れたスーパーに移して身を隠す。

 先生に現場報告をして指示を仰ぎ、建物から離脱しようと動き出した刹那。

 

 

 私のアホ毛センサー(直感)がビビッと反応。

 

 

 たきなを引き寄せ緊急回避させてすぐに牽制。

 千束とたきなにデカリスを任せ、私は敵二人の足止め。足止めとは言ったが、別に倒してしまっても構わんのだろう?(フラグ)

 

 

 適当に2、3発お見舞いすると敵は引き返してたきな達を追い始めた。

 まぁ千束一人に制圧されたのだが。千束相手に銃撃戦とかクソゲーだからね、仕方ないね。

 

 

 千束の方針に則り私もいつも通り敵の応急処置を施す。痛いの痛いの飛んでけ〜(自作自演)。

 

 

「何のつもりだ、やめろ・・・・・・!」

 

「や、あの、死なせちゃダメなんで・・・・・・」

 

「馬鹿にしているのか・・・・・・殺すなら殺せ」

 

 

 なんか大の成人男性が捕まった女騎士みたいなこと言い出した。これがくっ殺ってやつか。言った相手のせいか需要を感じられない。

 

 しかしこちらも「はいそうですか」と本当に死なせるわけにもいかない。少なくとも千束の前ではまだ。

 安静にして欲しいが、やめろと言って聞かない。

 仕方なく私は人を静かにさせる魔法の言葉を口にすることにした。

 

 

 

「うるせぇブっ殺すぞ」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「護衛対象は死亡。任務失敗です・・・・・・」

 

 

 ウォールナットが死んだ! この人でなし!

 

 




以上、第6話でした。最後まで読んでいただきありがとうございます!

(あざみの)ブっ殺でした。

感想、高評価をいただけると嬉しいです。それではまた。
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