秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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インタビュー

「失礼します。私は月刊雑誌『トゥインクル』の記者、乙名史悦子です。ユウトレーナーとアリアンスさん、本日はよろしくお願いいたします」

 

今日はインタビューの日です。コートちゃんもウールちゃんも、G1に出走するウマ娘なので、インタビューはあるそうです。記者の方は、すらっとしていて、蹄鉄のペンダントに、努力の跡が見られるショルダーバッグを肩にかけていました。ユウさんに誘導されて、乙名史さんはソファに腰掛けました。

 

「綺麗なお部屋ですね。居心地が良くて、心が洗われます」

「ありがとうございます。今日は乙名史さんがいらっしゃるとのことなので。いつもはここまではしてません」

「今日は、やっぱり次走のインタビューですか?」

「はい。他にも、お二人について色々お聞かせ願えればと思います。肩の力を抜いて、楽に答えてもらって大丈夫です」

 

温かいコーヒーをユウさんが出して、取材は始まりました。なんだか、有名人になった気分です。

 

「お二人はどのような経緯でパートナーに?」

「模擬レースの時に初めて見たんですけど、衝撃でした。今でも忘れられません。他のトレーナーに取られなくてよかったです」

「やはり心にくるものがあったのですね。素敵なことだと思います。ユウトレーナーはやはり、父が偉大なトレーナーだったことで有名でしたが、どのようなトレーニングを?」

 

ユウさんの瞳が一瞬大きく開いた気がしました。笑顔は崩しませんが、さっきよりも少し強く拳を握っていました。

 

「父は天才なのかもしれませんが、僕は父とは違った方針だと思います。綺麗事ではありますが、アリアンスがストレス無く能力を高められるような環境づくりを目指しています。けどそれは決して、楽をさせることではありません。トレーナーなら、無理をさせることなく最大限の効率が望まれるトレーニングを考えて然るべきです」

 

それを聞いた乙名史さんの目もまた大きく開きました。なんだか、ウズウズしています。

 

「す、すばらしいですっ!ウマ娘が怪我無く、ストレス無く走ることが大事と仰るのですね!大切なウマ娘のために身を削ることもいとわないと言うのですね!たとえ何日徹夜しても、火に飛び込むことになっても、担当ウマ娘の勝利のためなら喜んで取り組む覚悟もおありなんですね!」

 

乙名史さんのテンションが一気に最高潮になりました。けれど、ユウさんは至って冷静でした。私は乙名史記者の情熱の深さにしばらく開いた口が塞がりませんでした。

 

「もちろんです。僕はアリアンスがレースに勝つためなら、彼女が夢を掴むためならなんでもします。それがトレーナーです。僕は彼女の命を預かっていますから」

 

それを聞いた乙名史記者の手が止まりました。トレーナー室にしばらくの静寂が訪れます。その異様な空気に戸惑いを隠せませんでした。けどそれは落胆だとか畏怖だとかではなくて、むしろ全く逆の、尊敬からでした。

 

「す、すばらしいですっ!担当ウマ娘のために全てを受け入れて、ストレスの無いトレーニングを行うためならいくらでも消費をいとわないだなんて。ここまでの方がいたなんて!ユウトレーナー、やはりあなたも天才なのですね!感激しました!」

 

顔を真っ赤にして乙名史記者はメモを取り続けています。取り乱す乙名史記者をなだめるように、ユウさんが口を開きました。

 

「そう言っていただけて恐縮です。落ち着いたら、次の質問にいきましょうか」

 

乙名史さんは汗を拭いて、段取りを確認し始めました。そして、メモ帳のページをめくりました。

 

「それでは。アリアンスさんはアルテミスステークスは惜敗となってしまいましたが、それでも強みをしっかり残せたレースだと感じました。次走のためにも、これからに活かしていきたいご自身で感じる強みはありますか?」

 

乙名史さんの真っ直ぐな瞳が突き刺さります。取材の場で改めて聞かれると、なかなか頭が回りません。それでも私の強みと言えば、まず浮かぶものがありました。

 

「ユウさんにも言われたんですけど、レースペースの判断と足のバネだと思います。見た目より粘り強く走ってくれると確信しています」

 

自分の受け答えに自信がなかったのですが、ユウさんがうんうんと頷いてくれました。乙名史記者の万年筆の音が忙しないです。

 

「アリアンスは、正確なペースの把握と全くロスのない綺麗なフォームが持ち味です。いわば熱効率100%の機関と言ってもいいかもしれません。さらに最近は基礎能力の向上も著しいです。阪神JFは相手も強くなりますが、全く問題ありません」

「私も、間近でお二人を見て、何か貫禄のようなものすら感じてしまいました。アリアンスさんなら圧勝ということもあり得るのではないでしょうか!ならば、お二人が警戒する陣営をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

ユウさんが私に目配せをしました。私の番です。もちろん私が警戒する相手は。

 

「コープコートちゃんです。私はコープコートちゃんの走りに何度も圧倒されました。だからこそ、今回は、圧倒する側から、させる側になりたいです」

 

緊張で私のコーヒーはすっかり冷め切ってしまいました。その他にも、ビジョンスターちゃんやダートで活躍しているアイちゃんのお話もしました。取材は思っていたよりも長く続きましたが、緊張していた割には楽しかったです。乙名史記者も、宝を発見した探検家のように、上機嫌で去っていきました。

 

「熱意のある方だったね」

 

インタビューの後、ユウさんが呟きました。乙名史さんのためのコーヒーは、少しだけ余っていました。




乙名史記者のキャラがブレてしまっていたらごめんなさい。
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