秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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二人の夢

ウールちゃんと購買へ向かう途中、色々な話をしました。

 

「ウールちゃんは何か目標とかあるの?」

「そりゃあもちろん、重賞制覇だよね。あたしの名を世の中に知らしめてやるんだ。まあ小さいことからコツコツとね。重賞勝って、もしG1なんか制覇した日には、あたしは人気者だよね。そういうアーちゃんは、何か夢、あるの?」

 

遠い未来の夢を語るウールちゃんの瞳はガラスよりも輝いていました。一人一人のウマ娘が持つ夢の輝きは、今と未来を繋ぐために瞳の奥で静かに燃えて、乱反射しています。それは何よりも美しいなと改めて思いました。遠い未来なんかじゃない、今すぐにでも勝ち取ってやるんだ、そんな力強さがウールちゃんに垣間見えました。もちろん、私の夢は。

 

「トリプルティアラを勝つことだよ。私は、桜花賞も、オークスも、秋華賞も、全部勝って、史上二人目のトリプルティアラウマ娘になりたい。そして、私を証明したいの。私たちの強さを証明したいんだ。えへへ、熱くなっちゃった」

「すごい、すごいよアーちゃん!アーちゃんならできるよ!本気でそう思った!あたしにもその夢、応援させてね!」

 

私みたいなのがトリプルティアラなんて、そんなのは高望みだって言われるような気がしました。言われないにしても、どこか侮蔑のような眼差しを向けられると思いました。本当の選ばれた天才しかなれないから、挑戦するだけ無駄だよって、そう言われると思っていました。でも、ウールちゃんは、一切笑わずに聴いてくれて、さらに、応援してくれました。応援なんかじゃありません。君ならできるよって、アリアンスちゃんならなれるよって言ってくれました。心の底から言ってくれていることを疑うのは、ウールちゃんのガラスの瞳に失礼でした。そのウールちゃんに、なんだか少し目頭が熱くなりました。

 

「あたし、周りに自慢しちゃおうかな。これがあたしの友達のG1ウマ娘のアーちゃんですって。トレーニング、機会があったら一緒に頑張っちゃおうね!」

「うん、もちろん!」

 

私は精一杯の笑顔をウールちゃんに向けました。ウールちゃんはまたもや狼狽して、そっぽを向きながら恥ずかしそうにしています。私はこれから、途方もなく厳しく果てしない道のりを辿っていくのだと思います。ただ、今日のこの出会いは、この道のりを何倍も何倍も楽にする魔法なんだと思いました。そして、絶対に夢を掴み取ってみせるねと、密かにウールちゃんと心の中で約束しました。後に、ウールちゃんに聞いてみると、この子なら取れるって思わせる気迫と澄んだ瞳があったのだそうです。そう言ってもらえるのは嬉しいのですが、私にそういうのはあるのでしょうか。

 

 

 

「いやー、早めに来たかいがあったね。にんじんロール、にんじんロールはどこだー、あ、あったあった。おばさん、にんじんロールパン二つ」

 

大将のようなおばさんの声が廊下に響きました。購買はなかなかに豊富なラインナップで、キーンと冷えたラムネやにんじんジュース、ティラミスやにんじんケーキなんかのデザートもありました。ちなみに私は、にんじんは大好物というわけではないです。もちろん好きではあるんですけれど。

 

「はい、おひとつどーぞ。ウールちゃんオススメ、にんじんロールパンです。購買っていっても舐めちゃいけないよ、ここでしか食べれない味だからね。格別です」

「わあ、いいの?ありがとうウールちゃん。お言葉に甘えて、いただきます」

 

口の中で噛んだ瞬間、にんじんの甘い風味と、ふわふわの、温かいパンの食感とほのかなバターの香りのハーモニーが私を襲いました。これは、なかなかいけます。できたてはやっぱりおいしいです。一個120円とは思えないほど香ばしかったです。隣のウールちゃんも、これこれと言わんばかりに平らげてしまいました。

 

「いやー、これこれ、やっぱりおいしいね。アーちゃんどう?いけるでしょ、これ」

「うん、とってもおいしいな。病みつきになっちゃうかも」

「アーちゃんほどの美人さんにここまで言わせるだなんて、あたし嫉妬しちゃうな、このこの!」

 

なぜかやけ食いしてしまうウールちゃんでした。その後は、他愛もない世間話をしながら、ひとときの幸せな放課を過ごしました。

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