アイちゃんやウールちゃんから、何を聞いたのどうしたのと立て続けに質問されました。わざわざみんなを追い出してしまったのですから、当然です。冗談混じりに恋愛相談だよと言うと、質問攻めが激しくなってしまいました。そしてなぜかコートちゃんまで顔を赤くしていました。そんな冗談を交わしていたら、いよいよ長かった京都旅行も、残すは新幹線だけとなってしまいました。
行きは会話のキャッチボールもお菓子のキャッチボールも盛んだったものですが、帰りは閑古鳥が鳴いているようです。コートちゃんは特注のイヤホンを付けて感慨に浸り、ウールちゃんは窓にもたれかかって熟睡していました。ああ、楽しかったなあ。二人の顔を見ていると、自然と漏れてしまった一言。アイちゃんだけは聞き逃しませんでした。爽やかな視線を私に向けます。
「人生で一番楽しかったかもしれない」
「うふふっ、私も」
「居場所をつくってくれたアンは、私の恩人。あなたがいなかったら、こんな体験できなかった。友達がいるって、本当に幸せなんだね。会話するだけで心の内が温かくて、もっとみんなといたいって自然と身体が動いて。学園を辞めなくて、本当によかった……」
ポロポロとこぼれ落ちる、宝石のような涙。クールだった彼女が見せた、抑えきれない感情の吐露に、嘘偽りはありません。もうそこには以前の冷淡なアイちゃんはいないのです。情純な笑顔を私たちに向けてくれる親友が
一人、ちょこんと座っているだけでした。アイちゃんと仲良くなりたい、入学当初から叶えたかった願いがようやく、音を立てて、強固な鎖で繋がれた上で叶った気がしました。
「私もアイちゃんと出会えてよかった!」
「アン、大好き……!」
新幹線の中でもお構いなく私の胸に飛び込んできました。やっぱりアイちゃんはスキンシップが過剰です。目の前の二人に見られていたら、何を言われるか分かったものではありません。恥ずかしさで私が固まっているのをいいことに、ギアをもう一段階上げて抱きしめます。まるで猫を膝に乗せているような感覚でした。もしかして、本来のアイちゃんはとっても甘えん坊なのかもしれません。そう考えると途端に愛しくなってしまいました。十分なスキンシップの後で、私に肩を寄せて眠りにつく彼女を、起こすことはしませんでした。
「ユウトレーナー、やっほー!私たち、無事帰還しました!寂しかったですか?でももう大丈夫。一皮も二皮も剥けた私たちが来たからには安心です」
ホテルでチェックインをして、通された部屋の鍵を開けるとその清潔さに圧倒されてしまうものです。その感覚と全く同じものが、このトレーナー室では感じられます。ユウさんの綺麗好きの徹底ぶりは一流ビジネスホテルに匹敵するのではと、何回思ったことでしょうか。今、そんな場所に帰ってきました。
「みんなおかえり。アリアンスから送られてきた大量の写真や動画を見る限り、有意義な休暇になったんじゃないかと思う。本当によかった。通知が止まらないのを喜んだのも、今回が初めてだよ」
「え、アーちゃんそんなに送ってたの?」
「思い出をユウさんとも全部共有したくて、ダメだったかな……」
「もう、かわいいなあ!このこのー!」
私のスマホの写真アプリには、京都旅行の四文字が付与されたフォルダがあります。帰りの新幹線の中で、何周も見返していました。
「もちろんトレーナーさんへのお土産も買ってきたわ。ね、アリアンスさん?」
「お菓子、たくさん買ってきました。長時間作業のお供は糖分です。いつも夜遅くまで私たちのメニューを考えてくれるユウさんの助けになればと思って……」
「ほんとはアーちゃんが食べたかっただけのくせにー。帰りの時、内緒で全部食べちゃおうかなって私に言ってきたくらいなんですから!」
「ウールちゃん、もうノート見せてあげないんだから」
ウールちゃんが苦虫を噛み潰したような顔をしていますが、もっともっと、ユウさんに話したいことは山ほどあります。それぞれ語り合いたいことが山ほどあるので、トレーナー室はいつになく騒がしい様相を見せました。そのせいか、扉のキィという音にも気がつかなかったのです。
「ユウ君、頼まれてた資料、持ってきたよ……!」
書きたいことが多く、予定よりかなり長くなってしまいました。旅行が終わって、新キャラ登場です。そして読んでくださった方、お気に入りに加えてくださる方、励みになっています。本当にありがとうございます。