秋の向こうへ、その向こうへ。   作:たいたい35

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京都旅行 その一

ついに当日になりました。行き先はもちろん、京都です。古の街並みが残るあの空間に行けるだなんて、今から身体の疼きが止まりません。みんなはもう集合場所に到着しているでしょうか、それとも私が一番乗りでしょうか、まだ起きたばかりなのにそんなことを考えていました。早朝はまだ肌寒いです、カーディガンを持っていこうか悩んだり、ネックレスを選んだり、目玉焼きを食べながら考えていました。バッグに衣服やその他を詰めて、寮が静かなうちにトレセン学園を出ました。この時間だと出勤の時間と重なって多くの人と交わります。こんなに大勢の人がいるのに、足音ばかり大きくて、なんだか不思議な気分でした。駅の途中のコンビニも、自動ドアが忙しなく開閉されています。お腹が鳴ってしまったので、私もコンビニに寄ることにしました。飴とチョコレート、おにぎりをいくつか買って、さらに揚げ物まで付けてしまいました。「ありがとうございます」、店員さんとのやりとりの後、静かに駅まで向かうのですが、周囲の足音に溶け込んでいくような気がして、これもまた不思議な感覚でした。駅前では、大きな噴水が朝から放物線を描いて私を出迎えます。そしてその隣では背の高い時計が誰にも気づかれないように時を刻んでいます。もちろん、皆その時計を目印にしているので、意味はありません。むしろ一番目立つスポットでした。私はそのちょうどその間のあたりでみんなを待っているのです。ちょっと早すぎだったかな。そんな声を漏らして。三十分くらい経つと、すらっとした美脚のウマ娘がこっちへ駆けてくるのが見えました。モデルのような体型は、アイちゃんです。

 

「おはよ」

 

トレセン学園で見るより大人びています。漆黒に身を包んだその姿はどこか儚げにも映りました。カバンもそんなに大きくはなくて、アイちゃんらしいと思います。

 

「アンとの旅行、楽しみだった」

 

私の隣に立ち、腕を組んで肩を寄せてきました。私に重心を捧げてリラックスしています。まるで冬を凌ぐ鳥が身体を膨らませて密着するようでした。長いまつ毛と暗い藍色の髪を見ていると心臓が高鳴りました。まるで二人きりの空間になってしまったような、周囲の静謐も合わさってそんな幻に陥ってしまいます。そう考えると一気に羞恥が身体全体に広がって、私はすっかり黙り込んでしまいました。

 

「あー、またくっついてる!もう、早く離れて離れて!ほんと、どんだけアーちゃんのこと好きなの!」

「仲が良いのは素敵なことだわ。あなたも早く独り立ちしないといけないんじゃない?」

「なんだよー。コートだってアーちゃんの話ばっかりしてたくせに」

「そ、そんなことないわ!変なことを言うのはやめて」

「うふふっ、コートちゃん、そうなの?」

 

二人とも、学園にいる時よりも浮かれていることが分かります。コートちゃんの隠しきれない気品も、ウールちゃんの快活盛んな物腰も、いっそう際立っているように感じました。そしてなにより、昨日までのコートちゃんとは見違えるような振る舞いが眩しいのです。どこか不安げだった彼女の姿はもうありません。期待に尻尾を震わせて、瞳に光を宿して。いつものジュニア級女王でした。

 

「そうだよー。『アリアンスさんはすごいわ、私もあんな風になりたいわ。ああ、アリアンスさん、好き好き』だってさ!あたしのライバルがどんどん増えていくから困っちゃうよね」

「そんなこと言ってない!今日くらいは我慢しようと思ったけど、一回くらい痛い目みた方がいいかしら」

 

二人のやりとりもいつも以上のキレがありました。このままとりとめのない会話を続けるのもいいなとは思いますが、コートちゃんの一言で、私たちはやっと駅内へ歩き出しました。

 

 

新幹線といえば、もちろん駅弁です。旅の醍醐味です。駅弁というだけでただの梅干しの乗った白米がホクホク鮮やかな料理に見えてしまうという、そんな魔力をまとっています。目の前の牛カルビ弁当、サンプルに乗っている玉ねぎさえ鮮やかで美しいのです。隣のサバもその隣の卵焼きも、私には何倍も高級なものに見えました。実際、駅弁は値段も少しかかってしまうのですが。

 

「アーちゃんずっと駅弁屋に張りついてる。ほらー、もう行くよー」

「ま、待ってねウールちゃん」

「じゃあ私はこいつにしようかしら」

 

ウールちゃんはその手に海鮮丼の入った袋をぶら下げて、コートちゃんがひょいと大きなからあげの乗った弁当を購入しました。はわわ、私も早く決めなければいけません。あれもいいこれもいいと頭を抱えていると、アイちゃんがそばにやってきました。

 

「私はアンと同じのにする。ゆっくり選んで」

 

アイちゃんの熱い視線を受けながら、ようやく竹皮が巻かれた一つのお弁当をチョイスしました。アイちゃんと共に急いで新幹線に乗り込んで、私たちの旅行はついにスタートしました。

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