秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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一話分抜けていました。誠に申し訳ございません。


ウールちゃんとお勉強

「やばいよやばいよ、テスト近いけど何にもやれてないよー」

 

入学してから数ヶ月。相変わらず今日もウールちゃんが焦っていました。アイちゃんには無視されたそうです。トレセン学園では来週からテストが始まります。ウールちゃんは、いかにも勉強していますよというような雰囲気を出していましたが、やっぱり嘘でした。さすがにまずいと思ったのか、助けを求めてきました。私は人並みには勉強していると思うので、悲惨な結果にはならないと思いますが、社会が少し苦手です。

 

「ねえねえアーちゃん、今日ちょっとそっちの部屋行っていい?勉強教えてよ。お願い!」

「そう言われる気もしたから、準備しておいたよ。今日、待ってるね」

 

心がゆるんだのか、小さくガッツポーズをするウールちゃん。大変なのはここからなのに。テストの一週間前からは、トレーニングより勉学優先となります。勉強を完璧に仕上げて、テスト対策もバッチリなのか、ターフで走っている子もいます。例えば、アイちゃんとか。アイちゃんはご存知の通り、模擬レースでも華麗な差し切りで一着、早くもメイクデビューでの勝ちが期待されています。さらに勉強も完璧にこなしていて、私の憧れです。交流も兼ねて、分からないところを質問する機会を伺っているのですが、基本一人で過ごしていて、なかなか近寄りがたい雰囲気を出しています。いつか一緒にお出かけできたらいいなと思っています。

 

放課後、ウールちゃんと一緒に寮へ向かっていると、ユウさんに会いました。

 

「あ、ユウさん。こんにちは」

「お疲れ様。勉強の調子はどう?」

「今からウールちゃんと一緒に勉強するんです。ユウさんもどうですか」

「トレーナーは寮へは入れないから遠慮しておくよ。二人とも頑張ってね」

「おー、これがアーちゃんのトレーナーさんですか。ふむふむ、どうも、いつもうちの子がお世話になっております」

「こちらこそ。アリアンスは驚異的なペースで成長しているから、きっとメイクデビューでは良いレースを見せれると思うよ」

 

なぜかウールちゃんの子どもになっています。ユウさんも笑顔で当たり前のように流さないでください。

 

「だってアーちゃん!あたし期待しちゃうなー。じゃ、トレーナーさん、また機会があったらご指導よろしくです」

「ユウさんも頑張ってくださいね」

 

ユウさんは軽く微笑んでトレーナー室へと帰っていきました。それを見届けて、私たちも寮へ歩き出しました。

 

 

「ところでアーちゃん。さっきは大胆だったね。ウールちゃんは二人があそこまでの仲になってるだなんて思わなかったなー」

 

部屋で机などを準備していると、唐突にウールちゃんが口を開きました。何の話をしているのか、全く見当がつきませんでした。

 

「いやん、はぐらかしても無駄だよ、アーちゃん。トレーナーさんをお部屋に招待しちゃうなんて、ほんと大胆だよね。あの大人しいアーちゃんが、そんな勇気のいることをするだなんて……だいたい、それを断るトレーナーさんもトレーナーさんだよね、全く。こんな可憐でお人形さんみたいな美少女ウマ娘がお部屋に招待してるのに」

「な、何を言ってるのウールちゃん!そんなんじゃないから!」

「お、照れてる照れてる。ほんとかわいいなー」

 

トレーナーさんをそんな目で見るなんて言語道断です。でも、そういう発言だと捉えられたかもしれないと思うと、顔から火が出るような思いがして、とにかく取り乱しました。思わず机に置いてあったマグカップを手に取り、お茶を飲み干しました。

 

「そういうこと言うなら、もう勉強教えてあげないんだから。ウールちゃんなんて嫌いだもん」

 

仕返しのようにわざとらしくそっぽを向く私。ウールちゃんは、ごめんごめんとやる気のない謝罪を述べながら頭を下げていました。

 

「許してよー。今度アイス奢ったげるから」

「もう、今回だけだよ。次変なこと言ったらもうノートも見せてあげない」

「それは困る。許してくださいませ、アリアンス様」

 

さっきまでの態度とは打って変わって、今度は土下座までしてきました。こんなことまでされて許さないわけにもいきません。ですが、ここまで気持ちのこもっていない土下座もないと思います。アイスは奢ってもらいますけど。

 

「よし、それじゃさっそく。ここ分からないんだけどさ、教えて!何でここがこんなふうに変形できるのかさっぱりで」

「ここはまず、右辺を平方完成してね」

 

それから、私たちの勉強会は何時間と続きました。お互いに課題を終わらせて、私は苦手な社会を中心に、ウールちゃんは苦手な数学を中心に、私に質問しながら懸命に問題と向き合っていました。ウールちゃんはなんだかんだ言って、嫌いなことでも苦手なことでも本気で取り組めるから尊敬します。冗談も言いますが、決めるときはしっかり決めてくれる、私の学園一の友達です。キリをつけて、夕食を食べようという話になり、部屋を出ようとしたら、ちょうどナタリーさんが帰ってきました。

 

「今日は二人なんだ、勉強熱心で偉いね。分からないことがあったらあたいを頼ってもらって全然いいよ。二人ならいつでも大歓迎」

「まじですか、やった。先輩がいるなら敵無しですよ!」

 

ウールちゃんが目を輝かせてナタリーさんに向かっています。

 

「頼れる先輩がいて助かったね、ウールちゃん」

「これで今日のご飯が三倍おいしくなる!」

 

口笛を吹きながら、あからさまな上機嫌で食堂へと向かうウールちゃんなのでした。

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