秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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クラシック級編
新年、クラシック


「新年、明けましておめでとう。はいこれ、お年玉、好きに使っていいよ」

 

年が明けて初めてのトレーナー室には小さな鏡餅と、扉にはしめ縄が飾られていました。渡された小さな袋の中身は、私にはこれ以上ないほど光って見えました。ウールちゃんは飛び跳ねて喜んでいます。金欠に悩んでいたので、とても嬉しそうです。

 

「こんなにたくさん。本当にありがとうございます」

「全然いいよ、まあクラシック進級祝いも兼ねてってことで。そうだ、冬休みはリラックスできた?」

「はい、とっても」

 

私一緒に泊まったんですよ!とウールちゃんは自慢げに写真を見せていました。ユウさんは苦笑いしています。この光景も、かなり久しぶりに感じます。けれど私たちは確かに進んでいます。これからは、より気を引き締めて練習に臨まなければいけません。

 

「二人とも楽しめたようでよかった。そんな二人に早速で悪いんだけど、次走が決まったよ。前聞いたことを参考に、ウールはクラシック三冠路線、アリアンスはトリプルティアラ路線でスケジュールを組んだ。ウールの次走は二月のきさらぎ賞、アリアンスの次走は再来週の紅梅ステークスでいこう。二人なら少し余裕を持って戦えるレースだと思う。少しずつ調子を戻しながら、調整していこう」

 

ユウさんとの相談で、まずはレースに慣れていくために、少しずつ堅実に勝利を積み重ねていくというプランになりました。トリプルティアラの第一冠、桜花賞に向けて、比較的戦いやすい紅梅ステークスに挑戦します。ウールちゃんは、なんといってもサウジアラビアロイヤルカップを制した重賞ウマ娘なので、いきなり重賞のきさらぎ賞に向かいます。次走について、色々情報を聞いていると、聞き覚えのある声が耳に入りました。

 

「失礼するわ。と言いたいところだけど、忙しかった?」

「コートちゃん。明けましておめでとう。久しぶりだね」

「ほんと、久しぶりな気がするわ。ところでそこの青いのから送られてきた写真はどういう意味?なんであなたがアリアンスさんの実家にいたのかしら」

「いいでしょ、アーちゃんとお泊まりしたんだー。もしかしてコートも来たかった?ごめんね、忘れてた」

 

当のウールちゃんは白々しい演技をしていました。正直、コートちゃんの反応が正しい気もします。私も取り乱してしまったので、当然の反応だと思います。まあいいわとため息をついて、鏡餅を見つめていました。

 

「二人は次走、どうするの?今日はそれを聞きに来たんだった」

 

ユウさんが色々と説明しました。そしてコートちゃんの次走は、三月のチューリップ賞。格付けはG2の重賞レースで、桜花賞のトライアルレースとして、外せない一戦です。トリプルティアラを目指すあらゆるウマ娘の第一の目標となります。ユウさんの予想通り、コートちゃんも出走するとのことでした。

 

「当然と言えば当然だわ。てっきりアリアンスさんも出ると思ってたけど、そちらにはそちらのやり方があるもの。戦えないのはちょっと残念だけど」

 

紅梅ステークスの結果によっては私も出走する可能性は無いわけではないのですが、なんとも言えない状況です。けれど、今は次走に向けて練習するしかないです。コートちゃんも私の顔を見て納得したようでした。

 

「クラシック級になって成長したアリアンスさんの走り、期待してるわ」

 

優雅に去っていきました。しばらく練習メニューの相談をして、まだまだ寒いターフへ私たちも向かいました。縮こまってしまった身体をほぐすためにも、比較的軽めの運動やストレッチから始めます。そして数日間かけて身体の調子を戻していきました。新年のスタートダッシュは好調で、順調に今まで以上の練習を私たちは積み重ねていきます。ナタリーさんに挨拶したり、久しぶりの授業で眠気と戦ったり、忙しい日が続きました。あっという間に日は過ぎて、私のクラシック級初めてのレースが、足音を立てて近づいてくるのです。

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