秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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「え、ショートウールもいるの」

 

少し嫌そうな仕草を見せるアイちゃん。でも、同じチームで仲間として練習するわけなので、できれば仲良くしてほしい気持ちがあります。

 

「アンと同じチームになるためだから、少しは我慢する」

 

渋々納得していました。少し歩いてトレーナー室に到着です。ドアを開けると、ウールちゃんもいました。

 

「おかえりアーちゃん。って、なんであんたも」

「その、ウールちゃん。相談があるの」

「トレーナー、私をあなたのチームに迎えてほしい」

「待って待って、まだあたし何にも言ってないんだけど!」

 

はちゃめちゃな四人をユウさんが愉快そうに見ています。私の腕をアイちゃんがぎゅっと掴んで、ウールちゃんが引っ張って。

 

「二人が良ければ、もちろん僕は反対しない。むしろ心強いパートナーができて二人の実力も底上げされると思う。仁川ステークス、僕も見たけど強い内容だった」

「私はアイちゃんと一緒のチーム、嬉しいです」

「うーん、アーちゃんが言うならいいけどさ」

 

アイちゃんがぺこりとお辞儀して、正式にチームの一員となりました。チームといっても、名前も無ければメンバーも三人しかいないですけど。

 

「必要な手続きはこちらで済ませておくよ。まさかフルアダイヤーちゃんがこっちにきてくれるなんて。メニューの幅が広がるな」

 

ユウさんは自分のデスクに戻っていつものようにメモ帳やノートとにらめっこしています。もうチューリップ賞は今週末に迫っています。そんな私たちのための最善の練習を改めて練り直しているのです。

 

「アンはチューリップ賞に出るんだ」

「ちょっと、あたしも弥生賞出るんだけど」

「私もウールちゃんも頑張るから、アイちゃんにはどっちも応援してほしいな」

 

ユウさんに少し待っててほしいと言われ、ソファに腰掛けてお菓子を食べながら談笑していました。相変わらずウールちゃんには少しツンとした態度で接しています。なんだかんだでバランスはいいのかなと思います。

 

「色々考えたけど、フルアダイヤーちゃんを交えての練習は来週からにしよう、疲れはまだ残ってるだろうしね。週末のレースは予定通りの仕上げで。フルアダイヤーちゃんは二人をよく観察してほしい。二人とも世代トップクラスの実力だから、きっと学べることがあると思う。僕はこの後色々手続きがあるから、先にストレッチなんかを始めておいてほしい」

 

 

いつものようにターフに到着しましたが、今日はアイちゃんも一緒です。まだ準備運動しかしていないのに、タオルはいる?水持ってくるよと積極的でした。

 

「ほんと変わったね。前はアーちゃんのことあんなに嫌ってたのに、今はこんなにベタベタしちゃってさ」

「アンは私を変えてくれた。でも過去が消えるわけじゃない。アンにも、あなたにも酷いことを言ってしまった。ごめんなさい。でも償いはこれからの走りでするから」

「そ、そんなに頭下げないでよ。あたしも悪かったって。あたしが言いたいのは、ちょっとアーちゃんにくっつきすぎだってこと!練習できないじゃん!」

「ごめんねアイちゃん」

 

すごく寂しそうな顔をして離れました。そんな騒がしい中でユウさんがやってきて、ようやく今日のトレーニングの開始です。まずはいつも通り軽いアップと、それから坂路を少々。アイちゃんにじっくり見られながらは緊張します。

 

「どうだろう、フルアダイヤーちゃんから見た二人の走りは」

「アイでいいです。二人とも全然違う走りに見えます。

特にアンのような走りをするウマ娘は私の周りにはいませんでした」

「さすが、よく見てる。ウールもアリアンスも、これからもっともっと伸びる。そしてアイちゃんも。いずれはG1を難なく取るようなウマ娘に」

「私はG1にこだわりません。アンが喜んでくれるならそれでいいです」

「この前こっそり聞いたんだけど、アリアンスは力強く走れる子がタイプみたいだよ。特にダートのG1なんかはよく見てるから、それを簡単に勝っちゃうようなウマ娘がいたら、心を奪われてしまうって言ってた気がする」

「えっ」

 

指定されたトレーニングを終えてユウさんのところに戻ると、アイちゃんがキラキラと瞳を輝かせて言いました。

 

「アン、見ててね。私、G1勝ってみせるから」

「う、うん。楽しみにしてるね」

 

ユウさんといったい何の話をしていたのでしょうか。アイちゃんのやる気が絶好調です。レースの直後でまだ身体への負担が残っているはずなのに、今にも走り出しそうな勢いです。

 

「もう少し走ったら今日は終わりにしよう」

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