秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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死闘の後に

「ナタリー、本当に良いレースだった。それにしても変わったな。一匹狼だった君が、あそこまで丸くなるなんて」

「あんたのおかげでもあるよ。あの日、あんたがいなければ、今のあたいはなかった。そして、アーちゃんが入学しなかったら、またまた今のあたいはなかった。みんなには感謝してもしきれない。だからあたいは走れるんだけどね」

「やっぱり君は強い。君を慕うアリアンスも、きっと世代を担うウマ娘になる。君たちがいれば、トゥインクルシリーズも安泰だな」

「あたいはルドルフにも走ってもらいたいけどね。まあいいや。次走はどうしようかな」

 

女王と皇帝は、静かに語り合っていた。

 

 

「あ、そうだ。次走、ホープフルステークス走るよ」

 

三人でお昼の談笑を楽しんでいたところ、突然思い出したでは済まされない発言が飛んできました。ホープフルステークスに出ること自体はそこまで驚くことではないのです。ウールちゃんの実力を考えれば、当然です。けど、最優先で伝えることではないのでしょうか。それがウールちゃんらしいのですが。

 

「そういう大事なことは最初に話しなさいよ」

「忘れてたものはしょうがない。ついにあたしもG1かー。夢だと思ってたけど、人生なんとかなるね。それで、もちろん勝負服を着ることになるんだけどさ、やっぱりデザイン楽しみだよね。どんなのになるのかなー。まあ、私の意見も結構入るんだけどね」

 

ウールちゃんの勝負服。私も全く想像がつきませんでした。私も次のレースで、初めての勝負服デビューです。ユウさんと色々相談しなければいけません。

 

「私も考えないとね。とびっきりオシャレで高貴なものにしてもらうわ。アリアンスさんの次走は決まっているの?」

「ユウさんと相談したんだけど、私も、阪神ジュベナイルフィリーズに出走しようと思うの」

 

コートちゃんとウールちゃんの目つきが変わりました。それもそのはずです、私が阪神ジュべナイルフィリーズに出走するということは、ジュニア級の最後に、満を持してコートちゃんとぶつかることになるのです。コートちゃんが笑みを浮かべてこちらを見ていました。

 

「ついに来てしまったのね。私とアリアンスさんの一騎打ち。今から楽しみでしょうがないわ。模擬レースの時と比べて、私たちは見違えるほど成長した。アリアンスさん相手なら何が起きても不思議じゃないわ。もちろん負けるつもりはないけど」

「まじかまじか、アーちゃんのリベンジマッチだ。これは応援しないわけにはいかない!練習全力で付き合うからね!」

 

まるで私が挑戦状を叩きつけたみたいになっていますが、リベンジを果たす時がやってきました。今のコートちゃんは世代トップクラスの実力を誇っています。そのコートちゃんと、どれだけ勝負ができるか、不安はありましたが、興奮が勝っていました。

 

「じゃあ次は三人ともG1ってことだ。これは忙しくなるよー」

 

レースまでは残り一ヶ月近くあります。ここからはもっと気合を入れて練習に取り組まなければいけません。

 

 

「え、あの子とやりあうの?ついにこの時が来てしまったね」

 

寮でナタリーさんにもお話ししました。今日はコーヒーを飲みながら、これからの練習予定などを話していました。

 

「ジュニア級最後の大舞台だからね、当然アーちゃんも出るし、あの子も出るか。他にも強い奴らばっかりだろうね。あたいから一つ言うなら、このレースは全体を広く見渡せるウマ娘が勝つってことかな。強者ばっかりっていっても、まだ経験はそこまで積んでない。だから序盤から動き出すウマ娘はあまり多くない点をみて、積極的に良い位置を取りにいけるといいよね。そこはトレーナーと相談しようか」

「分かりました。ありがとうございます」

 

ナタリーさんは言い終わると、何かに気づいたように目を大きく開きました。コーヒーを飲み干して、顔を近づけてきます。

 

「待った、アーちゃんの勝負服姿が見れるじゃん!やった、年末の楽しみが増えた!届いたら真っ先にあたいに見せて、一緒に写真撮ろう!」

 

びっくりするほどはしゃいでいました。ナタリーさんを見ていると、何かが引っかかります。聞きたいことがあったような気がします。記憶を辿ってみると、はっとしました。

 

「ナタリーさんは、なんで先行策をとったのですか?」

 

ウールちゃんも言及していましたが、ナタリーさんは差しから追込が得意なウマ娘なのです。何か作戦があったのか、気になります。

 

「やっぱ気になっちゃうよね。そうだな、一つだけ言うなら、アーちゃんの前だからかっこつけちゃったってところかな。アーちゃん、メイクデビューは先行してたでしょ。だからあたいもやってみようかなって。それで勝ったら先輩として良い背中見せれるしね。もちろん舐めてたわけじゃないよ、展開も考えた上でね」

「やっぱりすごいです。かっこいいです、ナタリーさん」

 

もっともっと褒めたまえと上機嫌で耳を立てているナタリーさんでした。目の前で誇らしそうにしているナタリーさんは、先輩としての勇姿を最高の形で私たちに示したのです。私も頑張らないといけません。いてもたってもいられず、トレーナー室へと向かうのでした。

 

 

トレーナー室にはまだウールちゃんは来ていませんでした。ユウさんは、珍しく北海道旅行のパンフレットを見ています。

 

「授業お疲れ様。今年もあと一ヶ月。先週のデュエットナタリーとローズピーチの手に汗握る本気の戦いから僕も色々学ばされたよ。トレーナーとして成長できたと思う。アリアンスもここからさらに実力を伸ばせるように、トレーニングがんばっていこう。まずは、ついにG1、阪神ジュべナイルフィリーズから」

「あの、ユウさん。勝負服のことなんですけど」

 

その単語を聞いて、さっきのナタリーさんみたいに目を大きく開けていました。これは、多分忘れていた時の反応です。

 

「すっかり忘れていた、色々デザインについて聞かないといけなかったのに。教えてくれてありがとう。じゃあ今日はその件からなんだけど」

 

私自身のイメージと比較して、要望を聞きながらメモを取っていました。万年筆の音が部屋に響きました。一段落ついて、届いたらまたお知らせするそうです。

 

「どんな服になるのか、楽しみです。かわいいといいな」

「練習のモチベーションになると嬉しいよ。いつも着ていたいくらいとびきり良い素材で作ってもらえるよう、頼んどくから。こういう時だけは、コネもいいものだよね」

 

ユウさんは冗談交じりに笑っていました。ユウさんとお父さんとの関係について、ユウさんと会ったばかりの頃に少しだけ聞いたことがあるのですが、あまり良好ではないみたいです。

 

「あ、そうだ。来週あたりに、レースに向けて雑誌のインタビューが入るかもしれないけど、嫌だったら教えてほしい。全然断るから」

 

雑誌のインタビューだなんて恥ずかしいですが、ちょっとだけ楽しみです。少しだけ見栄を張ってみようかなとか、思ったりもしました。インタビューの内容について聞いた後、トレーニングのためにターフに向かいました。




アリアンス
脚質適性:差し
次走:阪神JF
一口メモ:甘党

ショートウール
脚質適性:先行
次走:ホープフルステークス
一口メモ:課題の提出が遅れ気味

コープコート
脚質適性:追込
次走:阪神JF
一口メモ:体重増減無し

フルアダイヤー
脚質適性:?
次走:全日本ジュニア優駿
一口メモ:尾がよく動く

ビジョンスター
脚質適性:追込
次走:阪神JF
一口メモ:ダートも練習中

デュエットナタリー
脚質適性:差し〜追込
次走:未定
一口メモ:G1四勝女王


主要キャラの情報をまたまとめてみました。アリアンスに勝利したビジョンスターも追加しました。フルアダイヤーの次走は実は全日本ジュニア優駿ですが、出番はもう少しだけ後になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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