尻尾ハグ短編集   作:ろめ~る

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奈瀬クリ編&シャカファイ編

・奈瀬クリ編

 

「一着おめでとうございます。トレーナーさん」

 

「ありがとう。クリーク」

 

クリークが渡してくれた水筒に口を付け

タオルで噴き出た汗を拭う。

レースを終えた直後にライブに立つ

彼女の達の強さに改めて感銘しながら。

 

「シャカールちゃんの為に頑張るお姿。

 とてもかっこよかったです」

 

ボクがファン感謝祭で毎年行われる

トレーナー走に今年、参加したのは

現在担当しているエアシャカールがきっかけだった。

 

シャカールが組んだトレーニングをこなし

レースで結果を証明する事を条件に

彼女がファンの前に顔を出してもらう事になっていた

 

「シャカールの為じゃない。

 彼女に応援してくれる人達がいるのを

 ボクが知って欲しかったから走っただけだよ」

 

「そこがカッコいいんですよー」

 

クリークは変わらない優しい笑みを向けてくれる。

彼女の笑顔を見るといつも自分よりも歳上の

大人の女性だと錯覚して、気持ちが安らいでしまう。

 

「……ただ、これは流石にどうかと思ったけれど」

 

ボクは自分に付いた作り物の耳と尻尾を指で摘む。

秋川理事長がよりウマ娘の気持ちを感じる為にと

今年のトレーナー走でいきなり導入されたものだ。

 

そのせいで

ボクも、小宮山さんも、小内さんも、檮原さんも

二つの意味で顔を真っ赤にしながら走り抜ける事になった。

 

「お似合いですよ」

 

クリークがボクのすぐ近くまで歩み寄ると

その尻尾を偽物の尻尾に絡み合わせる。

 

「あっ……」

 

人工繊維と針金で出来た尻尾には

当然、神経なんて通っていないはずなのに

クリークの温もりが尾先から体の芯まで伝わっていく。

 

何も答えられないまま

ボクの両肩を彼女の両手が包み込む。

 

「文乃さん」

 

互いの唇が触れると同時に

彼女の耳ともう一組のボクの耳が交差した。

 

 

 

・シャカファイ編

 

少しだけ開けたロッカールームの扉を

オレは静かにかつ迅速に閉じて逃げ出す。

 

走るオレをジロジロと見る連中から

顔を見られない様に、中庭へと退散すると

そこに今一番会いたく無いヤツがいた。

 

「あ!シャカール!

 やっぱり感謝祭きてくれたんだ!」

 

オレが舌打ちすると

いつものように殿下サマは上機嫌で

こっちに近づいて来やがる。

 

「なんだか、顔が赤いけど大丈夫?」

 

「……るせーな。テメェには関係ないだろ」

 

ちくしょう……

頭からあの光景が消えねぇ……

奈瀬のヤツとクリークが……

 

しょうもない事に思考を支配されている中

オレの背にいるアイツは上機嫌で鼻歌なんかを……

 

おいまて。

オレの尻尾になんか巻き付いてやがる

まさか違うよな……

 

オレが上半身を振り返らせると

そこには混じり合う二つの尻尾がありやがった。

 

「なにしてる」

 

「知らない?尻尾ハグだよ」

 

ファインモーションはいつもの笑顔で応えやがった。

こっちの情緒なんぞ気にも留めずに。

 

 

「どういう意味が知ってんのか」

 

「うん。特別な相手同士がする挨拶でしょ。

 タキオンから聞いたよ」

 

「でよ。尻尾の根元にあるリングはなんだ」

 

「タキオンから貰ったの。

 これで心拍数とかが計測できるらしいの」

 

やっぱり、アイツか……

 

「なんだかこれってドキドキするね」

 

「オマエなぁ……コレがどういう意味かを……」

 

ファインの奴はそのままオレの片手を

よく手入れされた両手で包み込む。

 

「あら、私はシャカールの事だいすきだよ」

 

「……」

 

オレは嫌いだね。

なんて、嘘つけりゃ苦労しねぇのによ。

 

「そうかよ」

 

オレはアイツの好意を受け入れちまう。

 

「ありがとうね。シャカール。

 キミを好きでいさせてくれて」

 

なぜかアイツの尻尾も手も

いつも以上に温く感じちまった。

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