教室では、コートちゃんが心配そうに駆け寄ってきました。
「アリアンスさん、大丈夫だった?もしかして私が気に触ることを言ってしまったのかしら。ほんと、ごめんなさい」
「全然いいの、コートちゃん。私、元気だから」
深く頭を下げるコートちゃんに、いいよいいよと首を激しく振る私。それを見ていたウールちゃんがコートちゃんをからかっていました。
「あたしもトレー運び頑張ったんだけどなー。下げる頭が足りないよー?」
「そうだったかしら?覚えていないわ、ごめんなさい」
「なんかあたしには冷たくない?ウールちゃん泣いちゃうよー。待って、痛い痛い。止めて、冗談だから」
コートちゃんが頭を下げる代わりにウールちゃんの頭を思いっきり手で押さえつけていました。これではウールちゃんがコートちゃんに謝っているようです。その光景に思わず吹き出してしまいました。
「ま、アリアンスさんが笑っていますし、許してあげましょうか」
「二人とも、ありがとう!」
なぜだか少し恥ずかしくて、それでも私の精一杯の笑顔でした。
「わ、私は感謝されるようなことは何一つしてないわ」
「おやおや、コープコートもアーちゃんの激かわスマイルにやられちゃったかな。この屈託のない天使のほほえみ。骨抜きになっちゃってもしかたないよ」
「なっ。ほんと、そういうところがムカつくんだって分からないかしら。まあ、間違いではない、かもしれない」
「なんか言った?」
何でもない、と一蹴。私も、コートちゃんが何を言ったのか聞き取れませんでした。ただ、ちょうど夕方で、コートちゃんの頬は赤く火照っていました。
「そ、そうだ。今度からは私もお昼、ご一緒してもいいかしら?」
私とウールちゃんは口を揃えて言いました。
「もちろん!」
私の心は大いに澄んでいました。心に突如湧いた腫れ物を、トレーナーさんが、ウールちゃんが取り去ってくれました。コートちゃんとも仲良くなれて、その後のテスト勉強はいっそう捗りました。苦手な科目ともめげずに頑張って向き合ってみせました。
「数学やばかったよー。あんなの時間足りないって。抗議だ抗議。私は認めない」
「あなたが勉強していないだけでしょ。すぐ人のせいにするんだから。アリアンスさんはこんな風になっちゃダメよ」
無事にテストが終わって、食堂でお昼ご飯です。コートちゃんとウールちゃんはいつも通りです。心配していた数学は、やっぱりダメだったみたいです。
「二人はトレセン学園に入学する前から、知り合いだったんだよね」
「まあね。あたしがよく面倒見てあげたものだよ。こいつったらすぐわんわん泣くから、あやしまくってたかなー」
「変なことを吹き込むのはやめなさい。だいたい、そこまで仲良くなるほどの知り合いではなかったわ。今はこうして話しているけど」
「今はそういう仲です」
またコートちゃんからお叱りを受けています。相変わらず調子のいいウールちゃん。コートちゃんは、最近はあまり食事制限をしていないみたいです。トレーナーさんから、ストレスの検査値が少し減ったみたいだから、体重が安定してきたとのことです。それで、多少重いものを食べても体重の変化が少なくなったとか。こうして二人のやりとりを見ていると、それも納得だなと感じます。憎まれ口を叩きながらも、本当は仲良しな二人です。そういう私も、今までよりも少しだけ多く白米を口へ運ぶのでした。
「アーちゃんはテストできた?いいや、どうせ完璧なんだ。二人ともあたしを裏切るんだ。ひどいひどい。抗議だ抗議」
「何に抗議するのよ。アリアンスさんはあなたと違って計画的なお方なの。一緒にされたらたまったものじゃないわよ」
ね?とコートちゃんが目配せをしてきました。ウールちゃんの視線も同時に届いて、痛かったです。そんな目をされても、私はウールちゃんに何をしてあげられるのでしょうか。
「またそうやってアーちゃんを持ち上げる。どんだけ好きなの。あんたは知らないだろうけど、アーちゃんだって実は社会が苦手なんだぞー」
「尊敬しているだけよ。あんたにはそんな部分一つもないけど」
「私もコートちゃんすごいって思うな。あんなに速くて勉強もできて、ほんと、尊敬しちゃう」
コートちゃんが呆気にとられたように焦りを前面に見せて、慌てていました。それを隠すようにウールちゃんに当たっています。何すんの!ってウールちゃんも噛みついていました。さすがにちょっとウールちゃんが不憫な気もしますが、二人の喧嘩は終わらないまま昼休憩は終わりのチャイムを迎えました。午後の授業で全てのテストが返却され、ウールちゃんは嘆いて、私も少し冷や汗をかきながら、色々あったトレセン学園での初めてのテストは幕を閉じました。寮に帰ったら社会の復習をしないと。少し後悔が残る結果となりました。