私の全てが砕けて壊れて、暗闇に閉ざされてしまったような気がしました。全てがどうでも良くなって、もう自分に価値を見出せなくなって。こんなことなら、ウマ娘になんかなるんじゃなかった。こんなに苦しいなら、レースになんか出るんじゃなかった。だって私はこんなにも弱くて醜いのに、叶えもしない夢ばかり大きくて、実現できない理想だけは広くて、結局何もできない弱虫なんですから。期待を背負うだけ背負って、全てを裏切る最低なウマ娘の正体、それが私だったと、ようやく気づきました。
「アン……?」
アリアンスは静かに立ち上がり、目の前のフルアダイヤーの声に反応も見せないままぶつかり、押しのけて歩いた。抜け殻のような彼女を心配したフルアダイヤーは急いで手を握り、顔を覗かせた。
「アン、大丈夫?どこか悪いなら私が連れていく。骨折なら急いで対処しないと、無理に歩いてはダメ。だから……」
「邪魔だから、どいてほしいな」
「えっ……」
もうそれ以上、彼女が言い返すことはなかった。フルアダイヤーが焦がれたアリアンスはもういない。前髪の間からかすかに見えた彼女の表情は、ひどく醜く歪んでいた。トリプルティアラ第一冠というこの上ない名誉を手に入れたウマ娘は、ターフの上で立ち尽くし、自分に希望を与えてくれたウマ娘が力無く去っていく様を見るしかなかった。
「待ちなさい、アリアンスさん」
汗を滲ませ、呼吸を荒げながら、コープコートは立ち塞がった。
「フルアダイヤーさんは強かった。でもそれは、アリアンスさんへの渇望なのよ。彼女はよく言っていたわ、『アンは私の恩人、だからこそG1の大舞台で本気で戦ってみたい』って。芝に転向してまであなたとの一戦を求めたフルアダイヤーさんに対して、その態度はあんまりじゃないかしら」
「だから、何?」
いくらコープコートとはいえ、この言葉は深く突き刺さった。冷静を保っていられなくて、怒りだけじゃない様々な感情が口から溢れ出ようとしてくる。アリアンスが壊れてしまったのは明確だった。だからこそ、必死にそれを抑えながら言葉を続けた。
「私は、私の気持ちはどうなるの……!今日はアリアンスさんだけをマークして、あなたにだけは負けたくない、その思いで全てをぶつけたというのに……!結果負けてしまったけれど、今日ほど清々しい日も無かったわ。なのにあなたは、あなたは……、フルアダイヤーさんだけじゃなく、私や他の皆の思いまで裏切るというの……?」
「もう、いいかな」
こんなの、こんなのアリアンスさんじゃない。何も認めたくなかった。彼女の闘志が燃え尽きたことなど信じたくなかった。けれど、それは叶わない。
「私の見込みが間違っていた。あなたは優しく純粋で、理想高く努力を惜しまない。数回敗北した程度では決して折れない屈強な精神を持つ皆の憧れ。私にはもったいないくらいのライバルだと、そう信じていた私がバカだったわ。辞めたいなら辞めればいい、もう私たちの前に姿を見せないで、弱いウマ娘はいらないもの」
強い言葉を吐きながら、それでも泣き崩れそうになるコープコートを押しのけて、反論することなくアリアンスは行ってしまった。会場のどよめきはしばらく収まることはなかったが、それは大穴を開けたフルアダイヤーに対してではなく、今日のターフを確かに盛り上げた彼女が消えてしまったことに対してだった。
「アーちゃん、どうして……」
自分をこれほど無力に思ったことはなかった。コートがあんなになるまで語って無理だったのだから、今更あたしが行ったところでアーちゃんを変えることなんてできないだろう。ここからターフまで、一直線に駆け足で辿り着くことができるのに、あたしは足がすくんで、ただひたすらにアーちゃんが戻ってくることを祈るばかりだった。
「ちょっと行ってくるよ、ルドルフ」
「ああ」
小柄なウマ娘は静かに立ち上がった。