私に続いて、今週はコートちゃんの一勝クラスです。十人に聞けば九人がコートちゃんが一着だと言います。それほどコートちゃんの実力は凄まじいものがありました。秋風が本格的に吹き始めた府中で、コートちゃんが走ります。
「一番人気は名門のお嬢様、外枠八番、コープコートです。トレセン学園、模擬レースの時から異彩を放っていた新星が、今日はどのように私たちを魅せるのか、期待が高まります」
「私は負けない。負けないことは前提に、お嬢様らしく優雅なレースを見せてやるわ」
「泥臭くやってる方があんたにはお似合いだと私は思うけどね」
「自己紹介をしているのかしら。あんたも私のレースに魅了されないようにね」
「コートちゃん、頑張って。私、応援してるから」
優雅に踵を返して、ターフへと向かっていきました。その姿は自信に満ち溢れていて、力強く、世代最強を謳われるのも納得の、堂々とした歩みでした。観客席で私たちはレースが始まる瞬間を待ちます。ファンファーレが響き渡って、ゲートインが始まりました。三番、五番、二番。コートちゃんも順調に枠入り完了。息が苦しくなるほどの緊張の一瞬。今、レースがスタートしました。
「さあ始まりました。まずは二番と三番がハナ争い。大本命コープコートはやはり最後方。たんたんとした展開となりました」
コートちゃんはやっぱり最後方からのスタートです。長い栗毛をなびかせながら、馬なりです。若干マークされていて、前に出れないような気もしますが、ここからが腕の見せ所です。
「さあ三ハロンを過ぎました。やはり若干のスローペース。少しずつレースは終盤を迎えます。しかしまだ動かないコープコート。ここから抜け出せるのでしょうか」
最終コーナーに差し掛かります。けれどまだまだコートちゃんは動きません。これは、前を塞がれています。しかし外へ出ている暇も体力も無いはずです。ざわめきが大きくなります。ウールちゃんも、ただ黙ってコートちゃんを目で追っています。
「これは抜け出せないぞコープコート!あと400m!このままでは間に合わない!」
「舐めないでほしいわ。そんなのでブロックしたと思わないことね」
府中を抜けた大きな風と共に、コートちゃんがやってきました。
「しかしコープコートがやってきた!一瞬の隙をついて抜け出した!内をスルスルと通って一気に三番手!違う、抜け出した!二番手、一番手!一気に躍り出た!速い、速過ぎる!これが世代最強だ!今ゴールイン!」
周りのウマ娘が歩いて見える程の末脚でした。ややスローペースにも関わらずこの瞬発力とスピード、そして前を防がれても焦らない勝負強さ。これが、コープコートちゃんです。大歓声が一斉に上がります。オープンとは思えないほどの盛り上がりでした。私もウールちゃんも思わずハイタッチしてしまいました。
「全く、勝てるって言ったのに。当然だな、そんな目で見てほしいものだわ」
「いやいや、あれは焦るよ誰でも。ほんとよくやるよねー。エンターテイナーだ」
「ウールちゃんってば、ずっと不安そうな顔で見てたの。コートちゃんが負けるのは何よりも嫌みたいなの。ね、ウールちゃん。」
「アーちゃん違うから!こんなの負けても全然平気だし、なんならあたしがぶっ倒すから!」
「あら、寂しいの?良かったわね、あんたの目標は今無傷でここにいるわ」
ウールちゃんが珍しく顔を真っ赤に染めて、紅葉のようでした。大切な親友が負けてしまうのは、誰だって見たくないです。
「これで、私とアリアンスさんは二勝。さ、次はあんたの番よ、ショートウールさん。重賞だなんて言い訳にしない、最高のパフォーマンスを期待してるわ」
手をひらひらと振って去っていきました。その言葉を聞いて少しシリアスな顔をしているウールちゃんでしたが、プレッシャーだとか、不安は感じていないようでした。
「あたしは、不思議と不安じゃないんだ。デビュー二戦目で、重賞初挑戦。こんなに重圧なことはないのに、それでも二人がいてくれたらやれるって思っちゃう。今の、あいつには内緒ね。アイス買ったげるから」
「ふふっ、ウールちゃん。頑張ってね」
その言葉を聞いて、ウールちゃんの勝ちを確信しました。私が思っている何倍もウールちゃんは強いのです。肉体的にも、精神的にも。コートちゃんのウイニングライブを見届けて、二人は帰路につきました。
「あたし勝つから。見ててね、アーちゃん」
私にだけ聞こえる声で、ウールちゃんがつぶやきました。私は笑顔でうなずきます。チョコアイスとバニラアイスを持った二人のウマ娘は、燃える夕焼けの下を仲良く歩いていました。