影に依存する少女   作:つがう

1 / 4
プロローグ
住む者と住まわれる者


 世界を構成する東西南北と偉大なる航路の5海域の中で最も治安が安定しており「平和の象徴」と呼ばれる東の海(イーストブルー)

 だがゴールド・D・ロジャーが処刑され、大航海時代が始まってからは治安が少しずつ悪くなり始めていった。それでも他の海の海賊や海軍からは「軟弱な海賊しかいない海」として酷く舐められている。

 その東の海のドーン島に存在するゴア王国に属する村、フーシャ村。その名の通り多くの風車が村の中に建っている。だがゴア王国が隔離社会を築いており、国から山を挟んだ遠い僻地にあるためか、フーシャ村は王国中央部からは存在が忘れ去られている。そんな村でもある。

 そんな村に住むモンキー・D・ルフィという少年が海賊、赤髪のシャンクスから大切な麦わら帽子を預かってすぐにルフィはとある少女を見つけた。

 ルフィよりも少し背が高く、黒髪に黒い瞳、そして黒い服。やけに「黒」が目立つ少女はよろよろと力なく歩いていた。だが、容姿や服の黒とは違い、少女の持っている刀は白い鞘で、ただそれを大事そうに抱きしめるようにして持っていた。

 ルフィはそんな少女に臆することもなく近づいていく。

 

「お前、何してんだ?」

「か……げ……」

「んあ?」

 

 ルフィは首を傾げる。少女はふらふらと目の前にいるルフィに近づき、手を伸ばす。

 

「あなたの……影に……わたしをいれて……おねがい……」

 

 少しだけがさついた声で少女は訳の分からないことを言う。依然として首を傾げながらもルフィは少女に二つ返事で「いいぞ」と言った。彼はこの先のことを何一つとして考えていないのだろう。

 

「ありがとう」

 

 少女はお礼を言ってからルフィの足元にある影に手を触れた。指が影の中に入ったかと思えば頭からとぷん、とまるで水の中に入るかのように少女は持っていた刀ごとルフィの影の中へと入っていった。

 

「あり? どこいった?」

 

 ルフィは足元をばたつかせる。だが先ほどの少女はどこにもいない。

 

「なんだったんだ?」

 

 不思議そうな声を出したところで少女が出てくるわけではない。ルフィは狐につままれたような気持ちで自身の家とも呼べる酒場へと帰った。

 

 

***

 

 

 酒場へと帰ったルフィがカウンターの向こうにいるマキノに少女に出会ったこと、その少女が自分の影に入って消えことを身振り手振りを使って必死に伝えるが、マキノはくすくすと笑うだけでルフィの話を信じてはいないようだった。

 信じてもらえなかったルフィがむくれながら夕食を食べていると、ルフィの影がもぞもぞと動く。

 

「あぁっ!」

 

 ずるり、とルフィの影の中から昼間ルフィが出会った黒髪の少女が出てきた。

 歩くのもままならなかったはずの少女は何もしていないはずなのにすっかり元気になっていた。ボサボサだった髪も心なしかつやつやしているように見える。

 

「ありがとうございました」

 

 ルフィの影を踏んだまま、少女は礼儀正しくぺこりと礼をする。

 酒場にいたマキノや客はいきなり出てきた少女に驚いて声も出ない。だがルフィは違う。にぱっと笑いながら少女の方を見る。

 

「おう! お前名前なんて言うんだ?」

「ミカゲです。フェガロフォト・ミカゲ」

「俺はモンキー・D・ルフィ! よろしくな!」

「よろしく……しても、いいの?」

「はあ?  何言ってんだ?」

 

 ミカゲは何も言わずにルフィの手を掴んで酒場を出てしまう。大人がそれを止めようとしたが、あっという間に2人は夜の闇に溶けてしまった。

 

「すぐにルフィさんは返します! だから少しだけ貸してください!」

 

 夜の闇からミカゲのそんな声が聞こえる。大人たちはその言葉を信じることにした。ついさっき、突然姿を現したミカゲという少女がどんな性格をしているのかなんてわかるわけがない。だが少女が悪いことをするような子にはとても見えない。だから大人たちは無条件に信じることにしたのだ。

 しばらく歩いて周りに人がいないことを確認するミカゲに、ルフィはなんなんだと呆れたように声を出す。

 

「ルフィさん、私は普通の人間じゃない。昼間見たでしょ? 私があなたの影に潜るところを」

「ああ見た! あれすごかったな! どうやったんだ?」

「……その、あれは私がスキア族っていう種族だから出来ることなんだ」

「すきあぞく?」

 

 ミカゲがこくりと頷く。

 

「スキア族は誰かの影に依存しなければ生きていけない種族なの。どれだけご飯を食べても、どれだけ眠っても、普通の人間が生きるための行為をしたところで、スキア族は誰か他人の影にいなければ生きることは出来ない。意味が無いの」

「ふーん、じゃあ今お前は俺の影に住んでるってことなのか?」

「いや、まだその、住んでない。休んでるだけ。宿、みたいな感じ。あなたが住んでもいいよって言ってくれたら契約は成立して話は違ってくるけれど……」

「ケイヤク~? なんだそれ、おれぁ何かに縛られんのは嫌だぞ! おれは自由な海賊になるんだ!」

「え、えっと、その、契約って言ってもただの口約束みたいなもので、そんなに難しいことじゃないの。あなたを縛る気は私にはないよ。それにたとえ契約をしたとしても、あなたが私に出ていけと言えばそれで契約は白紙に戻るよ。それでも休むことくらいなら出来るけどね……」

「ふーん、住むのと休むのじゃ違うのか?」

「誰かの影に住んだことがないからわからないけど、多分違う。分かりやすく例えるなら……うーん……床で寝るのと、ベッドで寝るのは違うでしょ? そんな感じ、だと思う」

「大分違ぇじゃねえか! なあお前、住むとこが決まってないんだろ。このままだとお前、どうなっちまうんだ?」

「……今、ルフィさんの影で休ませて体力も戻ったし、多分1か月は大丈夫だと思う」

「その後は?」

「今日みたいにまた誰かの影を借りる。だから大丈夫」

 

 ミカゲは無理にルフィを説得しようとはしていないらしい。ただ休ませてもらったからには話さなければならないと思ったから。そして今はルフィの質問に答えてるだけだ。

 へらへらとミカゲは笑う。ミカゲはルフィの影で休ませてもらったから1か月は大丈夫だと言った。

 だがもしも1か月後、ミカゲに影を貸す人間が現れなかったら? 先ほどミカゲはどんなに食べても寝ても、誰かの影にいなければ意味がないと言った。ならばミカゲが影を借りることが出来なければ、ミカゲは死ぬと言うことなのだろう。

 昼間、ルフィが出会った時もミカゲは死にそうな顔でよろよろと歩いていたのだ。きっとあの時も生と死の境を彷徨っていたとこだったのだろう。

 ルフィはあまり頭が良くない。他人を疑うことを知らない。今までのミカゲの言葉も全て信じている。

 そしてぐるぐるとルフィが自分の頭で考えた結果出た言葉は……

 

「ミカゲ! おれの影に住め!」

 

 単純明快、シンプルな言葉だった。

 突然のルフィの誘いの言葉にミカゲは目をまんまるにして驚く。

 

「べ、別に住まわせてくれなくてもいいんだよ!? さっきルフィさん自分で縛られるのは嫌だって言ってたじゃない! そりゃあ生きるためにルフィさんの影を借りたけど……でも――」

「つべこべ言うな! おれはもう決めたんだ!」

 

 ルフィは言う。まだ幼い子供とはいえ、一度決めたことは曲げない男だ。

 ミカゲの瞳にうるうると涙が溜まっていったかと思えば、すぐに泣き出してしまう。

 

「泣き虫。おれぁ弱虫は嫌いだぞ!」

「ご、ごめん。すっごく嬉しかったから……」

 

 ミカゲは涙を拭い、ルフィの両手を掴んだ。

 

「ありがとうございますルフィさん! 私、あなたの言葉に甘えてあなたの影に住まわせてもらうね!」

「おう!」

 

 昼間のようにミカゲはルフィの影に飛び込む。ルフィがミカゲを受け入れ、その言葉を聞いてからミカゲはルフィの影に入った。これで契約は成立である。

 契約が成立したことを自分の体で確認してから、ミカゲはずるりと影から出てくる。

 

「これで終わりか?」

「うん! ありがとう! ルフィさん!」

「そういう堅苦しいのおれヤだぞ」

「え! えっと、それじゃルフィ! そう呼ぶ!」

「おう! そーしろ! そーしろ!」

 

 またぎゅっとミカゲは刀の持っていない方の手でルフィと握手をした。

 これからルフィがミカゲを拒絶しないかぎり、ルフィとミカゲはずっと一緒だ。




▼プロフィール
名前
フェガロフォト・ミカゲ

年齢
17歳

身長
97cm→167cm

見た目
髪も目も真っ黒。髪は胸元よりも少し長い。
ナミほどではないがスタイルはかなりいいが、基本肌を隠すように長袖と長ズボンを着用しているのでスタイルが露わになることはあまりない。

誕生日
4月11日

星座
牡羊座

血液型
F型
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告