錦木千束に腹の底から出た本音を言って欲しいだけの話   作:伊勢うこ

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 投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
 別の2次小説やオリジナルに時間を割かれていました。よければそちらも読んでみてください!(宣伝)

 今更ながらぼざろアニメロス。
 どうでもいいけど、この小説の主人公もキタちゃんなんやで。
 キターン☆


Encounter / おファっ!!?

 

 あの時どうすれば良かったのかを、井ノ上たきなは今も考えている。

 

 

 

 あの時。

 自分が本部から離れてリコリコに異動することになったきっかけである、あの銃取引現場で。

 司令部との通信が途絶し、味方が人質にされたあの時。

 

 的に穴が空く。

 

 

 あの時。

 護衛対象を守るために、あのスーパー跡地で立て篭もった時。

 自分の一瞬の判断ミスが、任務の失敗を招いたかもしれない。

 

 的に穴が空く。

 

 

 後悔は無い。

 あの時仲間を救出する為に機銃を撃ったのは、あの状況ではそれしかないと判断したから。

 あの時護衛対象から一瞬目を離したのは、安全を確保する為だった。

 

 後悔は無い。

 任務で初めて人を殺した時だって、それは無かったのだから。

 初めて仲間が死んだ時だって、それは無かったのだから。

 

 後悔は無い。

 ない、はずなのに。

 なんで、「あの時どうすれば良かったのか」、なんて。

 そんな、今更────

 

 

「ヤバいっすね」

 

「!」

 

 

 唐突に後ろから声が聞こえ、ピクリと肩が震える。

 射撃に集中するあまり背後への警戒を怠ってしまっていた。リコリスとして恥ずべきことだと反省。

 

 

 たきなに声をかけたのは、彼女と同じ紺色の制服に袖を通す少女。

 茶色の髪をツーブロックにしており、スポーティな印象を受ける。

 

 

「どもー、乙女サクラっす。DAの支部から来たリコリスって、アンタのことであってます?」

 

「……そうですが」

 

 

 またあの件について何か言われるのか。

 本部に着いた時もそうだったが、銃取引事件の際に自分が味方ごと敵を殺したという話が広まっているらしい。

 機銃掃射は事実だが、味方は殺していない。

 よって味方殺しというのは全くの嘘である。そもそもあれは死なせない自信が多少あったから実行に移したのだ。売人は殺してしまったが。

 

 

「やっぱり? いやーそうじゃないかと思ったんすよねー。並の腕前じゃないっすもん」

 

「……どうも」

 

 

 なんだろう。

 褒められはしたが、これはアレだろうか。射撃上手い癖に味方は撃っちゃったんですね、という嫌味だろうか。

 邪推するたきなだったが、その推測は裏切られることになる。

 

 

「つまり、アンタが旧電波塔コンビの人っすよね!?」

 

「…………はい??」

 

 

 旧電波塔コンビ? 

 聞き間違えでなければ、目の前の少女は確かにそう言った。

 日本最後の大事件である旧電波塔事件。それを解決した二人のリコリス。

 

 彼女はどうやらたきなをその片割れだと勘違いしているらしい。

 

 

 正直に伝えるべきか、一瞬悩む。

 自分は旧電波塔コンビの一人ではなく、それは今も隣のレーンで何事かをぶつぶつと唱えながら拳銃のトリガーを引き続けている人ですよ、と。

 件の事件を解決したコンビに興味を持つ少女の幻想を壊す残酷な行為だが、たきなは決心した。

 

 

「いえ、私ではなくそこの人です」

 

 

 へ、と間の抜けた声を出す少女の視線がたきなから彼女の先輩へと移る。

 ホントに? みたいな目がたきなとあざみとを行き来する。

 たきなは何故か少女に親近感を覚えたのだった。

 

 

 

 

 一方。

 たきなとあざみと別れ、体力測定と健康診断の為に着替えるべく更衣室に入った千束は────

 

 

「おろ?」

 

「げっ」

 

 

 自分と同じ1stリコリスであり旧知の間柄でもあるフキと遭遇していた。

 出会い頭にげっ、はないだろうと思いつつも口にはしない。

 フキの横に並び千束も着替え始める。

 

 

「珍しいですなぁーしっかり者のフキさんが最終更新日とは」

 

「お前のズボラと一緒にすんな。あたしは仕事だ」

 

 

 既に着替えを済ませ、早々に出ていくかと思いきやフキはその場に残る。

 

 

「あざみはどうした。いつも一緒だろお前ら」

 

「そうそう聞いてよフキー。あざみったら私に内緒でライセンス更新してたんだよ。私に内緒で!」

 

「へぇ、あいつがねぇ……」

 

 

 素直に意外という反応だった。

 フキから見たあざみは千束以上にズボラというか抜けていて、手のかかる印象がある。

 だからライセンスの更新も誰かに言われないと行かないし、行っても毎回必ず最終日に千束と来るものだった。

 そのあざみが早めに、それも千束と別々に更新するとはどういうことなのか、と思うに違いない。

 

 

「お前嫌われたんじゃねーの?」

 

「違いますぅー。あざみは私のこと嫌いになったりしませんー」

 

「あっそ」

 

 

 珍しいことではあるが、フキはそれ以上のことは聞かなかった。

 数秒の沈黙の後、ポツリと言葉を零す。

 

 

「……たきな、どうしてる?」

 

「あ、やっぱり気になる? 殴っちゃったもんね」

 

「うっせーな。謝ったて言ったろ」

 

 

 フキは然程気にもしていない様子だが、千束から見れば気にかけているのがありありと分かった。

 殴った負い目、のようなものもあるのかもしれないが、それ以上に元パートナーに対する気配り、のようなもの。

 口は悪いし、本人は気紛れだと認めないが千束はフキのこういうところは好ましく思っている。

 

 

「今日こっちに来てるよ。会ってく?」

 

「いや、いい。別に言うこともないしな」

 

「えー。あ、じゃあリコリコに来る? 歓迎するよ?」

 

「っ……! いい、先生にはよろしく伝えとけ」

 

「あーフキってば先生のこと」

 

「あーうっせうっせ!」

 

 

 普段のむっとした表情がほんのりと朱に染まる。

 先行くからなと言い捨て、ずかずかとロッカールームを出て行く彼女を見送る。

 

 

「……たきな、大丈夫かな」

 

 

 

 

 目標をセンターに入れてシンジ君ごっこをしてたらサクラに終わった顔をされた。

 そのまま絶句して口をパクパクしてる。

 なにこれおもしろい。

 

 

「……アンタが電波塔コンビの人、っすか?」

 

「ぇ、ア、ハイ」

 

 

 なんか疑うような視線を向けられている。

 あれ、コイツってたきなが味方撃とうとしたことを揶揄いに来たんじゃなかったっけ? 違った? 

 

 質問してからサクラはんんー? と私の全身をまじまじと観察し、

 

 

「イヤイヤ、やっぱナイっすよ。ナイナイ」

 

 

 あははーと笑いながらぷらぷらと手を左右に振った。

 

 なんかよく分からんけどナイらしい。

 何がナイのかはさっぱり分からんが、さっきからコイツ何の話してんの? 聞いてなかったからワガン=ニャイ。

 

 まぁ聞いた感じ電波塔コンビと呼ばれる千束と私に用があるっぽいが、あの事件については正直語るようなことは少ない。

 精々がマジーマさんが昔は五条先生スタイルにグラサンという奇天烈スタイルだったよってこと位かなぁ。

 

 

「あれ、じゃあこっちの人ってもしかして……」

 

 

 私からたきなに目を向けてたきなが例の事件の当事者であると感づいたようだ。

 君のような勘のいいガキは嫌いだよ……。

 

 

 そんな感じでリコリス三人で駄弁って? いると射撃訓練場に足を運ぶ人物の影が。

 それが目に入ったたきなとサクラが姿勢を正す。

 ま、まさか────!? 

 

 

「随分賑やかだな」

 

 

 きぃいああああああああああ司令だああああああああ!? 

 

 あ、あの、私は千束とたきなについて来ただけですので、ここいらでお暇いたしますね。お、お疲れ様っした、ふへへ……。

 

 

「お前も来ていたのか、あざみ。千束にも言ったが、早くDAに戻れ。優秀な人材をを遊ばせておくような余裕はない」

 

「ぁ、ハイ、ぁ、イエ……」

 

 

 し れ い か ら は に げ ら れ な い。

 完全にロックオンされてしまったッピ。やべぇ、やべぇよ……。おいおい死んだわ私。

 

 圧がなー圧が怖いんだよなーこの人。

 前職:圧迫面接官とかだよきっと。

 もうまじむり。

 あざみ、おうち、帰る。

 助けてちさとー。間に合わなくなってもしらんぞー。

 

 

「楠木司令! 例の銃取引についての証拠を集めました! 私をDAに戻して下さい!」

 

 

 いいぞたきなぁ! その調子で頑張って司令の注意を私から自分に向けるんだ! その間に私は逃げる! (スケープゴート)

 

 たきなは必死に司令へと訴え出るが、むべなるかな。

 司令の目はキンキンに冷えてやがる。

 うーん、大して気にしていないものを見る目ですねクォれわ。

 

 

「勘違いしているな。成果を出せば本部に戻れるなどと、誰が言った?」

 

「っ……!? それは……」

 

「あー、やっぱそっちだったんすねー」

 

 

 サクラはニヤニヤと表情を崩してたきなを見る。

 たきなも射撃場に来る前に例の事件についての陰口を言われたことを思い出したのか、俯いてしまう。

 

 

「アレっすよね、味方殺し! 味方諸共敵を撃ち殺したってやつ。なんか色々噂になってるっすよ」

 

「違います! あれは……」

 

「実際どうなんすか? 感想とかその辺聞きたいんすけど?」

 

 

 言い返そうとするたきなだが、司令に断られてから顔色が良くない。

 このままではたきな後輩がレスバに負けてしまうな。

 仕方ない、ここはこの先輩が────

 

 

「人の相棒に何やってんだこんにゃろー」 

 

「……アンタ誰っすか?」

 

「お前が探してた電波塔コンビのもう片割れのアホだよ」

 

「あ、フキせんぱーい!」

 

 

 出る前に千束が来た。

 キタ! 千束キタ! 千束キターン! 

 これで勝つる! 優勝! お前が人間国宝! ガハハ! 

 

 あ、フッキーもいる。おひさー。

 

 

「へぇ、この人がっすか。なんかどっちもイメージと違うっすね」

 

「あぁ〜ん!?」

 

「やめろお前ら」

 

 

 司令の前だぞ、と千束とサクラを諌めるフキ。

 うーん、これは長女。流石同室時代私の世話を焼いてくれただけのことはありますなぁ。

 

 フキはたきなの方を向いて近づく。

 

 

「言ったろ。簡単に戻って来れる程甘くねぇってよ」

 

「…………っ」

 

 

 下を向き、ぎゅっと手を握りしめるたきな。

 この時はまだDA復帰に固執している彼女にとっては、受け入れ難いものがあるはず。

 

 

「私は……!」

 

「諦めろって言われてるんすよ。心配なくとも、先輩の後はあーしがしっかり命令違反なくやるんで」

 

「おい!」

 

 

 千束が珍しく感情的になっている。

 付き合いは短いが、彼女にとってたきなは既に大事な存在ということだろう。

 そして私はいつも通り蚊帳の外。口を挟む隙間ない。ぼろろん。

 

 

「あなたが、後任……」

 

「そっすよ。それともどうします? 力づくてぶちのめしてみます?」

 

「いーじゃん。やったろーぜ、たきな!」

 

「おい、お前らなに勝手に……!」

 

 

 若干流れは違うが、原作通りに模擬戦になるみたい。

 つまり、この先に待っているのは・・・!

 

 

「・・・っ!」

 

「たきな!?」

 

「あらら、逃げ出しちゃったよ」

 

 

 突然居ても立ってもいられないとばかりに走り出し、黙って何処かに去っていくたきな。

 直ぐに千束がその後を追う。

 私は千束の後をこっそり追う。

 私にはアレを見届ける義務がある。

 

 

 ────そう、ちさたき百合ーゴーランド開幕をっっっ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あざみさん、私と模擬戦してください」

 

 

 おファっ!!?




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