「メイクデビュー、本当にお疲れ様。まだ足に疲れは残っているだろうから、しばらくはトレーニングをお休みして、休息に努めてほしい。八月の初め頃から練習を再開しよう。それまでにはショートウールちゃんのメイクデビューもあるしね」
メイクデビューで勝利を飾った次の日、トレーナー室に向かうと、ユウさんから夏休みをいただきました。私的には、全然身体は大丈夫だと思うのですが、そういうわけにもいかないみたいです。夏休みに入って、今は授業も無いので、寮で何をしようかと考えていると、ウールちゃんがやってきました。
「いやー、あたしも来週にはデビューしちゃうんだねえ。それは置いといて、聞いたよアーちゃん、夏休みもらったんだって。あたし今シューズ迷ってるんだよねえ。誰かシューズ選び手伝ってくれないかなあ。夏休みで誰か時間を持て余しているウマ娘はいないかなあ。ということで、付き合って!」
快く了承すると、私の腕を引っ張っていってしまいました。私まだ制服なのに。
近所にあるウマ娘のためのスポーツ用品店にやってきました。私はお母さんに負担をかけたくなくて、ずっとお母さんのお下がりのシューズを使っていたのですが、当然ボロボロなので、これを機会にシューズを新調しようと思います。ユウさんは何も言っていなかったのですが、どんな種類の物が良いのでしょうか。電話で聞いてみることにしました。
「ウールちゃん。ちょっと待っててね」
電話が繋がりました。電話の向こう側で忙しそうにパソコンを触っているであろう音が聞こえてきます。忙しいところに電話をかけてしまって申し訳なかったです。
「そういうことか。アリアンスの好きなやつにしたらいいと言いたいけど、さすがにこればっかりは機能性を重視してもらいたい。怪我の防止にもつながるしね。アリアンスは芝を大きく踏み込まない走りだから、靴底はそこまで高くなくてもいいと思う。あとは当たり前だけど、なるべく軽く、適性の幅を狭くしたくはないから、色々な距離に対応できるシューズにしてほしいという気持ちがあるかな。けど、やっぱり最後はアリアンスが一番だと思ったやつにしてほしい」
お金は出すから遠慮なく買っておいでと告げられて、電話は終わりました。ユウさんのアドバイスも参考に、自分に合ったシューズを選んでみることにしました。
「ウールちゃん、これなんかいいんじゃないかな。私の中のウールちゃんにぴったり。ダートも走れるみたいだよ」
手に取ったのは、左右で色の違う、桃色と緋色のスニーカー。ソールはそこまで高くはなくて、走りやすそうです。
「お、いいじゃん。実は私も目つけてたんだよね。これで決心がついた。ちょうどいいサイズあるかなー」
ウールちゃんのは決定です。次は自分の分を探さないと。そうだ、何か自分で気に入ったものをピックアップしてウールちゃんに決めてもらうことにします。在庫の点検をするように探し回って、いくつか候補を絞ることにしました。
「これいいな。でも、あっちのもかわいいな。あれとか、探してる条件にぴったりかも」
「アーちゃん迷ってるねー。大丈夫。こういうのは何を選んでもだいたいうまくいくものさ。でも、この三足が気になってるんだ」
「うん。どれもかわいくて、捨てがたいな」
「そうだなー。じゃあこれ、アーちゃん、ドレスとか似合いそうだし、それと合わせて着てみたらかわいいかなってことで。ヒールは少し高いけど上品さが際立ってアリじゃない?」
「そ、そうかな。派手過ぎじゃないかな。でもちょっとかわいいかも」
白黒二色の雅やかで典麗なブーツでした。似合うのなら、これがいいです。うっとりしてしまうほど、強く惹きつけられました。
「ほらほら、買っちゃいなよ。絶対似合うって。店員さん、これ、この子に合ったサイズを探してほしいんですけど」
ウールちゃんが店員さんを呼んで、後には引けなくなってしまいました。でも、ウールちゃんが決めたならきっと大丈夫なのかなと思います。心配とは裏腹に、充実感に満たされて、大事そうに商品を抱えている私がいるのでした。
トレセンへ帰って、さっそくユウさんに見てもらうことにしました。
「なるほど。バッチリだと思う。性能面でも十分だし、アリアンスならかわいく使いこなせる」
「あ、ありがとうございます」
照れてしまって、視線を下に向けながらも、とても嬉しく思いました。ユウさんが言うのですから、完璧な買い物だったと思います。さすがウールちゃん。
「せっかくだしちょっと履いてみる?」
「分かりました。こうでいいのかな。結構いい感じかも。履いてみました。どうでしょうか」
「うん、めっちゃいいね。いずれ届くであろう勝負服にも合わせやすそうなデザインで、グッドだよ」
あんまりじろじろ見られると少し恥ずかしいです。新しい靴は次のレースから使っていこうと思います。せっかく二人で選んだ大切な品なので、部屋できちんと保管するようにします。初めて他のウマ娘の子と二人でお出かけしましたが、とっても楽しかったです。さらに、来週はウールちゃんのデビュー戦があります。最近また一段とレベルを上げているので、きっと勝ってくれると信じています。レースに思いを向けていると、また、先頭のあの景色が思い出されるのでした。早く練習がしたいです。